NHK アーカイブス アーキビストの役割と可能性 ~ 公共サービスを高めるために ~ NHK 放送文化研究所メディア研究部 副部長 服部弘 平成 23 年 5 月 19 日 0
NHK アーカイブスの展開 以前 局内利用番組 フッテージ提供 2003 年 番組公開ライブラリー 2009 年デジタルアーカイブスサービス教育向けサービス学術利用トライアル研究 本格的運用 ( 制度化 ) に向けての研究 検討 1 担い手の確立 2 提供方法 3 研究成立要件 1
Ⅰ. 視聴覚アーカイブにおける アーキビストの可能性 2
社会の情報資産を扱う博物館 美術館学芸員文化物 アーカイブの位置づけ ( 理念型 ) 機関専門職扱うもの考え方備考 アーカイブ 図書館 司書 図書 文化遺産として とらえる 視聴覚 アーカイブ 文書館 視聴覚 アーキビスト 文書 アーキビスト 視聴覚コンテンツ視聴覚資料 文書資料 伝えることが目的 資料 記録としてとらえる 再利用目的 ( 記録 証明 学術 ) 安定したリソース 3
アーカイブの機能 保存 選別 評価 収集 編成 記述 保存 保護 放送済番組の受け入れ 個別情報 抄録 分類 社会的記録 修復 活用 レファレンス サービス アクセス 局内利用 ソフトフッテージ販売 公開 プログラム 教育 研究イベントマーケティング 地域局での貢献事業 利用促進 周知 宣伝 マーケティング 4
アーカイブにおけるアーキビストの役割 アーキビスト アーカイブ作業の各段階について業務を遂行するとともに 全体が効率的にうまくいくように調整する そのための能力と権限を持つ者 日本の視聴覚アーカイブでは 専門職はあまりいない 5
アーキビストが放送局にもたらすもの 1 効果的な資産運用 局内利用の促進 映像ソフト フッテージ販売促進 2 社会貢献の効率的実施 学術 教育利用の効果的実施 地域局による地域貢献 ひと言でいうと 映像資産をもっと活用できるようになる 6
欧州公共放送でのアーキビスト専門職 放送局専門職必要な資格専門職の呼称 BBC ( 英 ) 4 アーキビスト又は司書の資格 シニアアーキビスト 1 マルチメディアアーキビスト 3 ORF ( オーストリア ) 70 アーカイブ学修得者 ( 学士号 / 修士号 ) アーカイズアシスタントドキュメンタリストアーキビストプロデーサー SVT ( スウェーテ ン) 20 司書の資格又はアーカイブ学修得者 ドキュメンタリスト 4 システムマネージャー 2 媒体品質管理者 4 など RTE ( アイルラント ) 数名 アーキビスト又は司書の資格 メディアマネージャー保存技術職 7
視聴覚アーカイブのタイプ 放送アーカイブ 放 送 放送利用 / コンテンツ アーカイブフッテージ販売 プログラムアーカイブ プログラム 番組公開ライブラリー / 上映会アーカイブ / イベント / 紹介放送 大学 学術アーカイブ 大学 学術 学術 / 教育 アーカイブ 出前授業 地域アーカイブ 地 域 番組公開ライブラリー / 上映会アーカイブ / イベント / メディアリテラシー 視聴覚博物館 国立視聴覚国立視聴覚アーカイブアーカイブ ( 仏 )INA ( 米 )NAVCC 撮影所 アーカイブ テーマ専門 アーカイブ 図書館 博物館 の一部 9
NHK アーカイブスでのアーキビストを想定すると 放送 プログラム 大学 学術 地域 アーカイブ アーカイブ アーカイブ アーカイブ を守備範囲とする 視聴覚アーキビスト機能が求められている 10
Ⅱ. 学術利用分野における 視聴覚アーカイブの 2 つの課題 11
学術利用分野 視聴覚アーカイブの課題 課題 1 放送局は 研究者へ TV 番組をどのように提供するべきか? 課題 2 TV 番組は研究対象になりうるか? 必要な条件とは何か? 12
学術分野視聴覚アーカイブの課題 1 放送局は 研究者へ TV 番組をどのように提供しているのか? 欧州の公共放送局 放送局本体とは別に公開組織を設立して実施 アメリカの放送局 放送局が大学や図書館に映像を提供 BFI など UCLA など 大規模なレベルでは 放送局自体では TV 番組の学術公開は行っていない 13
米の視聴覚アーカイブの学術利用 ( 公開 ) UCLA フィルム &TV アーカイブ 3 大ネットワークの番組など メリーランド大学 公共放送アーカイブ ヴァンダービルト大学 ロスアンゼルス ワシントン DC ナッシュビル PBS 系 TV 番組 議会図書館視聴覚部 NBC/PBS 中心 TV 番組外国の TV 番組も少しある 14 ニュースアーカイブ 国立視聴覚資料保存センター NAVCC (National Audio Visual Conservation Center)
インストラクティブ メディア ライブラリーコンテンツ申指定日訪問結果通知調整検索視聴UCLA フィルム &TV アーカイフ 学術利用 フィルム &TV アーカイブ 図書館 研究支援センター 資格判断し込みアーキビストオフィス 15
究者視聴ブース研UCLA フィルム &TV アーカイフ 学術利用 インストラクティブ メディア ライブラリー 中継 コンテンツ受付 研究者はコンテンツ媒体には触れない 16
格判断セクション資米議会図書館視聴覚部 学術利用 動画 TV リーディングルーム申し込み検索OK ならコピー手続 調著作権交渉整放送局など著作権ホールダー 結果通知コンテンツ 視聴室 アーキビスト コピーは研究者自らが著作権ホルダーと交渉する 17
米議会図書館視聴覚部 学術利用 リーディングルームの視聴室 視聴室全景視聴用コンテンツ保存棚視聴用コンテンツ フィルムブース 9 台 ビデオブース 3 名 83 名が視聴中 (2011 年 1 月 26 日時点 ) フィルム視聴ブース ビデオ視聴ブース 18
米の視聴覚アーカイブ学術利用の体制 アーカイブ名称利用者 ( 年 ) レファランス ( アクセス担当者 ) 利用方法 (48 名 ) UCLA フィルム &TV アーカイブ コンテンツ数 22 万 約 600 名 ( 件 ) うち外部研究者 150 名 2 名アクセス アーキビスト レファランスサービス / アクセス 館内視聴のみ サルネールは 利用者が著作権者の許可をうけた後に入手可 議会図書館視聴覚部 (100 名 ) コンテンツ数 250 万 約 1,000 名 ( 件 ) うち 研究者 200 名 4 名 司書資格 レファランスサービス / アクセス 著作権フリー コピー可 著作権あり 館内視聴 ( 利用者が著作権処理をする ) メリーランド大学公共放送アーカイブ コンテンツ数 5 万 外部研究者 30 名 1 名 アーキビスト レファランスサービス / アクセス サムネールのコピー提供 ウ ァンタ ーヒ ルト 大学 TV ニュースアーカイフ ス コンテンツ数 1963~ 非公開 非公開 アブストラクト コピーサービス著作権フリー コピー可著作権あり コピー可ニュースコンテンツは ( パブリックドメインと判断している) 19
米の視聴覚アーカイブ学術利用の特徴 アメリカ 1. 様々な大学や図書館が役割を担う 2. 放送局や映画会社はメリットを認識 保管 番販 3. フェアユースと著作権をともに尊重 フランス 国立視聴覚アーカイブ INA 納本制度を基盤にして 国家機関が放送番組を収集 保存 学術公開 20
学術分野視聴覚アーカイブの課題 2 TV 番組は研究対象となりうるか? 必要な条件とは何か グレーシー教授 テキサス大学米アーカイブズ学世界的権威 ホラック教授 UCLA Film & TV Archive 所長 文脈的記録が十分にあれば TV 番組は研究対象になりえる 21
視聴覚アーカイブおける文脈的記録 制作プロセス 制作組織 社会的背景番組 映画などが出来るまでの記録 放送番組映画動画コンテンツ 放送 上映後の利用 番組の評判 社会的の評価放送 上映以降の記録 後世になっても 社会的な意味や意義をはっきりさせるために 番組 映画の内容だけでなく 必要となる記録 22
文脈的記録の例 記録の種類制作過程社会評価利用実績 企画票 放送番組表 制作過程 制作組織 具体的内容 視聴率 入場者データ 番組評論 番組研究論文 マーケティング データ 利用実績 販売実績 教育 学術利用実績 公開利用実績 23
文脈的記録の収集 保存 公開 視聴覚アーカイブ 研究所 図書館などの外部組織 放送局 映画会社などの制作組織 アメリカ 視聴覚アーカイブが 他の研究所 放送局と分有し ネットワーク化する傾向 ヨーロッパ視聴覚アーカイブに 集約する傾向 ( 仏のINAなど ) 24
学術利用分野 視聴覚アーカイブの課題 研究者のアクセス対応 文脈的記録の整備 提供 方式は多様にある 放送 上映制度 社会の事情や放送界 映画界の事情にふさわしい方式を構築する必要がある 25
NHK アーカイブス 視聴覚アーキビストの役割と可能性 ~ 公共サービスを高めるために ~ 終り NHK 放送文化研究所メディア研究部 副部長 服部弘 26