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ひさともおまた
5 years ago
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1 第 6 章薬品の取り扱いについて 1. 一般的な注意本学部では多種類の化学物質が日常的に使われておりそれらを安全適切有効に使うため実験従事者が心掛けるべきことを本章にまとめた事故を未然に防ぐことは事故が起きてから迅速かつ適切な処置をすること以上に大切であろうそのような観点から日頃注意すべき点を以下に挙げる 1) 全ての薬品は危険物質である我々が実験室作業場で取り扱う薬品溶剤等は発火性引火性爆発性腐食性有毒性など何らかの危険性を内包しているものであることを忘れてはならない 2) 実験室等における事故の多くは危険性に関する知識の欠如と実験作業における操作上の不注意に起因している薬品に関する正碓な知識を MSDS(Material Safety Data Sheet) を熟読した上で注意深く作業する 3) 事故は慣れた頃に起きやすいので自己過信は禁物である 4) 薬品等を取り扱う者はその入手から保管使用廃棄に至るまで全ての責任を持つ 5) 研究室の責任者は危険物の保有量保管状況使用状況などを把握管理し適当でない場合には実験者に注意を与えるまた管理者でなくとも危険な行為を発見したら先輩後輩上司部下の区別なくお互いに注意を促すべきでありその注意に耳を傾ける 2. 危険性物質有毒性物質ならびに一般薬品薬品の多くは労働安全衛生法特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律 (PRTR 法 ) 毒物及び劇物取締法消防法などにより分類されその取扱いが規定されているそのような法令や規則の主旨を理解することが最も大事と思われるのでそれらが内包する危険性について幾つかの薬品 ( 危険性物質有毒性物質 ) を例にして表 6.1 に要約しておくまた一般薬品においても法令や規則に記載されていない薬品にも毒性等のあるものがある関連した薬品を参考にして考え注意を払う 3. 薬品等の取扱注意薬品は原則として IASO を用いて管理し使用に当たっては MSDS を熟読し危険性の把握に努めることまた最終処理法までよく考え効率的に保管場所を確保して安全管理に努める本項では薬品の取り扱いに際して配慮すべき必要最小限の事項をまとめた 1) 購入消防法で危険物指定されている薬品等は各フロアで最大保管量が火災防止条例で規定されているので必要以上に購入しないまた指定されていないものでも必要最小量を購入する 2) 保管薬品保管庫は地震災害などを考慮し転倒防止容器の破損防止策を施す特に棚の材質を侵す恐れのあるものは薬品トレーや薬品コンテナなどを利用する薬品名は 6-1

2 消えないように保護措置する施錠保管薬品 ( 監督官庁から指示通達があった薬品麻薬覚醒剤取締法指定薬品及びそれらに容易に変え得る薬品 ) については指示を厳守するすなわち錠の掛かる中の見えない鉄製薬品戸棚に保管しその鍵は実験研究室の責任者または指定された教員が管理するこれらの施錠保管薬品については管理使用簿を常備しておかなければならない有機溶剤類は危険物倉庫に保管し実験室等には必要最小量のみ置く発火性薬品等は金属製の保管庫などに所定の方法で保管する過酸化物などショックで爆発する恐れのあるものはガラス共栓びんに入れないようにする混合すると発火爆発あるいは有毒物質に変化する薬品の組み合わせがあり混合危険物と呼ばれる地震などで混合する危険を避けるため保管時には区分配列に十分配慮する施錠保管薬品としては表 6.2 に挙げたようなものが指定されている 3) 使用薬品及び使用後の生成物につき沸点引火点爆発限界許容濃度致死量後処理方法などを予め調べ無理や無駄がないよう必要最少量での実験を計画する薬品が身体に直接触れる事を避け防護具を使用して安全に努める万一薬品が皮膚や目についた時は MSDS の応急措置を行い様子をみて必要なら MSDS を持って病院へ行く危険物質を扱う時は万全の準備をするとともにまず少量で予備実験を行うことが望ましい万一事故が発生しても被害を最小限にくい止められるよう事前に対策を用意する火災の危険には消火器を用意し爆発には安全衝立防護面毒性ガスには防護マスクなどを使用する 4) 処理廃棄危険薬品有毒薬品及び一般薬品の処理廃棄に当たっては公害関連法規災害及び火災防止諸条例等の主旨を十分理解しまた本学の規則指示に従う基本的には廃棄試薬廃液等は分別した後専門業者に外注処理依頼を行うことになっている使用後の空きビンは第 7 章を参照し各自の責任において後始末をするまた使用済みや古くなった薬品は適切に処分する 4. 毒物劇物 ( 危険物 ) の取扱い毒性が強く少量でも身体を著しく害するものは特に毒物又は劇物として法的に指定され取り扱い上の注意が義務づけられている既に述べたことと重複するが事故の未然防止の観点から毒物及び劇物取締法同施行令同施行規則に基づき管理上特に留意すべき事項を以下に記す 1) 毒物及び劇物は毒物及び劇物指定令で指定されているここでは品目は挙げないが毒物及び劇物は表示が義務づけられている 2) 購入時に数量を確認し IASO に登録する当面は指定された用紙に使用記録を残して在庫量の点検も平行して行う 3) 毒物及び劇物の容器には医薬用外毒物 ( 赤地に白字 ) あるいは医薬用外劇物 ( 白地に赤字 ) の表示をする 4) 保管場所は鍵のかかる堅面なもので他の薬品と区分した専用のものとするまた保管 6-2

3 場所にも医薬用外毒物医薬用外劇物の表示をする 5. 毒物劇物 ( 危険物 ) の性質と保管 1) 酸無機酸として硫酸塩酸硝酸フッ化水素酸リン酸など有機酸として酢酸など各種カルボン酸トリクロロ酢酸スルホン酸類などが広く使用されている共通の注意事項としては 1 酸は腐食性のものが多く皮膚に付くと薬火傷を起こし目に入ると失明することもある防護眼鏡ゴム手袋などを使用し接触した時には直ちに大量の水で洗い流すその後希アンモニア水か 1~2% 炭酸水素ナトリウム ( 重曹 ) 水で中和しさらに十分に水洗する傷の程度によっては病院へ行く 2 床実験台などにこぼした時衣類に付着した時にも上記に準じて処理する中和剤として水酸化カルシウム消石灰炭酸カルシウムなども用いられる中和熱が大きくこぼしてすぐに中和作業をすると被害を拡大することがある一般に薬品をこぼした時は ( 禁水性のものを除き ) まず大量の水で流すただし漏水を起こす場合もあるので適当に希釈した後中和して拭きとるのがよいなお衣服についた時などは水洗いが不十分だと蒸発により酸が濃縮され後で腐食されるので注意する 3 廃棄処理はごく少量の時は多量の水で流しても良いが一般には廃棄物等に関して本学部で規則に定められているように貯留しそれぞれの研究室で十分中和して放流する 2) 塩基アルカリ研究室で広く用いられ, 事故をよく起こすものは強アルカリ性の水酸化ナトリウム ( 苛性ソーダ ) 水酸化カリウム( 苛性カリ ) および揮発性のアンモニア水である一般にアルカリは皮膚などタンパク質を分解し組織の内部に没透するので酸よりも危険なことが多い特に目口など粘膜を著しく冒し目に入った場合は失明飲み込んだ場合には胃穿孔などの大事に至ることがある共通の注意事項として 1 身体や衣類に付着した時は直ちに大量の水で洗い流し希酢酸 (2%) で中和後更に水洗いするすぐに中和すると発熱し中和しないと皮膚などに浸透したもの ( ぬめり ) がなかなか除けない酸と逆に動物性繊維の方が植物性繊維より弱い 2こぼした時も水で薄め希酢酸で中和後拭き取るか十分な水で洗い流す 3 水酸化カルシウム ( 消石灰 ) 炭酸ナトリウムなどそれほど強くない塩基でも皮膚に付いたままにしておくとかなり冒されるのでできるだけ早く水洗いする 3) 有機溶剤類有機溶剤は実験室で使用される頻度が高くまた使用する量も多いこれらは火災防止地方条例でその管理保管が規制されているまた労働安全衛生法からは有機溶剤中毒防止規制によって取り扱いが規制されている取り扱い上の注意としては 1 消防法火災予防地方条例により各フロアに保管できる量が規制されているので必ず危険物保管庫に保管し必要最少量をその都度実験室に搬入する 2 特殊引火性物質高度引火性物質は蒸発性が大きく引火点が低いので注意事項や事故例をよ 6-3

4 く見て取り扱う 3 廃液処理に際しては水質汚濁防止のための地方条例の一般事項である BOD や COD に重要な関係を有するので本学部の規則指示に従う 4 衛生上急性毒性は強くないものもあるが慢性毒性の点から蒸気の吸入は出来る限り避けるよう注意する引火性物質可燃物の危険性はおおむね引火点で決まり引火点が低いほど危険である引火点とは液体の上部に空気と混合して火を引く濃度の蒸気を発生する最低温度をいう引火性物質を使用するときは室内の換気を良くし蒸気が空気より重いことを考えて換気口を床に近く設けるなど排気設備にも注意する引火性物質を貯蔵する時ガスまたは蒸気が漏れないように密封し容器を火気日照から遠ざけて置くことが大切である特殊引火物にはエーテル二硫化炭素アセトアルデヒドペンタンイソペンタン酸化プロピレンビニルエーテルニッケルカルボニルがあるがこれらは特に引火点が低く極めて引火しやすいので使用時は近くの裸火を消し電気ヒーターなどの電気炉も切るまた蒸気濃度が非常に高いので防毒マスクゴム手袋を着用しドラフト内で取り扱う 4) 混合危険物一般に 2 種以上の物質が混合された場合混合熱や化学反応によって急激な沸騰飛散時には発火爆発が起こることがあるこのようなものを混合危険物という例として 1 濃硫酸への水の添加 2 多量の固形水酸化ナトリウムヘの少量の水の添加 3 高温液体と低沸点物質の混合などがある発火または爆発の原因から分類すると 4 急激な反応のため発熱して燃焼または爆発に至るもの 5 爆発性化合物を生成するもの 6 空気または酸素と混合し分解または爆発性の混合物を作るものなどに分けられる混合危険物として表 6.3 の組み合わせ例がある表にはないが混合により有毒なガスを発生する組み合わせも少なくない例えばシアン化物と酸でシアン化水素を次亜塩素酸塩 ( サラシ粉類 ) と酸または塩化物と酸化剤で塩素を硫化物と酸で硫化水素をアンモニウム塩と塩基でアンモニアを発生する薬品の保管輪送実験廃液の収集固体廃棄物の集積時には混合危険性を十分考慮し特に地震の際の危険を増大させぬよう混合危険物は別々の場所に保管すべきである 5) 危険物の貯蔵保管消防法により危険物として指定された物品の類別と指定数量を表 6.4 に示す 1 実験室における危険物の保有は常時使用するものに限りその量は各フロアで消防法で定められた指定数量の 0.2 倍未満としできるだけ少量にする 2 石油かん (18 リットル ) 入りの溶剤類は危険物貯蔵所に保管する 3 規定数量 ( 消防法 ) の 0.2 倍以上 1 倍未満の危険物を扱う場合には研究室ごとに消防署に届け出て少量危険物貯蔵所の許可を受ける必要がある 4 危険物貯蔵所は農学部の運営規定に従って使用する 5 使用予定のないものはなるべく早期に廃棄処理をする 6 溶剤の空容器に注意すること空容器の内部は溶剤の蒸気で爆発限界範囲になっている場合が多い 6-4

5 表 6.1 危険性ならびに有毒性物質 (1) 危険性物質発火性 : 有機リチウム化合物有機アルミニウム化合物黄リン還元ニッケル還元白金還元パラジウムアルカリ金属カーバイトなど引火性気体 : 水素一酸化炭素都市ガスアセチレンエチレンプロピレンプタジエンアンモニアなど引火性液体 : エーテルアセトンヘキサン酢酸エチルベンゼンアルコールなどの有機溶剤爆発性 : N-O 結合を持つもの N-N 結合を持つもの O-O 結合を持つもの 0-ハロゲン結合を持つもの LPG アセチレン及びその誘導体など腐食性 : 強酸強アルカリアンモニア氷酢酸無水酢酸トリフルオロ酢酸など (2) 有毒性物質窒息性 : 二酸化炭素 ( 炭酸ガス ) ヘリウム水素窒素メタンエタン一酸化二窒素 ( 亜酸化窒索 ) 一酸化炭素シアン化水素ニトリルニトロペンゼンアニリン硫化水素など麻酔性 : ほとんどの有機溶剤神経障害性 : 二硫化炭素ハロゲン化炭化水素メタノール四エチル鉛チオフエンマンガン水銀など腎肝障害性 : 四塩化炭素四塩化エタントリニトロトルエンジオキサンカドミウムウランなど血液障害性 : ベンゼンフエノールクレゾール鉛ホスフィンなど肺障害性 : 難溶性粉塵石綿タルク遊離ケイ酸酸化ベリリウムなど発ガン性 : コールタールアスベストニッケルベンゼンクロム酸塩 2- アミノナフタレン (β-ナフチルアミン) 4-アミノフルオレンオーラミンマゼンタメチル硫酸など 6-5

6 表 6.2 混合すると爆発の危険性のある薬品の組合わせ ( 試薬 A+ 試薬 B) 薬品 A 薬品 B 薬品 A 薬品 B アルカリ金属粉末にしたアルミニウム又はマグネシウムその他四塩化炭素その他の塩化炭化水素二硫化炭素及びハロゲン過酸化水素 ( 急激な分解反応 ) 銅クロム鉄多くの金属或いはそれらの塩アルコールアセトン有機物アニリン可燃材料引火性液体ニトロメタンカリウムナトリウム ( 反応 ) 四塩化炭素二酸化炭素水無水アンモニア ( アジ化水銀銀の生成激しい発熱反応生成物の分解 ) 水銀塩素次亜塩素酸カルシウムヨウ素臭素フッ化水素酸銀化合物銅 ( アセチリドの生成分解反応 ) アセチレン過酸化水素三酸化クロム ( 酸化反応酸素の発生 ) 酢酸ナフタレングリセリンテレビン油アルコール類水銀 ( アセチリド雷酸水銀アジドの生成 ) アセチレン雷酸アンモニアフッ化水素酸 ( 激しい発熱反応 ) アンモニア塩素 ( 激しい発熱反応生成物の分解 ) アンモニアアセチレンブタジェンブタンメタンプロパン水素ナトリウムカーバイドテレビン油ベンゼン部粉砕した金属硝酸 ( 酸化反応発熱 ) 酢酸アニリンクロム酸シアン酸硫化水素引火性液体引火性ガス臭素硫酸 ( 遊離塩素酸過塩素酸カリウム過塩素酸カリウ ( 激しい発熱反応生塩素と同じマンガン酸の生成そム過マンガン酸カリウム ( ナトリ成物の分解 ) の分解と酸化反応 ) ウム ) ヨウ素 ( 激しい発熱反応生成物の分解 ) アセチレンシュウ酸酒石酸雷酸アンモニウム化合物炭化水素 ( ブタンプロパンベンゼンガソリンなど ) フッ素臭素三酸化クロム過酸化ナトリウム ( 激しい発熱反応酸化反応と過酸化物の生成 ) フッ素 ( 同上特に発熱大 ) すべての化合物に対して反応性は著しく大であるアセチレン ( 激しい発熱反応と生成物の分解アセチリドの生成 ) 塩素臭素銅フッ素銀水銀二酸化塩素 ( 激しい発熱反応生成物の分解 ) アンモニアメタンホスファン硫化水素アニリン ( 酸化反応 ) 硝酸過酸化水素塩素酸塩 ( 急激な酸化反応 ) アンモニウム塩酸類金属粉硫黄微粉砕した有機物或いは可燃性物質シュウ酸 ( 急激な分解 ) 銀水銀過塩素酸 ( 急激な酸化反応 ) 無水酢酸アルコール紙木材ビスマス及びそれらの合金クメンヒドロパーオキシド ( 急激な分解 ) 有機無機酸類過マンガン酸カリウム ( 急激な酸化反応 ) エタノールメタノール氷酢酸無水酢酸ベンズアルデヒド二硫化炭素グリセリンなど引火性液体 ( 酸化反応過酸化物生成急激な反応 ) 硝酸アンモニウム三酸化クロム過酸化水素硝酸過酸化ナトリウムハロゲン 6-6

第３類危険物の物質別詳細練習問題

第３類危険物の物質別詳細練習問題第 3 類危険物の物質別詳細練習問題問題 1 第 3 類危険物の一般的な消火方法として誤っているものは次のうちいくつあるか A. 噴霧注水は冷却効果と窒息効果があるので有効である B. 乾燥砂は有効である C. 分子内に酸素を含むので窒息消火法は効果がない D. 危険物自体は不燃性なので周囲の可燃物を除去すればよい E. 自然発火性危険物の消火には炭酸水素塩類を用いた消火剤は効果がある