O 10 No.774 C T O B E R 2 0 1 3
2 October 2013 2 b 1 t r O 2
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下町紅葉 文 三井 浩 私の所属する日光カンツリー倶楽部は 紅 葉の名所だ 寒暖の差が激しくなる秋は コー スのあちこちが紅葉できれいに染まる どういう経緯だったかは忘れたが まだ入 会したての 年以上も前 キャディさんが こ 苗を手渡してくれたことがあった センチ れ庭に植えると育つから といって 紅葉の 15 にしても ２階の窓からは 隣の家の壁し か見えない 開けて外を見ることはほとんど ない でも ある日 盛りのついた猫がうる さく鳴くので 伱間の路地を見下ろした あ あれ あの紅葉じゃないの くらいだったろうか 枝は細く 付いている 言えない まったく気づかなかったが 裏の 当たるのだろうが いい環境とはお世辞にも 特徴のある葉が 見える ずいぶん大きく 育ち 枝を懸命に張っている 陽はなんとか 葉も頼りなかった いきなり紅葉の赤ちゃん 家が改築する前 母がそこに植えたのだと思 う なぜあんな狭い場所に植木を卸したのか 母にいま聞いても もう憶えていないだろう 誰に見られるわけでもない場所で 紅葉は 成長し いまでは２ｍ 近い丈になっている 夏から秋 路地は蚊の銀座のようになるので なかなかそばへは近寄れないが 窓から元気 上の植木は 母が世話をしていた 小さな紅 る屋上の植木たちに較べ 自分の命を自ら守 力強く たくましい プランターで育ててい な姿を確認することはできる 濃い緑の葉は 葉に気がついたのだろう 出所を訪ねるので り生き抜いてきた 野性を感じる かっただろう 広々とした青空の下で 育ち す こ と に な ろ う と は ま っ た く 想 像 も し な 日光のゴルフ場で 芽を出したとき まさ か東京下町のゴミゴミとした路地に根を下ろ それから 何年がたったろう 屋上からそ の紅葉が姿を消した 気にはなっていたもの たかったに違いない とすまない気にもなる 年ほど前に建 地 が 家と家の間にできている のは そのせいかもしれない 眺めるたびに 元気か と声をかけたくなる だが 路地の紅葉は ともに成長しながら 私の記憶を刻んでくれている 家族のように の 理由を母に尋ねるのも気が引け そうこ てきた 私の家も お隣も 家と家がひしめきあって建ち並ぶ下町 た だ 最近では昔より 境界線 がはっきりし うしているうちに すっかり忘れてしまった そう日光のなのね と目を輝かせていた 日光のゴルフ場からの戴き物だよ と話すと 翌朝 屋上に空いているプランターを探し とりあえずその苗を植えておいた 当時 屋 くるまれた苗木をありがたく持ち帰った 話をするのもどうかと思い スーパーの袋に い でも好意でくれたキャディさんにそんな ただ 私の家は東京の下町 猫の額ほどの 庭しかなく おまけにまったく陽が当たらな を渡され 少し戸惑ったことを憶えている 15 て替えたので 人がやっと歩けるくらいの 路 20 Mの雑感雑記⑯ みつい ひろし コピーライター 墨田区向島生まれ 広告代理店を経て 地元に三井広告事 務所を設立 麒麟淡麗 PRGR モスバーガーなど仕事は いろいろ 休日は 東武電車で日光カンツリー倶楽部へ行 くか 隅田公園でジョギングを楽しむ ホームページでブ ログ公開中 8 October 2013
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