石炭採掘技術 石炭基礎講座平成 23 年 2 月 24 日 ( 財 ) 石炭エネルギーセンター上原正文 1 Japan Coal Energy Center
目次 2 Japan Coal Energy Center
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日本の石炭生産量 輸入量 4 Japan Coal Energy Center
日本の石炭鉱業の生産量の推移 生産量 : 十万トン災害率 : 人 / 百万人当り能率 : トン / 人 / 月炭鉱数 図 2-1. 日本石炭鉱業の生産量等の推移 Fig1 常用実働者数 : 千人 1,200 250 1,000 800 600 400 200 常用実働者数 炭鉱数 災害率 7 3 / 1 0 第一次石油ショック 7 9 / 1 2 第ニ次石油ショック 生産量 能率 200 150 100 50 0 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 出所 : 災害率は鉱山保安年報 その他はJCOAL 石炭業界のあゆみ 西暦 5 FMV28-06 Japan Coal Energy Center 0
世界の石炭の生産量消費量 6
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採掘の方法 鉱 石炭を掘っている場所を炭鉱といいます 浅いところにある 露天採掘 ( 露天掘り ) 深いところにある 坑内採掘 ( 坑内掘り )
採掘法の選択 露天採掘限界 地表 炭層 坑内採掘 ハイウォールマイニング 露天採掘 炭層の賦存状況 経済性により採用する採掘法を判断する 9
坑内採掘 ( 坑内掘り )
露天掘り ( 露天採掘 ) トラック & ショベル ドラッグライン
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主要な閉山炭鉱と稼働中の炭鉱
三池炭鉱 ( 坑内採掘炭鉱 ) 14 福岡県大牟田市 1469 年農夫が燃える石発見明治 6 年官営となる明治 9 年七浦斜坑着手明治 18 年勝立立坑着手明治 22 年三井家の経営になる明治 44 年三井鉱山設立大正 7 年四山立坑着手昭和 12 年三川斜坑着手昭和 24 年初島立坑着手昭和 44 年三池島立坑着手昭和 52 年有明炭鉱合併昭和 62 年第一鉱 第 2 鉱平成元年三池鉱平成 9 年閉山 Japan Coal Energy Center
三池炭鉱の位置図三池炭鉱位置図
三池炭鉱の地質断面図 三池炭鉱地質断面図
三池炭鉱坑内図 ( 立体 ) 17 Japan Coal Energy Center
三池炭鉱坑内図 ( 平面 ) 18 Japan Coal Energy Center
坑口と立坑 有明鉱 万田坑 三池島 四山鉱 旧四山鉱初島初島
坑内設備機器 アーチ枠坑道 トロリー坑内電車 坑内ポンプ座 石炭列車
長壁式採炭払
坑内採掘イメージ 地下にある石炭に向けて縦 横 斜め方向にトンネルのような穴 ( 坑道 ) を空けて 石炭を掘り出す ( 深い所では深さ1000m 以上!) 石炭
坑内採掘 ( 長壁式採炭払 ) 2km 250m 石炭
PORTALS LW No.1 SHAFT No.1 D/C LW No.2 LW No.3 LW No.4 炭鉱採掘計画 ( 豪州 ) Ulan No.3 Underground ROM STOCKPILE 5003 5004 5002 5001 PORTAL DRIFT LW "A" LW "B" LW No.32 LW No.31 LW No.30 LW No.29 LW No.28 LW No.27 LW No.26 LW No.25 LW No.24 LW No.23 LW No.22 LW No.21 LW No.20B LW No.20A LW No.19 LW No.18B LW No.18A LW No.17 LW No.16 LW No.15 LW No.14 LW No.13 LW No.12 LW No.11 LW No.10 LW No.9 LW No.8 LW No.7 LW No.6 LW No.5 LW No.R2 LW No.R3 No.2 U/C FAN SHAFT 5009 5008 FUTURE CONVEYOR 5007 5006 EXISTING CONVEYORS 5005 Ulan No.2 Underground Outbye Roadways LW No.R4 LW No.R5 LW No.R6 LW No.R7 LW No.R8 LW No.R9 LW No.R10 LW No.R11 LW No.33 LW No.R1
高出力採炭機 ドラムカッター ドラムカッター ホーベル
採炭機械 ドラムカッター ホーベル
採炭状況 ( 払跡 )
採炭切羽 天井不良個所
自走枠の種類
ユーラン炭鉱 ( 豪州 ) 新設備
坑内採掘
鉄柱 カッペ払 (AIC 炭鉱 ) 坑口 払 インドネシア AIC 炭鉱
急傾斜採炭
厚層採炭 (LTCC)
掘進切羽
掘進規格坑道坑道規格
ロードヘッダー (Road Header)
コンティニアスマイナーコンティニアスマイナー
坑道維持ーロックボルト
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炭鉱災害 ガス爆発 炭じん爆発石炭中のメタンガスや石炭の粉じんが火花などにより爆発する 一度に十数人以上 数百人の被害が出ることもある 落盤坑道の天井や横の壁が落下する 一回の事故による被害者は数人程度であるが 対策をさぼると毎日のように事故が起こる 出水地下には意外に多くの水がある 何かの拍子で水が大量に流れ出てくることがある 自然発火石炭が空気に触れると 空気中の酸素と少しずつ反応して熱をもつ これが進空気中れが進むとついには発火する ガス突出 山はね ( 岩石や石炭の突出 ) 地下深い場所は圧力が高く 圧力が集中した場所ができると何かの拍子にガスや岩石が突然飛び出してくる 中国では数千人 ウクライナやインドでは 100 人程度 アメリカでも数十人が毎年事故の犠牲になっている
日本での炭鉱重大災害
炭塵爆発 三川爆発
炭塵爆発試験
鉱山事業の管理機構 < 中央 > 資源エネルギー 資源 燃料部 庁 鉱業課 石炭課 経済産業省 (METI) 原子力安全 保安院 鉱業法 鉱山保安課鉱山保安監督部 < 地方 > 鉱山保安監督部 鉱山保安法 経済産業局 環境資源部
鉱山保安管理機構 ( 中央 ) 原子力安全 保安院 中央鉱山保安協議会 鉱山保安試験審査会分科会 ) 原子力安全 保安院 ( 地方 ) 鉱山保安監督部 鉱務監督官 許可 命令 炭鉱会社 経済産業研修所 Local Mine Safety Council 検査 鉱務監督官研修 保安技術職員研修
炭鉱での保安管理機構 鉱業権者 保安委員会 保安統括者 保安管理 通常炭鉱長 保安監督員 保安監督員補佐員 Technical Safety Personal 保安技術管理者副保安技術管理者係員 有資格者 保安技術管理 全体 又は一部の保安技術管理 坑外係員採鉱係員坑外機械係員採鉱技術係員発破係員 指定鉱山労働者
重大災害撲滅の取り組み 自主保安体制への移行 : 保安理念の転換 保安技術発展のための長期的な共通政策の指導 災害から学ぶ : 徹底した類似災害の撲滅 海外への技術移転ばかりではなく 海外との共同研究開発の促進
効果的な保安活動 視差呼称注意喚起のために仕事を始める前に指でさしながら保安用語を口に出す ワンポイントアドバイス毎日作業員へ安全指示を出す 安全啓蒙 1 週間に2-3 回作業員へ保安啓蒙の話を実施する 保安運動 始めに保安運動期間が決められる 通常は1 週間 1ヶ月 保安運動期間は保安点検スローガンが示される たとえば 落盤災害防止など 保安点検管理者クラスが点検チームを組んで坑内を決定された日 ( 保安日と呼ぶ ) 点検 する 点検チームは不安全行為や状況を発見する チームの指示によって不安全行為や状況は即座に改善される 危険予知訓練危険予知訓練が じっしされる 退避訓練退避ルートが確認され退避訓練が実施される 5 段階問題解決法坑内で発生した問題は 5 段階の解決方法によって解決される
災害を減らすための具体的対策 具体的対策 (1) 坑内骨格構造の改革 整備 (2) 保安専用機器 工事の導入 i) 国庫補助 2/3/ ii) 集中監視装置他 :50 件 (3) 重大災害に係る研究開発 成果の普及 i) 国の委託事業として推進 (100% 国庫負担 ) ii) ガス突出 ガス爆発 自然発火 (4) 教育 訓練機関の設置 i) 鉱業労働災害防止協会の設立 : 教育 啓蒙普及 ii) 鉱山保安センターの設立 : 救護隊訓練他
日本での災害率の推移 1000 800 100 Accident 万人当たりの負傷率 Rate per million workers Fatalities 死亡 Inductive Radio 坑内無線導入 Communication System 600 Mine 集中監視導入 Monitoring System 400 CO Monitoring for Spontaneous 自然発火監視 Combustion 200 Computer コンピュータ導入 System 0 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000
ベルトコンベヤ監視 制御技術 坑内監視制御室 映像 音 温度 臭気の自動観測 ベルトコンベヤ監視ロボットト
坑道支保技術 ( ロックボルト支保 ) データ伝送型天盤変位計 ボルト支保坑道 ボルト孔穿孔時の機械量計測による天盤状況の把握技術 穿孔 穿孔
ガス抜き技術 ガス抜きボーリングガス抜き孔 ガス抜き監視センサ類 ガス抜き監視用コンピュータ
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露天採掘 地上から掘っていく いらない土 岩石をどけて石炭を掘り出す 石炭
露天採掘
露天採掘炭鉱 ダンプトラック ショベル 石炭 約 15km 1.5km オーストラリア NSW 州 Mt. Owen 炭鉱
ドラッグライン ドラッグライン バケット 60m 3 重さ 4,000 トン価格 40 億円以上 100m くらい
ドラッグライン
トラック & ショベル ショベル ダンプトラック ( 約 180 トン )
世界最大級トラック LIEBHERR T282B(360 トン ) 4m 7.8m 7.4m 15.3m
露天採掘
発破 (Blasting)
発破
Bucket Wheel Excavator(BWE) BWE ベルトコンベア 14 バケット幅 1500mm 1バケット 800l 5.5 m/s 1300 bcm/h の能力 1300 bcm/h
Tanjung Enim 炭鉱
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オーガマイニング (Auger Mining )
オーガマイニング (Auger Mining )
Continuous Highwall Mining (CHM)
Continuous Highwall Mining (CHM)
Punch Longwall Mining
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環境対策 現在 東南アジア地域では炭鉱開発に伴って 貴重な森林資源の減少 酸性物質の発生による水質 大気汚染等の環境問題が顕在化しており 将来的には既存炭鉱の安定操業や新規石炭開発への投資にも支障を及ぼすことも懸念されている
コア評価 植物栽培 酸性水 植林 2 年後 植林 8 年後 77 水質調査 Japan Coal Energy Center
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炭鉱の現場から学んだこと 炭鉱の仕事に不可能はない 絶対あきらめない 真実は一つ ただ 正解は多くある 自然は甘くない 計算通りに行かない 失敗から学ぶ 経験の重要性 思いやりの心 ( 人の痛みが判る ) 団結力のすさまじさ 一つのことを続ける価値 仕事の工夫 改善 複数の対応策 安全力 最悪を考える 次への対応 危機管理 仕事は人 確認の重要性 79 Japan Coal Energy Center
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まとめ 石炭は今後も必要である 石炭は安全に効率的に採掘すべき ただ それが可能な鉱山技術者の不足 技術なくして石炭輸入できない 世間にもっと石炭について知ってもらう てもらう 苦労する時が知識 経験を吸収している時 積極的に前向きに仕事に取り組む 失敗は勉強する良い機会 メリハリをつけて仕事する 81 Japan Coal Energy Center