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平成14年4月 日

.. 9 (NAPS9) NAPS km, km, 3 km, 8 (GSM) 64 : / 64 : / 64 : / (UTC) (UTC) (, UTC) 3 : 3 / 3 : 3 / 3 : / (, 6, 8UTC) (, 6, 8UTC) (6, 8UTC) 4 km,

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(c) (d) (e) 図 及び付表地域別の平均気温の変化 ( 将来気候の現在気候との差 ) 棒グラフが現在気候との差 縦棒は年々変動の標準偏差 ( 左 : 現在気候 右 : 将来気候 ) を示す : 年間 : 春 (3~5 月 ) (c): 夏 (6~8 月 ) (d): 秋 (9~1

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III

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概論 : 人工の爆発と自然地震の違い ~ 波形の違いを調べる前に ~ 人為起源の爆発が起こり得ない場所がある 震源決定の結果から 人為起源の爆発ではない事象が ある程度ふるい分けられる 1 深い場所 ( 深さ約 2km 以上での爆発は困難 ) 2 海底下 ( 海底下での爆発は技術的に困難 ) 海中や

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はじめに 衛星データの定量的な利用には 十分な品質評価が必要 さまざまな参照データと比較して 品質特性を把握する 衛星シミュレータは 直接的 または間接的に利用できる 気象衛星ひまわりの品質評価を例に ひまわり 8 号の初期評価等 2

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ような塩の組成はほとんど変化しない 年平均した降水量 (CMAP データを用いて作成 ) 2.2 海水の密度海水の密度は水温だけでなく 塩分にも依存する 一般に塩分が多いほど密度は高くなる 真水と海水について 温度変化に伴う密度の変化を計算すると以下のようになる 真水は 4 付近で密度が最大になるが

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数値計算で学ぶ物理学 4 放物運動と惑星運動 地上のように下向きに重力がはたらいているような場においては 物体を投げると放物運動をする 一方 中心星のまわりの重力場中では 惑星は 円 だ円 放物線または双曲線を描きながら運動する ここでは 放物運動と惑星運動を 運動方程式を導出したうえで 数値シミュ

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JRA-55 プロダクト利用手引書 1.25 度緯度 / 経度格子データ編 気象庁地球環境 海洋部気候情報課 平成 25 年 9 月

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気象庁現業全球モデルによる 台風予報の現状と課題 2013 年 3 月 6 日 第 6 回気象庁数値モデル研究会 数値モデルによる台風予報の課題と展望 気象庁予報部数値予報課中川雅之 檜垣将和 氏家将志 1

内容 気象庁全球数値予報システムの概要 台風進路予報の現状と課題 台風強度予報の現状と課題 今後の開発計画とまとめ 2

気象庁全球数値予報システムの概要 3

気象庁の全球数値予報システムの概要 目的 全球数値予報システム 週間天気予報府県天気予報航空気象情報台風予報 週間アンサンブル予報システム (WEPS) 週間天気予報 水平解像度 0.1875 (~20 km) 0.5625 (~55 km) 鉛直層 ( 上端高度 ) 60 層 (0.1 hpa) ) 予報時間 ( 初期時刻 ) 84 時間 (00, 06, 18 UTC) 216 時間 (12 UTC) 216 時間 (12 UTC) 台風アンサンブル予報システム (TEPS) 台風進路予報 132 時間 (00,06,12,18 UTC) 予報モデル全球モデル (GSM) GSM + 確率的物理過程強制法 解析システム 全球解析全球解析 (4 次元変分法 ) + 特異ベクトル法による初期摂動作成 メンバー数 - 51 11 高解像度 (20km) 全球数値予報システム 決定論的全球数値予報システムとも呼ぶ 4

全球モデルの概要 支配方程式 プリミティブ方程式 ( 静力学近似 ) 解像度 TL959 ( 約 20km) 60 層 ( 地表 ~0.1hPa) 時間積分 2タイムレベル セミインプリシット セミラグランジュ法 積雲対流予測型荒川 - シューバート 境界層メラー 山田レベル 2 放射 ( 長波 ) k- 分布法とテーブル参照法を併用 放射 ( 短波 ) δ-eddington 近似法 (2 方向近似 ) 雲 Smith(PDF 型 ) 重力波抵抗 長波 :Palmer et al. 短波 :Iwasaki et al. 陸面 植物圏 (SiB) モデル データ同化 4 次元変分法 5

疑似観測台風ボーガス bogus; 偽の 台風周辺の観測データの不足を補うことを目的として 予報課が解析した台風中心位置 中心気圧 強風半径を元に典型的な台風構造を作成し 客観解析に利用する 海面更正気圧と指定気圧面 (1000~300hPa) 上の風のデータを作成し 他の観測データと共に同化する 非対称成分を第一推定値から抽出して加える サンプルボーガスデータ配置 (T1014) 2010/10/29 18UTC 疑似観測風ベクトル 疑似観測気圧 6

台風進路予報の現状と課題 7

進路予報報誤差 (km m) 台風進路予報誤差の経年変化 1200 1100 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 19911 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 120 96 72 48 24 高解像度全球数値予報システム北西太平洋領域 年 1996 年 3 月に全球モデルの積雲対流過程の改良を行い 著しく性能が向上した 年々変動はあるものの 徐々に誤差が小さくなってきている 近年の精度向上には 初期値解析システムや観測データ利用手法の改良の効果も大きい 8

進路予報系統誤差 (2011 年 ) N 4 転向中 転向前 転向後 FT00 FT24 FT48 FT72 進行方向 赤 : 転向前 緑 : 転向中 青 : 転向後 転向前 : 遅ければ右 ( 北 ) 転向後 : 遅い傾向 ( スローバイアス ) 北西太平洋領域 9

系統誤差の例 1 北上傾向 T1106 T1109 T1111 複数の事例で 転向前の北上傾向が認められる T1106については 西進時の北上傾向とともに 転向のタイミングのずれも見られる T1111 については 複雑な運動をしているときに 北上を予想している 原因は一つではなさそう : 初期場 台風の構造 亜熱帯高気圧... 初期場の問題にも 第一推定値 台風ボーガス データ 解析手法など様々 10

系統誤差の例 2 スローバイアス 2011 年台風第 15 号の例 :84 時間予報の位置 : 対応するベストトラックの位置 但し 事例によっては予報が早めのこともある 11

スローバイアスが顕著だった事例 2012 年台風第 4 号 予報対象時刻 6/19を予報対象時刻とした予報で特に進路予報誤差が大きい 予報での台風の進みが遅い傾向 方向は概ね予想できている 12

対象時刻は6 月 19 日 00UTC 500hPa 高度予報 - 解析差 72 時間予報と解析の差 黒線 : 予報 緑線 : 解析 シェード : 予報 - 解析 解析 朝鮮半島付近に深いトラフ その前面にリッジが存在 台風を北東進させるような場 予報 解析で見られるような トラフ リッジが表現されていない 台風進行方向前面はリッジ気味 300hPaでも同様に表現に問題があった 13

台風強度予報の現状と課題 14

対象時刻は全て 8 月 19 日 12UTC 台風発生時の表現 2012 年台風第 14 号 14 解析 15 (TD) FT=24 FT=48 FT=72 台風ボーガスなしの予報 解析に台風ボーガスが入り始めたのは8 月 18 日 00UTC 台風発生時に 初期値の古い予報ほど 弱く予想している 多くの事例で一貫した傾向 統計検証でも 転向前のステージでは中心示度が浅い 15

二次循環の分布 対象時刻は全て 8 月 20 日 00UTC 解析 FT=36 FT=60 中心から 500km 円内で接線方向平均した動径方向の風速 ( コンター,m/s), 気温の動径方向平均からの偏差 (K) 中心海面更正気圧 ( コンター,hPa), 地上風 ( シェード,kt) 暖気核 二次循環ともに初期値の古い予報ほど弱くなる 16

気圧と加熱率の分布 対象時刻は全て 8 月 20 日 00UTC 解析 ( ただし加熱率は第一推定値 ) FT=36 FT=60 中心から 500km 円内で接線方向平均した雲スキーム ( コンター ), 積雲スキーム ( シェード ) による加熱率 (K/day) 中心海面更正気圧 ( コンター,hPa), 地上風 ( シェード,kt) 初期値の古い予報ほど 加熱率が全体的に小さくなるとともに 積雲による加熱が中心付近の対流圏上層にシフトする傾向が見られる 17

予報強度と台風の大きさの関係 (1) ( 予想 ) [N NM] 強風半径 2008-2011 年全台風 FT=0 予想中心気気圧誤差 [h hpa] ( 予想 ) [N NM] 強風半径 2008-2011 年全台風 FT=72 予想中心気気圧誤差 [h hpa] 小 強風半径 ( 解析 ) [NM] 大小 強風半径 ( 解析 ) [NM] 大 GSMの予想する台風は総じて小さめ傾向 ( 強風半径 =30kt 半径 ) 実況と同程度の大きさで表現されている台風は 予報時間が進むと強度過大になる傾向 実況と同程度の強度を予想した台風は 強風半径が小さくなる傾向 台風中心付近の対流圏下層で雲スキームによる加熱が大きいことと関連がある可能性 18

予報強度と台風の大きさの関係 (2) 予報強度過小 予報強度過小 中心気圧誤差 [hp Pa] 2008-2011 年全台風予報強度過大 FT=0 予想中心心気圧 [hp Pa] 中心気圧誤差 [hp Pa] 2008-2011 年全台風予報強度過大 FT=72 予想中心心気圧 [hp Pa] 小 強風半径 ( 予想 ) [NM] 大小 強風半径 ( 予想 ) [NM] 大 予想強風半径 (30kt 半径 ) ごとにGSM 予報と解析の強度を比較 強風半径が小さい台風では強度を弱めに予想する事例が多い 小さくて強い台風を表現するのは難しい 予報時間が進むと強度過大になる事例が増える 強風半径が大きい台風 強度が強い台風で顕著強度が強い台風で顕著 19

発達ステージ別の強度 強度について中心気圧の変化傾向で検証すると 減衰ステージでも発達する予報がかなりある 統計的にみて 多くの事例で傾向さえ当てることができていない 改善が必要 発達期 a 赤は初期時刻青は FT72 b 衰弱期 変化傾向 = 予報開始時刻から対象とする時刻までの変化傾向 a. 発達ステージでは 予報はほぼ全て発達 b. 減衰ステージでも 発達する予報がかなりある すなわち 減衰するサンプル数自体が少ない 20

今後の開発計画とまとめ 21

海洋混合層モデルとの結合 ー T0908 の強度予測ー 現業 SST( 固定 ) 衛星観測 SST 結合モデル SST 現業 GSMは強度を実際より強く予報 GSMに海洋モデル MRI.COMを結合し実験 台風によるSST 低下を考慮することにより 予報強度が実況に近づいた ( 台風中心付近の強い風 海面下の低温の海水が表面へ 海から大気への熱フラックス減少 台風発達が抑制 ) 22

新しい計算機システム (2012/6/5 更新 ) での改善計画 全球数値予報システム TL959L60( トップ0.1hPa) TL959 L100( トップ0.01hPa) 力学 物理過程計算の高精度化衛星データ (GNSS ( AIRS 等 ) の有効利用鉛直高解像度化により 下層表現の改善をねらう アンサンブル予報システム 週間 EPS:TL319L60M51 TL479 L100 M27 2 回 / 日府県程度で地域特性を考慮できるように顕著現象の予測精度を向上 台風 EPS:TL319L60M11 TL479 L100M25 台風進路の信頼度情報の精度向上 ( メンバー数増 ) 台風に伴う顕著現象の予測精度を向上その後 週間 台風 2 週先アンサンブル予報を生成するEPS( 統合 EPS) を現業化し 開発効率を高める 23

鉛直層数増強のねらい 物理過程の精度向上 対流圏を鉛直高解像度化することにより 物理過程の精度向上が期待 モデルトップの引き上げ 衛星観測データのさらなる利用 成層圏の精度向上 非地形性重力波などの精度向上を通じて 対流圏の精度向上にも寄与 24

まとめ 進路予報 長期的には徐々に改善傾向 ~ 初期場の改善の効果も大きい 転向前に北上傾向 原因は一つではなさそう : 初期場 台風の構造 亜熱帯高気圧... 転向後にスローバイアス傾向 まず環境場の予報の改善が必要 強度予報 台風発生時に弱く予想する傾向 積雲対流スキームとの関連を調査中 予報時間が進むと強風半径を小さく予想する傾向 台風中心付近の下層で雲スキームによる加熱が大きいとの調査あり 減衰ステージでも発達を予想することがしばしば見られる 積雲対流 雲 境界層等 物理過程による加熱 加湿率の調査を進める 今後の開発計画 海洋混合層モデルとの結合 鉛直層数増強 モデルトップ引き上げ EPS 水平高解像度化 メンバー数増 引き続き物理過程等の改良を行う 25

ありがとうございました 26