遊星機構の分類前節図.-3 において基本遊星機構を組み合わせることによって別の遊星機構が構成されることを示した 基本遊星機構の組み合わせ方はこのほかにまだ幾通りもの形があるが 一つのユニットとしての遊星機構の自由度はである そのためこの機構を決定機構とするために入力軸 出力軸のほかに 機構全体の運動を規制するための軸が必要となる この軸を補助軸と呼ぶ 図.- では固定した軸がそれに相当する つまり補助軸の運動状態を外からの条件できめれば ( 例えば固定すれば ) 入力と出力の運動は一義的に定まる これら3 個の軸補助軸 ( 入力軸 出力軸 補助軸 ) を総称して基本軸と呼ぶ ここでこれら3 個の軸のうちのどれが入力軸で どれを出力軸とするかは遊星機構を設計するときに定まることである 入力軸出力軸このように遊星機構では構成要素として大陽車 図.- 基本軸の構成遊星車およびキャリアがあり 一つのユニットとして基本軸を備えている遊星機構を考える このユニットの中では大陽車 遊星車 キャリア等の要素と基本軸の組合せにより様々な形態を考えることができる そしてそれらの形態ごとに運動状態も異なるので 何らかの分類をしないと整理がつかない その分類法には種々の方法が試みられたが 旧ソ連で考えられた方法 は合理的であり 日本でもこの方法がよく使われるようになった ここでは最低限の要素の組合せで ユニットとしての遊星機構においてどの要素が上述の基本軸になるかということによって 次に述べるように- 3 --Vの3 種類に分類している これらの機構は基本軸で構成される遊星機構の最低限の条件を満たした機構と言える なおここで は太陽車 ( 内接車 外接車の両方を指す ) はキャリア Vは遊星車を示す. - 型図.-は太陽車 個 () の軸とキャリアの軸が基本軸を構成する機構を示す 遊星機構としては最も一般的な機構である その他この型に属する遊星機構の例を図.- に示す この例において (a) (b) は円筒型太陽車に外接車と内接車を用いたもの (c) は円すい車を用いたものである また (d) は外接車 個 (e) は内接車 個を用いている さらに (f) は (e) から派生したもので 遊星車の半径がキャリアの軸間距離よりも大きい場合に 太陽車として外接車と内接車を用いた場合の例である В.Н.Кудрявцев, Планетарные Передачи, Машинострение. Москва, 966 はロシア語の колесо( 車の意味 ) からきたのは容易に想像がつくが は多分英語の holder からきていると思 われる しかし V はもともとロシア語にない文字で なぜこれを遊星車を示す記号としたかについてはよくわからない 章 v. - -
(a) (d) (b) (e) (c) (f) 図.- - 型遊星機構の例 () 具体的事例 ここで図.-(a) の型に属する遊星歯車機構は減速機として あるいは増速機として いろいろなタイプが製作されている その容量も最近ではモジュール 0. 以下のものから数万 Wのものまで非常に多彩である トラクションドライブを使ったこの型の減速機もよく使われる リング キャリア 遊星車 出力軸 太陽車 入力軸 図.-3 - 型無段変速機の例 - 3 図.-((b) の型は (a) 型の変形であるが 遊星車が 段になっていて それぞれの遊星車は外接車か 内接車のいずれか一方に接触しているものである トラクションドライブ式無段変速機にはこの例が多い 図.-3 図.-4はその例であるがいずれも遊星車の内接車と外接車との接触半径が別個にとれることからこの方式が用いられる 3 椿本チェーンカタログ 章 v. - -
図.-4 - 型無段変速機の例 4- () 具体的事例 図.-(c) 型を歯車で構成したものは自動車に使われていて デフの名称でなじみのある差動歯車である トラクションドライブ式無段変速機としては図.-5 に示す形式のものがあり いずれも太陽車の接触曲面にトロイダル曲線を使っていることから トロイダル式 CVT(Continuously Variable Transmission の略称 ) と呼ばれている このうち同図 (i) のものをトロイダル全曲面を使っていることからフルトロイダル () のものを半分のトロイダル曲面で構成されていることよりハーフトロイダルと呼んでいる () () 図.-5 (c) 型による無段変速機の例 5 (3) 具体的事例 3 図.-(d) 型および (e) 型のものは遊星車が 段になっている この構成は (b) 型と似ているが 遊星車の両方が外接車または内接車と接触していることが異なる この例を用いた無段変速機としては図.-6 の例がある 同じような構造を歯車で構成することもできるが図.-7 のような変形形態もよく使われる ここでは遊星歯車が 段複合歯車列になっていて 一つのキャリアに支えられている第 の 段遊星歯車の第 段目が第 の遊星歯車とかみ合いこれが 太陽歯車とかみあっているものである 自動車の自動変速機に用いられ 4 シンポ工業カタログ 5 日本機械学会 P-SC6 トラクションドライブ調査研究分科会成果報告書 ( 昭和 60.3) p9 章 v. - 3 -
ラビニヨー型と呼ばれている 図.-6 (d) 型の無段変速機の例 6 図.-7 (d) 型の変形例 3.3 3 型図.-8 にその例を示すように キャリア軸が基本軸とならないでユニットの内部に収まり 3 個の太陽車軸 によって基本軸が構成される形である 例えば図.-8 (A)(B) に示す機構は 3 型の最も一般的な構造であり この型をうまく使うと大きな減速比を得ることができる ( このことについては後述する ) が ヨーロッパでは歯車で構成されたこの装置を Wolfram 装置とも呼ばれている また日本では図の (A) 型の段付遊星歯車 Z Z の歯数を同じにして 転位係数を変えることにより 個の内歯車の歯数 Z とZ3 を変えたものを不思議歯車機構と呼んでいる その場合一般に効率が悪い それは接線力が太陽歯車で異常に大きくなることによる このことはトラクションドライブ方式でこの形式の減速機を構成すると 大きな接線力を発生するために その接触点では大きな法線力を要求されることになる その結果接触点の応力は大きくなり 減速比は材料の強度に依存してきまってくる 図.-8 (a) (b) は3 型の変形であるが 遊星歯車が多段構造になっているものの 外部につながれる軸は3 個の太陽歯車から構成されているのでこれも3 型に分類される 6 日本機械学会 P-SC6 トラクションドライブ調査研究分科会成果報告書 ( 昭和 60.3) p9-94 章 v. - 4 -
3 3 (A) (B) (a) (b) 図.-8 3 型.3 --V 型上述の 個の形式 (- 3) はいずれも基本遊星機構の遊星車の運動の伝達を例えば図.-3 に示すように 個の遊星車を結合する方法で解決するものであったが ここで示す --V 型は基本遊星機構に既にある3 個の軸 すなわち太陽車 遊星車 キャリアの軸をそのまま基本軸として使う方法である 自在継ぎ手 V V 自在継ぎ手 (a) (b) 図.-9 --V 型ところで遊星車は公転と自転を同時に行うが 公転はキャリアで取り出しているので ここでは自転を取り出すことが問題となる その方法としては図.-9 に示すように自在継手を使うのが最も理解しやすい方法であるが この方法では 個の遊星車の運動しか取り 章 v. - 5 -
出すことができない 内歯歯車 ピン V 要素 V 軸 遊星歯車 キャリア Z Z 図.-0 --V 型の例 7 これを解決する手段として図.-0 のような機構がある これは遊星歯車に複数個のピン穴がありこれにV 要素に取り付けられたピンがはまっている このピン穴の半径は遊星歯車の偏心量に等しい いま遊星歯車が内歯歯車 ( 太陽歯車 ) の内面とかみ合って遊星歯車運動すると ピンはピン穴の内面に沿って転がり 自転回転をV 軸に取り出すことができる ( 回転速度の関係は後に述べる ) この構造では遊星歯車が偏心運動するので振動を発生しやすい そのため遊星歯車を軸方向に複数個並べて動平衡をとる工夫がされる また内歯歯車と遊星歯車の歯数は近接しているので インボリュート歯形を使うと干渉が起こるので内歯をピンで 遊星歯車の歯形をトロコイド歯形で構成した製品が作られている ( 図.-) ここでは遊星機構として摩擦車 ( トラクションドライブ ) で構成される機構も含めて その分類について述べたが 次節以後は歯車で構成される遊星歯車機構を対象に述べる ピン歯車 ( 太陽歯車 ) 偏心遊星歯車 偏心カム ( キャリア要素 ) 偏心量 キャリア軸心 内ピン (V 要素 ) 図.- --V 型の具体的事例 8 7 Вест. Машиност. 36(956) 5 8 住友重機械工業カタログ 章 v. - 6 -