タイの投資環境 第 11 章許認可 進出手続き 本章では BOI への投資奨励申請手続き 非公開株式会社の設立手続き 工場設立に関する手 続き その他の奨励証書受領後の手続きの概要を示す また 各手続き段階で必要とされる書類 添付書類等についても記載する ( 大まかな流れは図表

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1 タイの投資環境 本章では BOI への投資奨励申請手続き 非公開株式会社の設立手続き 工場設立に関する手 続き その他の奨励証書受領後の手続きの概要を示す また 各手続き段階で必要とされる書類 添付書類等についても記載する ( 大まかな流れは図表 を参照 ) 1.BOI への投資奨励申請手続き (1) 申請書の提出事前調査が終了し 事業計画完成後 BOI のウェブサイトから電子申請を行う (2016 年 12 月 31 日をもって紙ベースでの申請は終了している ) 申請書には 製造品目カタログ 会社概要 工程表等を添付する必要がある 工程表は投資奨励を受けた後に遵守する義務があり 材料の入荷 検査から製品の検査 出荷までもらさず記入する必要がある また この工程表に必要とされる機械 設備の導入が許可されるため 工程表と機械 設備の導入の整合性に注意を要する ( 工程表で必要とされない機械 設備の輸入税減免は認められない ) 尚 環境を汚染するおそれのある事業については 初期の環境負担調査結果報告書 を申請書と同時に提出しなければならない また 10 年を超える中古機械 設備の導入は原則認められないが 審査により認められることもあるため その場合には 機械 設備の能力証明書も同時に提出しなければならない (2) BOI 審査担当官によるインタビュー申請者は 電子申請提出後 審査担当官にアポイントをとり 申請書受理から原則として 2 週間以内にインタビューを受けなければならない インタビューの目的は 委員会で案件を審議するための追加的な情報の入手であり 具体的には 製品の詳細 製造工程について技術的な説明や申請者 ( 会社 ) の現在の事業内容について 2 時間程ヒアリングを受ける インタビューには技術者の同行も可能である (3) 委員会による案件審査審査担当官による案件の詳細レポートができあがると 委員会に提案され審議される この場合 投資額により次のように取り扱う委員会等が異なる 1 投資額 2 億バーツ以下 ( 土地代と運転資金を除く ) の場合 :BOI 事務局 (OBOI) の内部委員会 2 投資額 2 億バーツ超 7 億 5,000 万バーツ以下の場合 :BOI の小委員会 3 投資額 7 億 5,000 万バーツ超の場合 :BOI の本委員会 64

2 内部委員会と小委員会は毎週開催 本委員会は原則毎月 1 回開催される 申請書提出から審査認可までの期間は 1の場合は 40 営業日以内 2の場合は 60 営業日以内 3の場合は 90 営業日以内と定められている (BOI の組織については第 6 章 外資導入政策と管轄官庁 を参照 ) (4) 認可通知とそれに対する回答委員会で認可されると その旨が文書により 申請者の連絡人に通知される 認可通知書には BOI の政策による特典と条件がタイ語で記載されている この通知を受け取ってから 1 ヵ月以内に通知書の内容に同意するか 否かを電子申請又は書面で回答を行なう必要がある ( 様式があり 回答期限の延長も可能である また 不明な点等があれば 通知書の内容について文書で問い合わせることが可能である ) 尚 認可通知書には図表 11-1 に示した書類が添付される 図表 11-1 認可通知書への添付書類 1 認可受諾の回答フォーム 2 認可受諾の回答期限延長の申請フォーム 3 奨励証書 (Promotion Certificate) 発給申請フォーム 4 輸入品梱包に輸入税等減免特典を受けることを表示する荷印の通知 5 機械 設備輸入に関する告示 (46/2534(1991 年 ) Por.3/2545(2002 年 )) と タイで製造できる機械 設備リスト 6 法人所得税免税の特典を使用する前の事業実績の報告方法について (OBOI 告示 Por.4/2544(2001 年 )) 7 電子システム (MCTS) による機械 設備品目表承認の基準と方法 (OBOI 告示 Por.4/2544(2001 年 )) 8 必要インフラ 人材に関する調査表 (5) 奨励証書の発給通知書への回答後 正式な奨励証書の発給申請を行う 当初の奨励申請は個人名でも可能であったが BOI の奨励事業は法人により実施されることが条件になっているので 奨励証書発給申請は現地法人の責任者名義で行う必要がある 従って 当初の BOI への奨励申請と並行して 現地法人設立事務を進めておけば 時間の節約となる ( この段階では 資本金の払込みは会社法により各株式の額面の 4 分の 1 以上で足りるが BOI 認可企業の場合 操業開始までに各株式を全額払い込むことが要求される点に留意が必要である ) 奨励証書発給申請は 奨励認可の受諾回答日より 180 日以内に行う必要があり 奨励証書は 通常 発給申請から 10 営業日以内に発給される 奨励証書発給申請書に必要な書類は図表 11-2 の通り 65

3 タイの投資環境 図表 11-2 奨励証書発給申請書に必要な書類 1 奨励証書発給申請書 (BOI 様式 FOS CT 21) 2 法人登記簿謄本 ( 登記事務所が証明した定款 株主リストを含む ) 3 法人登記証明書 ( 上記登記簿と対になっている ) 4 増資の場合の法人登記簿謄本 ( もしある場合 ) 5 会社株式登記事務の保証書 ( タイ商務省発行 ) 6 海外からの資金送金を証明する書類 ( 外国からの資本がある場合 ) 7 合弁事業契約 技術援助契約 その他の援助契約 ( もしある場合 ) 8 記入済み必要インフラ 人材調査票 2. 非公開株式会社の設立手続きタイの非公開株式会社の場合 登録資本金 (Registered Capital) に相当する株式を 設立にあたって全株発行し 各株式について 25% 以上払い込めば会社は成立する その後 取締役の請求により未払い分を払い込む分割払込制度であるが BOI の奨励認可を受けた企業は 操業開始までに全額払い込むことが求められるので留意する必要がある 会社登記は次のような手続きを経て行なわれる その際 提出する書類 資料等は全てタイ語に翻訳して提出される必要がある (1) 商号の予約他の会社の商号と重複しないように 予め商号 ( 会社名 ) を商務省の商業登記局に予約する 予約した商号については 30 日以内に基本定款の登記をしなければ無効となり 延長は認められていないが 同一商号での再予約は可能となっている (2) 基本定款の登記タイの会社法では 基本的な事項を内容とする基本定款と会社の内規を定めた付属定款を定めるよう義務付けられており 基本定款には1 商号 2 本社所在地 ( 県名のみ ) 3 登録資本金額 4 一株の額面 6 5 総株式数 6 株主の有限責任 7 会社の目的 8 発起人の氏名 住所 職業 国籍等の記載が求められ これを商業登記局で登記する 登記にあたっては 会社の目的として記載されている業務以外は実施不可となるので留意する必要がある 登記料は登録資本金額 10 万バーツあたり 50 バーツで計算する ( 最高限度 2 万 5,000 バーツ 約 8 万円 ) 6 法律上は 5 バーツ以上とされているが 通常は 100 バーツ 1,000 バーツとするケースが多い 66

4 図表 11-3 申請から操業開始までの手続きの流れ ( その 1) 投資関連情報の収集から BOI の奨励証書発給まで 必要時間 手続き OBOI 担当部署 投資関連情報収集 申請書式等入手 申請書式の電子提出 投資サービスセンターワンスタートワンストップ投資センター (OSOS) 国内地方事務所海外事務所 BOI ウェブサイト 申請書式の電子提出後 10 営業日以内に担当官に面談要請 OBOI 担当官との面接 投資促進部第 1~4 部 ( 注 ) 全ての関係書類提出後 40 営業日以内 投資額 2 億バーツ ( 土地代と運転資金を除く ) 以下は OBOI にて認可 全ての関係書類提出後 60 営業日以内 投資額 2 億バーツ超 ~7 億 5,000 万バーツ以下 ( 同上 ) は BOI 小委員会にて認可 全ての関係書類提出後 90 営業日以内 投資額 7 億 5,000 万バーツ超 ( 同上 ) は BOI 小委員会及び BOI 本委員会にて認可 最終承認から 7 日以内 奨励の特典と条件の詳細に関する OBOI からの通知 投資促進部第 1~4 部 OBOI からの通知受領後 1 ヵ月以内 奨励の地位の受理の回答 総務部 OBOI に対し奨励受諾の回答後 6 ヵ月以内 奨励証書発給申請 総務部 完備した書類の提出後 10 日以内 OBOI からの奨励証書の発給 ( 注 ) OBOI は BOI 事務局の内部委員会の略号 投資促進部第 1~4 部の担当業種はそれぞれ 第 1 部が農水産 農水産加工品及び軽工業 第 2 部が金属 金属製品 機械及び運輸機器 第 3 部がエレクトロニクス及び電気製品 第 4 部が化学品 紙 プラスチック 公共施設及びサービス業である 67

5 タイの投資環境 (3) 全株式の引受け 設立総会の開催 会社設立者は 全株式の引き受け後 会社設立総会を開催し 図表 11-4 に掲げた事項を決議し なければならない 図表 11-4 設立総会の議決事項と株式会社の登記事項 設立総会の議決事項 株式会社の登記事項 1 株式引受人の名簿の確認 1 株主の氏名 年齢 職業 国籍 持株数数 2 付属定款の採択 2 金銭以外で割り当てられた株式数 ( 種類別 ) 3 発起人の行為 支払った経費の追認 3 取締役 代表取締役の氏名 住所 年齢 職業 4 優先株がある場合 優先株に関する事項 4 代表取締役の代表権の形態および署名 5 金銭以外で払い込まれた株式の総数 5 付属定款 ( 株主総会 取締役会等の内部規則 ) 6 取締役 代表取締役の選任 権限の選任 6 本店 支店の住所 7 会計監査人 ( 外部の公認会計士 ) の選任 7 社印 (4) 株式会社の登記 ( 最終登記 ) 会社設立総会後 設立総会で選任された取締役は 3 ヵ月以内に会社の登記を行なわなければならない 登記に必要な主な事項は図表 11-4 の通りである 尚 設立総会の議事録を併せて提出しなければならない 登記料は登録資本金額 100 万バーツあたり 5,500 バーツで計算する ( 最高限度 27.5 万バーツ 約 88 万円 ) (5) 税務登録会社設立登記日より 60 日以内に 国税局に対して法人所得税納税者登録および付加価値税 (VAT) 納税者登録を行なわなければならない 但し 実際に事業が開始されていなくても支払が発生することがあるため 支払が発生する以前に VAT 納税者登録をしておく必要がある さもなければ 物品購入や建築代金の支払に関連して支払った VAT の還付請求ができなくなる点 留意する必要がある 68

6 図表 11-5 申請から操業開始までの手続きの流れ ( その 2) BOI の奨励証書受領後から 操業開始まで 必要時間 手続き OBOI 担当部署 申請後 15 日以内 土地の所有権取得申請 投資促進部関係部署 ( 工業団地の場合は IEAT) 申請後 60 営業日以内 ( 機械 ) 30 営業日以内 ( 原材料 ) 機械マスターリストおよび原材料フォーミュラ 投資促進部第 1~4 部および国内地方事務所 申請後 3 時間 機械および原材料の輸入申請 インベスタークラブ 申請後 5~20 営業日以内 外国人技術者 専門家の入国および就業許可の申請 ワンストップサービスセンター 奨励証書発給後の 6 ヵ月後 12 ヵ月後 24 ヵ月後 奨励事業実施 ( 工場建設 機械購入等 ) BOI 事務局 奨励証書発給後の 30 ヵ月以内 機械の入荷完了 申請後 2~3 日 工場の設立許可の申請 工業省工業局および県工業事務所 操業開始期限の 15 日前まで一般的に奨励証書発給日より 36 ヵ月以内 工場の操業開始許可の申請 投資促進部第 1~4 部および国内地方事務所 ( 申請後 45 営業日以内に回答 ) 操業開始後毎年 7 月 31 日まで 年度ごとの財務諸表と操業結果の提出 投資促進部第 1~4 部および国内地方事務所 年 1 度または OBOI の要請で 奨励条件遵守に関する報告 担当官による工場検査 投資促進部関係部署および国内地方事務所 69

7 タイの投資環境 3. 奨励証書受領後の手続き (1) 事業開始準備企業は 奨励証書受領後 6 ヵ月以内に 土地購入や工場建設に着手 原材料や機械 設備の輸入申請や発注等を行って 着実に事業を実施していることを示さなければならない また BOI 事務局 (OBOI) は各奨励企業に対して 奨励証書発給後の 6 ヵ月後 12 ヵ月後 24 ヵ月後に 奨励事業実施確認書 を送付してくるので 各奨励企業は進捗状況を文書で回答する必要がある 文書で報告しない場合 OBOI が 3 回督促しても報告しない場合 奨励証書は取り消される (2) 土地購入土地法により 原則として外国人 ( 外国人の資本持分が 49% を超えている企業 外国人株主数が全株主数の半数を超えている企業も含む ) は土地の所有権登記をできないが BOI 奨励企業やタイ工業団地公社 (IEAT) の管理下にある工業団地に立地する企業は 外国人の資本持分比率 あるいは外国人株主数にかかわらず土地の所有権登記が可能である その際の手続きとしては 前者の場合には 図表 11-6 に示した書類を添えて OBOI の関係部署に申請する IEAT の管理下にある工業団地内に土地を取得する場合には IEAT で手続きをすることになる 申請が承認されると OBOI または IEAT から土地所有承認証書が発給される 具体的に土地取得にあたっては その土地が所在する地区の土地局にコンタクトを取る必要がある 図表 11-6 土地所有権許可申請必要書類 1 申請書 2 土地所在地地図 3 土地所有権証明書 ( 土地の地図の写しを添付 ) 4 使用土地のレイアウト設計図 ( 土地の使用詳細を添付 ) 5 BOIの奨励証書の写し 6 会社の株主名簿 7 その他必要書類 (3) 工場建設と操業開始奨励企業は一般的に 奨励証書発給日から 30 ヵ月以内に操業を開始しなければならないとされているため それまでに工場建設 機械 設備の搬入 据付 試運転等を行うことが必要である 工場設立許可の所管は工業省工業局であり 地方の場合は 各県の工業担当官事務所へ申請する IEAT の管理下にある工業団地に入居する場合には IEAT で手続きをすることになる この申請手続きは受注工事業者の協力や支援を得て行う場合もある 一般に申請に必要とされる書類を図表 11-7 に示した 工場設立許可を受けた後 操業を開始する場合には 15 日以上前に 工業担当官事務所へ通知する必要がある BOI 認可事業の場合には OBOI に対しても操業開始期限の 15 日前までに操業 70

8 開始許可を申請しなければならない また IEAT の管理下にある工業団地の場合は IEAT で申 請をすることになる 工場設立許可証の有効期限は 操業開始から 5 年目の暦年の年末であり 引き続き操業を継続するのであれば 延長許可を得る必要がある 図表 11-7 工場設立許可申請の際の必要書類 1 申請書 ( 工場の概要を記述 ) 2 会社登記簿写し ( 代表権 会社の目的 等 ) 3 工場所在地地図 4 工場内機械配置図 ( 正確な縮図で 建築士の証明を添付 ) 5 工場設計図 ( 正確な縮図で 建築士の証明を添付 ) 6 公害防止対策の説明書 7 その他必要書類 71