的な供給や 地域経済を支え 国土 環境保全や景観形成等の多面的な機能を有している農業や農村の役割は ますます重要となっている また 日本と欧州連合 (EU) の経済連携協定 (EPA) 交渉妥結などの世界的な流れや 人口減少社会に伴う国内市場の縮小と世界規模での食市場の増大への対応など 日本農業もグ

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1 教育再生実行会議ワーキンググループ ( 第 1 回 ) 資料 資料 7 ( 新時代に対応した高等学校改革 ) 農業高校の現状とこれから 群馬県立勢多農林高等学校長 ( 全国農業高等学校長協会理事長 ) 福島実 1 農業高校の現状現在農業関係高校には 農業に関する学科を設置している農業科設置高校と 総合学科の中に農業に関する系列等を設置している高校 そして 普通科等の他の学科に農業コースや農業科目を設置している高校の概ね3 形態がある 農業科設置高校には 農業学科を単独設置している単独校と工業科や普通科等の他の学科と併置している併置校がある 今回は これら農業教育を行っている各形態の高校全体を農業高校と称して話を展開したいと考えている 現在全国農業高等学校長協会に加盟をしている農業高校数は365 校で 生徒数は約 9 万 1 千人 ( 平成 29 年度 ) であり 全国の高校生全体数の約 3% である かつては 農業高校生も20 万人近くいた時代もあったが 農業就業人口や高校の生徒数の減少にともない 現在の状況となっており 今後も厳しい状況は続くと思われる 時代の変化とともに農業高校での学習分野も大変幅広くなっており 植物の栽培や動物の飼育 食品製造や流通等を主に学習する 農業経営と食品産業分野 から 植物や動物等のバイオテクノロジーを主に学習する バイオテクノロジー分野 さらに農業土木や造園 林業等を主に学習する 環境創造と素材生産分野 生物活用や対人サービス等を主に学習する ヒューマンサービス分野 となっており 関連する学科 系列も多様化が進んでいる これら関連する各分野で学ぶ農業高校生は 学校内での農業学習にとどまらず それぞれの分野で地域に出かけ 農家や関連企業 関係機関と連携を図りながら 地域農業や関連産業の発展に向けた様々な取組を展開している そして 多くの農業高校でその取組の牽引役を男子生徒とともに女子生徒が担っている 農業高校生の男女比の全国平均はほぼ半々であるが 地域によっては 女子生徒が6~7 割の高校もあり 農業や環境に興味 関心をもった女子生徒が全国各地で活躍している 中学校卒業者及び見込者数は減少傾向にあり厳しい状況は続いているが 地域によっては農業高校の入試倍率が高くなっているなど 農業や食 環境等に興味 関心を抱く中学生の比率が増加傾向にあるように思われる 2 日本農業の情勢と農業高校の役割一方 我が国の農業や農村を取り巻く状況は 農業就業人口の減少とともに 基幹的農業従事者の平均年齢が65 歳を超えるなどの就農者の高齢化や耕作放棄地の増加など 一層厳しさを増している しかし 安全 安心な食料の安定 - 1 -

2 的な供給や 地域経済を支え 国土 環境保全や景観形成等の多面的な機能を有している農業や農村の役割は ますます重要となっている また 日本と欧州連合 (EU) の経済連携協定 (EPA) 交渉妥結などの世界的な流れや 人口減少社会に伴う国内市場の縮小と世界規模での食市場の増大への対応など 日本農業もグローバル化の波にますますさらされるとともに 農業の競争力強化が求められる時代となってきている さらに 6 次産業化や地産地消 食育等の推進 都市と農村の交流等の推進による魅力ある農村づくり等も重要な視点とされている したがって 我が国の農業を発展させ グローバル化社会に対応するためには 地方創生や成長産業としての農業を担う人材の育成が急務であり その人材輩出の責務を 農業高校が拠点となって果たす必要がある 3 農業高校のアクションプラン全国農業高等学校長協会では このような視点を踏まえ 今後の農業及び農業高校の進むべき方向を捉えて 昨年 3 月に第 3 次アクションプランを策 1 2 定し グローカル* アグリハイスクール* 宣言 言わば 世界規模で考え 足元から行動する農業高校宣言 を行った このプランでは これから5 年先を見据えて 我が国の未来を担う人材を育て地域で活躍させる ための 5 つの基本方針 と 10の行動計画 を提示している 全国の農業高校においては このプランを踏まえた各学校の実情に応じたスクール アクションプランを策定し その実現に向けて昨年度の4 月から様々な教育実践が展開されている < 第 3 次アクションプラン> 〇 5つの基本方針 - 2 -

3 〇 10 の行動計画 - 3 -

4 このアクションプランについては 農業高校における質の確保と保証をしっかりと行うことをねらいとして 平成 18 年度に第 1 次プランがスタートし 成果の検証を経て平成 24 年度に第 2 次アクションプランが策定され その後 5 年間の活動とその検証を踏まえて 今回の第 3 次アクションプランが策定された 目標達成年度を5 年後の平成 33 年度とし 実施 4 年目の平成 32 年度から検証を開始する予定である 4 これからの農業高校 (1) アグリマイスター顕彰制度全国農業高等学校長協会では アクションプランの実施とともに 農業高校生が在学中に取り組んだ様々な資格や検定試験 農業クラブ活動の実績等を評価し アグリマイスターとして プラチナ ゴールド シルバー の3 段階で認定するアグリマイスター顕彰制度を創設し 平成 27 年度から実施している 昨年度は当初目標の千名を超える 1327 名の生徒を顕彰した この制度は 農業高校生が農業学習等で身に付けた資質 能力を多角的に評価する顕彰制度であり 農業高校生の学習意欲の喚起とともに 農業教育の質の確保 向上を目指す一環として取り組んでいる この制度を大学や関係企業 機関等に より認知いただく取組を推進する必要があると認識している (2) GAP HACCP 等教育の推進また 農業及び農業高校を取り巻く情勢の中で 昨年度から大きくクローズアップされたのが 農業生産に関する第三者認証制度であるGAP ( 農業生産工程管理 ) である これは 2020 年に開催される東京五輪 パラリンピックの選手村への食材提供に端を発しているが 今後のグローバル化や安全 安心な農産物の生産という視点で重要な位置付けとなるものである 昨年 5 月には 文部科学省と農林水産省の連名で 農林水産業を学ぶ高校生の就農 就業に向けた人材育成について の改訂通知が発出され GAP 教育の推進が明確に示された 全国農業高等学校長協会としても GAPとともに食品関連で重要なHACCP( 危害要因分析 重要管理点方式 ) も取り上げ グローバル化の進展に対応できる経営感覚を備えた活力ある農業及び関連産業人材の育成に必要な教育として GAP HAC CP 等教育推進方針 を策定し 全国の農業高校で教育活動を推進している 6 月現在の農林水産省のまとめでは 全国の農業高校 22 校で GL OBAL ASIA JGAPのいずれかの認証を取得している (3) 学校農業クラブ活動の推進次に農業高校において大きな成果を上げてきた特徴的な教育活動である学校農業クラブ活動について触れたい この活動は 学習指導要領にも位置付けられた 農業の教科活動と部活動が連動した 生徒の科学性 指導性 社会性を育成することを目標とした活動であり 学校単位 都道府県 ブロック 全国と段階を追って発表 競技会が毎年開催されている 全国大会 ( 今年度は鹿児島県開催 ) では 生徒の専門的な活動成果発表に対し - 4 -

5 て 見学された関係機関や大学 団体 企業の皆さんから高い評価をいただいている 特にプロジェクト研究活動では 地域農業の生産性向上の取組や 地域の伝統食材の保存や普及を通した地域活性化 地域の未利用資源の活用や環境保全など まさに地方創生の一端を担える活動が全国各地域で展開されており 今後も大いに期待できる農業教育の根幹をなす活動である (4) プロジェクト学習の推進また 新高等学校学習指導要領が3 月に告示され 農業教育においては 主体的 対話的で深い学び を実践する効果的な学習法である プロジェクト学習 の重要性が示された これまでも農業教育における体験的 探究的な課題解決学習法として実践されてきた プロジェクト学習 については 調査 観察 記録 分析 考察等の学習過程を通して 科学的な思考力 判断力 表現力を養い 課題解決力を育て 農業各分野の実践力を育成する重要な学習法であり 今後も農業の各科目で系統的な指導展開を推進することが重要である (5) SPH 事業等の活用文部科学省のSPH( スーパー プロフェッショナル ハイスクール ) 事業も農業高校では6 校が現在指定を受け 地域や関係企業 機関等と連携した先進的な取組を研究しており 学習指導やキャリア教育等の各分野においてその成果を全国の農業高校で共有し 農業教育の発展に活用することが重要である (6) 地域連携相談窓口を活用した民間企業等との連携推進昨年度から全国農業高等学校長協会に地域連携相談窓口を設置し 地域創生プラットフォームの担当者が相談窓口となって 民間企業等と農業高校の連携を推進している 今年度は ICTを活用したスマート農業の分野で 企業 2 社と校長協会とで協定を締結し 希望する農業高校に栽培情報データ管理ソフトを1 年間無償提供していただく仕組みがスタートした (6) 農業高校生の進路さらに 農業高校卒業生の進路については 就職 ( 就農を含む ) が約 55% 進学が約 45%( 全国農業高等学校長協会調査平成 27 年度 ) の状況であるが 今後もキャリア教育等を充実させ 農業及び関連産業への就農及び就職指導を推進するとともに 農業高校で培った専門性を上級学校でさらに発展させ 将来の農業及び関連産業の有為な人材育成を図る継続教育を視野に入れた指導も重要である 高大接続改革においても 農業高校から大学農学部等への進学の道をしっかりと位置付けていただくことは大切である 5 おわりに農業教育や職業教育の充実は 産業の発展とともにこれからの社会の在り方とも深く関係している グローバル化への対応とともに 自然や環境に配慮した循環型持続可能な社会の形成者の育成が求められており 16 歳 ~ 18 歳 - 5 -

6 の多感な高校生時代に 農業や自然 環境について 体験を通して学習する機会を如何に提供するかは教育全体の大きな課題であり その教育の場を提供できるのが農業高校であると考える したがって 農業教育の一層の充実を図るとともに その重要性を広く国民に認識してもらうことが大切であり 継続して農業高校の取組を様々な場面で広く発信していくことが重要だと考えている 今後も将来の地域農業や農業関連産業を担い これからのグローバル社会や循環型社会を支える有為な人材の育成を目指して 農業教育の一層の充実 発展に努めていきたい * 1 グローカル : グローバル ( global) とローカル ( local) を合わせた造語 * 2 アグリハイスクール : 農業高校 ( Agricultural High School) の一部を省略した造語 - 6 -