258 日本写真学会誌 2016 年 79 巻 3 号 : 特集 :2015 年のカメラ解説 EOS 5DS/EOS 5DS R の開発 Development of Canon s Digital SLR Camera:EOS 5DS/EOS 5DS R 前野浩 Hiroshi

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せぴあめいこ
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258 日本写真学会誌 2016 年 79 巻 3 号 :258 264 特集 :2015 年のカメラ解説 EOS 5DS/EOS 5DS R の開発 Development of Canon s Digital SLR Camera:EOS 5DS/EOS 5DS R 前野浩 Hiroshi Maeno 要旨デジタル一眼レフカメラ EOS 5DS および EOS 5DS R は,

1 258 日本写真学会誌 2016 年 79 巻 3 号 : 特集 :2015 年のカメラ解説 EOS 5DS/EOS 5DS R の開発 Development of Canon s Digital SLR Camera:EOS 5DS/EOS 5DS R 前野浩 Hiroshi Maeno 要旨デジタル一眼レフカメラ EOS 5DS および EOS 5DS R は, 有効画素数約 5060 万画素 35 mm フルサイズ CMOS センサーを搭載し, 視野率約 100% ファインダー,61 点 AF, 最高約 5.0 コマ / 秒連続撮影, フルハイビジョン (Full HD) 動画撮影機能を搭載した高解像を重視するプロハイアマチュア向けの一眼レフである. 本稿では, 両機種の特徴的な機能について説明する. Abstract The EOS 5DS and 5DS R are the digital SLR cameras aimed at the professional and advanced amateur photographers who put much emphasis on high resolutions in their photographic works, featuring a 35 mm full-frame CMOS sensor with approximately 50.6 effective megapixels. They also feature the approximately. 100% field of view coverage in their viewfinders, 61 AF points, maximum continuous shooting speed of approximately 5.0 fps, full high-definition(full HD)movie shooting capability, and other advanced digital technologies. This document outlines the main outstanding features of those two sister models. キーワード : デジタル一眼レフカメラ,35 mm フルサイズ,CMOS センサー, フル HD 動画 Key words: Digital SLR Camera, 35 mm full-frame, CMOS sensor, Full HD movie 1. はじめに EOS 5DS/EOS 5DS R(Fig. 1) は, フルサイズデジタル一眼レフカメラとして新市場を開拓した初代 EOS 5D (2005 年 9 月発売 ), 二代目 EOS 5D Mark II(2008 年 11 月発売 ) と, それに続く三代目 EOS 5D Mark III(2012 年 3 月発売 ) で築き上げてきた 5D シリーズの位置づけに在って, 高画素に特化して企画開発された製品である. 開発にあたっては, 当シリーズに相応しい基本ポテンシャルを高めつつ, 超高解像をキーワードとして, 個性的な製品づくりを目指した.EOS 5DS はローパスフィルターモデル, EOS 5DS R はローパスフィルター効果キャンセルモデルである. 2. 開発のねらい EOS 5DS/EOS 5DS R は, 高解像度に対する市場のニーズに応えるための, さまざまな新機能を搭載している. 特に,EOS 5DS R は, より高い解像感を実現するため, ロー Fig. 1 EOS 5DS/EOS 5DS R パスフィルター効果をキャンセルするフィルター構成を採用している. ここでは, 主に高解像に関する新技術と同シリーズ初の機能を中心に両機種を紹介する. 平成 28 年 7 月 10 日受付受理 Received and accepted 10th, July 2016 キヤノン株式会社 ICP 第二開発センター東京都大田区下丸子 CANON INC., ICP Development Center2 30-2, Shimomaruko 3-chome, Ohta-ku,Tokyo , Japan

前野浩 EOS 5DS/EOS 5DS R の開発 259 3. 本機の概要 3.1 高解像度とそれを支える技術 3.1.1 約 5060 万画素 35 mm フルサイズ CMOS センサー EOS 史上最高画素数の約 5060 万画素 ( 有効画素 )35 mm フルサイズ CMOS センサー (Fig. 2) の採用で, 高い解像感が求められる風景写真などで真価を発揮する. 3.1.2 ローパスフィルター効果キャンセル (EOS 5DS R) デジタルカメラの光学ローパスフィルターは, 点像分離によりモアレや偽色を軽減する.

EOS 5DS よりも高い解像感を得ることができる反面, モアレや偽色は生じやすくなる. 3.1.3 高解像度対応の画づくり機能 1) シャープネスの細かさとしきい値シャープネスは, コントラストのある部分 ( 境界 ) に対して, 輪郭強調を施す機能である.

具体的には, シャープネスの細かさとしきい値は最小値の 1, コントラストはスタンダードよりも低めとしている. なお初期設定では, ニュートラルや忠実設定のような後処理前提ではなく, そのまま使用できるよう, 彩度はスタンダード同等の設定としている. 3.1.4 高解像度対応のブレ低減機能高画素機では, カメラ内部の駆動機構の動作による小さな振動も, 画像ブレとなって影響を及ぼす.

2 前野浩 EOS 5DS/EOS 5DS R の開発本機の概要 3.1 高解像度とそれを支える技術約 5060 万画素 35 mm フルサイズ CMOS センサー EOS 史上最高画素数の約 5060 万画素 ( 有効画素 )35 mm フルサイズ CMOS センサー (Fig. 2) の採用で, 高い解像感が求められる風景写真などで真価を発揮するローパスフィルター効果キャンセル (EOS 5DS R) デジタルカメラの光学ローパスフィルターは, 点像分離によりモアレや偽色を軽減する. そのため解像感が低下する. 通常の使用では解像感の低下は気にならないレベルではあるが, 解像感を極限まで追求する場合, ローパスフィルターレスが求められることがある.EOS 5DS R はその要望に応え, より高い解像感を実現するため, ローパスフィルターの効果をキャンセルするフィルター構成 (Fig. 3) を採用しており, ローパスフィルターレスとほぼ同じ効果が得られる.EOS 5DS よりも高い解像感を得ることができる反面, モアレや偽色は生じやすくなる高解像度対応の画づくり機能 1) シャープネスの細かさとしきい値シャープネスは, コントラストのある部分 ( 境界 ) に対して, 輪郭強調を施す機能である. これまでは強さの設定のみであったが, 新たに細かさとしきい値が設定可能となり, 細部の描写域に対しても輪郭強調できるよう機能の向上が図られている (Fig. 4). 2) ディテール重視新ピクチャースタイルのディテール重視 (Fig. 5) は, 被写体細部の輪郭や, 階調の再現性を重視した画づくりを想定している. 具体的には, シャープネスの細かさとしきい値は最小値の 1, コントラストはスタンダードよりも低めとしている. なお初期設定では, ニュートラルや忠実設定のような後処理前提ではなく, そのまま使用できるよう, 彩度はスタンダード同等の設定としている高解像度対応のブレ低減機能高画素機では, カメラ内部の駆動機構の動作による小さな振動も, 画像ブレとなって影響を及ぼす.EOS 5DS と EOS 5DS R では, 次の対応により, 画像ブレを軽減している. なお, 画像ブレへの対応効果を発揮させるためには, 撮影機材の重さに十分耐えられる, 三脚と雲台の使用が前提となる. Fig. 2 約 5060 万画素フルサイズ CMOS センサー Fig. 4 シャープネスの設定 CMOS センサーローパスフィルター 2 ローパスフィルター 1 Fig. 3 ローパスフィルターキャンセル概念図 Fig. 5 ディテール重視

260 日本写真学会誌 79 巻 3 号 (2016 年, 平 28) 1) ミラー振動抑制システムミラーのアップ / ダウン駆動を, モーターの速度制御とカムギアにより行っている (Fig. 6). ミラーがアップ位置 / ダウン位置に到達する ( 衝突する ) 直前のカムギアの位相と, モーターの減速制御により, 衝撃を緩和し振動の発生を抑制している.

そこで, リモートスイッチがなくても手軽にミラーアップ撮影ができるよう, 新たにミラーアップしてから設定秒時後に撮影する機能を採用している. 1/8 秒,1/4 秒,1/2 秒, 1 秒,2 秒後に撮影の設定秒時を選択できる.

5) ファインダー撮影の静音 1 枚撮影モード三脚を使用したファインダー撮影で画像ブレを軽減したい場合に効果的である. 通常の 1 枚撮影モードよりも低速でミラーのアップ / ダウン駆動を行うため, ミラーショックによる振動を抑えることができる. 3.1.5 デュアル DIGIC 6 による高速 / 低ノイズ現像処理 EOS 5DS/EOS 5DS R のファイルサイズは,EOS 5D Mark III の約 2 倍である.

3 260 日本写真学会誌 79 巻 3 号 (2016 年, 平 28) 1) ミラー振動抑制システムミラーのアップ / ダウン駆動を, モーターの速度制御とカムギアにより行っている (Fig. 6). ミラーがアップ位置 / ダウン位置に到達する ( 衝突する ) 直前のカムギアの位相と, モーターの減速制御により, 衝撃を緩和し振動の発生を抑制している. 2) 三脚座の剛性強化三脚使用時に, カメラの駆動源により発生するボディー全体の振動が抑えられるよう, 三脚座とその周辺 (Fig. 7) の剛性を強化している. 3) ミラーアップ撮影時のレリーズタイミング制御ミラーアップ撮影は, 従来から一般的な画像ブレ対策として有効であるが, ミラーアップ後, シャッターボタンを慎重に押す必要があり, 厳密に行うためにはリモートスイッチの併用が必要であった. そこで, リモートスイッチがなくても手軽にミラーアップ撮影ができるよう, 新たにミラーアップしてから設定秒時後に撮影する機能を採用している. 1/8 秒,1/4 秒,1/2 秒, 1 秒,2 秒後に撮影の設定秒時を選択できる. 4) ライブビュー撮影の LV 静音撮影モード画像ブレ対策として, 三脚を使用したライブビュー撮影もダウンバネダウンカムギアアップカムギアメインミラーミラー駆動モーター Fig. 6 ミラー振動制御システム有効な手段である. 静音撮影 : モード 1 の 1 枚撮影と, 静音撮影 : モード 2 では, ミラーアップ状態での撮影となるため, ミラー駆動に起因する振動は発生しない. 5) ファインダー撮影の静音 1 枚撮影モード三脚を使用したファインダー撮影で画像ブレを軽減したい場合に効果的である. 通常の 1 枚撮影モードよりも低速でミラーのアップ / ダウン駆動を行うため, ミラーショックによる振動を抑えることができるデュアル DIGIC 6 による高速 / 低ノイズ現像処理 EOS 5DS/EOS 5DS R のファイルサイズは,EOS 5D Mark III の約 2 倍である. 膨大な画像情報を高速処理し, 約 5 コマ / 秒連写を実現するため, CMOS センサーからの 16 チャンネル読み出し 4 チャンネルのアナログ / デジタル変換回路 4 個デジタルフロントエンド処理回路を採用し, デュアル DIGIC 6 とセットで働く高速並列処理回路 (Fig. 8) を搭載している. この回路で, 低ノイズ, 広ダイナミックレンジの CMOS センサー出力を, さらに低ノイズ化処理し, 約 5060 万画素を有しながら常用 ISO 感度 6400 を実現している高画素 / 大容量対応 1)M2 記録画質記録画素数を段階的に選択できる中間画素数 M2( 約 2210 万画素 ) を備えている. 2)SD カード UHS-I 対応 SD カードの高速書き込み規格 UHS(Ultra High Speed)-I に対応している.RAW で 14 枚,JPEG ラージ / ファインではカードフルまで連写可能である. 3)USB3.0(Super Speed USB) 対応 USB3.0 対応のパソコンへ画像データを高速転送できる. USB3.0 の端子を備えていないパソコンでも, 付属のケーブルで画像データの転送ができる ( 転送速度は遅くなる ) 高解像度を生かしたクロップ撮影機能静止画撮影において, 約 1.3 倍と約 1.6 倍のクロップ撮影ができる. 記録画質ラージの記録画素数は, それぞれ約 3050 万画素, 約 1960 万画素である. ファインダー撮影時は, クロップ撮影範囲をマスク表示 (Fig. 9) するか, 線表示するかを選択できる. ライブビュー撮影時は, 約 1.3 倍, 約 1.6 倍に拡大表示される. 本体の剛性強化三脚座の剛性強化底面ステンレスシャーシーの板厚アップ 3.2 最新の高画質化機能約 15 万画素 RGB+IR 測光センサーによる EOS シーン解析システム RGB の色情報と近赤外光検知により, 自動露出制御とオートホワイトバランス, オートライティングオプティマイザ, ピクチャースタイルオートの精度を向上させている. Fig. 7 三脚座と周辺部の剛性強化

前野浩 EOS 5DS/EOS 5DS R の開発 261 DRAM デジタルフロントエンド処理回路 DIGIC 6 DIGIC 6 CF Card 用インターフェース IC CF Card DRAM SD Card Fig. 8 デュアル DIGIC 6 による画像処理概念図トウェア EOS Utility を使用して未登録レンズの補正情報を登録することができる. 3.

4 前野浩 EOS 5DS/EOS 5DS R の開発 261 DRAM デジタルフロントエンド処理回路 DIGIC 6 DIGIC 6 CF Card 用インターフェース IC CF Card DRAM SD Card Fig. 8 デュアル DIGIC 6 による画像処理概念図トウェア EOS Utility を使用して未登録レンズの補正情報を登録することができる. 3.3 各種情報を表示するインテリジェントビューファインダー (Fig. 10) 各種撮影機能表示ファインダーの撮影画上に透過型液晶を配置し, ファインダーをのぞいた状態でホワイトバランスドライブモード AF 動作測光モードなどの主要撮影機能の設定状態が確認できるよう情報表示を充実させている. これらの機能は, 表示パネル前方にあるボタンに割り当てられており, 慣れるとファインダーをのぞきながら機能の切り換えも可能である. Fig. 9 クロップ撮影画面例オートホワイトバランス白熱電球などの光源下でオートホワイトバランス撮影する際に, 光源の赤味を残す雰囲気優先 ( 今までのオートホワイトバランスと同じ ) と, 光源の赤味が残りにくいホワイト優先が選択できるマルチショットノイズ低減機能この機能は, 高感度撮影時に不規則な位置に発生するランダムノイズの低減に有効である.1 回の撮影で 4 枚連続撮影が行われる水準器表示ファインダー内水準器を常時表示してほしいという要望に応え, 水準器に特化した表示を搭載した. 水平方向で左右各 7.5 度, 上下方向で上下各 4 度の傾きが確認できる撮影範囲表示クロップ撮影範囲のほかに, アスペクトの撮影範囲が表示できる. アスペクト比はフルサイズ (3:2) のほかに,1:1, 4:3,16:9 が選択できるが, ファインダー撮影では 1:1 の撮影範囲に対応している.4:3,16:9 の設定でファインダーレンズ内蔵の光学補正情報に対応周辺光量補正など, レンズ光学補正を行うためには, カメラ側で個々のレンズの補正情報を参照する必要がある. 従来は, この補正情報をカメラ側に登録していたが,2014 年 6 月以降に発売された新規レンズには, レンズ光学補正データが内蔵されており, レンズ光学補正情報をカメラ側に登録する必要がなくなった. 従来レンズに対しては,EOS 用ソフ Fig. 10 インテリジェントビューファインダー

262 日本写真学会誌 79 巻 3 号 (2016 年, 平 28) 撮影したときは, フルサイズ (3:2) で撮影される. 用されている. 3.4 AF( オートフォーカス ) AF センサーと RGB+IR 測光センサーを組み合わせることで, 人の顔や被写体の色を認識して AF を行う,EOS itr AF(Intelligent Tracking and Recognition: 測光センサーで被写体を認識し, 測距点を追従させる機能 ) を実現している.

2 フリッカーレス撮影蛍光灯などの明滅周期の影響で生じる露出や色のばらつきを低減できる機能である. フリッカーの周期と位相 ( 明るさのピークタイミング ) を検出し, 明るさがピークに近いときに撮影することでフリッカーの影響を軽減している. この機能は,100 Hz と 120 Hz のフリッカーにおいて有効である. 3.6

5 262 日本写真学会誌 79 巻 3 号 (2016 年, 平 28) 撮影したときは, フルサイズ (3:2) で撮影される. 用されている. 3.4 AF( オートフォーカス ) AF センサーと RGB+IR 測光センサーを組み合わせることで, 人の顔や被写体の色を認識して AF を行う,EOS itr AF(Intelligent Tracking and Recognition: 測光センサーで被写体を認識し, 測距点を追従させる機能 ) を実現している. 61 点 AF センサー (Fig. 11) による 61 点自動選択 AF とゾーン AF( ゾーン任意選択 ) のときに, 人の顔や被写体の色を認識し続けられる間であれば, ねらった被写体にピントを合わせ続けられる可能性が高くなる. なお,EOS itr AF を使用しない状態では, 基本的に近距離の被写体を自動選択する動作となるフリッカーレス撮影蛍光灯などの明滅周期の影響で生じる露出や色のばらつきを低減できる機能である. フリッカーの周期と位相 ( 明るさのピークタイミング ) を検出し, 明るさがピークに近いときに撮影することでフリッカーの影響を軽減している. この機能は,100 Hz と 120 Hz のフリッカーにおいて有効である. 3.6 タイマー撮影機能バルブタイマー撮影 1 秒 99 時間 59 分 59 秒の範囲で, バルブ露光時間の設定ができる. 3.5 露出制御約 15 万画素 RGB+IR 測光センサー 15 万 3600( ) 画素の RGB+IR 測光センサー (Fig. 12) を搭載している. この測光センサーを利用して輝度と色顔フリッカー近赤外光を含む波長領域を検知し, その情報を基に評価測光, 評価調光を行う. なお, 実際の測光は, センサーエリアをブロック (252 分割 ) に分けて行われる. また, この測光センサーは, 近赤外光を含む波長領域を検知する IR 画素を備えており, 前述した EOS シーン解析システムのシーン判別と,AF 精度の向上にも利インターバルタイマー撮影撮影間隔 1 秒 99 時間 59 分 59 秒, 撮影回数 1 99 回, または無制限の設定でインターバルタイマー撮影ができる. 3.7 ライブビュー撮影機能 AF 機能人物の顔の検知と追尾だけでなく, ねらった被写体の追尾ができる顔 + 追尾優先 AF を備えている. また, 被写体に対して大まかにピントを合わせ続けるコンティニュアス AF により, ピント合わせ時間の短縮化も図られている測光 EOS 5D Mark III では, 常時評価測光であったが, 部分測光とスポット測光, 中央部重点平均測光もできるよう改善されている約 16 倍の拡大表示従来機種における拡大表示は, 最大約 10 倍であったが, 手動ピント合わせの精度向上を考慮し, 最大約 16 倍までアップさせている. Fig 点 AF センサーシーン認識シーンインテリジェントオートでは, 撮像素子を使用した EOS シーン解析システムにより, 判別したシーンに合った撮影が行われる. 判別したシーンの情報は, アイコンとしてライブビュー撮影画面に表示される. Fig. 12 約 15 万画素 RGB+IR 測光センサー 3.8 進化した動画撮影機能 EOS 初の機能として, タイムラプス動画撮影 ( フル HD) が可能になった. タイムラプス動画は, 一定間隔で撮影した静止画をつなぎ合わせて動画にする機能である ( 音声なし ). 景色の変化や植物の成長, 星の動きなどを短時間にまとめることができる. 撮影間隔は 1 秒 99 時間 59 分 59 秒, 撮影回数は回の設定ができる. 例えば撮影間隔 5 秒, 撮影回数 3600 回の場合,5 秒間隔 4 時間 59 分 55 秒の記録を約 2 分間 (NTSC 設定時 ) の映像として記録できる (PAL

6 前野浩 EOS 5DS/EOS 5DS R の開発 263 設定時は約 2 分 24 秒 ). 3.9 画像再生とカメラ内 RAW 現像画像再生画像再生では, 画像の選択, ピント確認, 撮影情報表示が改善されている. 画像の選択では,36 枚,100 枚インデックス表示と, プロテクト画像の画像送り / スライドショーができる. ピント確認では, 最大約 16 倍の拡大表示ができる. 撮影情報表示では, 詳細な撮影情報が確認できるカメラ内 RAW 現像 EOS 5D Mark III に対してオートホワイトバランス時の雰囲気優先 / ホワイト優先選択ピクチャースタイルのディテール重視選択シャープネスの細かさ / しきい値設定 JPEG の M2 記録画質選択ができるカスタマイズ機能撮影機能のクイック設定カスタマイズ EOS 初の機能として, 撮影時のクイック設定画面を一つ, 新規に作ることができる. よく使う撮影機能を選んで任意の場所に配置できるマイメニュー機能の充実マイメニューは, 設定を変える頻度が高いメニューやカスタム機能を選んで, 登録できる機能である. 一つのマイメニュータブに 6 項目の登録が可能, 最大 5 つのタブを作って項目を登録することができる. メニューボタンを押したときに, マイメニュータブから表示することもできるので, 各種メニュー機能の操作が多い方には, マイメニューの利用を推奨する. 4. まとめ以上説明したように,EOS 5DS/EOS 5DS R は, 高画素カメラに要求されるカメラ振動ブレ対策や画質などの性能を満足させるだけでなく, タイマー撮影機能, タイムラプス動画などの新しい機能も搭載して, お客様にフルサイズの醍醐味とカメラを持つ喜び, 撮る喜びを味わえるカメラを提供できたと考えている. 参考のため,Table 1 に従来機 EOS 5DS/EOS 5DS R と EOS 5D Mark III の主要仕様比較一覧を示す. Table 1 EOS 5D Mark III との主要仕様比較機能 EOS 5DS/EOS 5DS R EOS 5D Mark III 映像エンジンデュアル DIGIC 6 DIGIC 5+ 画素数 ( 約万画素 ) ローパスフィルターキャンセル〇 (EOS 5DS R) クロップ撮影〇 M2 記録画質〇オートホワイトバランス雰囲気優先〇〇ホワイト優先〇ピクチャースタイルディテール重視〇シャープネス : 細かさ, しきい値設定〇撮影機能のクイック設定カスタマイズ〇ミラーアップ撮影の撮影タイミング変更〇記録メディアデュアルカードスロット CF(Type I), SD CF(Type I), SD SD カード UHS-I 対応〇視野率 ( 約 %) ファインダー倍率 ( 約倍 ) クロップ枠〇撮影情報表示〇測距点数オートフォーカスクロス測距点 EOS itr AF 〇測光センサー 15 万画素 RGB+IR 63 分割測光センサー分割数色 / 顔検知〇露出制御フリッカー検知〇 ISO 感度 L:50 L: H1:51200 H:12800 H2:102400

7 264 日本写真学会誌 79 巻 3 号 (2016 年, 平 28) シャッター機能 EOS 5DS/EOS 5DS R EOS 5D Mark III 最高シャッター速度 1/8000 1/8000 最短レリーズタイムラグ ( 約秒 ) ドライブ連続撮影速度 ( 最高約コマ / 秒 ) 連続撮影可能枚数 :RAW/ ラージファイン (UDMA7) 12/31(14/ ) 13/65(18/ ) タイマー撮影水準器ライブビュー撮影動画撮影バルブタイマー撮影〇インターバルタイマー撮影〇ファインダー〇 ( 専用表示 ) 〇 (AF フレーム兼用表示 ) 液晶モニター〇〇コンティニュアス AF 〇部分 / スポット / 中央部重点平均測光〇拡大倍率 1/6/16 倍 1/5/10 倍タイムラプス動画〇ヘッドフォン端子〇映像素材用 HDMI 出力〇サーボ AF 〇 ISO 感度 H: H:25600 SuperSpeed USB(USB3.0) デジタル端子〇日付 / 時計機能保持用電源内蔵二次電池コイン型電池撮影可能枚数 ( 常温約 ) 大きさ ( 約幅高さ奥行 mm/cipa 基準 ) 質量 ( 約 g/cipa 基準 )

高画素デジタル一眼レフカメラ”EOS 5DS／EOS 5DS R”を発売

高画素デジタル一眼レフカメラ”EOS 5DS／EOS 5DS R”を発売 2015 年 2 月 6 日キヤノン株式会社キヤノンマーケティングジャパン株式会社世界最高画素数 1 の約 5,060 万画素 CMOS センサーを搭載高画素デジタル一眼レフカメラ EOS 5DS/EOS 5DS R を発売キヤノンはプロおよびハイアマチュアユーザー向けに圧倒的な高解像度を実現するデジタル一眼レフカメラ EOS 5DS と EOS 5DS R を 2015 年 6 月より順次発売します

258 日本写真学会誌 2016 年 79 巻 3 号 : 特 集 :2015 年のカメラ解説 EOS 5DS/EOS 5DS R の開発 Development of Canon s Digital SLR Camera:EOS 5DS/EOS 5DS R 前野 浩 Hiroshi

258 日本写真学会誌 2016 年 79 巻 3 号 : 特集 :2015 年のカメラ解説 EOS 5DS/EOS 5DS R の開発 Development of Canon s Digital SLR Camera:EOS 5DS/EOS 5DS R 前野浩 Hiroshi