記 者 発 表(予 定)



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系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

Microsoft Word - 【変更済】プレスリリース要旨_飯島・関谷H29_R6.docx

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

平成14年度研究報告

補足 : 妊娠 21 週までの分娩は 流産 と呼び 救命は不可能です 妊娠 22 週 36 週までの分娩は 早産 となりますが 特に妊娠 26 週まで の早産では 赤ちゃんの未熟性が強く 注意を要します 2. 診断 どうなったら TTTS か? (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

2. 診断 どうなったら TTTS か? 以下の基準を満たすと TTTS と診断します (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊水過少が同時に存在すること a) 羊水過多 :( 尿が多すぎる ) b) 羊水過少 :( 尿が作られない ) 参考 ; 重症度分類 (Quintero 分類

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

ヒト胎盤における

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系統看護学講座 クイックリファレンス 2013年7月作成

Microsoft Word - 01.doc

NIRS は安価かつ低侵襲に脳活動を測定することが可能な検査で 統合失調症の精神病症状との関連が示唆されてきました そこで NIRS で測定される脳活動が tdcs による統合失調症の症状変化を予測し得るという仮説を立てました そして治療介入の予測における NIRS の活用にもつながると考えられまし

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

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2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

本成果は 主に以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました 日本医療研究開発機構 (AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム ( 平成 27 年度より文部科学省より移管 ) 研究課題名 : 遺伝子改変マーモセットの汎用性拡大および作出技術の高度化とその脳科学への応用 研究代表者 : 佐々木えり

【第6回】資料2_精神疾患と周産期3

Microsoft Word - tohokuuniv-press _01.docx

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

37 4

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

h29c04

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

Microsoft Word - tohokuuniv-press _02 - コピー.docx

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

児に対する母体の甲状腺機能低下症の影響を小さくするためにも 甲状腺機能低下症を甲状腺ホル モン薬の補充でしっかりとコントロールしておくのが無難と考えられます 3) 胎児 新生児の甲状腺機能低下症 胎児の甲状腺が生まれながらに ( 先天的に ) 欠損してしまう病気があります 通常 妊娠 8-10 週頃

Microsoft Word - (最終版)170428松坂_脂肪酸バランス.docx

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

を確認しました 本装置を用いて 血栓形成には血液中のどのような成分 ( 白血球 赤血球 血小板など ) が関与しているかを調べ 血液の凝固を引き起こす トリガー が何であるかをレオロジー ( 流れと変形に関わるサイエンス ) 的および生化学的に明らかにすることとしました 2. 研究手法と成果 1)

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

Microsoft Word - プレス原稿_0528【最終版】

ン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました 移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間 移植膵島をしっかりと休めることで 生着率が改善することが明らかとなりました ( 図 1) この新規の膵島移植手術法は 極めてシンプルかつ現実的な治療法であり 臨床現場での今後の普及が期待されます

研究内容 心不全は 心臓の筋肉が障害されることにより心臓のポンプ機能が低下し 肺や全身の臓器に必要な血液量を送り出すことができない病態です 心不全患者の一部において 左心房の血圧の上昇が肺に血液を送り出す動脈 ( 肺動脈系 ) に影響し 肺動脈の収縮や肥厚 ( リモデリング ) が引き起こされ 肺高

します また 血小板減少症などの診断にもなります 血糖糖尿病が妊娠をきっかけに発見されたり 既に糖尿病に罹っていて 妊娠中に発見されることがあります 既に糖尿病と分かっていて妊娠された場合を糖尿病合併妊娠 妊娠中にはじめて対糖能低下 ( 糖尿病の傾向 ) が指摘された場合を妊娠糖尿病といいます 糖尿

さらにのどや気管の粘膜に広く分布しているマスト細胞の表面に付着します IgE 抗体にスギ花粉が結合すると マスト細胞がヒスタミン ロイコトリエンという化学伝達物質を放出します このヒスタミン ロイコトリエンが鼻やのどの粘膜細胞や血管を刺激し 鼻水やくしゃみ 鼻づまりなどの花粉症の症状を引き起こします

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

態である新生血管の発生を一部再現したものであり 疾患モデル動物の代替として病態解析や創薬スクリーニングに応用できる可能性があります 本研究の成果は 平成 29 年 6 月 14 日 ( 英国時間 ) 付けで Scientific Reports 誌 ( 電子版 ) に掲載されます 本研究は 文部科学

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

生物時計の安定性の秘密を解明

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり

ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

スライド 1

研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

報道関係者各位

既定の事実です 急性高血糖が感染防御機能に及ぼす影響を表 1 に総括しました 好中球の貧食能障害に関しては ほぼ一致した結果が得られています しかしながら その他の事項に関しては 未だ相反する研究結果が存在し 完全な統一見解が得られていない部分があります 好中球は生体内に侵入してきた細菌 真菌類を貧

研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

手術や薬品などを用いて 人工的に胎児とその付属物を母体外に排出することです 実施が認められるのは 1 妊娠の継続又は分娩が 身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害する恐れがあるもの 2 暴行もしくは脅迫によって妊娠の場合母体保護法により母体保護法指定医だけが施行できます 妊娠 22 週 0

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

学報_台紙20まで

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

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平成24年7月x日

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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報道発表資料 2002 年 8 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 局所刺激による細胞内シグナルの伝播メカニズムを解明 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 細胞の局所刺激で生じたシグナルが 刺激部位に留まるのか 細胞全体に伝播するのか という生物学における基本問題に対して 明確な解答を与えま

報道機関各位 平成 27 年 8 月 18 日 東京工業大学広報センター長大谷清 鰭から四肢への進化はどうして起ったか サメの胸鰭を題材に謎を解き明かす 要点 四肢への進化過程で 位置価を持つ領域のバランスが後側寄りにシフト 前側と後側のバランスをシフトさせる原因となったゲノム配列を同定 サメ鰭の前

臨床研究の概要および研究計画

研究の背景近年 睡眠 覚醒リズムの異常を訴える患者さんが増加しています 自分が望む時刻に寝つき 朝に起床することが困難であるため 学校や会社でも遅刻を繰り返し 欠席や休職などで引きこもりがちな生活になると さらに睡眠リズムが不規則になる悪循環に陥ります 不眠症とは異なり自分の寝やすい時間帯では良眠で

全な生殖補助医療を含めて, それぞれの選択肢を示す必要がある. 3 種類の HIV 感染カップルの組み合わせとそれぞれの対応 1. 男性が HIV 陽性で女性が陰性の場合 体外受精この場合, もっとも考慮しなければいけないことは女性への感染予防である. 上記のように陽性である男性がすでに治療を受けて

Microsoft Word - 熊本大学プレスリリース_final

2016 年 12 月 7 日放送 HTLV-1 母子感染予防に関する最近の話題 富山大学産科婦人科教授齋藤滋はじめにヒト T リンパ向性ウイルスⅠ 型 (Human T-lymphotropic virus type 1) いわゆる HTLV-1 は T リンパ球に感染するレトロウイルスで 感染者

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学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

Microsoft Word - P11~19第2部② 母子保健の現状

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平成 27 年 10 月 16 日 国立研究開発法人国立精神 神経医療研究センター (NCNP) Tel: 042-341-2712 ( 広報係 ) 公立大学法人奈良県立医科大学 Tel:0744-22-3051 ( 内 2552) ( 研究推進課 ) 国立大学法人東北大学 Tel:022-717-7891 ( 医学系研究科 医学部広報室 ) 人工赤血球により低酸素ストレス下の胎児の発育不良を予防することに成功 ~ 妊娠高血圧症候群の新治療に道 ~ 文部科学省研究助成事業の一環として 国立研究開発法人国立精神 神経医療研究センター ( 東京都小平市理事長 : 樋口輝彦 ) 精神保健研究所 ( 所長 : 冨澤一郎 ) 知的障害研究部太田英伸室長 神経研究所 ( 所長 : 武田伸一 ) 疾病第二部李コウ研究員 および公立大学法人奈良県立医科大学 ( 奈良県橿原市学長 : 細井裕司 ) 化学講座酒井宏水教授は 東北大学 早稲田大学 崇城大学 理化学研究所と共同で 低酸素ストレスにさらされたラット胎児の発育不良を人工赤血球で予防することに成功した 注本研究では 妊娠高血圧症候群 1) で低酸素ストレスが加わる胎児への治療法を動物モデル ( ラット ) で開発した 妊娠高血圧症候群は約 5% の妊婦に発症し 重症例では母体死亡 胎児発育不全 胎児 新生児死亡を引き起し 母体 新生児の予後を低下させる重篤かつ高率な疾患である 特に高齢出産が進む日本では 妊娠高血圧症候群の発症は増加傾向にある これまで妊娠高血圧症候群の原因物質として sflt-1( エス エフエルティ ワン :soluble VEGF receptor 1) 等が発見され これらの物質が胎盤血管 ( らせん動脈 ) を狭小化し血行不全を引き起こす そのため 胎盤の血液循環が妨げられ 母子間のガス交換 栄養物質の運搬 老廃物の代謝が低下し 胎児が低酸素状態 子宮内発育不全になることが知られていた そこで研究グループは 狭小化した胎盤血管でも容易に通過できる小粒径 (250 nm, ナノスケール サイズ ) で かつ高い酸素運搬機能をもつ人工赤血球 ( ヘモグロビン小胞体 ) を用いて 母体胎盤および胎児の低酸素状態を改善した その結果 妊娠高血圧症候群の原因物質である母体血中の sflt-1 が低下し 胎児発育も促されることを確認した 加えて 低酸素ストレスが与えた胎児の脳へのダメージも人工赤血球の投与で抑えられることが明らかになった この成果は 妊娠高血圧症候群の発症を引き起こす原因物質を低下させるだけでなく 胎児発育不全を予防する新しい治療法として 周産期医学に貢献することが期待される なお 人工赤血球注 2) は輸血代替として実用化を目指す研究開発が進められている 本研究成果は日本時間 2015 年 10 月 16 日午後 6 時 ( 報道解禁日時 : イギリス時間 10 月 16 日午前 10 時 ) に Nature Publishing の英国オンライン科学雑誌 Scientific Reports で公開予定である - 1 -

本成果は 以下の事業 研究領域 研究課題の共同研究によって得られた 1. 文部科学省研究助成事業研究領域 : 基盤研究 B 研究課題名 : ヘモグロビン型人工赤血球を用いた妊娠高血圧症に伴う胎児低酸素へのナノマイクロ治療 2. 文部科学省研究助成事業研究領域 : 基盤研究 C 研究課題名 : 環境センサー遺伝子を用いた胎児発育を促進する子宮環境メカニズムの解明 3. 文部科学省研究助成事業研究領域 : 基盤研究 C 研究課題名 : 人工血液カクテルによる胎児慢性低酸素症の治療法開発 < 研究の背景と経緯 > 近年 妊娠高血圧症候群のメカニズムとして 胎盤由来の可溶型 VEGF 受容体 -1 (sflt-1) 注 3) 注と可溶型エンドグリン (seng) 4) の過剰分泌が血管新生を抑え 胎盤血管 ( らせん動脈 ) を狭小化し血行不全を引き起こすことが明らかになっている 加えて 母体の自己抗体 免疫因子 酸化ストレスが胎盤機能を障害し 更に sflt1, seng の過剰分泌を促すことにより 妊娠高血圧症候群の症状を悪化させること また 妊娠高血圧症群において胎盤の低酸素状態が胎盤からの sflt-1 の過剰分泌を誘導する可能性もわかっている しかし残念ながら明確な関連因子および病態の全体像を特定するには至っていない 今後も関連因子の探索が長期に継続することが予想され 妊娠高血圧症候群 に対する根本的な治療法は現在確立していない < 研究の内容 > そこで私達は視点を変え 妊娠高血圧症候群 の関連因子を特定し胎盤血管の狭小化を止めようとする従来の 予防治療 ではなく 胎盤形成過程で既に狭小化した胎盤血管に対する 対処治療 を開発する戦略を選択した 具体的には狭小化した胎盤血管においても効率よく通過できる小型 ( ナノスケール サイズ ) で かつ高い酸素運搬能をもつ 人工赤血球 ( 図 1) を用い ラット妊娠高血圧症候群モデルにて胎盤組織の低酸素状態を改善することを試みた ( 毛細血管の直径サイズは動物種によらず 約 8 マイクロ メートルであることが知られている ) 本研究では 妊娠後期のラット妊娠母体に 人工赤血球 の点滴を連日行うことにより胎盤の低酸素ストレスを直接解除した ( 図 2) その結果 妊娠高血圧症候群の原因物質である母体血中の sflt-1 を低下させると同時に 胎児の発育不全を改善し 胎児の脳に対するダメージも抑制することができた また人工赤血球には胎盤通過性がなく 人工赤血球から放出された酸素が母体から胎児に効率よく供給されることは以前の研究で確認されている < 今後の展開 > 今後 人工赤血球をベースとした新しいタイプの輸液 ( 人工血液カクテル ) を作製することにより 妊娠高血圧症候群の治療法として妊娠の終了 ( 帝王切開 早産 ) だけでなく その症状を軽減させる輸液療法も選択肢の1つとなる可能性が期待される 妊娠高血圧症候群のメカニズム解明 母体への安全性を考慮した更なる研究が求められる また この人工血液カクテルは酸素負荷処理注により 低酸素ストレスに暴露される臓器だけでなく胎児 早産児 5) といった生体のレスキューにも直接利用可能である なお人工赤血球については 今年度より日本医療研究開発機構 AMED の支援を受けて輸血代替としての臨床応用を目指した開発が進められている ( 代表研究者 : 酒井宏水教授 ) - 2 -

< 参考図 > 図 1 人工赤血球 ( ヘモグロビン小胞体 ) 使われずに廃棄される赤血球製剤 ( 期限切れ 検査落ち ) から 酸素を結合するタンパク質 ( ヘモグロビン ) だけを精製単離し これを人工の脂質膜で包んだ微粒子を人工赤血球 ( ヘモグロビン小体 ) とよぶ 廃棄血の有効利用ができ 更に血液型がない 感染源がない 室温で 2 年以上保存できるなどの利点を有する 輸血代替としての有効性 安全性が動物実験で実証されている 図 2 人工赤血球投与により胎児が低酸素ストレスから解除され 胎盤 胎児からの生物発光が上昇 (Rosa26-luc ラットを用いて胎盤 胎児への酸素供給状態を可視化 ) (a) 投与前 : ラット母体の子宮 ( 点線で囲まれた部分 ) には複数の胎児が存在する ( 通常 10~15 匹 ) 妊娠高血圧症候群に由来する低酸素ストレスが加わる胎盤 胎児が子宮内で青色に光っている (b) 投与後 : 人工赤血球の投与により胎盤の低酸素ストレスが解除され 胎盤 胎児からの生物発光が上昇し 酸素供給が増加したことを示す ( 緑 黄 赤色の部分 ) - 3 -

< 用語解説 > 注 1) 妊娠高血圧症候群妊娠 20 週以降 分娩後 12 週までに高血圧がみられる場合 または高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかで これらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものではないものをいう 重症度が高い場合 母体に腎症 子癇 ( けいれんと昏睡 ) 等を引き起こし 胎児の発育不全や健康状態の悪化をまねきやすい 母体または胎児に重篤な症状が現れた場合には すみやかに妊娠を終了させることが母体 胎児の生命保護のために重要である 注 2) 人工赤血球 ( ヘモグロビン小胞体 ) 人工赤血球は ヒト赤血球由来のヘモグロビンを脂質二分子層の人工膜で被覆した 粒子径約 250nm の分子カプセルである 出血性ショックの蘇生液としても 十分な酸素供給能が確認されている 注 3) 可溶型 VEGF 受容体 -1 (sflt-1) 血管新生で重要な VEGF に結合するタンパク質 血中で過剰な sflt1 が VEGF に結合する結果 細胞膜上の VEGF 受容体と結合するのに必要な VEGF が減少し 血管新生が妨げられる 母体血中の sflt-1 測定による妊娠高血圧症候群の早期発見が期待されている 注 4) 可溶型エンドグリン (seng) seng は妊娠高血圧症候群の母体血中で増加し sflt-1 と同様に血管新生を妨げる作用をもつ 注 5) 早産児在胎 37 週未満で産まれた児のこと 在胎 37~42 週未満で産まれた児を正期産児とよぶ < 原論文情報 > 論文名 :Artificial oxygen carriers rescue placental hypoxia and improve fetal development in the rat pre-eclampsia model ( 人工赤血球は妊娠高血圧症候群ラット モデルで胎盤の低酸素状態を解除し 胎児発育を促す ) 著者 :Heng Li, Hidenobu Ohta, Yu Tahara, Sakiko Nakamura, Kazuaki Taguchi, Machiko Nakagawa, Yoshihisa Oishi, Yu-ichi Goto, Keiji Wada, Makiko Kaga, Masumi Inagaki, Masaki Otagiri, Hideo Yokota, Shigenobu Shibata, Hiromi Sakai, Kunihiro Okamura, Nobuo Yaegashi 掲載誌 :Scientific Reports( サイエンティフィック リポーツ誌 ) URL:http://www.nature.com/articles/srep15271 < 研究グループ一覧 > 国立精神 神経医療研究センター精神保健研究所 神経研究所奈良県立医科大学化学講座東北大学病院産婦人科早稲田大学先進理工学部生理 薬理研究室崇城大学薬学部薬学科薬物動態学研究室理化学研究所光量子工学研究領域画像情報処理研究チーム - 4 -

本リリースは 厚生労働記者会 厚生日比谷クラブ 文科省科学記者会 科学記者会 奈良県政 経済記者クラブ 奈良県文化教育記者クラブ 宮城県政記者会に配布しております <お問い合わせ先 > < 研究に関すること> 太田英伸 ( オオタヒデノブ ) 国立開発法人国立精神 神経医療研究センター精神保健研究所知的障害研究部室長 187-8511 東京都小平市小川東町 4-1-1 Tel:042-341-2712( 内線 6274) Fax:042-346-2158 E-mail: hideohta@ncnp.go.jp 酒井宏水 ( サカイヒロミ ) 公立大学法人奈良県立医科大学医学部化学講座 教授 634-8521 奈良県橿原市四条町 84 Tel & Fax: 0744-29-8810 E-mail: hirosakai@naramed-u.ac.jp < 報道担当 > 国立開発法人国立精神 神経医療研究センター広報係 Tel:042-341-2711( 代表 ) E-mail:ncnp-kouhou@ncnp.go.jp 公立大学法人奈良県立医科大学研究推進課産学連携推進係井村恵 Tel:0744-22-3051 ( 内 2552) E-mail:imura@naramed-u.ac.jp - 5 -