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様式 Y-2 共同利用実施報告書 ( 研究実績報告書 ) ( 地震 火山噴火の解明と予測に関する公募研究 ) 1. 課題番号 20 17 -Y- 火山 4( ) 2. 研究課題名 ( 和文 英文の両方をご記入ください ) 和文 : 地球化学的観測手法を用いた箱根山等における熱水系の構造解明, 地震活動評価, および火山ガスの化学的連続観測技術の高度化英文 : Elucidation of hydrothermal system structure evaluating seismic activity at Mt Hakone and other volcanoes based on geochemical observation with upgrading for the chemical and continuous monitoring of volcanic gas 3. 研究代表者所属 氏名東海大学理学部 大場武 ( 地震研究所担当教員名 ) 企画部 4. 参加者の詳細 ( 研究代表者を含む 必要に応じ行を追加すること ) 氏名 所属 職名 参加内容 大場武 東海大学 教授 火山ガスの採取 分析 谷口無我 気象研究所 研究官 火山ガスの採取 分析, 多成分火山ガス連続観測装置による火山ガスの組成観測 萬年一剛 神奈川県温泉地学研究所 主 蒸気井のボーリングコアの鉱物分析 任研究員 板寺一洋 神奈川県温泉地学研究所 主 熱水の採取 分析 任研究員 代田寧 神奈川県温泉地学研究所 主 火山ガスの採取 分析, 熱水の採取 分析 任研究員 原田昌武 神奈川県温泉地学研究所 主 蒸気井のボーリングコアの鉱物分析 任研究員 高木朗 気象研究所 室長 多成分火山ガス連続観測装置による火山ガスの組成観測 福井敬一 気象研究所 研究官 多成分火山ガス連続観測装置による火山ガスの組成観測 5. 参加者が分担した役割 (200-400 字程度で記入してください ) 谷口 大場 代田は 1 か月に 1 回程度の頻度で箱根山の火山ガスを繰り返し採取 分析し地震数, 地殻変動等と比較した. 板寺 代田は大涌谷に掘削された種々の孔底深度の温泉造成用の蒸気井から凝縮水もしくは熱水を採取し分析した. 萬年 原田は, 大涌谷周辺に掘削された蒸気井のボーリングコアの構成鉱物種を深度毎に分析した. 谷口 高木 福井は噴気孔周辺の大気に含まれる火山ガスの化学組成を可搬型多成分火山ガス連続観測装置で観測した.

6. 研究実績 ( 論文タイトル 雑誌 学会 セミナー等の名称 謝辞への記載の有無 ) 大場武 谷口無我 代田寧 角皆潤 鋤柄千穂箱根山火山ガスの時間変化とその解釈, 日本地球惑星科学連合学会大会,SVC47-14,2017, 謝辞の記載有 大場武,2 谷口無我,1 西野佳奈,1 沼波望,3 代田寧,4 鋤柄千穂,5 伊藤昌稚,5 角皆潤箱根山火山ガス安定同位体比の変化と火山活動の関係, 同位体科学学会研究会,2018, 謝辞の記載有 原田昌武 道家涼介 板寺一洋 里村幹夫, 2015 年箱根火山活動に伴う圧力源の時間変化, 日本火山学会 2017 年秋季大会,P48,2017, 謝辞の記載有 代田寧 十河孝夫 秀平敦子 本間直樹 濱田紀之 大場武, 箱根山大涌谷の蒸気井および自然噴気孔の火山ガス組成, 日本火山学会 2017 年秋季大会,P122,2017, 謝辞の記載有 代田寧 大場武 谷口無我, 箱根火山における活動活発化に連動した噴気組成 (C/S 比 ) の変化, 神奈川県温泉地学研究所報告, 第 49 巻,29-38,2017, 謝辞の記載有

山大 の 気 および自然噴気 の火山 成 1 河 2 2 本間直 1 紀 3 大 4 (1 神奈川県温 地学研究所 2 神奈川県環境科学 ンター 3 神奈川県 対 4 大学 理学部 ) The composition of volcanic gases at Owakudani geothermal area, Hakone volcano Yasushi DAITA 1, Takao SOGO 2, Atsuko HIDEHIRA 2, Naoki HONMA 1, Noriyuki HAMADA 3, Takeshi OHBA 4 (1 Hot Springs Res. Inst. of Kanagawa Pref., 2 Kanagawa Environmental Research Center, 3 Disaster Management Measures Division of Kanagawa Pref., 4 School of Science, Tokai Univ.) 1. はじめに 山は神奈川県の 部に 置し, し し 発地 が発生する活火山である. 年では 2001 年,2006 年, 2008 年,2009 年,2011 年,2013 年に比較的規模の大きな 発地 活動が こり,2015 年には大 において く 規模ながら水 気噴火が発生するなど に火山活動が活発化した. 2015 年の活動では, 温 成のための 気 ( 度 500m) が地下の 上 により 能 ( 噴状 ) になるとともに, 新たな火口や噴気 も 成された. これら 気 や噴気 などから SO 2 などの な火山性 が 出されており, 向きなどによっては観 が れる大 地 において高濃度になる もあるため, これらの 気 や噴気 からどのような が 出されているかを把握することは 性の 保 後の対 のために 要である. また, 火山 の化学 成 (SO 2 と H 2 S の比 など ) は火山活動の程度により変化するため, 火山活動の現状や 後の活動を 測する上でも火山 の観測は 用であると考えられる. 本発表では,2016 年 7 から実施している 気 等から 出される火山 の測定結果について報告するとともに, 火山 成の変化から 山の活動状 の推 について推 して る. 2. 火山 の 分析方法 Ozawa(1968) の方 に準じておこなったが, 気 の いが く 採取時に大気の が避けられないため, 性が くて 出濃度も高いと考えられる HCl,SO 2,H 2 S の 3 成分について分析し, それらの比 から火山活動の推 等について推 した. 採取は, 温 成用水の ( 火山 がそのまま 出されている状 ) および 成用水 後 ( 水に溶 しやすい 成分の一部が された状 ) においておこなった. また, 比較のため 2015 年の活動で新たに 成された噴気 についても同様の方 で の採取 分析をおこなった. りは 然として高く, ま 活動 の状 には っていないと考えられる. また, 大 ほか (2008) によると,2001 年の活動以後に 成が 時の値に るまで 4 5 年程度を要しており, 回も同様かそれ以上の時間がかかる可能性があると れる. (2) 温 成用水の 後の測定結果では,SO 2 /H 2 S 比が 時的に 下していた. これは, 温 成時の がほ 一定であることなどの 付きにはなるが, 活動が に 下していることを している可能性がある. (3) 温 成用水の 後における結果を比較すると, 気 から 出される HCl は 成用水の によりほ 100 されている. また, 同日に 後で 採取をおこなった 2017 年 2 28 日の結果では,SO 2 は 80 程度 減していると考えられる. これらのことから, 温 成により, 一定程度の 出 減 果があることが示された. しかしながら, 温 成 後も 地内ではし し 高濃度の SO 2 が観測されており, 新たに 成された火口や噴気 も SO 2 の発生 になっているものと考えられる. (4) 2015 年の活動で新たに 成された噴気 において同様に 採取した結果, やはり SO 2 の発生 となっていることが かった.SO 2 /H 2 S 比で ると, 温 成用水 後の 気 から 出される比 とほ 同じであった. また, 実際には の噴気 が新たに 成されており, これらの噴気 からも SO 2 が 出されている可能性が高いと考えられる. 4. 火山 の採取にあたり, 温 ( ) ならびに に いた きました. また本研究の一部は 大学地 研究所 ( 同 用 地 火山噴火の と 測に する 研究 ) から を受けました. ここに して く し上げます. 1 0.9 3. 結果と とめ HCl,SO 2,H 2 S の 3 成分の比 を ラフにして図 1 に示した. 結果の 要を 理してまとめると以下のとおりである. なお, 気 は 150 160 ( 成用水 後は 94 96 ), 自然噴気 は 120 130 であった. (1) 温 成用水 における結果から,HCl の比 が 下しており, 回の 期間においては活動度は 下傾向にあると考えられる. また, 図では かりにくいが,SO 2 /H 2 S 比も 下傾向にあり, 同様に活動度の 下を示している. しかしながら,2001 年の活動以後に 気 の火山 を定期的に採取 分析した大 ほか (2008) による 時の値よ 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 成用水 成用水 噴 図 1 2 2 の 3 成分の比 HCl SO2 H2S

箱根火山における活動活発化に連動した噴気組成 (C/S 比 ) の変化 代田 寧 *1 大場武 *2 *3 谷口無我 Temporal variation of the fumarolic gas composition (C/S ratio) be connected activity in Hakone volcano by Yasushi DAITA *1,Takeshi OHBA *2 and Muga YAGUCHI *3 1. はじめに箱根山は神奈川県の西部に位置し しばしば群発地震が発生する活火山であり とくに 2001 年以降は数年おきに活発な群発地震活動が発生している 2001 年の活動では 群発地震が発生するとともに 山体がわずかに膨張するような地殻変動も観測された ( 代田ほか 2009) また この活動で特徴的なことは 温泉造成のための蒸気井 ( 深度 500m) が地下の圧力上昇により制御不能 ( 暴噴状態 ) になったほか 群発地震活動の終息後には それまで噴気活動が認められなかった大涌谷北 側斜面の数カ所において新たな噴気も出現するなど ( 辻内ほか 2003) 顕著な地表面現象が観測されたことである その後 2006 年 2008 年 2009 年 2011 年 2013 年に比較的規模の大きな群発地震活動が起こり 2015 年には大涌谷においてごく小規模ながら水蒸気噴火が発生するなど非常に火山活動が活発化した 2015 年の活動では 2001 年の活動以来となる蒸気井の暴噴現象が発生したほか 新たな火口や噴気孔が形成されるなど 非常に顕著な地表面現象 ( 噴気異常 ) が観測された ( 温泉地学研究所 2015) 図 1 噴気孔の位置 ( 中央付近の 印 ) 国土地理院発行の 2 万 5 千分の 1 地形図 箱根 を使用した *1 神奈川県温泉地学研究所 250-0031 神奈川県小田原市入生田 586 *2 東海大学理学部化学科 259-1292 神奈川県平塚市北 金目 4-1-1 *3 気象庁気象研究所火山研究部 305-0052 茨城県つくば市長峰 1-1 報告, 神奈川県温泉地学研究所報告, 第 49 巻,29-38, 2017 29

写真 1 火山ガス採取の様子 これまで著者らは 2001 年の活動で暴噴した蒸気井およびその蒸気井から 200m ほど南側に位置する自然噴気孔 ならびに 2001 年の活動で新たに出現した噴気域 ( 以後 新噴気域と呼ぶ ) において継続的に火山ガスの採取 分析をおこない それらの火山ガス成分の時間変化について検討してきた その結果 群発地震活動に関連して火山ガス中の C/S 比 ( 硫化水素と二酸化硫黄の合計濃度に対する二酸化炭素濃度の割合 ) が増加する可能性を指摘した ( 大場ほか 2008;Ohba et al., 2011; 代田 板寺 2010) さらに 代田(2013) では 2013 年の活動時に新噴気域において測定頻度を 10 日に一回程度に高めることで これまでより時間分解能の高いデータを得た その結果 火山ガス組成 (C/S 比 ) が 火山性地震の増加 ( 火山活動の活発化 ) とともに上昇傾向に転じ 地震活動が低調になるとともに低下傾向へと変わる変動が明瞭に観測され 箱根火山における火山活動の予測において 噴気の連続観測が有効な手段となる可能性を示した 著者らは 2013 年の活動以降も継続して新噴気域において火山ガスの採取 分析をおこなっており 2015 年の活動においても火山活動の消長に応じて火山ガス組成が明瞭に変化する現象を捉えることができた ここでは 2015 年に観測された火山活動の活発化に連動した C/S 比の変化について報告するとともに 2013 年の観測結果と比較することなどにより 箱根火山が活発化した際の活動予測について検討した結果を報告する 2. 2015 年箱根火山活動の概要 2015 年箱根火山活動における地震活動や地殻変動の特徴 噴火の推移などについては 原田ほか (2015) や温泉地学研究所 (2015) にまとめられているが ここではその時系列の概要について整理しておく なお 地震の回数は温泉地学研究所の地震カタログによるものである まず 4 月初旬頃から山体膨張を示す地殻変動が GPS で観測された 箱根火山では これまでも群発地震に先行した山体膨張が捉えられている 地震活動については 4 月に入るとそれ以前よりもやや多めの状態となったものの それでも 1 日に数回程度であったものが 4 月 25 日から明らかに増加し 1 日で 25 回の地震が発生 4 月 26 日には 102 回の地震が発生した その後 増減を繰り返しながら 5 月 15 日には 1 日で 1,100 回を超える地震が発生し 地震数のピークを迎えた その後は減少傾向にあったが 6 月 29 日の朝に大涌谷付近で再び活発となり ごく小規模ではあったものの水蒸気噴火に至った その後地震数は減少し 9 月以降は少ない状 30

態で推移し 11 月以降はほぼ活動以前の状況に戻った また 山体膨張を示す地殻変動は 地震活動がピークを迎えた 5 月 15 日以降も継続しており 噴火後の 7 月上旬頃から停滞したようにみえる 2015 年の活動の特徴は 地震活動が低調となった後に再び活発化して水蒸気噴火に至ったこと 火山性地震の増加に先行して山体が膨張し始め 地震活動がピークを迎えた後も山体膨張が継続していること 噴火後に膨張の変動が停滞したことである 3. 火山ガスの採取 分析方法継続的に火山ガスの採取をおこなった噴気孔の位置を図 1に示す 代田 (2013) において E 領域と呼んでいる 2001 年の群発地震活動後に形成された新噴気域であるが 2014 年 10 月 10 日にこれまでガス採取していた噴気孔が埋没していることが確認された これは大雨により斜面の土砂が崩れたためと思われる 従って 2014 年 10 月 15 日以降の観測は それまでとは異なる噴気孔で実施している 以前の噴気孔から 3 ~ 4m 程度離れているが 後述するようにデータの連続性は保持されていると考えられる 火山ガスの採取 分析方法は基本的に代田 (2013) と同様で検知管法である ただし 箱根山の自然噴気においては 二酸化硫黄の硫化水素に対する割合は数十から数百分の 1 程度と少なく (Ohba et al.,2011) また本噴気孔には 2013 年の活動時に二酸化硫黄はほとんど含まれていなかった ( 代田 2013) ことから 本報告における C/S 比は 代田 (2013) と同様に二酸化炭素と硫化水素の比とし 観測を簡便化するために二酸化硫黄の測定は実施していない なお 著者らは 本報告と同じ噴気孔において 2015 年の活動においても二酸化硫黄は硫化水素に比べて顕著に少ないことを検証するため 検知管による測定だけではなく 二酸化硫黄と硫化水素の比率を正確に測定する湿式分析法 (Ozawa,1968) による方法も併用して実施している その結果 2015 年の活動中においても 二酸化硫黄はおおむね硫化水素の 1/40 程度と低く C/S 比を二酸化炭素と硫化水素の比とすることについては問題ないと考えられる また ガス採取はチタン製のロートを噴気孔にかぶせ 隙間を土などで埋めることにより できるだけ大気が混入しないようにしておこなった ( 写真 1) 大気が混入したとしても 全体的に薄まるだけで C/S 比は変わらないため 観測を簡便化するためにガス採取時の大気の混入を確認する酸素の測定は実施していない 観測を実施する間隔は おおむね 10 日 ~1ヶ月程度であり 火 表 1 繰り返し観測の結果 観測日 2013/11/21 2013/11/27 2013/12/11 2013/12/25 2014/1/16 2014/2/3 2014/2/26 2014/3/10 2014/3/26 2014/4/15 2014/4/24 2014/5/8 2014/5/19 2014/6/3 回数 C/S 比 1 29.5 2 29.4 3 29.7 1 27.4 2 28.2 3 29.3 1 29.0 2 28.5 3 26.3 1 27.7 2 26.6 1 25.8 2 25.1 1 25.4 2 25.0 1 26.2 2 25.0 3 25.9 1 24.4 2 24.7 3 24.7 1 25.0 2 24.8 3 24.1 1 24.8 2 25.3 3 24.8 1 24.7 2 25.0 3 25.6 1 24.7 2 25.1 3 24.6 1 23.9 2 24.6 3 24.1 1 24.3 2 23.4 3 23.4 31

70 2013/11/21 60 50 C/S ratio 40 30 20 10 0 2012/1/1 2013/1/1 2014/1/1 年月日 図 2 C/S 比の繰り返し観測結果 図中の破線 (2013/11/21) 以降が繰り返し観測による結果を示す 山活動が活発な時は観測頻度を高めている 4. 繰り返し観測による測定誤差の検証代田 (2013) により 噴気中の C/S 比が簡便な検知管法による測定であっても箱根火山の活動予測に有用である可能性が示されたが 火山活動に伴う C/S 比の変化が有意であるかを判断するためには 平常時における測定値のバラツキを検証しておく必要がある そこで ガス採取から検知管による測定までの一連の操作を複数回おこない それらのバラツキを調査した 調査は 2013 年 11 月 21 日から2014 年 6 月 3 日までの計 13 日間において実施した ( 表 1) この調査期間中は 火山活動は比較的落ち着いており 測定結果のバラつきについて検討するのに適していると考えられる なお 1 回の調査においては 基本的に一連の操作を 3 回ずつおこなっているが 作業中の天候悪化などで 2 回しか実施できなかった日が 3 日間あった 繰り返し観測以前に実施した 2013 年の活動に伴う変化も含めて結果を図 2に示した 図中の 2013 年 11 月 21 日を示す破線以降が繰り返し観測の結果である 図 2 には観測日ごとの全ての結果を重ねてプロットしているが 全体的に非常にバラツキが小さいことがわかる 同一測定日ごとに C/S 比の平均値 および最大値と最 小値の差を求め それらの割合 (% ) をバラツキと考えた場合 調査期間中のバラツキの平均は 3.6% であった これは C/S 比を 20 とした場合 およそ 19.6 ~ 20.4 の幅を持つということであるが 図 2 に示すとおり 活発化後の変化はバラツキよりも明らかに大きく 検知管法であっても火山活動の消長を把握するための有用なデータを取得できるものと考えられる ただし バラツキが大きい場合もあったため (12 月 11 日が最も高く 9.9%) 活発化の初期の段階における変化をより高い確度で評価するためには 繰り返し測定の回数や観測頻度を増やすなどの対応が必要であると考えられる 5. 結果および考察 5.1. 2015 年の活動に伴う C/S 比の変化 2015 年の活動に伴う C/S 比の時間変化を図 3に 繰り返し観測以降の C/S 比の値を表 2に それぞれ示した 図 3には 2013 年の活動に伴う結果も含めて示してある 図中の破線が 従来の噴気孔が埋没していることを確認した 2014 年 10 月 10 日である 図 3より 新しい噴気孔において最初に測定した 2014 年 10 月 15 日 ( 図中のほぼ破線上 ) の結果はやや高くなっているようにみえるので 破線以降の結果は噴気孔の違いにより全体的にシフトしている可能性もある しかしながら 破 32

表 2 観測結果 (2014 年 7 月 22 日 ~ 2016 年 12 月 7 日 ) 観測日 C/S 比観測日 C/S 比観測日 C/S 比 2014/7/22 21.7 2015/6/30 59.0 2016/3/2 28.2 2014/10/15 22.7 2015/7/14 48.1 2016/4/8 28.4 2014/12/19 21.0 2015/7/28 40.7 2016/5/13 26.3 2015/2/16 18.8 2015/8/20 37.0 2016/6/3 23.0 2015/3/31 19.2 2015/9/11 35.3 2016/7/5 23.0 2015/4/24 20.0 2015/10/6 33.0 2016/8/5 25.7 2015/5/8 30.8 2015/11/11 31.0 2016/9/5 21.3 2015/5/11 37.8 2015/12/8 30.0 2016/10/7 22.0 2015/5/19 46.8 2016/1/8 29.2 2016/10/19 20.6 2015/6/2 54.2 2016/1/28 28.8 2016/11/4 22.2 2015/6/16 53.0 2016/2/15 28.8 2016/12/7 20.5 70 2014/10/10 60 50 C/S ratio 40 30 20 10 0 2012/1/1 2013/1/1 2014/1/1 2015/1/1 2016/1/1 年月日 図 3 C/S 比の時間変化 (2012/3/13 から 2016/12/7 まで ) 33

70 60 4/25 5/15 噴火 (6/29) 6/30 50 C/S ratio 40 30 20 10 4/24 日別地震発生数 0 1250 1000 750 500 250 0 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 月日 図 4 C/S 比の時間変化 (2015/2/16 から 2015/9/11 まで ) と日別地震発生数の推移 図中の破線の 4/25 は火山性地震が顕著に増加した日を 5/15 は地震発生数のピーク日を示す 5/15 以降 地震発生数は低下傾向であったが 6/29 に再び活発となり水蒸気噴火に至った 線を境に傾向が大きく異なることはないため データの連続性は保持されていると考えてよいものと思われる また シフトしていたとしてもわずかであるので 火山活動の消長との関連性を議論する上ではほとんど影響はないものと考えられる 2015 年の活動時期にクローズアップした C/S 比の時間変化 (2015 年 2 月 ~ 9 月 ) を日別地震発生数とともに図 4に示した 火山性地震が顕著に増加した 4 月 25 日の 1 日前に観測を実施しているが その際には C/ S 比の有意な増加は認められない 代田 (2013) では 1 日から数日程度地震活動に先行して C/S 比が増加する可能性があることを指摘しているが 今回の観測では先行した変化を検知することはできなかった 地震活動が活発化した後 C/S 比は増加傾向を続け 2013 年と同様に火山活動に伴う明瞭な変化を捉えることができた C/S 比は地震活動が低調となった 5 月中旬以降も増加を続け 小規模噴火の発生とほぼ同時期に最高値となり その後急速に低下した また GPS で観測された山体膨張も 地震活動が低調となった 5 月中旬以降も継続し 噴火後に停滞しており C/S 比の変化はこれと類似しているようにみえる GPS で観測された変化は 地下深部のマグマだまりの膨張を捉えていると考えられており C/S 比の変化が地下深部の活動に対応している可能性がある こうした観測事実から C/S 比の推移は火山活動そのものの活発化あるいは静穏化の状況を反映していると考えられ C/S 比の観測が 短期的な火山活動予測に対して大変重要な情報を与える可能性があることを示唆している 火山活動の予測をするうえでは GPS 観測と火山ガス観測を併用していくことが肝要と考えられる 34

65 55 2013 年の活動 2015 年の活動 C/S ratio 45 35 25 0 50 100 150 200 経過日数 ( 日 ) 図 5 火山性地震が顕著に増加した日を起点とした C/S 比の時間変化 2013 年の活動では 1 月 11 日 2015 年の活動 では 4 月 25 日を起点とした 5.2. C/S 比の変化による火山活動の推移予測の可能性 2013 年および 2015 年の活動における継続的な火山ガス観測から C/S 比の変化が火山活動の消長と非常に良く対応することが明らかとなった まだ 2 回の結果だけではあるが ここでは C/S 比の変化から火山活動の推移予測が可能かどうか検討してみる まず 群発地震活動に先行して C/S 比の変化が現れるかどうかだが 2013 年の活動では 1 日ないしは数日程度先行して変化する可能性が指摘されている ( 代田 2013) 一方 2015 年の活動では火山性地震が増加する 1 日前の観測では変化がなく C/S 比の変化は ほぼ群発地震活動と同時期に始まると考えた方が良いだろう 厳密にどちらが先に始まるかを明らかにするには C/S 比の連続観測技術の開発 ( 大場ほか 2017) が鍵になる さらに 大場ほか (2015) によれば 火山ガス中の CO 2 /H 2 O 比やH 2 O のδ D( 水素安定同位体比 ) に群発地震活動よりも数ヶ月先行して変化が現れており これらの観測も火山活動活発化の事前予測に有効となる可能性がある 一方 火山活動が活発化した後の活動予測には C/S 比の観測が大いに役立つ可能性が高いと考えられる 火山活動の活発化に伴う代表的な指標は地震活動である が 2015 年の活動では 5 月中旬頃から地震活動が低調傾向になった後 再び 6 月 29 日に活発となり噴火に至った それに対して C/S 比の変化は地震活動が低調になった後も増加を続け 噴火後に急速に低下した このように C/S 比の変化は火山活動の消長と非常によく対応しており 火山活動が活発な状態が続いているのか それとも終息に向かっているのか といった今後の活動予測に貢献できるものと考えられる ただし C/S 比の変化を詳細にみると 2015 年 6 月 16 日にそれまで増加傾向であったものがわずかに低下し その後再び上昇に転じた 同様の変化は 2013 年の活動でも観測されており 火山活動が静穏になり C/S 比が低下傾向に転じた後に再び増加し その後一時的に火山性地震が多発することがあった このような観測結果を踏まえ 活発な活動期には観測頻度を高め 高い時間分解能で火山活動の盛衰を監視する必要がある 図 3より 2013 年と比較して 2015 年の方が C/S 比が増加する際の傾きが急であるようにみえる そこで 2013 年と 2015 年について活動初期の C/S 比の変化を比較するため 火山性地震が顕著に増加した日を起点とした C/S 比の時間変化を図 5に示した 本来であれば C/S 比が増加し始めた日を起点とすべきであるが 観測 35

間隔が 10 日から 1 ヶ月程度であり 増加開始時期を明確に特定することが困難であるため ここでは火山性地震が顕著に増加した日を起点とした C/S 比の変化は 地震活動の活発化とほぼ同時期と考えられるため 火山性地震が顕著に増加した日を起点とすることにほとんど問題はないと思われる 図 5から 活動の初期段階において 2015 年の方が C/S 比の増加速度が速いことがわかる これは 地震活動や地表面現象などの活動規模が 2013 年と比較して 2015 年の方が大きかったことに対応している可能性があり C/S 比の増加速度 ( 変化率 ) が活動規模を推測するうえでの指標になるかもしれず 今後のデータの積み重ねが必要である また図 5より 2013 年と 2015 年では C/S 比のピーク後の減少速度にも違いがみられ 2015 年の方が減少速度が速い すなわち 2013 年に対して 2015 年では 活発化初期の C/S 比の増加速度が速く ピーク後の減少速度も速いという現象がみられた 2015 年の方が減少速度が速い理由については明確にはわからないが 噴火に伴い火山ガスが急激に放出されたことなどが考えられる また 2013 年と 2015 年では活動規模が異なるのに対して C/S 比の最高値はほぼ同じであった もし この値が噴気域 ( あるいは噴気孔 ) 固有の値であったならば 今後の活動予測に役立ち 活動がピークとなる時期を予測できるかもしれない また このことは活動活発化のメカニズムを推定するうえでも重要な知見になるものと考えられる 以上のように 検知管という大変簡便な方法であっても 火山活動の推移予測に寄与できる可能性があることが示された また 検知管法にはその場で結果が出るという特長があり 迅速な防災対応にも貢献できるものと思われる 5.3. 活発化のメカニズムの推定にむけて火山活動の消長に応じてガス組成が変化することは現象としては捉えられたが そのメカニズムについてはまだ明確になっているとはいえないだろう 本研究では C/S 比の変化について報告したが 2015 年の活動では CO 2 /H 2 O 比やH 2 O のδ D など他の火山ガス成分にも変化が現れている ( 大場ほか 2015) こうした火山ガス成分の変化を説明するモデルとして シーリングゾーンの形成 発達 破壊という考え方がある (Fournier, 1999) これは マグマだまりから放出されているマグマ性ガスの通路が 明礬石や硬石膏などの二次鉱物の成長により自己閉塞 ( 目詰まり ) する現象が起こるとの考え方であり その領域がシーリングゾーンである マグ マを取り囲むシーリングゾーンの内側では目詰まりによって次第に圧力が上昇し 限界に達するとシーリングゾーンの一部が破壊されて急激にガスが浅部へ上昇する その結果 群発地震や水蒸気噴火の発生に至るのではないかと考えられている シーリングゾーン内の圧力が上昇すると CO 2 のマグマに対する溶解度が低いために CO 2 に富んだガス組成となり CO 2 /H 2 S 比やCO 2 /H 2 O 比が増加すると考えられる 大場 (2015) によれば 2015 年の活動に伴う火山ガス成分の変化はシーリングゾーンの発達と破壊により説明できる この考え方では マグマだまりへのより深部からの CO 2 濃度の高い新たなマグマ注入を必要としない 箱根火山では 群発地震の発生に先行して 地下深部における膨張の変化がこれまでに何度か観測されている この地下深部の膨張の原因を探ることが ガス組成変化のメカニズムを ひいては火山活動活発化のメカニズムを解明する鍵になると考えられる シーリングゾーンとは異なる考え方として 箱根火山において地下 10 km ぐらいに推定されているマグマだまりに より深部から新鮮なマグマが注入されたということも考えられる 新鮮なマグマが注入された場合 マグマに対する溶解度が低い CO 2 が脱ガスし CO 2 に富んだガス組成となるため CO 2 /H 2 S 比やCO 2 /H 2 O 比が増加する または CO 2 は地下 60 km 程度の深部から脱ガスするといわれているので (Giggenbach,1997) マグマそのものではなく マグマだまりよりも深部で脱ガスした CO 2 に富んだ流体が注入されたと考えることもできる 火山ガスの C/S 比の変化からは 上記のどちらの考え方でも説明が可能である さらに 両方の現象が起きている可能性ももちろんある 今後は GPS で観測された地殻変動 ( 山体膨張 ) などの地球物理観測における結果を考慮した統合的なモデルの構築が必要であると考えられる 6. まとめ新噴気域における継続的な火山ガス観測により 2013 年の活動に引き続き 2015 年の活動においても火山活動の消長に応じて火山ガス組成 (C/S 比 ) が変化する現象を捉えることができ 箱根火山における活動予測において火山ガス観測が非常に重要であることがより明瞭となった 本研究の成果をまとめると 以下のとおりである (1) 検知管法における測定誤差の検討から 簡便な方法ではあるものの十分に火山活動の状況を把握できると考えられる また 現地で結果が出るため 迅速 36

な防災対応にも貢献できるものと思われる ただし 測定日によってはバラツキが大きい時も見受けられたことから 活発化の初期段階においては観測頻度を高めたり 繰り返し回数を増やすなどの対応が必要である (2) C/S 比は 地震活動が低調となった後も増加傾向が継続しており 火山活動が終息に向かっておらず 活発な状態が続いていることに対応した変化を示した このことから 火山活動が活発化した後の活動予測 すなわち活発な状態が続いているのか それとも終息に向かっているのか といった今後の推移を予測するうえで非常に有効であると考えられる (3) 2013 年と 2015 年の比較により C/S 比の増加速度 ( 変化率 ) が活動規模を推測するうえでの指標になる可能性がある さらに C/S 比のピーク値が噴気域 ( あるいは噴気孔 ) 固有の値であったならば 活動のピークの時期を予測できる可能性もある 7. おわりに本報告により 火山ガス組成 (C/S 比 ) の変化が とくに火山活動が活発化した後の推移予測に大変有効である可能性が示された 火山活動の活発な状態が続いているのか それとも終息に向かっているのかを把握できれば 防災対策にも大いに貢献できるものと考えられる 今後は 火山活動の活発化に対応して火山ガス組成が変化するメカニズムを解明することが課題であり 地殻変動などの地球物理観測の結果を考慮した統合的なモデルの構築が必要であると考えられる 謝辞本研究の実施のために 以下の研究費を利用しました ここに記して深く感謝します 災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究 (2014 ~ 2016 年度 東京大学地震研究所 ) 地震 火山噴火の解明と予測に関する公募研究 (2017 年度 東京大学地震研究所 ) 科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究 15607310 (2015 ~ 2017 年度 日本学術振興会 ) 次世代火山研究 人材育成総合プロジェクト 先端的な火山観測技術の開発 (2016 ~ 2017 年度 文部科学省 ) 総合研究機構プロジェクト研究 レーザーによる大気拡散火山ガス観測法の開発と箱根火山モニタリング (2016 ~ 2017 年度 東海大学 ) 参考文献代田寧 棚田俊收 丹保俊哉 伊東博 原田昌武 萬年一剛 (2009)2001 年箱根群発地震活動に伴った傾斜変動と圧力源の時間変化, 火山,54, 223-234. 代田寧 板寺一洋 (2010)2001 年以後に箱根火山大涌谷北側斜面に現れた噴気中のガス組成等の時間変化, 温地研報告,42,49-56. 代田寧 (2013) 箱根火山において 2013 年 1 月から発生した群発地震活動に伴う噴気ガス組成の時間変化, 温地研報告,45,29-34. Fournier R.O. (1999) Hydrothermal processes related to movement of fluid from plastic into brittle rock in the magmatic-epithermal environment,econ. Geol.,94,1193-1212. Giggenbach W. F.(1997)The origin and evolution of fluids in magmatic-hydrothermal systems, Geochemistry of Hydrothermal Ore Deposits, John Wiley and Sons,737-796. 原田昌武 板寺一洋 本多亮 行竹洋平 道家涼介 (2015)2015 年箱根火山活動に伴う地震活動と地殻変動の特徴 ( 速報 ), 温地研報告,47,1-10. 大場武 代田寧 澤毅 平徳泰 撹上勇介 (2008) 箱根カルデラ中央火口丘大涌谷地熱地帯における火山ガス組成の時間変化, 温地研報告,40,1-10. Ohba T., Daita Y., Sawa T., Taira N., Kakuage Y. (2011) Coseismic changes in the chemical composition of volcanic gases from the Owakudani geothermal area on Hakone volcano, Japan, Bull Volcanol,73,457-469. 大場武 (2015) 化学で解き明かす火山噴火のメカニズム- 御嶽山, 箱根山に見る火山活動の実態 -, 化学,70(11),12-16. 大場武 谷口無我 高木健太 左合正和 代田寧 池谷康祐 角皆潤 (2015) 火山ガス組成から読み解く箱根山 2015 年火山活動, 日本火山学会 2015 年度秋季大会講演予稿集. 大場武 大庭憲二 山本泰直 森田博義 東出和総 (2017) パージ機能付ガスセンサーによる火山ガス連続観測の試み, 日本火山学会 2017 年度秋季大会講演予稿集. 温泉地学研究所 (2015)2015 年箱根山噴火の推移について,http://www.onken.odawara.kanagawa.jp/ files/hakone2015/hakone20151214.pdf (2017 年 12 月現在 ) 37

Ozawa T. (1968) Chemical analysis of volcanic gases: I. Chemical analysis of volcanic gases containing water vapor,hydrogen chloride,sulfur dioxide, hydrogen sulfide,carbon dioxide,etc, Geochem. Int.,5,939-947. 辻内和七郎 鈴木征志 粟屋徹 (2003) 箱根大涌谷で 2001( 平成 13) 年に発生した蒸気井の暴噴事故とその対策, 温地研観測だより,53,1-12. 38

第 16 回同位体科学会研究会東京工業大学大岡山キャンパス (2018/3/16) 箱根山火山ガス安定同位体比の変化と火山活動の関係 Correlation between the variations in stable isotope ratio of fumarolic gas and volcanic activity at Mt Hakone, Japan 1 大場武, 2 谷口無我, 1 西野佳奈, 1 沼波望, 3 代田寧, 4 鋤柄千穂, 5 伊藤昌稚, 5 角皆潤 1 東海大学理学部, 2 気象庁気象研, 3 神奈川県温泉地学研究所, 4 東京海洋大学船舶海洋オペレーションセンター, 5 名古屋大学環境学研究科 序 箱根山では 2001 年 6 月から 10 月にかけ, 群発地震が発生し, 大涌谷に掘削された蒸気井の蒸気圧力が上昇した. 同様に,2015 年 4 月末から群発地震が始まり, 蒸気井の蒸気圧力が上昇し,2015 年 6 月 30 日に小規模な水蒸気噴火が発生した. 箱根山では, 群発地震とそれに伴う蒸気井の蒸気圧力上昇が再発する可能性がある. 火山ガスの化学組成, 安定同位体比は, 火山活動に対応し変化している. 火山ガスの観測により群発地震の予知や, 終息時期の推定が可能となれば, 火山防災に大きく貢献する. 本研究では,2013 年 5 月から現在までの火山ガスの水素酸素同位体比および化学組成の変動について解釈を試みる. 火山ガスの採取 箱根カルデラの中央火口丘神山の北山麓に分布する大涌谷と上湯場の 2 箇所で, 自然噴気を,2013 年 5 月から毎月 1 回の頻度で繰り返し, 採取 分析した. 上湯場の噴気は大涌谷の噴気から北方へ約 500m 離れている. 上湯場は 2001 年の火山活動以降に出現した地熱地帯で, 既存の樹木が枯死している. 両者の噴気の出口温度は 96 前後であり, 水の沸点に近い. 結果 観測を行った二つの噴気では,2015 年 4 月末から始まった群発地震に伴い,CO2/H2S 比や CO2/CH4 比に顕著な上昇が観測された. この群発地震の2ヶ月ほど前から大涌谷の噴気に含まれる H2O の同位体比 (δd,δ 18 O) が低下をはじめ, 群発地震開始直後に同位体比は元の値に復帰した. このような変化は上湯場の噴気には観察されなかった. この群発地震の 5~7 ヶ月ほど前に噴気に含まれる H2 のδD が通常のレベルから低下した. この変化は, 大涌谷と上湯場両方の噴気で生じていた.H2O と H2 の間で同位体交換反応平衡を仮定した場合の見かけ平衡温度 (AET) を計算すると, 両噴気で群発地震前は,100 前後であったが, 群発地震後は 120 程度まで上昇した. 群発地震の 5~7 ヶ月前に H2 のδD が低下した際の AET は 70 まで低下した. 考察 H2 のδD 低下が2つの噴気で発生し,H2O の同位体比低下が大涌谷の噴気だけでおきているので, 前者の変化は後者の変化に比べ, より深部で発生していると考えられる.H2O の同位体比低下が起きた際のδD とδ 18 O の相関から, 低下の原因は水蒸気の部分的な凝縮であると推定される.H2 のδ D 低下の際の AET が噴気の出口温度よりも低いことから, この変化は温度低下に伴う H2O との同位体交換平衡では説明できない. 噴気に含まれる CO2 は主にマグマ起源成分であり,H2S や CH4 は熱水系成分と考えられる. よって CO2/H2S 比や CO2/CH4 比の上昇は, 群発地震と同期してマグマ起源成分が増加したことを示している.H2 については, マグマ起源成分と熱水系成分の両方に含まれている可能性があり, 前者のδD が後者のδD よりも高ければ, 群発地震の数カ月前に発生したδD の低下はマグマ起源成分の寄与率低下として解釈できる. 謝辞 本研究は東京大学地震研究所共同利用研究 災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画 の研究費を部分的に利用し実施されました. ここに記して深く感謝します.