目 次 第 1 部資源開発環境調査 1. 一般事情 1 2. 政治 経済概要 2 3. 鉱業概要 4 4. 鉱業行政 6 5. 鉱業関係機関 7 6. 投資環境 8 7. 地質 鉱床概要 鉱山概要 新規鉱山開発状況 探査状況 製錬所概要 22 12

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フィンランド地質調査所 (GTK) はミャンマーの鉱物資源の持続的開発のために 技術的協力を提供することになった 協力期間は 2 年間で GTK 及び鉱山省が取り交わした覚書では 持続的開発のための技術 設備及び物資の提供が含まれている 鉱山省はまた 韓国地球科学鉱物資源研究所 (KIGAM) とも

Monywa 銅鉱山 Letpadaung 地区では 銅鉱山開発をめぐり 地域住民と開発企業との摩擦が見られた 開発に際して収用された用地の補償額や環境保護への不満から抗議デモが発生し 2012 年 11 月にプロジェクトを一時凍結し 2013 年末に再開された 2014 年 2 月 5 日にはデモ

ャンマー ミCorporation) がその権益を取得し Sabetaung Sabetaung South Kyisintaung の 3 つの鉱床開発を目的とした生産分与契約 (Product Sharing Contract:PSC) の下 2012 年 3 月に鉱床開発及び建設に着手した 建

山省は森林省と統合され 天然資源環境保全省として新しく鉱業政策を担うこととなった 改正鉱山法が施行された後 ミャンマー国内資本及び外資が鉱業への参入を模索している 2016 年 6 月の時点で 1,645 件 ( 内訳 : 大規模開発許可 154 件 小規模開発許可 957 件 探査許可 493 件

伴い 鉱山省は森林省と統合され 天然資源環境保全省として新しく鉱業政策を担うこととなった 改正鉱山法が施行された後 ミャンマー国内資本及び外資が鉱業への参入を模索している 2017 年 12 月の時点で 鉱業関係許可は 1,956 件 ( 内訳 : 大規模開発許可 135 件 小規模開発許可 1,1

インドネシア

フィジー 主要鉱産物の生産 輸入 消費 輸出動向 (1) 主要金属鉱石生産量 鉱業の主要生産物は金及び銀であり Vatukoula 鉱山のみで生産が行われている 表 1-1. 金属鉱石生産量 鉱種 2009 年 2010 年 2011 年 対前年増減比 (%) 金 (t)

GM OEM GM GM 24 GM 16 GM

ポーランド部または全てを 総額 140 億 US$ で売却する予定である これらの対象企業には KGHM も含まれており 国内の経済競争力の向上 および他国の戦略に倣った外資導入を目標としている しかしながら 金融市場の逼迫による通貨流動性の世界的抑圧により 欧州連合等の反対が予想されており 本計画

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世界の鉱業の趨勢 2017 ジンバブエ 主要データ 国名 英名 ジンバブエ Republic of Zimbabwe 面積 (km 2 ) 390,757 海岸線延長 (km) 0 人口 ( 百万人 ) 14.5 人口密度 ( 人 /km 2 ) 37.2 GDP( 十億 US$) 一人

世界の鉱業の趨勢 2016 マレーシア 主要データ 国名 英名 マレーシア Malaysia 面積 (km 2 ) 329,847 海岸線延長 (km) 4,675 人口 ( 百万人 ) 30.5 人口密度 ( 人 /km 2 ) 92.5 GDP( 十億 US$) 一人当り GDP(U

ミニカ278 在 如何にして回収するかも含め評価中であるが 2011 年 3 月に商工省鉱山総局 Octavio Lópes 局長は JOGMEC メキシコ事務所のインタビューにおいて 同プロジェクトの亜鉛の埋蔵量は 118 万 tと推定されると語っていた 同プロジェクトは 元来国営企業の Rosa

ベネズエラ288 ナダ ) によって Choco Concessions 鉱山及び Mina Isidora 鉱山が操業されてきた また CVG 傘下の Minerven 金開発公社が Bolivar 地域で Colombia 鉱山 Union 鉱山などを操業しているが 設備の老朽化や非効率的な操業

Microsoft Word doc

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世界の鉱業の趨勢 2016 ラオス 主要データ 国名 英名 ラオス人民民主共和国 Lao People's Democratic Republic 面積 (km 2 ) 236,800 海岸線延長 (km) 0 人口 ( 百万人 ) 6.9 人口密度 ( 人 /km 2 ) 29.2 GDP( 十億

まえがき このテキストは 通商産業省が金属鉱業事業団に委託した平成 7 年度金属鉱業経営資源活用対策事業の一環として 技術者研修用に映像 ( ビデオ ) と共に作成されたものです 独立行政法人石油天然ガス 金属鉱物資源機構に無断で複製品を作成することと 技術研修以外の目的に使用することを禁止します

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15. テック コミンコ社 (Teck Cominco Limited) 1. 企業概要 本社 カナダ Vancouver 主要事業 鉱種 非鉄金属鉱山 製錬 原料炭 Cu,Zn,Pb,Au,Ag,Mo,In, 原料炭 従業員数 約 7,000 人 決算日 12 月末日 主要関連会社 Teck Co

世界の鉱業の趨勢2018 タイ

ラオス40 世界の鉱業の趨勢 2012 主要 ー ラオス人民民主共和国 国名 英名 ラオス人民民主共和国 Lao People's Democratic Republic 面積 (km 2 ) 236,800 海岸線延長 (km) 0 人口 ( 百万人 ) 6.5 人口密度 ( 人 /km 2 )

世界の鉱業の趨勢 2014 ポーランド 主要データ 国名 英名 ポーランド共和国 Republic of Poland 面積 (km 2 ) 312,685 海岸線延長 (km) 440 人口 ( 百万人 ) 38.3 人口密度 ( 人 /km 2 ) GDP( 十億 US$) 516.

世界の鉱業の趨勢 2014 モンゴル 主要データ 国名 英名 モンゴル [Mongolia] 面積 (km 2 ) 1,564,116 海岸線延長 (km) 0 人口 ( 百万人 ) 2.9 人口密度 ( 人 /km 2 ) 2.0 GDP( 百万 US$) 一人当り GDP(US$)

17年度調査研究・情報収集・発信戦略に係る海外事務所長会議における意見交換(案)


世界の鉱業の趨勢 2014 パプアニューギニア 主要データ 国名 英名 パプアニューギニア独立国 Independent State of Papua New Guinea 面積 (km 2 ) 462,840 海岸線延長 (km) 5,152 人口 ( 百万人 ) 6.6 人口密度 ( 人 /km

Needs for Information on Environmental Protection Measures

17年度調査研究・情報収集・発信戦略に係る海外事務所長会議における意見交換(案)

ポーランド 主要データ 国名 英名 ポーランド共和国 Republic of Poland 面積 (km 2 ) 312,685 海岸線延長 (km) 440 人口 ( 百万人 ) 38.1 人口密度 ( 人 /km 2 ) GDP( 百万 US$) 430,197 一人当り GDP(U

スウェーデン 主要データ 国名 英名 スウェーデン王国 Kingdom of Sweden 面積 (km 2 ) 450,295 海岸線延長 (km) 3,218 人口 ( 百万人 ) 9.2 人口密度 ( 人 /km 2 ) 20.4 GDP( 百万 US$) 405,440 一人当り GDP(U

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シドニー事務所からの報告

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

図 6 地質と崩壊発生地点との重ね合わせ図 地質区分集計上の分類非アルカリ珪長質火山岩類後期白亜紀 火山岩 珪長質火山岩 ( 非アルカリ貫入岩 ) 後期白亜紀 花崗岩 後期白亜紀 深成岩 ( 花崗岩類 ) 花崗閃緑岩 後期白亜紀 チャートブロック ( 付加コンプレックス ) 石炭紀 - 後期三畳紀

17年度調査研究・情報収集・発信戦略に係る海外事務所長会議における意見交換(案)

SMBC Breaking News

世界の鉱業の趨勢 2014 スペイン 主要データ 国名 英名 スペイン Spain 面積 (km 2 ) 505,370 海岸線延長 (km) 4,964 人口 ( 百万人 ) 47.7 人口密度 ( 人 /km 2 ) 94.5 GDP( 十億 US$) 一人当り GDP(US$)

ヨスウェーデン74 世界の鉱業の趨勢 2005 鉱山生産量 ( ) 内は対前年比 Boliden 地区銅 17,287t(-27%) 亜鉛 80,481t(+5%) 鉛 3,720t(+40%) 金 3,026kg(+13%) 銀 77,091kg(+8%) Garpenberg 地区銅 550t(

PowerPoint Presentation

世界の鉱業の趨勢 2014 ラオス 主要データ 国名 英名 ラオス人民民主共和国 Lao People's Democratic Republic 面積 (km 2 ) 236,800 海岸線延長 (km) 0 人口 ( 百万人 ) 6.8 人口密度 ( 人 /km 2 ) 28.7 GDP( 十億

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International 社の HP には ニッケル及びコバルトの生産実績が報告されていることから コバルトの生産実績はあり また ニッケルの生産量についても WMSY2017 より多いものと推測される キューバ政府は 1990 年以降の東側経済圏の崩壊を機に 西側諸国資本によるニッケル鉱業の活性

Talvivaara 社は Sotkamo ニッケル鉱山の副産物として産出されるウランを回収し資源として利用するプロジェクトを進めており 2012 年 3 月にフィンランド政府からウラン抽出に関する許可を取得し 環境許可も 2014 年 4 月に取得した なお 2012 年 9 月から水位の上昇によ

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[グループⅠ]公募仕様書案

(Microsoft Word \224N\203\215\203V\203A\213\311\223\214\223\212\216\221.doc)

PowerPoint プレゼンテーション

報告書の利用についての注意 免責事項 本報告書は 日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) ニューデリー事務所が現地会計事務所 KPMG に作成委託し 2016 年 11 月に入手した情報に基づくものであり その後の法律改正などに よって変わる場合があります 掲載した情報 コメントは作成委託先の判断による

17年度調査研究・情報収集・発信戦略に係る海外事務所長会議における意見交換(案)

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17年度調査研究・情報収集・発信戦略に係る海外事務所長会議における意見交換(案)

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世界の鉱業の趨勢 キューバ

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平成 30 年度第 5 回 JOGMEC 金属資源セミナー 0 インドネシア鉱業のトピックス ( 銅 ニッケル ) 平成 30 年 11 月 21 日 ジャカルタ事務所 南博志

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世界の鉱業の趨勢 2017 マダガスカル 主要データ 国名 英名 マダガスカル共和国 Republic of Madagascar 面積 (km 2 ) 587,041 海岸線延長 (km) 4,828 人口 ( 百万人 ) 24.4 人口密度 ( 人 /km 2 ) 41.6 GDP( 十億 US

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世界の鉱業の趨勢 2015 イラン 主要データ 国名 英名 イラン イスラム共和国 Islamic Republic of Iran 面積 (km 2 ) 1,648,195 海岸線延長 (km) 2,440 人口 ( 百万人 ) 80.8 人口密度 ( 人 /km 2 ) 49.0 GDP( 十億

財務省貿易統計

Microsoft PowerPoint プレゼン資料(基礎)Rev.1.ppt [互換モード]

第 24 章地域別の概要 地域別の概要 ミャンマーの地域分類ミャンマーの地域区分としては カチン カヤー カレン チン モン ラカイン シャンの 7 州と ザガイン タニンタリー バゴー マグウェー マンダレー ヤンゴン エヤワディの 7 管区に加え 連邦直轄区域であるネーピードーがあり 統計もこれ

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

世界の鉱業の趨勢2018 ノルウェー

Myanmar Labor Force Survey LFS. CMP CMP cutting, making, packaging CMP CMP CMP T.,,

財務省貿易統計

第9章 タイの二輪車産業-好調な国内市場と中国の影響-

財務省貿易統計

イ適用税率別の数と税割課税額税割は資本金の額により適用する税率を決めているので 適用税率別に集計することで資本規模による違いがわかります 税割の税率は標準税率 9.7%(12.3%) と制限税率 12.1%(14.7%) の 2 段階です 9.7% の税率は資本金の額が 1 億円以下のや資本金を有し

42

Microsoft Word - _別紙)外為法.doc

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先進国化する中国 東南アジアの大都市 ~ メガシティ ( 大都市 ) からメガリージョン ( 大都市圏 ) へ ~ 要 旨 調査部環太平洋戦略研究センター 主任研究員 大泉啓一郎 GDP 8,000 10,00

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国は大部分のラテライト鉱をフィリピンと豪州から調達しているため 影響は少ないものの ニューカレドニアの住民は中国からの投資減少を危惧して反対運動を行った その後 10 月に 1 社 (Societe Mai Kouaoua Mines(MKM) 社 ) に対して中国に対するラテライト鉱の輸出の再開が

Al アルミニウム Cu 銅 Fe 鉄 Ni ニ

1. 鉱業一般概況ベトナム国内には 銅 鉛 亜鉛 チタン 金 ニッケル レアアースなど 多種多様な鉱物資源が賦存している ハノイ北方に位置する Nui Phao 鉱山は Masan Resources 社が 2011 年に建設に着手 2013 年 4 月に操業を開始した NuiPhao 鉱山はタング

検査の背景 (1) 事業者免税点制度消費一般に幅広く負担を求めるという消費税の課税の趣旨等の観点からは 消費税の納税義務を免除される事業者 ( 以下 免税事業者 という ) は極力設けないことが望ましいとされている 一方 小規模事業者の事務処理能力等を勘案し 課税期間に係る基準期間 ( 個人事業者で

2015 年 6 月 19 日 ジェトロバンコク事務所 タイ日系企業進出動向調査 2014 年 調査結果について ~ 日系企業 4,567 社の活動を確認 ~ 1. 調査目的 タイへの日系企業の進出状況については 2008 年当時の状況について ( 独 ) 中小企業基盤 整備機構が タイ日系企業進出

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

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財務省貿易統計

世界の鉱業の趨勢 2015: マラウイ マラウイ 主要データ 国名 英名 マラウイ共和国 Republic of Malawi 面積 (km 2 ) 118,484 海岸線延長 (km) 0 人口 ( 百万人 ) 17.4 人口密度 ( 人 /km 2 ) GDP( 十億 US$) 4.

58 PAP 50 PAP GDP Integrated Resort IR IR ,000 GDP 1% ,700GDP 3.2% 408 8,500GDP 1.0% GDP

Transcription:

資源開発環境調査ミャンマー連邦 Myanmar Naingngandaw (The Union of Myanmar)

目 次 第 1 部資源開発環境調査 1. 一般事情 1 2. 政治 経済概要 2 3. 鉱業概要 4 4. 鉱業行政 6 5. 鉱業関係機関 7 6. 投資環境 8 7. 地質 鉱床概要 11 8. 鉱山概要 17 9. 新規鉱山開発状況 22 10. 探査状況 22 11. 製錬所概要 22 12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 24 第 2 部地質解析 1. 地質 地質構造 25 2. 鉱床 29 2-1. 鉱床生成区 ( 鉱床分布の特徴 ) 29 2-2. タイプ別 時代別分布の特徴 32 3. 鉱床胚胎有望地域 37 参考 ( 統計 法律 文献名 URL 等 ) 37

第 1 部資源開発環境調査 1. 一般事情 1-1. 面積 68 万km2 1-2. 人口 5,114 万人 (01~02 年 Japan Statistical Year Book 2001) 1-3. 首都ヤンゴン 1-4. 人種ビルマ族 1-5. 公用語ミャンマー語 1-6. 宗教仏教 90% キリスト教 回教 1-7. 地勢等諸部族割拠時代を経て 11 世紀半ば頃に最初のビルマ族による統一王朝 ( パガン王朝 1044~1287 年 ) が成立 その後タウングー王朝 コンバウン王朝等を経て 1886 年に英領インドに編集され 1948 年 1 月 4 日に独立 第 1-1 図ミャンマー連邦位置図 ( 外務省 HP) - 1 - ミャンマー

第 1-2 図ミャンマー連邦図 (The World Factbook 2004) 2. 政治 経済概要 2-1. 政体軍事体制 ( 暫定政府 ) 2-2. 元首タン シュエ国家平和開発評議会議長 2-3. 議会 88 年 9 月クーデターにより解散 (90 年 5 月総選挙が実施されたが国会は収集されていない ) 2-4. 政治概況 88 年全国的な民主化要求デモにより 26 年間続いた社会主義政権が崩壊し 国軍がデモを鎮圧するとともに国家法秩序回復評議会 (SLORC) を組織し政権を掌握した 90 年には - 2 - ミャンマー

総選挙が実施され アウン サン スー チー女史率いる国民民主連盟 (NLD) が圧勝 政府は民政移管のためには堅固な憲法が必要であるとして今日まで政権移譲を行っていない 政府は 89~95 年までスー チー女史に対し国家防御法違反により自宅軟禁措置を課した 95 年の自宅軟禁解除後 女史と政府の対立が高まっていたが 2000 年 10 月 この2 者間で直接対話が開始された その後 政府は拘束していた政治犯を本年 5 月上旬までに約 550 名を釈放すると共に 02 年 5 月には女史に対する行動制限措置を解除した しかし翌年 彼女が遊説の除次で当局に拘束 同年 9 月に女史は産婦人科系の手術のために入院し 退院後は自宅へ移送された 2003 年 8 月 25 日 キン ニュン SPDC 第二書記は首相に就任し 就任演説の際 7 段階からなる民主化のためのロードマップを発表 本年 1 月ミャンマー政府はこの国最大の少数民族武装勢力であるカレン民族同盟 (KNU) と和平交渉を行い同月 23 日プレスリリースで 同政府が KNU との間で紛争終結等に関し 相互理解 (mutual understanding) に達したことを発表 本年 3 月 30 日テイン セイン SPDC 第二書記は国民会議を本年 5 月 17 日に再開する旨を発表 4 月 7 日ミャンマー政府が NLD 関係者を含む国民会議のメンバーに招待状を発出したことは確認されているが 会議の議事進行等 具体的なルールについては不明 また同月 13 日アウン シュエ NLD 議長等一部幹部が解放され 17 日に NLD 党本部が再開された 2-5. 主要産業農業 2-6. GDP 113 億ドル (2000 年度推定 ) 一人当たり 180 ドル (2003 年 IMF 推定 ) 2-7. 通貨チャット (Kyat) 2-8. 為替レート 1US$=5.86 チャット ( 公定レート :2004/08/ 現在 ) 年末 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 1US$= 6.1992 6.5303 6.7704 6.2584 5.7259 (International Financial Statistics 2004) 2-9. 貿易 (2002 年 ) 輸出約 30 億ドル : 天然ガス チーク 豆類 米 エビ輸入約 23 億ドル : 機械類 金属 / 工業製品 原油 電気機械 紙類対日貿易 (2002 年度貿易統計 ) 輸出 14,427 百万円 : 農水産品 林産品輸入 13,172 百万円 : 機械 金属品 化学品 2-10. 経済概況ミャンマーは 豊富な地下資源を有し 特に 石油 天然ガス 石炭 銅 鉛 亜鉛 金 銀 錫 タングステン 鉄等の賦存ポテンシャルが高いとされている 第 3 次国家経済開発計画 (National Economic Development Scheme) 5 か年計画 (2001-2002 - 3 - ミャンマー

~2005-2006 年 ) では 鉱業セクターは 農業 畜産 漁業及び林産セクターに次ぎ 5 番目の位置を占めている しかしながら 近年は 依然として 探鉱 開発プロジェクトへの外国投資が著しく減少しており 2001 年から 2002 年 3 月までの間に鉱業部門での新たな外国投資は行われていない このため 鉱業セクターへの外貨収入は減少の一途にあるほか 2001~2002 年の鉱業セクター ( 大半が宝石等の販売収入 ) の GDP への貢献は わずか 0.8% となっている 3. 鉱業概要現行の国営直轄鉱山は 4 鉱山 ( 金 (Kyaukpahto) ベースメタル(Bawdwin Bawsaing Yadanatheingi)) 及び 2 炭鉱 (Kalewa と Namma) である これらの鉱山は 採掘 選鉱及び精錬規模の縮減が続いており 最小限の操業能力の維持を図っている状況である この他 金 ひすい 硬玉等宝石原石の小規模の国内民間企業が事業を継続している 3-1. ME1(No.1 Mining Enterprise) 関係 3-1-1. 鉛 亜鉛 ME1 は Shan 州で Bawdwin Bawsaing および Yadanatheingi の中の 3 鉱山を操業している Bawdwin 鉱山は 最大の鉛 亜鉛鉱山であり 精錬した銀 鉛 亜鉛精鉱等の生産を行っている 同鉱山は 露天及び坑内採掘を行っており 露天採掘により生産された酸化鉱は Bawdwin 選鉱場において処理を行い 坑内堀の硫化鉱は 隣接する Namtu 選鉱場で処理されている 同公社は 近年 中国雲南省から精錬設備を購入し若干の生産量向上を図ったほか 亜鉛スラグからの酸化亜鉛を雲南省の製錬所に販売し 外貨収入を得ている 他の鉛 亜鉛鉱山のうち Bawsaing 鉱山は方鉛鉱 白鉛鉱及び鉛精鉱を生産 また Yadanatheingi 鉱山は方鉛鉱を生産しており 両鉱山とも 多量の銀を含有している 生産量については 両鉱山とも減少している Cornerstone Resources (Myanmar) Ltd.(CRL) 社との合弁による Longh Keng 鉱山は 2002 年に Loncheng(Mongpawn 地区 Shan 州 ) における亜鉛鉱床の 3 年目の調査として 同地区での試錐調査 (15 孔 ) を実施したが 所要の成果は得られず 当初予定されていた追加の試錐調査が中止された この他 ME1 は 地域企業の合弁事業として Shan 州の Hawsaing Mining 社及び 0Kachin National Development 社及び Wa Development General Trading 社との事業を行っているが 前 2 社は 2001 年夏に操業を中止 Wa 社は 2002 年 菱亜鉛鉱のみの生産となっている 3-1-2. 銅 Monywa 鉱山は Myanmar Ivanhoe Copper Co. Ltd.(MICCL) と ME1 との 50:50 合弁事業 - 4 - ミャンマー

であり ミャンマー中央西部 Sagaing 管区 Monywa 地域に位置し Sabetaung 及び Kyisintaung 鉱体を主体として SX-EW 法により 年間 27,500t の銅カソードを生産している 現在 Sabetaung 及び Kyisintaung 鉱体の 6km 南に位置する Letpadaung 鉱体 (1,000Mt Cu 4%) の開発 ( 年産 12.5~15 万 t) 及びリーチング設備の拡張 ( 年産 80~95 千 t) 及び電力供給策の検討が進められている 3-2. ME2(No.2 Mining Enterprise) 関係 3-2-1. 錫錫 タングステン関連では 現在は 直営鉱山は稼行しておらず タイ企業の Myanmar Pongpipat Co. Ltd.(MPC) of Thailand 及び国内地方鉱山企業との合弁による 7 鉱山 (Heinda Mawchi Kanbauk Hermyingyi Kyauk me daung Bokepyin および Theindaw) において採掘が行われている タイ企業との合弁である Heinda 鉱山 (Dawei 地区 Tanintharyi 管区 ) の生産分配比率が 35:65(ME 2: MPC) の他は 生産分与比率は 30:70 となっている 3-2-2. 金 Kyaukpahto 鉱山が唯一の直轄国営鉱山であるが 同鉱山は十分機械化されておらず 25kg の月産目標の維持に努めている状況であるほか ME2 と Golden Point Family Co. 社の合弁による Phayaung taung 鉱山及び Thayetkhon 鉱山が生産を行っている 2002 年 ME2 は カナダ企業の East Asia Gold Co.(EAGC) と新たな合弁事業契約を締結し Wethe 地区 (Thabeikkyin 地区 Mandalay 管区 )( 以前の探査ブロック 1/14 の一部 ) の評価を開始した 同社は 金鉱山採掘を許可された初の外国企業となり 鉱山省へのロイヤルティは 5% 利益分与比率は 25:75(ME 2: EAGC) となっている 3-3. ME3(No.3 Mining Enterprise) 関係 ME3 は 製鉄所 (Pyin Oo Lwin) 2 か所のバライト鉱山 (Heho と Kyaukse) 2 炭鉱 (Kalewa と Namma) 石膏鉱山(Thibaw) 2 か所の石灰石鉱山 (Patheingyi と Pyinmana) 等を有している Pyin Oo Lwin 製鉄所 (Mandalay 管区 ) は 銑鉄 19 千 t 鋼球 2.5 千 t 丸鋼 15 千 t の年間生産能力を有しており 鉄鉱石は 約 40km 南東の Kyatwinye 鉱山 ( 露天採掘 鉱量約 300 万 t(fe 53.5%)) から供給されている 今後の石炭火力発電所建設に向け 石炭 褐炭資源の開発が優先事項となっているが 外資の関心を得るには至っていない しかしながら ME3 は 地元企業との合弁で Tigyt 鉱床の開発を進めており 建設予定の 120MW 発電所に年間 50 万 t 40 年間の石炭供給を計画している - 5 - ミャンマー

第 3-1 表主要金属生産量 年 2001 2002 2003 2004 銅 ( 千 t) 25.806 27.542 27.874 31.756 亜鉛 ( 千 t) 1.358 0.648 0.96 0.824 鉛 ( 千 t) 0.879 0.9 0.504 0.504 金 (kg) 200 200 100 e - 錫 ( 千 t) 1.898 1.2 1.26 2.1 出典 :World Metal Statistics Year Book 2005( 金は USGS ホームページより ) 4. 鉱業行政ミャンマーの鉱業政策の基本的な考え方は 賦存する豊富な地下資源を外国資本を利用して開発することに主眼がおかれている 特に 銅 鉛 亜鉛 金 鉄部門を重視しており 外国資本による投資を鉱物資源探査だけでなく既存鉱山及びその関連施設への投資も求めている ミャンマーの鉱業法は 国連の支援により 1994 年に制定され 1996 年には鉱業規則が発布されている 同法によると 国内のいかなる鉱物資源も国有とされ すべての鉱業活動は鉱山省が管理することが定められている 鉱山省は 探査権の付与 開発段階には国営鉱山会社とジョイントベンチャー契約 ( 生産分与または利益分与 ) の締結等の権限を有している 外資がミャンマーで探鉱開発を行う場合には ミャンマー政府とジョイントベンチャー契約を締結する必要があり 同契約におけるミャンマー政府との取り決め事項は 鉱業法 鉱業規則 その他関連法令によることが基本となるが これらに定められていない詳細事項は政府との問で交渉により決定されることとなる 一方 鉱業法等に定められている事項であっても 政府上層部の指示により変更される場合があり さらに このような変更は文書化されていないという状況がある ミャンマー政府は 鉱物資源探査のための国際入札を 1994 年 1995 年 1998 年 そして第 4 回となる国際入札を 2002 年 11 月に実施している ( 結果的には 2 社が応札したのみ ) 入札に係る探査権有効期間や鉱区維持費用 保証金等の詳細は 入札説明書に規定されている ちなみに 入札時には Signature Bonus の金額 (1 鉱区当たり最低 15,000US ドル ) を提示し 契約締結後 30 日以内にミャンマー政府に支払はなければならない Signature Bonus は鉱業法および鉱業規則には明記されていないが 権利取得後に慣例的にミャンマー政府に支払うことになっている謝金のようなものといえ 第 4 回入札説明資料では Signature Bonus の金額の大小が落札者選定の要素の一つになるとされている - 6 - ミャンマー

5. 鉱業関係機関 現在のミャンマー政府は 32 の省から構成され その中で鉱山省(Ministry of Mines)が 鉱業部門を担当している 鉱山省は鉱山局(Department of Mines)と地質調査 探査局 (Department of Geological Survey & Mineral Exploration)の 2 局と 6 社の国営鉱山会 社(Mining Enterprise)より構成される 第 5-1 図 鉱山省(Ministry of Mines)組織図 ミャンマー鉱山省 HP 各局および鉱山公社の役割は次のとおりである 鉱山局 鉱山省に属する機関として 政策の制定 鉱業部門を発展させるための活動 鉱山操業の 監督を管轄し 関連法規制の遵守を図る 地質調査 探査局 地球科学 探査 探鉱 鉱量計算など 技術的事項を管轄する 第 1 鉱山公社 銀 鉛 亜鉛 銅の生産 製錬 精錬 市場販売を管轄する 第 2 鉱山公社 金 錫 タングステンの生産 製錬 精錬 市場販売を管轄する 第 3 鉱山公社 鉄鋼 工業用原料鉱物の生産 選鉱 市場販売を管轄する ミャンマー宝石公社 宝石の採掘 加工 市場販売 地元企業に対する許認可の発行を管轄する -7- ミャンマー

ミャンマー真珠公社真珠の養殖と市場販売を管轄する ミャンマー塩 海洋化合物公社海水からの天日塩およびその他塩製品の生産と市場販売を管轄する 6. 投資環境 6-1. 外国投資法制度 1988 年 9 月 ビルマ式社会主義の経済制度は軍政によって完全に放棄され 市場経済 対外開放を軸とする経済改革が始まった 外資導入を図るため 1988 年 12 月に外国投資法 ( 外資法 ) が制定された 外国資本による投資は国家計画 経済開発省 (Ministry of National Planning & Economic Development) が所管している その中で外国からの投資 技術協力 経済援助は外国経済関係部 (Foreign Economic Relations Departmenmt) が窓口であり 案件の審査 各担当省庁への振り分けを行っている 審査を経た外国投資案件は ミャンマーの主要閣僚によって構成されるミャンマー投資委員会 (Myanmar Investment Commission:MIC) が許可を与えることになっている 6-1-1. 外資に関する規制措置 (1) 出資比率ミャンマーに投資を行う場合 次の形態が考えられる 鉱物資源の探鉱開発 生産は外資に対する規制業種に指定されており ミャンマー国営企業との合弁契約または合弁会社の設立による形態が義務づけられている 100% 外国資本による企業外国資本 100% 出資によるミャンマー法人の設立 100% 個人企業としての進出も可能 合弁企業の場合外国企業または外国人とミャンマー企業 ( 民間または国営 ) または個人との合弁 ただし いずれの場合も外資は総資本の 35% 以上でなければならない ただし 国営企業との合弁の場合 外資は最大 50% という制限がある なお 合弁相手が民間企業の場合は会社法 (The Myanmer Companies Act) に基づき また国営企業の場合は特別会社法 (The Special Company Act 1950) に基づき設立される パートナーシップ外国企業が合弁契約に基づき企業形態を取らずに行う合弁事業で 無限責任を負う 天然ガス 石油 鉱物資源の開発でミャンマー国営企業と生産分与契約を結ぶケースが代表例で 開発品は契約上の割合で分与される その他 弁護士 会計事務所などの形態も考えられ 基本的にはミャンマーの外資獲得につながる業績が望ましい 支店 駐在員事務所ミャンマー会社法 ( 商業省主管 ) で外国企業の支店として定義されているのみであり 外 - 8 - ミャンマー

国投資法 ( 国家計画 経済開発省主管 ) 上は明文規定されていない 支店 駐在員事務所の設置は会社法に基づき申請手続きを行うが 現在の窓口は商業省ではなく国家計画 経済開発省の投資 企業管理局 (Investment of Company Administration Department) となる 同局で営業許可 (Permit to Trade) を取得後 同省内の企業登記局 (Company Registration Office) にて会社登記 (Company Registration) を行う なお 本邦 親会社では駐在員事務所としての進出であっても 当地会社法上は金融機関など一部の例外を除き支店 (Branch Office) として登記されるケースが一般的である ローカル企業との提携ローカル企業に製造設備 機械を貸与または販売し 原料を供給し 製品を輸出する ( 委託加工貿易の形態 ) また 前述の形態とは別に ミャンマー人もしくはミャンマー企業を当地ビジネスの代理人として指名し 駐在員事務所を開設することも可能である この場合 代理人契約書と任命書を作成の上 商務省で登記する必要がある (2) 規制業種国営企業の民営化を指向する政府は 1989 年に 国営企業法とその手続き (State Economic Enterprises Low and Procedures) を発表して 国営企業が将来も所有する業種と 民営化の対象となる業種の区分を行った それによれば下記 12 分野の業種は国営企業法に基づき引き続き 国営企業が事業展開することとなり 民間企業の参入には制限がある チーク材の伐採とその販売 輸出 家庭消費用薪材を除く全ての植林および森林管理 石油 天然ガスの採掘 販売 真珠 ヒスイその他宝石の採掘 販売 魚 海老の養殖 郵便 通信事業 航空 鉄道事業 銀行 保険事業 ラジオ テレビ放送事業 金属の採掘 精錬と輸出 発電事業 治安 国防上必要な産品の生産外資がこれらの産業に参入する場合には国営企業法の規定により 国営企業とのジョイントベンチャーを組むことが求められている この他 ホテル業 家屋賃貸業および観光業を営む場合は所管官庁の承認申請し ライセンスを取得しなければならない 金融業の場合はミャンマー中央銀行の事前許可を取得しなければならない - 9 - ミャンマー

(3) 資本金外資法に規定される最低投資金額は 製造業 50 万ドル サービス業 30 万ドルである また 会社法の規定する最低資本金は 製造業 100 万チャット相当額の外貨 商業 50 万チャット相当額の外貨 サービス業 50 万チャット相当額の外貨となっている 最低資本金の外貨相当額は 公定レート ( ミャンマー中央銀行の公示する当日の為替相場 ) を用いて算出することになる 2004 年 8 月現在で公定レートは 1 ドル=6 チャット前後で推移している ちなみに実勢レートは 1 ドル=900~950 チャットであり 両者の間には大きな乖離がある (4) 土地所有ミャンマーでは原則として全ての土地は国有地であり 外国人 外国法人は土地所有ができない 外国人 外国法人は不動産移転規制法によるリース契約により 5000 エーカーを限度に 10~30 年 ( ただし 50 年まで延長可 ) のリース形態で土地所有権を取得し 工場 事務所を建設することができる (5) 為替管理外国投資法で認可された外国企業と雇用者は ミャンマー外国貿易銀行 (MFTB) に外貨口座とチャット口座を開設する義務がある 1997 年のアジア通貨危機の影響で ASEAN からの投資が半減し 1997 年夏以降 外貨不足が深刻化した このため政府は 1997 年 7 月に外貨送金を 1 企業当たり1か月 5 万ドルに制限した その後 2000 年 8 月には1 万ドルに制限を強化した 外国為替業務は国営商業銀行 2 行のみ ( ミャンマー外国貿易銀行 :MFTB ミャンマー投資 商業銀行 :MICB) が行う 輸出により獲得した外貨の一部は強制的に国内通貨に交換されることがある 6-1-2. 外資に関する優遇措置外資を呼び込むため外資法は各種優遇措置を準備している 輸出拡大 大規模投資を要する天然資源開発 ハイテク技術の取得 多額の資本を要する財サービスの生産 雇用機会の拡大 エネルギー消費の節約および地方開発に関連する業種は 奨励業種となり各種優遇措置が受けられる 優遇措置は法人税免除 ( 商業生産または役務の提供開始から 3 年間 ) が基本である さらにミャンマー投資委員会 (MIC) が認めれば 商業税 関税免除 再投資に係る減免 加速償却等の追加優遇措置が受けられる 追加優遇措置がいかなる条件で認められるかの規定はなく 申請により MIC が個別に決定する なお 近年の厳しい外貨事情によりミャンマー政府が外貨優遇措置の見直しを行っている模様である 6-2. 税制ミャンマーの税制度は国税と地方税に分けられる 税収のほとんどを占める国税は法人税 個人所得税 商業税 関税 源泉税など全部で 14 種類ある 外国投資法に基づいて設立された外国法人の法人税率は ミャンマー国内所得の 30% である また 外国支店の支店等はミャンマー国内所得の 35% もしくは累進税率 (5~40%) で計算した税額のいずれ - 10 - ミャンマー

か大きい額が適用される 7. 地質 鉱床概要 7-1. 地質地質は 西に Indian Plate 東に Indochina Plate 北に Eurasia Plate に挟まれた Suture Zone 中に形成されている 地質構造は南北方向に規制され 多様な地質ユニットから構成されている 先カンブリア期の結晶片岩を基盤とし それらの古生代被覆層がミャンマー東部に分布しているのに対して 中生代から古第三紀のオフィオライトを伴ったフリッシュ堆積相がミャンマー西部に分布している さらに 中央部には地溝状に 新第三紀から第四紀の堆積物が分布している - 11 - ミャンマー

第 7-1 図 ミャンマー連邦の地質ユニット 金属鉱業事業団 1996-12 - ミャンマー

第 7-2 図 ミャンマー連邦地質図 須藤 1998 1. 第四系 2. 新第三系 3. 火山岩類 新生代 4. 白亜系 5. 三畳系 ジュラ系 6. 花崗岩類 主に中生代 一部古生代 7. 上部古生界 8.下部古生界 9. 塩基性 超塩基性岩類 10. 時代未詳の変成岩類 11. 先カンブリア系 - 13 - ミャンマー

7-2. 地質構造図 第 7-3 図 ミャンマー連邦の地質ユニット 白丸は第四紀火山 金属鉱業事業団 1996-14 - ミャンマー

7-3. 主要鉱床分布図ミャンマーの鉱床区は,Arakan-Chin 鉱床区,North-Eastern Burma 鉱床区および Shan Tenasserim 鉱床区に分けられている ( 第 7-1 表 ) Arakan-Chin 鉱床区は超塩基性岩 (Cr, Cu, Fe, Ni, Pt) に, また North-Eastern Burma 鉱床区は超塩基性岩 (Cr, Cu, Fe, Pb, Mn), 花崗岩 (Pb, Zn, Mo, Cu, Au), 先カンブリア系 (Au) に伴った鉱床が分布している Shan Tenasserim 鉱床区は,Eastern High-lands 地質区に相当し, これまでのミャンマー鉱業にとって極めて重要な地域である この鉱床区では, 花崗岩 (Sn, W), オルドビス紀石灰岩 (Pb, Ba, Zn), 上部古生代炭酸塩岩 (Fe, Sb), 上部古生代の砕屑岩類 (Sn, W, Sb), 先カンブリア期 古生代. 中生代の砕屑岩類(Cu, Pb), ラテライト (Fe, Mn) に鉱床が伴われる これらの各鉱床区は少なくとも幅 500km, 延長 1,500km の規模を持つ それに対して Central Belt 中央を走るカルクアルカリ系の火山帯には,Monywa 銅鉱床に代表される斑岩銅鉱床や浅熱水性金鉱床の存在が知られている ( 第 7-3 図 ) 第 7-1 表ミャンマーの鉱床区 ( 金属鉱業事業団 1996) 鉱床区鉱化作用 Arakan-Chin 超塩基性岩に関係 (Cr, Ni, Pt, Cu, Fe) 超塩基性岩類に関係 (Cr, Cu, Fe, Pb, Mn) Northeast Burma 花崗岩類に関係 (Pb, Zn, Mo, Cu, Au) 先カンブリア系に関係 (Au) 花崗岩類に関係 (Sn W) オルドビス紀の石灰岩に関係 (Pb, Ba, Zn) 上部古生代の炭酸塩岩類に関係 (Fe, Sb) Shan-Tenasserim 下部古生代の砕屑岩類に関係 (Sn, W, Sb) 先カンブリア紀 古生代 ジュラ紀の砕屑岩類に関係 (Cu,Pb) ラテライトに関係 (Fe, Mn) - 15 - ミャンマー

第 7-4 図 ミャンマーのテクトニックマップ 白丸は第四紀火山 金属鉱業事業団 1996-16 - ミャンマー

8. 鉱山概要 8-1. Monywa 鉱山位置 : 中央西部 Sagaing 管区 Monywa 地域 Salingyi Township Sagaing Division 首都ヤンゴンの北約 500kmのMandalay 市より北西 110km Chindwin 川の西岸に位置する 会社名 ( 権益比率 ): Myanmar Ivanhoe Copper Co.Ltd.(MICCL) 50% No.1 Mining Enterprise(ME1) 50% のJ/V 鉱床鉱種 :Cu 埋蔵鉱量 品位 : 1) Sabetaung 鉱体 51.2 百万 t 品位 Cu 0.432% Sabetaung south 鉱体 13.7 百万 t 品位 Cu 0.379% 海外鉱業情報特集号 : 世界の鉱業の趨勢 Vol.33 No.1 2003 年 5 月金属鉱業事業団 2) Sabetaung および Kyisintaung 鉱床 249.5 百万 t, 0.40% Cu Letpadaung 鉱床 804.0 百万 t 0.43% Cu ( 社 ) 日本メタル研究所 (2001.11): 東アジアの経済と銅産業 ( 第三部 ) - 東アジアの銅産業 3)Sabetaung および Kyisintaung 鉱床 246.674 百万 t 0.38%Cu Raw Materials Data August 2004 鉱床タイプ : ポーフィリーカッパー地質概要 : この地域の地質は白亜紀の緑色岩類とこれを貫く角閃石石英閃緑岩 グラノファイヤー岩脈 第三紀中新世 ~ 鮮新世の火山 堆積岩類および角閃石黒雲母斑岩と流紋岩岩脈ならびにそれらを覆う第四紀層からなる 鉱化作用は鮮新世に貫入した流紋岩岩脈によってもたらされた 流紋岩岩脈およびその周辺は角礫化され そこに鉱染と網状脈が広範に生成している この角礫帯は深部で収束し規模が大きいのに対して 地表付近では枝分かれしている 鉱石鉱物は初生帯では黄鉄鉱, 黄銅鉱 硫砒銅鉱 コベライトからなり 二次富化帯では輝銅鉱 斑銅鉱 黄鉄鉱 黄銅鉱が形成されている 鉱床は Sabetaung Kyisintaung Letpadaung の3 鉱床から成る Sabetaung 鉱床は東西約 0.4km 南北約 0.6km Kyisintaung 鉱床は東西約 3km 南北 1.2km Letpadaung 鉱床は東西約 3km 南北約 2kmの規模である 鉱化作用の年代 : 鮮新世 - 17 - ミャンマー

生産量 ( 直近 5 ヵ年 ) 生産開始年 : 1998(SX-EW) 年 粗鉱生産量 Mt 品位 % 金属量 t Cu 1999 6 0.50 26,700 2000 6.880 0.67 26,700 2001 7.781 0.58 25,900 2002 7.634 0.49 27,500 2003 8.767 0.60 27,900 Raw Materials Data August 2004 採鉱法 : 露天掘り 剥土比 0.95:1 金属回収法 : ヒープ ダンプリーチ SX-EW 法 鉱石の粘土含有量の増加に伴う鉱石処理の向上及び銅回収率の向上 を図るため 微細鉱物分離装置を導入している 備考 : 2001 年に Sabetaung 及びKyisintaung 鉱体の10km 南に位置する Letpadaung 鉱体 ( 鉱量 ; カットオフ0.1%Cuで804.0 百万 t 0. 43%Cu, 剥 土比 0.95:1) の開発 ( 年産 12.5~15 万 t) 及びリーチング設備の拡張 ( 年産 80~95 千 t) を含む第 2 段階 Monywa 銅開発プロジェクトに向けた 電力供給計画を策定した これによると 第 2 段階プロジェクトに必 要となる約 70~80 百万 wの電力は Myanmar Electric Corp. が建設予 定の200~300 百万 wの石炭火力発電所からの供給を想定している 年産 12,500t の SX-EW プラントの建設資金は 約 3 億 9 千万 US ド ル (Mandalay 南部の Thazi 変電所からの新規送電線の建設費用 2,500 万 US ドルを含む ) が見込まれている 8-2. Bawsaing 地域 :Shan 州 名前 :Bawsaing 位置 :Heho の北 30Km タイ西部との国境に近い Bawsaing 村 会社名 ( 権益比率 ):No.1 Mining Enterprise 鉱床鉱種 :Pb, Zn,Ag 埋蔵鉱量 :10,000t 品位 :6.12%Pb, 0.45%Zn 鉱床タイプ : ミシシッピーバレー型の層準規制鉱床 地質概要 : 鉱床はオルドビス紀の石灰岩中に 多数のきわめて不規則な形状 ( 鉱染状 塊状 鉱脈状 角礫状 縞状など ) を示す鉱体からなる 鉱石鉱物は方鉛鉱 白鉛鉱である 一般に方鉛鉱中の銀の含有率は高 - 18 - ミャンマー

く 10-70 Oz/t を示す 採鉱法 : 坑内掘り 50t/ 日 選鉱法 : 含銀鉛精鉱を生産 備考 :14 世紀頃より銀 鉛鉱山として知られている 8-3. Yadanatheingi 地域 : 北 Shan 州 名前 :Yadanatheingi 位置 :Maymyo の北東 80Km 会社名 :No.1 Mining Enterprise 鉱床鉱種 :Pb,Zn,Ag 埋蔵鉱量 :110,000t 品位 :3.90%Pb, 1.13%Zn 海外鉱業情報特集号 : 世界の鉱業の趨勢 Vol.33 No.1 2003 年 5 月金属鉱業事業団 地質概要 : 鉱石鉱物は方鉛鉱 銀の含有が高い 8-4. Bawdwin 地域 :Myanmar/Shan 州 名前 :Bawdwin 位置 : 中国国境から約 100Km 会社名 :No.1 Mining Enterprise 鉱床鉱種 :Pb, Zn Ni, Ag 埋蔵鉱量 品位 : 露天掘り対象酸化鉱 : 9.26 百万 t 5.05%Pb, 2.12%Zn, 0.28%Cu 坑内掘り対象硫化鉱 : 3.62 百万 t 7.65%Pb, 3.57%Zn, 0.16%Cu, 4.63 Oz/tAg 海外鉱業情報特集号 : 世界の鉱業の趨勢 Vol.33 No.1 2003 年 5 月金属鉱業事業団 鉱床タイプ : 熱水性裂罅充填鉱床 (U Soe Win, 1970) あるいは 火山性塊状硫化物鉱床 (Goossens, 1978) 地質概要 : この地域の地質はプレカンブリア紀の変成岩類とカンブリア-オ ルドビス系の火山 堆積岩類とそれらを貫く花崗岩 石英斑岩などか らなる これらの地層は延長約 80Km, NW 系の背斜構造を形成し 褶 曲に伴う NW 系断層が多く認められる 鉱床の母岩は Pangyum Series( オルドビス紀 ) と呼ばれる珪岩 粘板岩の互層である 鉱床周辺部では著しい珪化 カオリン化などの - 19 - ミャンマー

熱水変質作用が顕著である 鉱床は Pangyum Series と石英斑岩の破 砕部に形成された多数の塊状 レンズ状 脈状 鉱染状鉱体からなる 鉱化作用は Ag-Ni-Zn が卓越する早期と それらを切る後期の Cu-Ni-Co 脈によって代表される 主要鉱体は延長 1,000m 厚さ 50 m 傾斜延長 40mに達する 鉱石鉱物は方鉛鉱 閃亜鉛鉱 黄銅鉱 黄鉄鉱 四面銅鉱などである 発見の経緯 :15 世紀 採鉱法 : 露天掘りおよび坑内掘り 選鉱法 : 露天採掘により採掘された酸化鉱は Bawdwin 選鉱場において処理され 鉛 41.73% 亜鉛 9.03% 銅 3.06% 品位の精鉱を得ている 坑内採掘の硫化鉱は 隣接する Namtu 選鉱場で処理されており 平均精鉱品位は鉛 51.33% 亜鉛 14.07% 銅 1.162% である 同選鉱場においては この他亜鉛 26.08% 鉛 18.13% の精鉱も生産されている 備考 : 15 世紀に開山したといわれ 1911 年鉛製錬所が建設され 戦前は東洋一の鉱山といわれた 1951 年に本格的に再開し 1961 年国有化 された - 20 - ミャンマー

第 8-1 図 ミャンマーの稼行金属鉱山等位置図 金属鉱業事業団 1996-21 - ミャンマー

9. 新規鉱山開発状況 不詳 10. 探査状況外国企業としては Ivanho Mines Ltd の子会社 Ivanho Myanmar Holdings (Exploration) Ltd. 社が Mandalay から約 150km 南東のブロック 10 (Kyauksayit - Modi Taung 地域 ) において 地表トレンチ 試錐調査 坑道調査等を進めており 5 つの金鉱脈を捕捉 鉱脈は急傾斜で 0.3m から 2.7m の厚さ 金品位は 20g/t から 50g/t とされている 他方 East Asia Gold Corp. 社 (EAGC) Myanmar First Dynasty Mine Ltd.(MFDM) 社が探査権を放棄したとされ 探鉱活動は低調である 11. 製錬所概要 11-1. Namtu 地域 :Shan 州名前 :Namtu 位置 :Shan 州会社名 :No.1 Mining Enterprise 主要生産金属 :Pb, Ag 副産物 : 精製鉛 精製銀 アンチモニー鉛 銅マット及びニッケルスパイス備考 : 溶鉱炉 (4 基のうち 2 基稼動 ) の最低受入品位は 鉛 57% 亜鉛 10%~15% 銅 1~ 2% となっている 鉛品位の低下を避けつつ 鉛及び銀の生産を増加させるため 同社は 中国雲南省から溶鉱炉を購入した 同炉は 鉛 40% 亜鉛 8% 銅 3% まで許容可能とされており 能力は 50t/ 日となっている さらに中国企業 (M-Apex Construction 社 ) は 亜鉛スラグからの酸化亜鉛製造プラントを建設しており 酸化亜鉛は陸路雲南省に輸送されることとなっている - 22 - ミャンマー

鉱山製錬所位置図 Bawdwi Namtu Yadanathein Mony Bawsain Myanmar-Cu-Monywa Myanmar-Pb-Bawsaing Heho の北 30Km タイ西部との国境に近い Bawsaing 村? Myanmar-Pb-Yadanatheingi Maymyo の北東 80Km Myanmar-PbZn-Bawdwin Myanmar-PbZn-Namtu - 23 - ミャンマー

12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況資源開発協力基礎調査 ( 実績 ) 資源開発調査 1972~1975 年モニワ 地域開発計画調査 1974 年モニワ - 24 - ミャンマー

第 2 部地質解析 1. 地質 地質構造ミャンマーの地質は 西に Indian P1ate 東に Indochina P1ate 北に Eurasia P1ate に挟まれた Suture Zone 中に形成される 地質構造は南北方向に規制され 多様な地質ユニットから構成される ( 第 1-3 図 ) 先カンブリア期の結晶片岩を基盤とし それらの古生代被覆層がミャンマー東部に分布するのに対して 中生代から古第三紀のオフィオライトを伴ったフリッシュ堆積相がミャンマー西部に分布する さらに 中央部には地溝状に 新第三紀から第四紀の堆積物が分布する 地質状況や火成活動をもとに ミャンマーの地質は次の 5 つのユニットに分類される ( 第 1-1 図 第 1-1 表参照 ) 1-1. Eastern Highlands 地質区 Eastern Highlands 地質区の地質は タイ王国から中華人民共和国にかけて分布する先カンブリア期の変成岩類を基盤として 古生代の堆積岩類やそれらの変成岩類 さらに中生代の砕屑岩類に被覆されている また著しい断層活動や褶曲作用により複雑な地質構造を持つ これらの岩石に先カンブリア期から新生代にかけての花崗岩及び流紋岩類が貫入している 1-2. Northeastern Belt 地質区 Lashio 断層帯の北側からチベットにかけての地区をなす 地質は先カンブリア期の地層と花崗岩類から超塩基性岩類の多様な火成岩類から構成される 1-3. Centra1 Zone 地質区この Centra1 Zone 地質区は Graben 構造をなす 本地質区は先第三系の緑色片岩を基盤とし 新生代の岩石から構成され その中の漸新統から中新統は含油層である 火成活動は 白亜紀末の花崗岩類が北部に小規模に分布するほか この Centra1 Zone 地質区の中央軸部にカルクアルカリ岩系の流紋岩 安山岩 斑岩を主とする火山岩類が南北に連なり 火山帯 (Myanmar Arc) を構成する ( 第 1-3 図 ) その活動時期は始新世から現世にわたり 鮮新世のものが顕著である 1-4. Arakan-Chin Ranges 地質区白亜紀から始新世のフリッシュ相が厚く堆積し ヒマラヤ期 ( 白亜紀 ~ 現世 ) 造山運動による褶曲構造が発達する 1-5. Arakan Coasta1 P1ain 地質区 Arakan-Chin Ranges 地質区のフリッシュ相の地層の上に不整合に重なる新生代の堆積盆中に堆積した砂岩 礫岩及び泥岩からなる - 25 - ミャンマー

第 1-1 図 ミャンマー連邦の地質ユニット 金属鉱業事業団 1996-26 - ミャンマー

第 1-2 図 ミャンマー連邦地質図 須藤 1998 1. 第四系 2. 新第三系 3. 火山岩類 新生代 4. 白亜系 5. 三畳系 ジュラ系 6. 花崗岩類 主に中生代 一部古生代 7. 上部古生界 8.下部古生界 9. 塩基性 超塩基性岩類 10. 時代未詳の変成岩類 11. 先カンブリア - 27 - ミャンマー

第 1-3 図 ミャンマーのテクトニックマップ 白丸は第四紀火山 金属鉱業事業団 1996-28 - ミャンマー

第 1-1 表ミャンマーの地質区と鉱床区 ( 金属鉱業事業団 1996) Geological Unit Geological Age MIneral Province Potential Commodity Northeastern Belt Pre-Cambrian Eastern Highland Pre-Cambriann ~ Paleozoic North-Eastern Burma Shan-Tenasserim Pb Zn Cu Mo Cr Au Pb Zn Sn W Sb W Au Central Zone Mesozoic ~ Cenozoic Au Cu Arakan-Chin Ranges Cretaceous Oligocene ~ Arakan-Chin Ni Cu Pt Cr Arakan Plain Coastal Oligocene~Miocene 2. 鉱床 2-1. 鉱床生成区 ( 鉱床分布の特徴 ) ミャンマーの鉱床区は Arakan-Chin 鉱床区 North-Eastern Burma 鉱床区および Shan Tenasserim 鉱床区に分けられている ( 第 2-1 表 ) Arakan-Chin 鉱床区は超塩基性岩 (Cr Cu Fe Ni Pt) に また North-Eastern Burma 鉱床区は超塩基性岩 (Cr Cu Fe Pb Mn) 花崗岩(Pb Zn Mo Cu Au) 先カンブリア系 (Au) に伴った鉱床が分布している Shan Tenasserim 鉱床区は Eastern High-lands 地質区に相当し これまでのミャンマー鉱業にとって極めて重要な地域である この鉱床区では 花崗岩 (Sn W) オルドビス紀石灰岩(Pb Ba Zn) 上部古生代炭酸塩岩(Fe Sb) 上部古生代の砕屑岩類 (Sn W Sb) 先カンブリア期 古生代. 中生代の砕屑岩類(Cu Pb) ラテライト (Fe Mn) に鉱床が伴われる これらの各鉱床区は少なくとも幅 500km 延長 1,500km の規模を持つ それに対して Central Belt 中央を走るカルクアルカリ系の火山帯には Monywa 銅鉱床に代表される斑岩銅鉱床や浅熱水性金鉱床の存在が知られている ( 第 2-1 図 ) - 29 - ミャンマー

第 1-2 表ミャンマーの鉱床区 ( 金属鉱業事業団 1996) 鉱床区鉱化作用 Arakan-Chin 超塩基性岩に関係 (Cr Ni Pt Cu Fe) 超塩基性岩類に関係 (Cr Cu Fe Pb Mn) Northeast Burma 花崗岩類に関係 (Pb Zn Mo Cu Au) 先カンブリア系に関係 (Au) 花崗岩類に関係 (Sn W) オルドビス紀の石灰岩に関係 (Pb Ba Zn) 上部古生代の炭酸塩岩類に関係 (Fe Sb) Shan-Tenasserim 下部古生代の砕屑岩類に関係 (Sn W Sb) 先カンブリア紀 古生代 ジュラ紀の砕屑岩類に関係 (Cu Pb) ラテライトに関係 (Fe Mn) - 30 - ミャンマー

第 2-1 図 ミャンマーにおける非鉄金属鉱徴地位置図 金属鉱業事業団 1996-31 - ミャンマー

2-2. タイプ別 時代別分布の特徴 2-2-1. 銅銅の鉱徴地は国内で多く知られ 大部分が Eastern Highlands 地質区に分布している ( 第 2-1 図 ) また Central Be1t 地質区中にある南北方向の火山帯 (Myanmar Arc) にも銅の鉱徴地が知られている これらの鉱徴地は 漸新世から中新世にかけての酸性から中性の火山岩もしくはそれらに付随した貫入岩類の活動に関係すると言われている ミャンマー唯一の稼行銅鉱山である Monywa 斑岩銅鉱床は 南北方向の火山帯 (Myanmar Arc) と NNW 系の Lashio 断層の西側延長部との交点という特徴的な構造地質学的な位置にある それ以外の銅鉱床としては Arakan Chin Be1t 中のオフィオライトに伴う含銅硫化物鉱床の賦存も期待される 特に ミャンマー南西部の Lemyethna(Dokhta Chaung Cu anoma1y) では塩基性火性活動に伴う銅鉱化作用が知られ 銅品位 2~3% 鉱量 5.5Mt が推定されている ( 第 2-2 図 ) 2-2-2. 鉛 亜鉛鉛 亜鉛の鉱徴地は多く知られている ( 第 2-1 図 ) 鉱床タイプとして塊状硫化鉱床及びミシシピーバレー型鉱床がある 稼行鉱山は塊状硫化鉱床の Bawdwin 鉱山がある ( 第 2-2 図 ) また オルドビス紀の石灰岩中に胚胎するミシシピーバレー型鉱床の Bawsaing 鉱山等が Eastem Highlands 地質区に分布していることから ミシシピーバレー型鉱床のポテンシャルも高いと考えられる 2-2-3. 金ミャンマーでは昔から砂金の採取がおこなわれている ( 第 2-1 図 ) 金の初生鉱床の鉱徴地も多く分布しているが 長期に操業できるような埋蔵鉱量 品位を持った金鉱床の存在はまだ少ない 近年ミャンマー政府は 活発に金鉱床探査を行い Manda1ay 市の北方の Kwinthonze や Phayaung Taung 等において 多くの有望な鉱床が発見されている 特に Centra1 Zone 地質区の中央には南北方向に連なる火山帯 (Myanmar Arc) は インドネシアから続く火山帯 (Sunda Arc) の北方延長に当たり 浅熱水性金鉱床の初生鉱床の賦存が期待される また多くの鉱徴地が Central Zone 地質区と Eastern High1ands 地質区が境いする Shan Boundary 断層に沿って分布することから 金鉱床形成に重要な役割を果たしていると考えられる ( 第 2-1 図 ) 2-2-4. 錫 タングステン錫 タングステンの鉱徴地は Shan-Tenasserim 鉱床区に広く分布し ( 第 2-1 図 ) マレイシアから南北方向に連なる Tin Be1t の北方延長に位置する 主な鉱床は 中生代 ( 主としてジュラ紀 ) から第三紀にかけての花崗岩類に関係し 鉱脈 残留鉱床 漂砂鉱床からなる 2-2-5. アンチモン主要なアンチモニー鉱床は Shan-Tenasserim 鉱床区に多くあり ( 第 2-1 図 ) 主として上部古生界から下部中生界の石灰岩や砕屑岩中に脈状またはポケット状に産出する 個々 - 32 - ミャンマー

の鉱床は小規模と思われる 2-2-6. ニッケル唯一のニッケル生産鉱山は Bawdwin 鉱山であり 鉛 亜鉛鉱石の副産物としてニッケルスパイスが回収されている また Arakan-Chin Ranges 地質区中に分布する蛇紋岩化したオフィオライトには 熱帯風化を受けた中規模のラテライトニッケル鉱床が形成されているが 鉱山としては未だ開発されていない ( 第 2-1 図 ) 同様に Centra1 Zone 地質区北部にも超塩基性岩が分布することが知られており ニッケル鉱床のほか Podiform Chromite 鉱床や金及び白金族鉱床の賦存も期待される 特に Kachin 州 Indawgyi 湖周辺に分布する超塩基性岩中では金及び白金族等の初生鉱床の鉱徴地も発見されている ( 第 2-2 図 ) - 33 - ミャンマー

第 2-2 図 ミャンマーの稼行金属鉱山等位置図 金属鉱業事業団 1996-34 - ミャンマー

3. 鉱床胚胎有望地域ミャンマーの鉱床賦存ポテンシャルは未知数であり 今後の調査により新たな鉱床が発見される可能性は高いと思われる 特に 金 銅 鉛 亜鉛については古くから稼働鉱山もあり 類似地質地域での鉱床賦存ポテンシャルは高く 新しい鉱床が発見される可能性は高いと思われる このうち 金は Centra1 Zone 地質区に沿った新生代火山帯 (Myanmar Arc) に 砂金鉱床のみならず初生鉱床の鉱微地が多く発見されており その地質的な特徴から浅熱水性金鉱床や Monywa 鉱山に類似した斑岩銅鉱床の賦存が期待される 鉛 亜鉛鉱床は Eastern High1ands 地質区で Bawdwin 鉱山に代表される古生代の塊状硫化鉱床やミシシッピーバレー型鉱床の賦存が期待される また ニッケル クロム等についても Centra1 Zone 地質区北部や Arakan-Chin Ranges 地質区にある超塩基岩体から有望な鉱徴地が既に発見されている ( 第 3-1 図参照 ) - 35 - ミャンマー

第 3-1 図 ミャンマーの鉱床賦存有望地域 金属鉱業事業団 1996-36 - ミャンマー

資料 ( 統計 法律 文献名 URL 等 ) 文献 金属資源レポート 2004.05 Vol.34 No.1 特集号 : 世界の鉱業の趨勢 JOGMEC Raw Materials Data August 2004 非鉄金属鉱山データ& マップ世界の主要な鉱山銅 2004 年 3 月 ( 社 ) 日本メタル経済研究所 ( 財 ) 国際鉱物資源開発協力協会 (2003): 平成 14 年度アジア産業基盤強化等事業法制度整備支援調査 : ミャンマー及びベトナムにおける鉱業関連法制度整備支援調査ミャンマー編報告書平成 15 年 3 月 金属鉱業事業団(2002): 平成 13 年度海外衛星画像解析調査報告書インドシナ マレー半島地域ミャンマー連邦 2002 年 3 月 非鉄金属鉱山データ& マップ世界の主要な鉱山銅 2002 年 3 月 ( 社 ) 日本メタル経済研究所 海外鉱業情報特集号 : 世界の鉱業の趨勢 Vol.33 No.1 2003 年 5 月金属鉱業事業団 ( 社 ) 日本メタル研究所 (2001.11): 東アジアの経済と銅産業 ( 第三部 ) - 東アジアの銅産業 須藤定久(1998): ミャンマーの地質と鉱物資源地質ニュース 524 号 1998 年 7 月 金属鉱業事業団資源情報センター (1996): ミャンマーの資源開発環境 1996 年 7 月 ( 財 ) 国際鉱物資源開発協力協会 (1996): 平成 7 年度資源開発協力基礎調査プロジェクト選定調査報告書インドシナ ミャンマー平成 8 年 3 月 金属鉱業事業団(1991): 地質解析委員会報告書東南アジア オセアニア島嶼地域の地質と鉱物資源 URL ミャンマー鉱山省 http://www.myanmar.com/ministry/mines/ - 37 - ミャンマー