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クラウド環境のと関連権の相補性 児玉晴男 クラウド環境に置かれたコンテンツの利活用が着目されている. 著作物がクラウド環境でグローバルに利活用されるとき, と関連権との関係および copyright との対応関係が明確にされなければならない. ここで, わが国のと関連権は,, 著作者人格権, 出版権, 実演家人格権, 著作隣接権で捉えられよう. そこで, 本稿は, 国際法界に現存する author's right アプローチと copyright アプローチとを架橋し, それら権利を人格的権利と経済的権利との相互関係から分析する. Complementarity of Copyright and Related Rights in Cloud Environment Haruo Kodama Usage and application of contents in cloud environment is gathering attention. When Usage and application of contents in cloud environment is gathering attention. When copyrighted works in cloud environment is used globally, relation of copyright and related rights has to be clarified, as well as correspondence relation with copyright. Here, copyright and related rights in our country can be understood as economic rights of author, moral rights of author, publication right, moral rights of performer and neighboring rights. In this report, therefore, the copyright approach and the author's right approach existing in the world of international copyright law is bridged, and those rights are analyzed from the reciprocal relation between moral rights and economic rights. 1. はじめに 今日, クラウド環境に置かれたコンテンツの利活用が着目されている. それは, 著作物とメディアの関わりからアナログ環境と対比され, 著作物のディジタル化 ネットワーク化, マルチメディア, そしてユビキタス, クラウドといったディジタル環境のいろいろに表現されたものを内包する. ここで, わが国の法が有形的な媒体 (tangible media) に固定 (fixation) しなくとも著作物を保護する点からいえば, アナログ環境でもディジタル環境でも違いがないことになる. アナログ環境, すなわち印刷メディアの制度とディジタル環境, すなわち情報メディアの制度とは対比される関係にあるのではなく, 本来, それらは重ね合わされる関係にある. クラウド環境で著作物が情報通信端末を通してグローバルに利活用されるとき, と関連権および copyright との対応関係は, 明確にされなければならない. ここで, の関連権は, 著作隣接権を指すとされるが, 人格的権利との関連も含め広義にとらえる必要があろう. ここで, の譲渡は, 英米法系の copyright transfer と翻訳関係にある. そうすると,copyright transfer との譲渡との整合性をとるために著作者人格権の不行使特約が付加されることがある. 同様な課題は, 等管理において, 著作者人格権の管理にはなりえないことにも関連する. また,copyright transfer は, 出版権の設定と類似する. ところで, 上記の不確定な関係は, 情報処理学会のホームページの All Rights Reserved, Copyright (C) Information Processing Society of Japan にも顕現している. ここには,author's right アプローチと copyright アプローチの法理の交差が生じている. 著作者の権利 (author's right) の観点からいえば, で表記される著作者の経済的権利 (economic rights) は, 著作者の人格的権利 (moral rights) との関係を明らかにするものでなければならない. そして, 著作者の権利に隣接する権利, すなわち著作隣接権 (neighboring rights) と実演家人格権 (moral rights of performer) と copyright の関係が見いだされることも求められよう. また, そのとき, と関連権は, わが国では, 著作者人格権,, 出版権, 実演家人格権, 著作隣接権を対象に検討されなければならない. すなわち, と関連権および copyright との合理的な関係は, 人格的権利を含めて広義にとらえた比較対照を通して検討する必要がある. 本稿は, クラウド環境のと関連権の合理的な関係を考究する. ここで, 本稿では, 著作者の権利と著作隣接権者の権利からと関連権をとらえ, 人格的権利 ( 著作者人格権, 実演家人格権 ) と経済的権利 (, 著作隣接権, 出版権 ) の相互の関連を考慮する. そして, 本稿の目的は, 国際法界に現存する author's right アプローチと copyright アプローチとを架橋し, と関連権の関係および copyright 放送大学 / 総合研究大学院大学 The Open University of Japan /The Graduate University for Advanced Studies 1

と moral rights との関係を一対一に対応づけることを目的にする. 2. クラウド環境のと関連権に関する課題 コンピューティングの進展の流れは, アナログ型からディジタル型そしてアナログ型へ, ハードウェアとソフトウェアの進展の流れは一体化され分離されそして一体化をたどり, 情報ネットワークの進展の流れは分散化され集中化されそして分散化をたどる. そのような進展のスパイラルな循環の中で, アナログ環境からディジタル環境へ, その中でユビキタス環境そしてクラウド環境といったいろいろな表現を見せている. その中で, クラウドコンピューティングは, それらの要素を内包している. そして, クラウドサービスは, 国境を越えて提供されることから, プライバシーやデータ保護の在り方を巡って国際的なルールを整備する必要性が指摘されている [1]. プライバシーやデータ保護の在り方は著作物とその伝達する行為に関する保護の在り方と直接 間接に関連し, その整備のためにはと関連権について国際的な整合性がはかられなければならない. ここで, と copyright との関係は, が著作者の経済的権利としての copyright と単純に置き換えられえない. そして, と関連権および copyright との関係が議論されることはない. 著作物がアナログ環境からディジタル環境へ利活用されるとき, 著作物は情報ネットワークを介して瞬時にグローバルに伝達される. ディジタル環境がユビキタス環境, クラウド環境と継受されるとき, と関連権は, 国際法界に現存する author's right アプローチと copyright アプローチを架橋した理解が必要になる. そのような状況下にあるが, ディジタル環境に適合した制度の新規立法が叫ばれて久しい. 実際, ディジタル環境に対応させるための関連条文の改正はなされている. しかし, それらは, アナログ環境で著作物が利活用されてきた世界で慣例化されたことがディジタル環境で利活用されるときの権利者と利用者との利益調整が主となっている. 翻って, 現行の制度は, 複雑化しており, 単純化が指摘されている [a]. それらの法制の混乱は, 著作物のディジタル化 ネットワーク化に起因して派生した問題といえる. それがクラウド環境のと関連権の課題といえよう. その課題の解決は, 無体物である著作物が有形的な媒体で固定されて利活用される態様が著作物のディジタル化 ネットワーク化されて伝達 ( 送信 ) される態様との整合性をはかる点にあろう. ところで, アメリカ連邦制度において, ディジタルミレニアム法 (DMCA (Digital Millennium Copyright Act))[b] が 1998 年 10 月に成立し,2000 年 10 a) 文化審議会分科会 : 文化審議会分科会報告書,p.3(2004.1). b) ディジタルミレニアム法は,U.S. Code Title 17 を改正する法律である. 月に施行された. これは, 有形的な媒体への固定がアメリカ連邦制度で保護する要件とするアメリカにおいては不可欠な法改正になるが, 有形的媒体への固定を要件としない制度においては無用なはずである. その要因は, 国際的にはベルヌ条約にあるものの, 国際法界に現存する二つの法理の author's right アプローチと copyright アプローチによる混同に他ならない. さらに, それら法理の混同は, copyright transfer との譲渡との直訳的な対応, それに起因する著作者人格権の不行使特約, 日本版のフェアユースやクリエイティブコモンズなどに現れており, と all rights reserved の併記, 等管理などに見られる. 上記から言えると関連権の課題は,author's right アプローチと copyright アプローチの法理が交差するクラウド環境において, と関連権が人格的権利との関係を含み単純化されて,copyright と moral rights との一対一に対応づけられる関係を見いだすことにある. 3. と関連権の構造とその相互の関係 [2] わが国の法におけると関連権の構造とその相互の関係を分析し, その考察を基点に, 日欧米と日中韓の (copyright) と関連権の構造とその相互の関係を分析する. 3.1 わが国のと関連権の構造とその相互の関係わが国の制度では, 著作者の権利が著作者の人格的権利である著作者人格権と著作者の経済的権利としてのから構成される. また, 著作物を伝達する行為に対する著作隣接権者の権利は, 実演家人格権と著作隣接権からなる. さらに, 複製権者 ( 者 ) は, 経済的権利の出版権を設定することができる. したがって, わが国におけると関連権は, 著作者人格権,, 出版権, 実演家人格権, 著作隣接権を対象とし, その相互の関係が人格的権利と経済的権利から構成される. (1) と関連権の人格的権利の構造とその相互の関係著作者人格権は, 公表権, 氏名表示権, 同一性保持権からなる. それら権利のうち, 氏名表示権と同一性保持権が実演家人格権に含まれる. 著作隣接権者の権利の中で実演家の権利には, 限定された実演家人格権が認められる (WIPO 実演 レコード条約 5 条, 法 90 条の 2). すなわち, 著作者人格権は, 実演家人格権を内包する権利の構造を有する. なお, ベルヌ条約は, 公表権の規定をもたない. それは, 制度の保護の対象は, 本来, 公開を前提とすることによる. また, 氏名表示権は, 最初に発明 発見した者に与えられるエポネミーとみなせる名誉の証しといえる. 公表権と氏名表示権は, 他法を含めて制約されるが, 同一性保持権の制約は見られない. ここに, 同一性保持権は, 人格的権利のエトスといえる. 2

(2) と関連権の経済的権利の構造とその相互の関係は支分権からなるが, その支分権は多様性がある. その多様性は, 以下の関連を有している. インターネットによる著作物の流通 利用において, 複製権 ( 法 21 条 ) と公衆送信権 ( 同法 23 条 ) が主としてとりあげられる. その中で, 公衆送信権が単独でとりあげられることがある [3]. 公衆送信権は, 放送権, 有線放送権, 自動公衆送信権を含む. また, 自動公衆送信権は, 送信可能化権を含む. すなわち, 公衆送信という要素は, 放送, 有線放送, 自動公衆送信という要素を包含し, さらに自動公衆送信という要素は送信可能化という要素を含むことになる. ここで, 公衆送信権の公衆送信の対象物に焦点をあわせれば, 著作物を公衆送信する要素にはその対象物を複製する要素を含むことが前提になろう. 通信カラオケによる歌唱およびカラオケ装置における歌詞および楽曲の上映または再生について, の支分権の演奏権 ( 同法 22 条 ) と上映権 ( 同法 23 条 ) が対象になる [4]. この演奏と上映は, 歌詞および楽曲の複製の要素を含む. の支分権の中の譲渡権 ( 同法 26 条の 2 第 1 項 ) は, 書籍などの物の流通には譲渡権の適用が除外される. 譲渡権の対象には映画の著作物が除かれている. それは, 映画の著作物には, 譲渡権とは別に, 頒布権 ( 同法 26 条 ) が規定されているからである. それら譲渡, 頒布は,copyright と copyrighted works との関係と適合し, いわゆるアナログ環境の著作物の伝達に伴う要素の性質が集約されている. 譲渡, 頒布という要素は, 複製と表裏一体の関係にある. の制限の中において, 公共貸与権の議論がある. 貸与権がの保護に関連することから, 公共貸与権はの制限で想定されるの支分権といえる. それらは, 重ね合わされた関係にある. 頒布権 ( ベルヌ条約 14 条 1 項 ), 譲渡権 (WIPO 条約 6 条,WIPO 実演 レコード条約 8 条 ), 貸与権 (WIPO 条約 7 条,WIPO 実演 レコード条約 9 条 ) は, わが国の頒布権 (right of distribution), 譲渡権 (right of transfer of ownership), 貸与権 (right of lending) とは一対一に対応するものではない. 国際条約における譲渡権 (right of distribution) は一般的頒布権の意味をもち, これはわが国で譲渡権になる [c]. また, わが国の貸与権が映画の著作物を除いてすべての著作物を対象としているのに対し, 国際条約における貸与権 (right of rental) は, 映画の著作物を含むコンピュータ プログラムとレコードに収録された著作物に限られる. それらは, 重複の関係にある. 中古ソフト事件では, 消尽が適用されないとされていた頒布権に対し, いったん c) 斉藤博 : 法, 有斐閣,p.173(2000). 適法に譲渡された場合, 頒布権のうち譲渡に関する権利は, その目的を達成したものとし, 消尽すると結論づけられている [d]. この検討は, 頒布が複製物を公衆に譲渡または貸与すること ( 同法 2 条 1 項 19 号 ) から, 頒布という要素の中に譲渡と貸与という要素が内包されていることを意味する. そして, 頒布と譲渡の対象物の伝達 ( 送信 ) においても, 対象物の複製の要素が含まれよう. 管理曲が他人のを侵害する場合の日本音楽協会 (JASLAC) の責任に関して, 編曲権が中心に検討されている [e]. ここで, 編曲という要素には, 編曲の対象物である曲の複製という要素が前提にあろう. 二次的著作物の作成に関する権利と二次的著作物の利用に関する権利は, 著作物の複製の及ぶ範囲になる. の支分権の例示規定とは別に, 輸入権 ( 同法 113 条 5 項 ) がある. この輸入とは, 商業用レコードの頒布の要素であり, 商業用レコードという複製物のグローバルな伝達の経路に対応する. この輸入権の性質は, 頒布権, 譲渡権. 貸与権と同様である. 輸入という要素は, 複製と表裏一体の関係にある. 上記から, の支分権は単純化の観点から構造化され, 著作物の複製 (reproduction), 著作物の伝達 (transmission), 著作物の派生 (derivative) に関する権利に分類されよう ( 図 1). それらは, の支分権の例示規定が著作物の複製を起点に, 著作物の伝達 派生に伴う過程に対応して循環する態様を示す. これは, 遺伝型としての複製権が表現型としてのの支分権 ( 複製権を除く ) に形を変えて表出しているとみなせる. がたとえ支分権ごとに別々に譲渡の対象になるとしても, 各支分権の背面で複製権が連携 融合している. その関係は, 無体物の著作物が複製され伝達し派生していく形態に沿って形成される中の複製権が, また有体物の著作物 ( 現作品 ) は copyrighted works と同様の形態で複製権がのエトスとなる. の支分権の複製権に関連して, 出版権 ( 法 80 条 1 項 ) が規定されている. 出版は公表 ( 同法 4 条 ) または発行 ( 同法 4 条の 2) に関わるものであり, 著作物の複製の一形態である. また, 出版という要素は, 公衆送信という要素との関係から, 著作隣接権との相互関係が想定できる. ここに, の支分権の分節化に連動するかのように, 各支分権の相互間の関係が切断されているかのように扱われている. しかし, いままでに検討してきたように, 複製という要素は, の支分権の各要素に直接または間接に関与していることになる. そして, 著作隣接権者の経済的権利は, の支分権が選択的または階層的に適用される. その選択的な適用は, の支分権の関係を複雑にする. ここに, (copyright) の構造の明確化は, 著作者の権利と著作隣接者の権利との関連づけにおいても有効であろう. d) 最一判平 14.4.25 民集 56 巻 4 号 808 頁. e) 東京地判平 15.12.26 判時 1847 号 70 頁. 3

著作物の複製に関する権利複製権 ( 出版権 ) 著作物の伝達 ( 構造 ) との支分権の単純化 著作物の伝達に関する権利上演権演奏権上映権公衆送信権 ( 放送権有線放送権自動公衆送信権 ) 伝達権口述権展示権頒布権譲渡権貸与権 ( 公共貸与権 ) 輸入権 著作物の派生に関する権利二次的著作物の作成に関する権利 ( 翻訳権 編曲権 翻案権 ) 二次的著作物の利用に関する権利 伝達 派生 著作物の伝達 ( 構造 ) 複製 の支分権の相互関連 複製の及ぶ範囲 上記の検討から, と出版権は著作物の複製と伝達と派生に関して複製権で連携 融合し, 著作隣接権は著作物の有形的媒体への固定による複製と伝達に関して複製権で連携 融合し, 著作者人格権は実演家人格権を内包する ( 図 2). 人格的権利は, 同一性が保持された著作物が複製 伝達 派生していく過程で保証される権利になる. したがって, わが国のと関連権は, 著作者人格権,, 出版権, 実演家人格権, 著作隣接権の 5 つの権利が人格的権利は同一性保持権で経済的権利は複製権で統合される. 3.2 日欧米の (copyright) と関連権の構造とその相互の関係著作者の人格的権利と著作者の経済的権利の規定をもつ国においても, の構造に差異がある. それは, 法理の差異, すなわち著作物の有形的な媒体への固定の有無 (copyright アプローチと author's right アプローチ ) および人格的権利と経済的権利との相互関係からいえる. 人格的権利と経済的権利とは,author's right アプローチにおいては二重の関係から,copyright アプローチでは二分の関係で理解されるものになる ( 図 3). 法界の二つの法理の関係 author s rightアプローチ copyrightアプローチ 図 1 の支分権のカテゴリーおよびの支分権の要素の構造化 [5] 人格的権利著作者人格権 ( 公表, 氏名表示, 同一性保持 ) 実演家人格権 ( 氏名表示, 同一性保持 ) 同一性保持権 経済的権利 (, 出版権, 著作隣接権 ) copyright 経済的権利 著作物の複製に関する権利 著作物の伝達に関する権利 著作物の派生に関する権利 複製権 著作隣接権はの支分権のうち有形的媒体への固定に伴う著作物の複製と伝達に関する権利に対応 図 2 わが国のと関連権の構造とその相互の関係 人格的権利 ( 著作者人格権, 実演家人格権 ) moral right 図 3 法界の二つの法理における権利の対応関係 ドイツにおける著作者の人格的権利は, 公表権 ( ドイツ法 12 条 ), 著作者であることの承認 ( 同条 13 条 ), 著作物の歪曲 ( 同条 14 条 ) になる. ドイツにおける著作者の経済的権利は, 著作物を個別的ないしはすべての利用方法によって利用する権利 ( 利用権 ) である ( 同法 15 条,31 条 ). すなわち, 著作者の権利の財産的な構成要素は, 著作物を有形的形式への複製, 発行, 公に講演, 公に送信, 翻案, 翻訳物であ 4

る著作物の複製および送信等は利用権になる. そして, フランスの著作者人格権は, 公表権 尊重権 ( フランス法 121 の 2 条 1 項 ), 氏名表示権 ( 同法 121 の 1 条 1 項 ), 修正 撤回権 ( 同法 121 の 4 条 ) になる. フランスは, 財産権を著作者に属する利用権とし, 上演 演奏権 ( 同法 122 の 2 条 ) および複製権を包含する ( 同法 122 の 1 条 ). 上演 演奏権は, いずれかの方法 ( 公の朗読, 音楽演奏, 演劇的上演, 公の展示, 公の上映, およびテレビ放送 ) により, 著作物を公衆に伝達することをいう ( 同法 122 の 2 条 ). 複製権は, 著作物を間接的に公衆に伝達することができるいずれかの方法によって著作物を有形的に固定することをいう ( 同法 122 の 3 条 1 項 ). 著作物の発行に関しては, 複写複製権の譲渡の規定がある ( 同法 122 の 10 条 ). 著作隣接権者の権利に関しては, わが国と同一性を有する. アメリカは,copyright の対象を著作物, 編集著作物, 二次的著作物等としている ( アメリカ連邦法 102 条 (a),103 条 (a)). そして, 著作物は, 著作物が最初にコピーまたはレコードに固定される時 ( 有形的な媒体への固定 ) に創作されることになる. このような保護対象に対して,copyright の束 (bundle) が規定されている ( アメリカ連邦法 106 条 ). ここで,copyright の束は,copyrighted works が伝達 ( 送信 ) される態様からなる.copyrighted works が伝達 ( 送信 ) される形態は, 複製 (reproduction) ( アメリカ連邦法 106 条 (1)), 二次的著作物の作成 ( 同法 106 条 (2)), 頒布 (distribution) 貸与 (rental) 輸入 (imports)( 同法 106 条 (3)), 翻案 (adaptation) と翻案 (translation)( 同法 106 条 (4)), 実演 (performance) と展示 (display)( 同法 106 条 (5)), さらに, ディジタル環境に対応させた録音物のディジタル送信 (digital transmission of sound recordings)( 同法 106 条 (6)) からなる. この copyright の束は, と著作隣接権とが一体化した態様とみなしうる. なお, アメリカの moral rights は, 視覚芸術著作物 (works of visual art) の著作者が氏名表示 (attribution) と同一性保持 (integrity) の権利を有すると規定するにとどまる ( 同法 106A 条 ). ここで,copyright の制限の領域といえるクリエイティブ コモンズ ライセンスでは, 氏名表示, 同一性保持の保証に関する条項が含まれる [f]. 欧米の (copyright) は, 著作物が創作者から利用者へ伝達 ( 送信 ) され, 新たに著作物が創作されていく知的創造サイクルに対応づけられていよう. 著作物の利用権と copyright と copyrighted works の態様は, わが国のの支分権の要素, 著作物の伝達 ( 送信 ) における形態と相同である. これは, の支分権の要素の構造化の導出の観点を与える. 3.3 日中韓のと関連権の構造とその相互の関係 [6] 日本, 中国, 韓国の制度を英訳されたもので理解するとき, と copyright との翻訳の課題とともに, 漢字表記された意味の差異についても相互の整合性をはか f) http://creativecommons.org/licenses/by/3.0/legalcode. る必要がある. ここで, 中国, 韓国の ( 経済的権利の支分権 ) は, 日本 韓国の制度は author s right アプローチといえるが, 中国の制度は author s right アプローチと copyright アプローチとの両者を兼ね備えている. は, わが国では著作者の経済的権利であるが, 韓国ではは著作人格権と著作財産権と漢字表記される ( 韓国法 10 条 ). 中国では, に人格的権利と経済的権利が含まれる ( 中国法 10 条 ). 東アジアにおける制度は, 日本 中国 韓国のそれぞれの制度の中で, と関連権の構造を見いだす検討が必要になる. その検討の対象は, 著作者の権利の人格的権利と経済的権利との相互の関係, 出版者の権利, 著作隣接権者の権利の人格的権利と経済的権利になる. ここで, 中国法の特色は, の財産権の支分権に発行権を置いていることである ( 中国法 10 条 1 項 6 号 ). わが国における出版権 ( 法 79 条 ~88 条 ) と同じ性質を有する権利といえる. なお, 発行権は著作隣接権で図書出版者の権利 ( 同法 29 条 ~35 条 ) との対応関係をもつ. しかし, 出版権と著作隣接権との関連はない. この関係は, 韓国法も同様の関係にある ( 韓国法 54 条 ~60 条 ). 日本著作者の権利 ( 著作者人格権 ) ( 人格権 + 財産権 ) 欧州 著作者の権利 ( 著作者人格権 * 財産権 ) 人格的権利と経済的権利との関係 韓国 ( 著作人格権 + 著作財産権 ) ( 財産権 人格権 ) 中国 米国 ( 財産権 + 人格権 ) ( 人格権 + 財産権 ) 図 4 と関連権における人格的権利と経済的権利との緊密度 欧米における (copyright) の構図は, 中韓の法制度に変形した (copyright) の構図として顕現する. 東アジアのの構造の関係は, 一方で国際的なの構造の関係に延長でき, 他方でわが国のに反射している. と漢字表記されるとき, たとえハングルで 저작권 と表記されようと, ひらがなで ちょさくけん と表記されようと, 漢字表記される は人格的権利と経済的権利との二 5

重性から理解することが必要となる. ここで, 制度の人格的権利と経済的権利の相互の関係は,author s right アプローチおよび copyright アプローチで人格的権利のとらえ方で差異がある. そして, 著作者の人格的権利と著作者の経済的権利との相互の関係は, 一元論をとるのか二元論をとるのかで, それらの緊密度が異なる ( 図 4). ここに, と関連権には人格的権利と経済的権利との連携 融合の関係が見いだせて,copyright の保護と制限の中で moral rights は連携する. 4. クラウド環境におけると関連権の合理的な関係 情報ネットワークを介して著作物が利活用されるクラウド環境では, ディジタル環境の中で有形的な媒体の固定を擬制する. そのとき, 著作物の伝達の二つの態様は, author s right アプローチおよび copyright アプローチとは反対称の関係となり, クラウド環境では重ね合される ( 図 5). 著作物 (works) の形態は, 原作品 (originals) および複製物 (copies) が共存する. 粒子的なとらえ方 (copyright アプローチ ) 波動的なとらえ方 (author s right アプローチ ) ( 著作者の権利 ) は, 人格的権利と経済的権利と連携 融合する. ( 著作者の権利 ) は, 複製権 ( 経済的権利 ) と同一性保持権 ( 人格的権利 ) で構造化される. 著作者人格権 ( 人格的権利 ) の公表権 氏名表示権 同一性保持権は, 実演家人格権 ( 人格的権利 ) の氏名表示権 同一性保持権を内包する. 複製権 ( 経済的権利 ) は, 著作物の伝達に関する支分権に対応する著作隣接権 ( 経済的権利 ) を内包する. 著作物の複製に関する支分権である複製権 ( 経済的権利 ) は, 出版権を内包する. 出版権は, 著作物の複製に関する支分権 ( 複製権 ) と同一性をもち, また著作隣接権 ( 経済的権利 ) とも同一性を有する. 有形的な著作物および有形的媒体に化体した複製物は,copyrighted works と同じ性質を見せる. copyright の制限 ( クリエイティブコモンズ条項 ) において,moral rights の保護が見いだせる. 経済的権利の制限において, 著作物の伝達に関する支分権 ( 公共貸与権 ) が想定される. 上記から, アナログ環境とディジタル環境および権利の保護と制限が重ね合わされるクラウド環境のと関連権は, の人格的権利 ( 同一性保持権 ) と経済的権利 ( 複製権 ) に構造化されて, および copyright と moral rights とが連携し, それらは相補性 (complementarity)[7] を見せる ( 図 6). 著作物と著作物を伝達する行為との融合したとらえ方 ( 同一性保持権, 複製権 ) moral rights ( 波動的なとらえ方と粒子的なとらえ方との二重性 (duality)) 図 5 クラウド環境の著作物の伝達の二つの態様の重ね合わせ アナログ環境とディジタル環境が重ね合わされるクラウド環境における著作物または複製物の伝達の様式において, と関連権および copyright と moral rights の関係は, 下記のように例示される. copyright 図 6 クラウド環境のおよび copyright と moral rights との相補性 6

5. おわりに クラウド環境におけると関連権の構造とその相互の関係は, 人格的権利と経済的権利との連携 融合の観点からとらえうる. その観点は, 国際法界に現存する author s right アプローチおよび copyright アプローチ, すなわちと関連権と copyright との調和にある. その検討は, わが国と欧米および中韓における (copyright) と関連権の構造の単純化を指向する. 著作物の保護において, 有形的媒体に固定を要件としない法理においては, 有形的な著作物と無形的な著作物が併存する. その有形的な著作物は,copyrighted works と同様の伝達の態様を見せる. 他方, 無形的な著作物は, 複製物として伝達し, その複製物が有形的に伝達するとき, の支分権の態様を顕現させることになる. クラウド環境は, ディジタル環境の中にアナログ環境を擬制させ, 有形的な著作物 ( 原作品 ) と無形的な著作物 ( 複製物 ) を重ね合わせることになる. 上記から, クラウド環境のと関連権は, 人格的権利と経済的権利とが連携 融合される権利間に相補性が見いだせる. そして, それらは, 制度の権利の保護と制限との相補性の中にある. その中で, クラウド環境におけると関連権は, ( 著作者の権利 ) とみなせて, さらにその ( 著作者の権利 ) が copyright と moral rights との相補性から一対一に対応する関係になろう. 参考文献 1) 谷脇康彦 : クラウドコンピューティングと社会, 進化する情報社会, 放送大学教育振興会, pp.64-73(2011) 2) 児玉晴男 : 日中韓と日米欧における (copyright) の構造論, 紋谷暢男教授古稀記念論文集 知的財産権法と競争法の現代的展開, 発明協会,pp.633-648(2006). 3) 京都地判平成 16.11.30 平 15( わ )2018 号 4) 最二判平 13.3.2 平 12( 受 )222 号 5) 儿玉晴男 ( 中国語翻訳者 : 牟憲魁 ): 著作權的構造論 以信息内容的傳播利用為目的的著作權的単純化, 知識産権, 中国知識産権研究会,16 巻,94 号,pp.92-95(2006.7). 6) 児玉晴男 : 東アジアにおける学習コンテンツのネット公表に関すると関連権の合理的な関係, 情報通信学会誌,Vol.26,No.4,pp.29-40(2009). 7) Niels Henrik David Boh ( 山本義隆編訳 ): 因果性と相補性, ニールス ボーア論文集 1 因果性と相補, 岩波書店 (1999). 7