ごあいさつ 富 山 大 学 人 文 学 部 日 本 語 学 研 究 室 中 井 精 一 ここ 数 年 千 葉 県 佐 原 ( 現 香 取 ) 市 をはじめ 三 重 県 上 野 ( 現 伊 賀 ) 市 奈 良 県 高 取 町 高 知 県 高 知 市 熊 本 県 菊 池 市 といった 日 本 各 地 にある 伝 統 的 な 地 方 都 市 の 言 語 研 究 に 取 り 組 んできた 未 だ 十 分 な 研 究 成 果 をあげるに いたっていないが 人 やモノが 行 き 交 い 多 様 で 複 雑 な 社 会 構 造 をもつ 都 市 を 対 象 としたことばの 研 究 に 大 きな 魅 力 を 感 じている なかでも 三 重 県 上 野 ( 現 伊 賀 ) 市 は 昭 和 27 年 度 に 文 部 省 科 学 研 究 費 補 助 金 を 受 けて 国 立 国 語 研 究 所 が 調 査 した 近 畿 中 央 部 方 言 域 にある 伝 統 的 地 方 都 市 である ここには 高 度 経 済 成 長 以 前 に 実 施 された 第 1 次 調 査 の データが 存 在 するとともに 日 本 の 政 治 文 化 の 中 心 であった 近 畿 地 方 中 央 部 と 一 体 となって 発 展 してきた 地 方 都 市 であり 中 心 地 から 地 域 社 会 への 方 言 伝 播 とそのプロセスを 都 市 がもつ 中 心 性 および 拠 点 性 から 考 察 するに はもっともふさわしい 調 査 エリアと 考 える 研 究 プロジェクトは 真 田 信 治 先 生 ( 現 奈 良 大 学 ) や 大 西 拓 一 郎 さん 朝 日 祥 之 さん 阿 部 貴 人 さんら 国 立 国 語 研 究 所 の 関 係 者 に 加 え 岸 江 信 介 さん( 徳 島 大 学 ) ダニエル ロングさん( 首 都 大 学 東 京 ) 松 丸 真 大 さん( 滋 賀 大 学 ) 高 木 千 惠 さん( 大 阪 大 学 ) 鳥 谷 善 史 さん( 天 理 大 学 ) 張 守 祥 さん( 中 国 ジャムス 大 学 )といった 気 鋭 のフィールド 言 語 学 者 が 参 加 している また 高 岡 弘 幸 さん( 福 岡 大 学 ) 岡 田 浩 樹 さん( 神 戸 大 学 ) 島 村 恭 則 さん( 関 西 学 院 大 学 )といった 国 内 外 で 数 々のフィールドワーク 方 言 調 査 を 前 にして( 伊 賀 市 上 野 西 部 地 区 にて) をこなし 実 力 派 で 知 られる 文 化 人 類 学 者 や 乾 誠 二 さん( 天 理 参 考 館 ) 加 田 芳 英 ( 鉄 道 研 究 家 ) 平 松 豊 作 さん(JR 西 日 本 )らの 都 市 交 通 の 研 究 者 が 加 わり 閉 鎖 的 な 従 来 の 日 本 語 研 究 にはなかった 多 様 で 有 機 的 なメンバー 構 成 となっている 調 査 では 伊 賀 市 上 野 地 区 老 人 会 連 合 会 の 稲 田 能 文 会 長 ならびに 各 地 区 老 人 会 長 の 方 々 また 八 尾 光 祐 会 長 は じめ 今 高 一 三 会 長 などの 各 自 治 協 議 会 の 会 長 ならびに 各 公 民 館 の 方 々に 多 大 なる 支 援 を 受 け プロジェクトメン バーのほか 和 田 亜 香 里 さん 松 ヶ 平 なつみさん 上 野 綾 夏 さん 井 端 麻 衣 さん 永 田 泰 代 さん 加 藤 真 実 さん 渡 利 遥 子 さんら 研 究 室 の 4 年 生 が 中 心 となって 順 調 に 進 行 している 夏 休 みで 静 かになった 研 究 室 で この 一 年 あまりの 調 査 を 振 り 返 り 御 世 話 になった 多 くの 方 々に 深 く 感 謝 す るとともに 収 集 した 膨 大 なデータを 前 に 腕 がなっている 1
関 西 調 査 合 宿 を 振 り 返 って(3 年 田 畠 葵 子 ) 昨 年 の 春 から 私 たちの 研 究 室 は 関 西 での 調 査 に 重 点 を 置 くようになりました 晩 秋 11 月 末 から 12 月 上 旬 にか けての 調 査 では 三 重 県 伊 賀 市 の 中 心 部 周 辺 部 奈 良 県 の 高 取 町 でおこない その 土 地 にお 住 まいの 方 々にお 越 しいただき 方 言 や 歴 史 普 段 の 生 活 などについてお 話 を 伺 いました 伊 賀 上 野 の 調 査 では 質 問 項 目 が 多 いため 夏 に 協 力 いただいた 話 者 の 方 にも 引 き 続 き 行 ったのですが 皆 さん 快 く 引 き 受 けてくださいました 約 4 ヶ 月 ぶりお 会 いし 元 気 なお 姿 を 見 ることができて 嬉 しい 気 持 ちと 再 び 調 査 にご 協 力 いただける 方 々の 優 しさに 感 謝 の 気 持 ちでいっぱいでした 公 民 館 での 調 査 の 他 初 めて 伊 賀 上 野 城 にも 行 きました この 日 の 天 気 は 快 晴 で 澄 んだ 青 空 に 白 いお 城 が 映 えて 美 しい 眺 めでした 伊 賀 上 野 城 を 囲 む 堀 は 想 像 していたよりもはるかに 高 く 堀 の 上 からは 伊 賀 上 野 の 町 全 体 を 見 渡 すことができ 広 大 で 迫 力 がある 景 色 でした 伊 賀 上 野 城 を 出 ると そのまま 本 町 通 りへ 行 きました そこには 話 者 の 方 々のお 話 に もあった 老 舗 の 和 菓 子 屋 さんやお 漬 物 屋 さんなどが 建 ち 並 び 昔 ながら の 街 の 懐 かしい 空 気 を 感 じることができました ( 伊 賀 上 野 城 ) 奈 良 県 高 取 町 での 調 査 は やすらぎ 荘 と 夢 創 館 で 行 いました 午 後 に 訪 れた 夢 創 館 には 可 愛 らしい 民 芸 品 のお 土 産 や 高 取 城 に 関 する 資 料 などが 置 いてある 他 手 書 きの 高 取 城 下 町 マップなどもあ り 初 めて 高 取 を 訪 れた 人 や 地 元 の 子 どもたちにも 親 しみやすい 工 夫 がされているのだなと 思 いました ここには くすり 資 料 館 も あり 薬 を 作 る 工 程 の 模 型 などを 見 ることができました 橿 原 市 明 日 香 村 御 所 市 大 淀 町 ( 高 取 町 の 位 置 ) ( 高 取 での 調 査 風 景 ) いろいろな 土 地 に 行 き いろいろな 人 に 出 会 い 合 宿 の 間 は 一 日 一 日 の 過 ぎてゆく 時 間 がとても 濃 いように 思 います 私 は 普 段 別 の 土 地 に 行 くことはほとんどありません しかし 新 しい 土 地 に 行 き 自 分 の 目 で 見 て 体 験 して 物 事 を 知 ることも 大 切 な のだということを 改 めて 感 じました 前 回 は 初 めての 合 宿 という こともあり 右 も 左 も 分 からず 先 輩 がされていることを 見 てい るだけということが 多 かったのですが 今 回 は 一 人 で 行 う 調 査 も 増 え 準 備 の 段 階 から 先 輩 方 のお 手 伝 いをしたりと わずかなが ら 自 分 も 研 究 室 の 一 員 として 活 動 が 出 来 たように 思 います そ れでも まだまだ 未 熟 な 部 分 が 多 く 失 敗 ばかりです 今 後 研 究 室 での 活 動 がますます 増 えていくことになり ます その 中 で 今 の 自 分 を 少 しでも 成 長 させられるように 頑 張 っていきたいです 2
三 重 県 伊 賀 上 野 調 査 で 学 んだこと(4 年 永 田 泰 代 ) 2010 年 の 夏 私 が 参 加 した 三 重 県 伊 賀 上 野 調 査 は 諏 訪 地 区 から 始 まりました 夏 の 青 空 に 浮 かぶ 大 きな 入 道 雲 と 山 の 深 緑 は 絵 画 のように 綺 麗 でした 伊 賀 上 野 は 大 らかで 心 優 しい 人 達 ばかりで まるで 祖 父 母 の もとを 訪 れた 時 のような 親 しみを 感 じました 調 査 中 は 話 者 の 方 は 疲 れていないか 話 をどのように 広 げていくかなど 気 を 配 ることは 少 なくありません 1 回 約 2 時 間 の 調 査 を 話 者 の 方 が 楽 しんで 参 加 していただけ ると とても 嬉 しいです 地 元 のことを 話 しているときの 話 者 の 方 は 明 るく 笑 顔 で 帰 っていかれるのを 見 ると 伊 賀 上 野 の 調 査 に 来 ることができて 良 かったと 思 います 調 査 に 行 くたびに 話 者 の 方 とお 話 しすることがもっと 好 きに なっていきました ( 諏 訪 地 区 調 査 風 景 ) 話 者 の 方 に 聞 きたいことを 伝 えるためには どのような 質 問 すれ ばよいのか また 話 者 の 方 に 対 して 失 礼 が 無 いよう 調 査 前 には 伊 賀 上 野 について 調 べました 調 べていくうちに 上 野 市 史 に 小 盆 地 宇 宙 と 表 現 されている 伊 賀 上 野 に 興 味 をもちました 実 際 に 伊 賀 上 野 の 町 を 歩 き 調 査 する 回 数 が 増 えるほど 伊 賀 上 野 についての 知 識 が 深 まり 自 分 の 調 査 に 自 信 がもてるようになれました これから 今 までの 調 査 のデータをまとめ 分 析 し 多 方 面 から 伊 賀 上 野 を 見 て さらに 考 えを 深 めていきたいです ( 伊 賀 市 西 部 地 区 の 町 並 み) 諏 訪 地 区 は 私 が 連 絡 調 整 を 担 当 しました 調 査 が 成 功 するかどうか 心 配 で 調 査 の 当 日 まで 緊 張 し 続 けていま した 地 区 老 人 会 会 長 の 山 本 さんには 本 当 にお 世 話 になりました また 調 査 にご 協 力 いただいた 方 々のおかげ で 勉 強 することができ 人 として 成 長 することができました 感 謝 の 気 持 ちを 忘 れず 今 後 も 勉 学 に 励 みたい と 思 います 3
行 く 人 来 る 人 ここでは 2011 年 4 月 から 新 たに 加 わった 2 年 生 院 生 および 3 月 にゼ ミを 卒 業 修 了 した 学 生 のコメントを 紹 介 します 地 域 特 有 の 方 言 風 景 など を 楽 しみたいと 思 います 笹 野 真 衣 ( 愛 知 県 豊 川 市 出 身 ) 色 々な 地 域 の 方 言 を 研 究 する 中 で 改 めて 自 分 の 故 郷 の 方 言 の 魅 力 に 気 付 きたいです 中 橋 ゆきえ ( 富 山 県 富 山 市 出 身 ) いろんな 地 域 の 方 言 にふれ ることで 自 分 の 地 域 の 方 言 についてさらに 知 識 を 深 め たいと 思 います 犬 原 麻 優 ( 石 川 県 かほく 市 出 身 ) 先 輩 たちからいろい ろなことを 吸 収 して 充 実 した 年 にしたい です 佐 藤 ゆき ( 新 潟 県 上 越 市 出 身 ) 日 本 語 らしい 日 本 語 を 学 びた いと 考 えています 李 暁 静 ハ ル ( 中 国 哈 爾 ピン 浜 出 身 ) 4
卒 業 生 の 高 木 麻 衣 です 皆 様 お 元 気 でいらっしゃいますでしょう か 中 井 研 究 室 での 3 年 間 で 全 国 各 地 大 変 多 くの 方 々にお 世 話 に なり 勉 強 させて 頂 きました これまで 私 は 22 年 間 地 元 でしか 過 ごした 事 がなかった 為 各 地 で 伺 う 様 々なお 話 が 本 当 に 新 鮮 でし た また 研 究 室 での 活 動 を 通 して 其 々の 土 地 の 良 い 所 を 知 る 事 ができ 是 非 もう 一 度 プライベートでも 訪 ねたいと 思 うように なりました このような 素 晴 らしい 経 験 をする 事 ができ 幸 せな 3 年 間 だったと 思 います 一 方 で 私 が 在 籍 していた 時 は 同 学 年 の 学 生 がおらず 心 細 くもありました しかし 尊 敬 する 多 くの 先 輩 方 やかわいい 後 輩 の 皆 さんのおかげで 辛 い 時 も 乗 り 越 えられ たと 思 います ご 迷 惑 をおかけした 事 も 多 々あったかと 思 います が この 場 をお 借 りしまして 中 井 先 生 を 始 めとして 先 輩 方 や 後 輩 の 皆 さん お 世 話 になった 皆 様 に 心 より 感 謝 申 し 上 げます これからは 社 会 人 として この 研 究 室 で 学 んだ 事 を 生 かしながら 成 長 していきたいと 思 います ( 高 木 麻 衣 ) 月 日 が 経 つのは 早 いもので 気 がつけば 中 井 研 究 室 に 5 年 間 も 在 籍 しておりました 全 てのことがいつの 間 にか 過 ぎ 去 っていっ たような 感 覚 ですが 過 去 を 振 り 返 って 入 学 前 の 自 分 自 身 と 比 べ ると レポートや 調 査 合 宿 などを 通 して 学 生 としてだけ ではなく 1 人 の 人 間 として 先 生 や 先 輩 に 育 ててもらったのだ と 今 では 思 うことができます 先 生 や 先 輩 だけではなく 後 輩 にも 色 々と 教 えられることもありました 後 輩 達 にはその 分 お 返 しできたでしょうか 現 在 その 後 輩 達 が 取 り 組 んでいる 課 題 や 研 究 室 での 調 査 などを 見 ていると 自 分 が 学 部 生 の 頃 よりも 大 変 になっていると 感 じます とにかく 全 てをこなすことだけでも 容 易 ではないと 思 います 正 直 愚 痴 をこぼしたくなるでしょう で すが それらは 全 て 皆 さんの 血 肉 となって 皆 さんの 人 間 と しての 成 長 を 促 しているはずです 卒 業 式 を 迎 えたら 数 分 でもい いので 振 り 返 ってみてください 皆 さんも 私 と 同 じように 感 じる はずです ですので 今 はつらいかもしれませんが がんばって 乗 り 切 ってください ( 笹 原 佑 宣 ) 5
厳 しい 暑 さもようやく 和 らいできましたが 皆 様 いかがお 過 ごしでしょうか 私 たちの 研 究 室 では 3 月 に 2 名 の 先 輩 方 が 巣 立 っていかれました そして 4 月 からは 4 年 生 7 名 3 年 生 5 名 に 大 学 院 1 年 生 1 名 2 年 生 4 名 を 迎 え 計 17 名 の 新 体 制 がスタートしました それぞれの 立 場 で 今 できることを 精 一 杯 にし 悔 いのない 学 生 生 活 を 送 ることのできるよう 努 力 しております 昨 年 度 は 三 重 県 伊 賀 市 ( 西 部 地 区 南 部 地 区 東 部 地 区 諏 訪 地 区 中 瀬 地 区 花 之 木 地 区 小 田 地 区 長 田 地 区 友 生 地 区 新 居 地 区 三 田 地 区 府 中 地 区 猪 田 地 区 依 那 古 地 区 比 自 岐 地 区 神 戸 地 区 古 山 地 区 花 垣 地 区 ( 順 不 同 )) 奈 良 県 高 市 郡 高 取 町 千 葉 県 香 取 市 佐 原 地 区 石 川 県 加 賀 市 大 聖 寺 地 区 富 山 県 高 岡 市 金 屋 町 にて 調 査 をさせていただきました 多 くの 方 々にご 協 力 をいただき 一 同 感 謝 の 気 持 ちでいっぱいです 今 年 度 は 三 重 県 伊 賀 市 での 調 査 を 完 了 させ その 調 査 をもとに 研 究 を 進 めてまいります どのような 結 果 が 得 られるの かとても 楽 しみにしています 今 年 度 もたくさんの 方 のご 協 力 を 賜 り 多 くのことを 学 び 精 進 してまいりたい と 思 います 至 らない 点 も 多 いと 思 いますが 学 生 一 同 努 力 して 参 りますので 今 後 とも 温 かいご 支 援 賜 りますよ うお 願 い 申 し 上 げます (4 年 渡 利 遥 子 ) (2011 年 度 中 井 研 究 室 のメンバー) 富 山 大 学 人 文 学 部 中 井 研 究 室 ニューズレター(vol.5) 2011 年 9 月 発 行 連 絡 先 富 山 大 学 五 福 キャンパス 930-8555 富 山 県 富 山 市 五 福 3190 Tel (076)-445-6204 Fax (076)-445-6204 E-mail nakai@hmt.u-toyama.ac.jp (2006 年 10 月 より) ご 意 見 ご 感 想 ございましたら 下 記 のアドレスまでどうぞ nakaiken@hotmail.co.jp 中 井 研 究 室 HP( 日 本 語 学 中 井 研 究 室 でご 検 索 下 さい) ( 授 業 風 景 ) http://www.hmt.u-toyama.ac.jp/nihon/hp/hp%20top/framepage1.htm 6