Title 眼窩転移で発症した前立腺癌の 1 例 Author(s) 酒井, 英樹 ; 井川, 掌 ; Saha, P.K.; 野俣, 浩一郎 ; 金武, 洋 ; 斉藤, 泰 Citation 泌尿器科紀要 (1992), 38(1): 77-80 Issue Date 1992-01 URL http://hdl.handle.net/2433/117444 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University
A CASE OF PROSTATIC CARCINOMA PRESENTING AS A METASTATIC ORBITAL TUMOR Hideki Sakai, Tsukasa Igawa, Pabitra Kumar Saha, Koichiro Nomata, Yoshiaki Yushita, Hiroshi Kanetake and Yutaka Saito From the Department of Urology, Nagasaki University School of Medicine A 66-year-old man presented with progressive proptosis of the left eye associated with ocular pain. A computed tomographic scan showed a high density mass in the posterolateral portion of the left orbit. The patient underwent surgical removal of the tumor and histopathological examination revealed adenocarcinoma of unknown origin. To find out the primary focus of the tumor the patient was referred to our department, where biopsy of the prostate revealed adenocarcinoma. Further, immunohistochemical examination of the orbital tumor was performed and prostatic acid phosphatase was identified. Finally, we made a diagnosis of orbital metastasis from prostatic carcinoma. This paper presents a rare case of prostatic carcinoma with orbital metastasis and reviews the literature of the subject. Key words: Prostatic carcinoma, Orbital metastasis, Immunohistochemistry (Acta Urol. Jpn. 38: 77-80, 1992)
泌尿 紀 要38巻1号1992年 78 陰影 がみ られ,造 影CTで MRIで 強 い 増 強効 果 がみ られ た. も同 部 に 左眼 窩 後 壁 を破 壊す る 直 径3 5cm の腫 瘤 が 認 め られた(Fig.2).脳 神 経 外科 手術 後 に 行 わ れ た 骨 シ ソチ グ ラ ムで は,肋 骨,胸 骨,腰 椎,恥 骨 に 多発 性 骨 転移 巣 を 認 め た.当 科 へ 転科後 の検査 で は,胸 部 単純 撮影 お よび静 脈 性 腎 孟 造影 に 異 常 な く, 腹 部CTscanお よび超 音 波 検 査 で は 後 腹 膜 リンパ節 の腫 大 や 他臓 器 へ の転 移 は 認 め なか った,経 直 腸的 超 音 波断 層 法 で は,前 難嚢 Fig.1.Histopathologicalexaminationoftheor- bitaltumorrevealedadenocarcinoma. (H.E.stain, 100) 立 腺 右 葉 にhypoechoiclesion を 認 め た. 病 理 学 的 検 査:前 立 腺 の 組 織 像 は 融 合 管 状腺 癌 像 を 示 す 中 分 化 腺 癌 で あ り,眼 窩 腫 瘍 の 組 織 像 と一 致 して い た.ま た,前 立 腺 酸 性 フ ォス フ ァ ター ゼ(PAP)に 対す る モ ノ クロ ーナ ル 抗体 を 用 い た 免疫 組 織 化 学 的 染 色 は,両 者 と も陽性 で あ っ た(Fig.3). 経 過=眼 窩 腫 瘍 摘 出後,同 部 に 計20Gyの 放 射線 治療 が 施 行 され て い た.原 発 巣 が判 明 して 当科 へ 転 科 後は,当 科 に お け るstageD前 立 腺 癌 の治 療方 針 に 従 い内 分 泌化 学 療 法 を 行 った.つ ま り,エ チ ニル ェ ス トラ ジオ ールlmgの ソ20mg隔 内 服 開 始 と同 時 に,シ ス プ ラチ 日3回 お よび ア ドリア マ イ シ ソ30mg 1回 を1コ ー ス とす る化 学 療 法 を3コ の 後 両 側精 巣摘 出術 を施 行 した,さ て エ チ ニル エ ス トラ ジ オ ー ルlmgお mgの 経 口投 与 を 行 った.1年 ー ス行 った.そ らに維 持 療法 とし よび5-Ful50 後 に 原 発 巣 の再 燃 の た め再 入 院 した が.転 移 巣 の増 悪 は認 め な か った.再 度 内 分 泌化 学 療 法 を施 行 し,そ の 後 外 来 通 院 中 で あ る. 考 察 眼 窩 腫 瘍 に お け る転 移 性 眼 窩 腫 瘍 の 占 め る割 合 は, Hendcrsonら1)に よ る と7.3劣 と報告 され て い る.転 移 性眼 窩 腫 瘍 の 原 発 巣 と して最 も頻 度 が高 い のは 乳 腺 で あ り,48 51%を 肺 が6 7%を Fig.2.AcQntrast(Gd)-enhancedMRIscan oftheheadshowedamassinthe posterolateralportionoftheleftorbit. 占 め,つ いで 前 立 腺 が7 17%, 占め て い る2 3).つ ま り男 性 の転 移 性 眼 窩腫 瘍 の場 合,前 立 腺 は 原発 巣 と して最 も頻 度 の高 い 器 官 で あ る. Carriereら4)は1936年 繕i霧 鍮灘 耀 懸,三av{騨,臓 轍 ll'灘;輔 る と年 齢 分 布 は52 85歳(平 9例,右5例,1 lij一 側1例,不 窟 Fig 3 Localizationofprostaticacidphospha- 状 は 眼球 突 篭 聴 側は左 明2例 で あ り,左 が 多 い.原 発 巣 の 診 断 に つ い て は,眼 症 状 発 現 前 に前 立腺 癌 と診 断 され て い た 症 例 は4例 の み で,眼 窩 転 移 で発 症 した 後 の検 索 で 前 立腺 癌 と診断 され た 症 例 がll例 で あ )た(不 明2例).治 懸 猿縦 鮒 難欝 均70歳),症 出,複 視,疹 痛,視 力 低 ドが み られ て い る.患 一麟 灘継 欝 囎 か ら1977年 まで に 報告 され た 前 立腺 癌 の眼 窩 転移17例 を 集 計 して い る.こ れ に よ 療 は12例 に つ い て 記 載 され て お り,そ の 内訳 は 内分 泌 療 法9例,眼 放 射線 療 法2例,眼 窩腫瘍に対する 窩 内 容除 去術1例 で あ った.内 分 tasewasdemonstratedbyanimmuno- 泌 療 法 を 行 った症 例 で は1例 を除 き,眼 球 突 出 の軽 減 histochemicalexamination,( 200) や視 力 の改善 が み られ てい る.