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1 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 / 工 学 部 研 究 報 告 第 43 巻 革 新 的 低 騒 音 化 技 術 を 求 めて 西 村 正 治 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 機 械 宇 宙 工 学 専 攻 Searching for Innovative Quieting Techniques Masaharu NISHIMURA Department of Mechanical and Aerospace Engineering, Graduate School of Engineering, Tottori University, Tottori, Japan mnishimura@mech.tottori-u.ac.jp Abstract: The author has been researching and developing noise control techniques for 30 years in a company and for 11years in an university. In the company period, the author had experienced various kinds of noise problems and had been involved in many projects to develop quiet machines. In the university period, the author has been researching and developing innovative quieting techniques, and has made effort to transfer these techniques to companies. In this paper, these experiences are summarized and typical noise reducing techniques are presented. Key Words: Innovative quieting techniques, Machinery noise, Aeroacoustics, Active noise control, Duct noise 1.プロローグ 私 が 音 の 世 界 に 足 を 踏 み 入 れることになっ たのは 上 司 の 次 の 一 言 がきっかけであった. これ から 日 本 も 産 業 が 活 発 になり, 環 境 問 題, 騒 音 問 題 が 重 要 になってくる. 西 村 君 も 騒 音 グループに 入 って 活 動 してくれ 年 に, 京 都 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 航 空 工 学 専 攻 修 士 課 程 を 修 了 し, 三 菱 重 工 業 ( 株 )に 入 社, 神 戸 研 究 所 ( 現, 高 砂 研 究 所 )に 配 属 されて 2 年 目 のことである. 大 学 の 修 士 課 程 では, 衝 撃 波 背 後 のアルゴンガスの 電 離 緩 和 過 程 に 関 する 研 究 [1] を 行 い, 企 業 ではガス ダイナミックレーザの 研 究 開 発 に 携 わりたいと 思 っていた 私 には,まったくの 寝 耳 に 水 の 話 で, 当 時 は 相 当 反 発 したものである.dB のなんたるかも 理 解 していない 全 くのゼロからのスタートであっ たが,やるからには 楽 しくやりたい,その 為 には 自 分 なりのアイデアと 工 夫 で 取 り 組 みたい,と 思 ってやっているうちにいつの 間 にか 40 年 が 経 ち, 男 子 一 生 の 仕 事 になってしまった. 人 生 とは 不 思 議 なものである. 以 下 これまでの 仕 事 を 振 り 返 っ てみたい. 2. 企 業 での 製 品 開 発 とトラブル 対 応 三 菱 重 工 業 ( 株 )は700の 製 品 を 扱 っていると 言 われている. 私 は 研 究 所 に 所 属 していたため, 幸 いなことに, 騒 音 対 策, 低 騒 音 化 という 技 術 をベースに,ありとあらゆる 製 品 に 関 係 する 機 会 を 得 ることができた. 表 1に 記 憶 に 残 っている 製 品 と 主 な 課 題 をまとめる.その 中 でも 特 に 印 象 に 残 っている 仕 事 について 以 下 に 触 れてみたい. 2.1 低 騒 音 モノレールの 開 発 入 社 して4~5 年 たった 頃, 社 内 の 騒 音 関 係 者 が 集 められ, モノレールを 受 注 した.ただし, 軌 道 横 25m 地 点 での 騒 音 レベルを70dB(A) 以 下 にす ることが 条 件 と 告 げられた. 三 菱 重 工 はそれま で, 海 外 からの 技 術 導 入 で, 図 1に 示 す 懸 垂 型 モノ レールを 製 造 しており, 湘 南 モノレール( 大 船 ~ 江 の 島 )で 運 航 していた.ただその 騒 音 レベルは 84dB(A) 程 度 であった. 騒 音 に 関 係 するものなら 理 解 いただけると 思 うが, 一 般 に 機 械 の 騒 音 レベル を 一 気 に 十 数 db 低 減 することは 非 常 識 である. 早 速 社 内 でプロジェクトが 形 成 され, 音 源 ごと に 寄 与 度 を 分 析 し,その 低 減 目 標 値 が 決 められた. 私 は,まだ 経 験 が 浅 かったが, 主 音 源 である 台 車 (モータ, 減 速 機, 車 輪 (タイヤ)の 駆 動 系 )の

2 西 村 正 治 : 革 新 的 低 騒 音 化 技 術 を 求 めて 乗 り 物 プラント 機 械 表 1 企 業 で 経 験 した 主 な 製 品 開 発 とトラブル 対 応 船 新 造 船 の 試 運 転 騒 音 計 測,テクノスーパーライナー 低 騒 音 化 車 両 低 騒 音 モノレールの 開 発, 高 速 車 両 の 低 騒 音 化 ( 空 力 音, 微 気 圧 波 対 策 ) 自 動 車 ANC を 用 いた 車 内 音 の 低 減,ANC 付 エンジン 排 気 マフラー パネルの 音 響 加 振, 境 界 層 での 音 波 の 屈 折 (JADC 委 託 研 究 ), 航 空 機 アクティブ 吸 音 ナセルの 開 発,ジェットノイズの 低 減 (UTRC 共 同 研 究 ) ヘリコプター(MH2000)の 低 騒 音 化 ( 主 に ANC の 適 用 ) 宇 宙 宇 宙 ステーション 内 実 験 装 置 の 低 騒 音 化 ガ ス タ ー 排 気 発 生 音 の 低 減, 排 気 消 音 器,エンクロージャー, 騒 音 アセスメント, ビン 燃 焼 振 動 の 予 測 対 策 蒸 気 タ ー ガバナー 弁 異 音 対 策 ビン ボイラ 熱 交 管 群 共 鳴 音, 音 響 スートブロー, 蒸 気 弁 用 サイレンサー( 多 孔 質 金 属 ディフューザ,セラミックサイレンサ) 送 風 機 消 音 器, 低 周 波 音 (サージング, 旋 回 失 速 ) 原 子 力 熱 交 管 群 共 鳴 音,ANC によるプラント 内 低 騒 音 化 (ポンプ,モータ 等 ) その 他 音 波 凝 集 装 置 空 調 機 ファンの 低 騒 音 化, 空 調 機 音 の 音 質 評 価, 空 調 ダクトの ANC 建 機 パワーショベルエンジン 冷 却 系 の 低 騒 音 化,キャブの ANC 衛 星 の 音 響 加 振 設 備 (EPT の 開 発 ), 大 型 低 騒 音 風 洞, 試 験 装 置 フローノイズシミュレータ( 低 雑 音 回 流 水 槽 ), ジェットエンジンテストスタンド その 他 ASE の 開 発 (ANC 付 道 路 用 防 音 壁 ) *ANC: Active Noise Control( 能 動 騒 音 制 御 ),EPT: Electro Pneumatic Transducer( 大 音 響 発 生 装 置 ), JADC: 日 本 航 空 機 開 発 協 会,UTRC: United Technologies Research Center,ASE: Active Soft Edge 低 騒 音 化 を 担 当 することになった.どのように 検 討 を 進 めていこうかと 相 当 悩 んだ 記 憶 がある.ま ず, 地 上 で 実 物 台 車 の 付 加 試 験 ができる 装 置 を 製 作 し, 主 な 騒 音 の 発 生 源 と, 寄 与 度 を 調 べた.そ の 結 果,モータ 出 力 を 車 輪 に 伝 えるべベルギアが, 負 荷 をかけると 非 常 に 大 きな 騒 音 を 発 生 すること が 分 かった. 私 は 歯 車 に 対 しては 全 くの 素 人 であ ったが, 同 じくらいの 動 力 を 伝 達 するトラックの デフギアは 静 かであるとの 上 司 の 示 唆 を 受 け, 三 菱 自 動 車 に 入 り 込 んで 種 々 教 えを 受 けた.その 結 果,ケーシングの 剛 性 不 足 による 歯 当 たりのずれ が 騒 音 発 生 の 主 な 原 因 であることがわかり, 設 計 の 方 と 新 しく 駆 動 系 を 設 計 し, 低 騒 音 のギアが 完 成 した. 他 にモータの 冷 却 ファンの 外 扇 化,タイ ヤのトレッドの 改 善 等 で, 新 台 車 は 見 事 目 標 の 低 騒 音 化 を 達 成 した.この 時 学 んだことは, 音 の 発 生 メカニズムを 正 しく 把 握 し, 適 切 な 打 手 を 打 つ 重 要 性 と, 他 に 先 生 を 探 せ ということである. 他 の 箇 所 の 低 騒 音 化 もそれぞれ 順 調 に 進 み, 試 作 車 両 が 作 られて, 湘 南 モノレールで 試 運 転 が 行 われた,その 騒 音 計 測 時 の 緊 張 感 は 今 も 忘 れない. いくつかの 不 具 合 を 修 正 したのち, 騒 音 レベルは 図 1 懸 垂 型 モノレール [2]

3 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 / 工 学 部 研 究 報 告 第 43 巻 目 標 値 をクリアした.その 後, 本 モノレールは 千 葉 市 に 採 用 され, 今 も 主 要 交 通 機 関 として 走 り 続 けている. 桁 にも 対 策 が 行 われ, 騒 音 レベルは 63dB(A)at60km/h を 達 成 している [2].この 時 の 成 功 体 験 は,その 後 の 大 きな 自 信 となった. 2.2 ガスタービン 排 気 消 音 器 三 菱 重 工 は 東 北 電 力 と 共 同 研 究 で, 国 内 初 のガ スタービンコンバインドプラントを 東 新 潟 発 電 所 に 建 設 することとなった. 私 は 騒 音 アセスメント から 各 機 器 の 騒 音 対 策 まで 全 般 を 担 当 することに なった.コンバインドプラントは,ガスタービン で 発 電 機 を 回 すとともに,その 排 ガスを 排 熱 回 収 ボイラに 通 して 蒸 気 を 発 生 し,その 蒸 気 で 蒸 気 タ ービンを 回 してさらに 発 電 するもので,その 効 率 の 高 さから 現 在 では 火 力 発 電 の 主 流 となっている. 三 菱 重 工 の 場 合 はガスタービン 発 電 機 と 蒸 気 ター ビン 発 電 機 は 別 になっているが, 適 切 な 図 がない ため, 参 考 に 1 軸 コンバインドプラントの 例 を 図 2に 示 す. 私 はそれまでシンプルサイクルのガスタービ ンプラントで, 強 烈 な 排 気 低 周 波 音 を 経 験 し,そ の 対 策 のための 大 きな 排 気 消 音 器 を 設 計 してきた. コンバインドプラントでも 当 然 排 気 消 音 器 が 必 要 と 考 え,600,60m/s の 排 ガスに 耐 える 吸 音 材 と して, 綿 密 な 試 験 の 下 セラミック 繊 維 の 吸 音 材 を 選 定 し, 消 音 器 を 設 計 した. プラントは 6 号 機 まで 順 調 に 試 運 転 を 開 始 し, 非 常 に 静 かなプラントだと 良 い 評 価 を 頂 いていた. 一 本 の 電 話 で 事 態 が 急 変 した. ガスタービンが 次 々と 背 圧 大 でトリップしている. 排 熱 回 収 ボイ ラに 入 ると 脱 硝 装 置 の 前 面 に 白 い 綿 状 のものが 張 り 付 き, 流 れを 塞 いでいる というのである. 私 は 真 っ 青 になった. 種 々の 耐 久 試 験 をし, 自 信 を 持 って 採 用 したセラミック 繊 維 の 吸 音 材 が 飛 んだ のである. それから 3 か 月 は 地 獄 であった. 世 界 最 新 鋭 の プラントが 自 分 のミスでトリップし, 会 社 に 計 り 知 れない 損 害 を 与 えてしまったという 自 責 の 念 の 上 に,その 原 因 の 追 究 と 対 策 案 の 立 案, 検 証 試 験 などで 明 け 暮 れた.ウィークデイに 試 験, 解 析 を 行 い,その 結 果 をまとめて 土, 日 に 客 先 に 報 告 す るというパターンで,ほとんど 家 に 帰 る 間 もなか った. 原 因 は 吸 音 材 を 巻 いているセラミック 繊 維 の 布 の 摩 耗 であることが 分 かった. 振 動 によってこ すれて 穴 が 開 き, 中 から 吸 音 材 が 吸 い 出 されたの である. 原 因 は 分 かっても 対 策 の 打 ちようがない. 最 後 に 打 ち 出 した 案 は, 吸 音 材 の 無 いサイレンサ ーである. 吸 音 材 が 無 くてもリアクティブ 効 果 で 十 分 減 音 できるとし,モデル 実 験 で 検 証 した. 客 先 と 共 願 で 特 許 まで 取 得 した.( 今 から 考 えるとヒ ヤヒヤものだがーー.) 結 果 としては,サイレンサ ーから 吸 音 材 をすべて 取 り 出 し, 運 転 を 開 始 した が, 騒 音 が 増 加 することなく, 一 件 が 落 着 した. それでは 最 初 から 吸 音 材 はいらなかったというこ とになるが, 客 先 はそれ 以 上 何 も 言 わなかった. このトラブルを 通 して, 仲 間 の 重 要 性, 決 し て 逃 げないこと, 答 えを 出 すことの 重 要 性 を 学 んだ. 化 学 屋, 熱 屋, 流 体 屋, 構 造 屋, 振 動 屋 す べてが, 寝 る 間 もいとわず 協 力 してくれた.お 客 さんは 理 屈 より 答 えを 求 めている. 後 日 談 である が,その 後 排 熱 回 収 ボイラに 大 きな 消 音 性 能 があ ることが 分 かり, 今 ではコンバインドプラントに 排 気 消 音 器 は 設 置 されていない. シンプルサイクルのガスタービン 排 気 低 周 波 音 は 種 々の 問 題 を 引 き 起 こしている.あるプラン トでは, 運 転 時 に 社 長 室 の 窓 が 振 動 するという 問 題 が 発 生 し, 確 実 に 一 発 で 対 策 するために, 煙 突 に 直 径 約 10m, 長 さ 約 10mの 拡 張 室 を 設 置 したこ ともある. 煙 突 1 本 を 建 て 替 える 大 工 事 であった が, 対 策 が 成 功 したときの 感 動 は 忘 れられない. またこの 時 の 経 験 が, 後 の 多 孔 側 壁 による 開 口 端 反 射 率 の 低 減 と 低 周 波 音 の 発 生 防 止 のアイデアを 生 むきっかけとなった [3]. 出 典 : もの 創 りのためのやさしい 機 械 工 学 門 田 和 雄 著 ( 技 術 評 論 社 ) 図 2ガスタービンとコンバインドプラント

4 西 村 正 治 : 革 新 的 低 騒 音 化 技 術 を 求 めて ガスタービンは 燃 焼 振 動 という 大 きな 爆 弾 を 抱 えている. 燃 焼 と 音 場 が 連 成 して 自 励 的 な 圧 力 変 動 を 引 き 起 こし, 燃 焼 器 やブレードを 破 損 する という 現 象 で, 予 混 合 ガスの 希 薄 燃 焼 で 発 生 しや すい. 音 響 ダンピングの 付 加 が 不 可 欠 と 考 え, 音 響 屋 として,その 予 測 対 策 に 取 り 組 んだ.これら は 大 学 での 研 究 にも 引 き 継 がれている. 2.3 大 型 低 騒 音 風 洞 他 の 試 験 装 置 鉄 道 の 高 速 化 に 伴 って, 空 力 発 生 音 の 対 策 が 重 要 になってくる.JR 総 研 では 世 界 に 誇 れる 大 型 低 騒 音 風 洞 を 設 置 し, 本 研 究 を 推 進 しようという 計 画 が 立 てられた. 三 菱 重 工 は 風 洞 メーカとして 受 注 活 動 を 展 開 した. 客 先 の 仕 様 は, 風 速 300km/h 時, 風 洞 暗 騒 音 が 機 側 の 定 め ら れ た 位 置 で 75db(A) 以 下 を 保 証 せよというものであった. 種 々のモデル 実 験 に 基 づいて 実 機 騒 音 を 予 測 すると, 従 来 の 技 術 を 駆 使 して 製 作 した 場 合, 予 測 値 は 78dB(A)となった.ノズル コレクター 部 で 発 生 する 空 力 騒 音 がネックであった.その 低 減 に, 共 同 研 究 をお 願 いしていた 大 阪 府 立 大 学 の 西 岡 教 授 から 柔 毛 材 の 設 置 というアイデアが 出 された. 早 速 実 験 を 繰 り 返 し,その 対 策 を 実 施 す ることにより 実 機 で 75dB(A)になるという 予 測 が 出 た.ただ, 予 測 誤 差 を 考 慮 して 保 証 値 はあくま でも 78dB(A)であるとした. 営 業 サイドからは, 他 メーカが 75dB(A)を 保 証 すると 言 っているとの プ レ ッ シ ャ ー が か か っ た が, 断 固 妥 協 せ ず 78dB(A)の 保 証 値,75dB(A)の 目 標 値 を 押 し 通 した. 客 先 には 技 術 内 容 をきちっと 説 明 することにより 納 得 が 得 られ, 見 事 受 注 した. 完 成 した 風 洞 を 図 3に 示 す.ノズルコレクター 部 に 柔 毛 材 を 設 置 したことと,ノズル 周 りに 伴 流 調 節 機 構 を 導 入 したのが 特 徴 である. 最 終 的 には 伴 流 の 調 節 を 適 切 にすることによって 75.6dB(A) を 達 成 し, 無 事 研 修 された [4]. 本 風 洞 は 竣 工 して もう 15 年 以 上 になるが, 世 界 一 低 騒 音 の 風 洞 と 自 負 している.また 稼 働 率 が 高 く, 車 両 や 自 動 車 の 低 騒 音 化 に 寄 与 している. 本 プロジェクトで 学 ん だことは 技 術 に 妥 協 は 許 されない ということ である.また, 設 計, 営 業 部 門 の 良 きパートナー も 不 可 欠 である. 柔 毛 材 についてはさらに 大 学 で 研 究 を 発 展 させた. 他 に 大 きな 試 験 装 置 としては, 衛 星 の 音 響 加 振 試 験 設 備,フローノイズシミュレータなどに 参 画 した. 前 者 は 衛 星 をロケットで 打 ち 上 げる 際 にさ らされる 音 響 環 境 を 地 上 で 再 現 し, 衛 星 が 音 響 加 振 で 壊 れないことを 事 前 に 確 認 する 装 置 で, 衛 星 を 収 める 大 きなチャンバー 内 で 150 ~160dB 程 度 の 音 圧 レベルを 実 現 するものである. 心 臓 部 の 音 響 発 生 装 置 (EPT: Electro Pneumatic Transducer :スリットの 開 度 を 波 形 に 合 わせて 変 化 させ, 圧 縮 空 気 の 放 出 量 を 変 更 させて 音 響 を 発 生 する 装 置 ) を 内 作 することになり, 苦 労 したことを 思 い 出 す. NASDA 向 けの 装 置 は 逸 注 したが, 社 内 向 けに 完 成 させた [5].この 時 音 の 破 壊 力 を 身 をもって 体 験 し た. 後 者 は,2m 10m のテストセクションに 最 大 15m/s の 水 流 を 流 す 低 雑 音 の 回 流 水 槽 である. 計 画 段 階 とはいえ, 大 きな 工 事 のプロジェクトマネ ージャを 経 験 させていただいた. 世 界 を 回 って 最 新 技 術 を 調 査 し, 企 業 間 を 調 整 しながら,ユニー クな 低 雑 音 水 槽 の 計 画 が 完 成 した [6,7].その 後 設 計, 建 設 に 引 き 継 がれ 無 事 完 成, 引 き 渡 された. [4] 図 3 大 型 低 騒 音 風 洞 3. 企 業 での 要 素 技 術 開 発 我 々の 時 代 は 恵 まれていて, 製 品 開 発 やトラブ ル 対 応 と 並 行 して, 関 連 した 要 素 技 術 開 発 のため の 予 算 が 認 可 された. 社 内 の 共 通 研 究 や, 事 業 所 からの 委 託 研 究 があるが, 私 の 場 合 は, 空 力 騒 音, ダクト 音 響, 音 質 評 価, アクティブノイズ コントロール などに 取 り 組 んだ. 厳 しい 予 算 の 争 奪 戦 と, 研 究 内 容 に 対 する 社 内 研 究 者 間 の 厳 し いフォローが 我 々を 成 長 させてくれた. 以 下 主 な ものを 振 り 返 りたい.

5 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 / 工 学 部 研 究 報 告 第 43 巻 3.1 空 力 騒 音 入 社 当 時 ファンの 騒 音 低 減 は 大 きな 課 題 であ った.そこでまず 空 力 騒 音 の 課 題 に 取 り 組 んだ. 当 時 は CFD 等 ない 時 代 で, 実 験 的 なアプローチが 主 であった. 最 初 に 取 り 組 んだのは 翼 列 騒 音 に 関 する 研 究 である.その 時 まだ 珍 しかった 低 騒 音 風 洞 を 使 用 した 翼 列 試 験 で, 種 々の 翼 列 条 件 に 対 する 発 生 音 のデータを 計 測 した. 先 輩 の 指 導 の 下,それらに 基 づいて, 発 生 音 に 対 する 流 速, 迎 え 角, 翼 のそり 角, 食 違 い 角, 節 弦 比 などの 影 響 を 明 らかにし,ファンの 騒 音 をオフデザイン 点 も 含 めて 予 測 できる 式 を 作 成 した.この 結 果 は, 三 菱 重 工 技 報 に 論 文 として 発 表 された [8]. 私 の 初 め ての 論 文 である. 低 圧 軸 流 ファンについては, 他 にチップクリアランスの 影 響, 入 口 乱 れの 影 響 等, 多 くの 実 験 をしたのを 記 憶 している. プラントなどによく 使 われているバルブから は 非 常 に 大 きな 音 が 発 生 する. 特 に 差 圧 がチョー ク 条 件 を 超 えるバルブでは, 強 烈 な 音 でその 騒 音 対 策 が 大 変 である.これは 絞 り 部 後 流 に 衝 撃 波 を 伴 う 非 常 に 強 い 乱 れが 発 生 するためである. 私 は 多 孔 材 を 絞 り 部 直 後 に 設 置 することにより, 乱 れ を 抑 えられないかと 考 えた. 最 初 は,このような 高 速 流 の 中 に 多 孔 材 を 挿 入 するとすぐ 壊 れてしま うのではないか, 流 れの 抵 抗 が 増 えて, 流 量 が 減 少 してしまうのではないかと 大 いに 懸 念 された. 結 果 はうまくいったのである. 流 量 は 変 化 せず 30dB 以 上 のドラスティックな 減 音 効 果 が 得 られ た. 理 屈 は 後 付 けだが 簡 単 である. 多 孔 材 で 少 々 背 圧 が 増 加 しても 絞 り 部 の 差 圧 がチョーク 条 件 を 満 足 していれば, 流 量 は 元 圧 とチョーク 流 速 に 依 存 するため 減 少 しない.また, 流 れは 大 きく 乱 れ る 前 に 多 孔 材 に 入 り, 急 激 に 減 速 する.その 時 多 孔 材 により, 衝 撃 波 は 封 じ 込 められ, 乱 れは 大 き く 成 長 しない.その 結 果 発 生 音 が 大 幅 に 低 減 する とともに, 多 孔 材 を 壊 すような 大 きなエネルギー も 発 生 しない. 実 際 には, 多 孔 材 として 気 孔 率 90% 以 上 のニッケルクロム 合 金 の 多 孔 質 金 属 を 用 い 多 孔 質 金 属 絞 り 機 構 として, 放 風 弁 や 減 圧 機 構, 蒸 気 ブロー 用 サイレンサーのディフューザ 部 など に 用 いられた [9,10]. 図 4に 放 風 弁 に 適 用 した 例 を 示 す.これまでで 最 も 画 期 的 な 成 果 である. 他 に, 高 速 車 両 の 空 力 発 生 音 が 問 題 になるにつ け, 段 差 や 突 起 などから 発 生 する 音 の 特 性 を 実 験 的 に 調 査, 整 理 した [11].また, 管 群 共 鳴 音 やキャ ビティ 音 などの 空 力 自 励 音 は, 流 れと 音 場 の 連 成 問 題 として 非 常 に 興 味 深 い 内 容 である. 問 題 が 発 [10] 図 4 多 孔 質 金 属 利 用 的 騒 音 放 風 弁 とその 効 果 生 するたびに 種 々 検 討 を 加 えたが, 自 励 音 の 発 生 を 一 般 的 に 予 測 できるところまでは 至 らなかった [12,13]. 3.2 ダクト 音 響 送 風 機 やガスタービンなどの 消 音 器 の 設 計 技 術 開 発 を 担 当 することになった.これらの 消 音 器 には 一 般 に 吸 音 スプリッタを 使 用 した 吸 音 型 消 音 器 が 用 いられており,それまでは, 経 験 値 をもと に 設 計 が 行 われていた. 私 は, 理 論 に 基 づいて, 発 生 音 スペクトルに 適 応 した 消 音 器 の 形 状 や 材 質 を 設 計 したいと 考 えた. 当 時 は 有 限 要 素 法 や 境 界 要 素 法 を 用 いた 音 場 解 析 はまだあまり 用 いられて

6 西 村 正 治 : 革 新 的 低 騒 音 化 技 術 を 求 めて おらず,ジェットエンジンの 消 音 ナセルの 計 算 式 を 参 考 に, 吸 音 スプリッタに 適 用 できる 理 論 式 を 構 築 した.さらにそれを 設 計 チャートの 形 にまと めた.これにより, 使 用 する 吸 音 材 の 密 度, 流 れ 抵 抗,スプリッタ 表 面 の 多 孔 板 などの 表 面 保 護 材 の 影 響 を 考 慮 した 適 正 寸 法 形 状 の 消 音 器 を 設 計 できるようになった [14,15]. 図 5に 設 計 チャートの 例 を 示 す. 上 記 は 主 に 中 周 波 数 域 の 消 音 効 果 を 与 えるも のであるが.プラントのようにダクトが 複 雑 に 繋 がった 形 状 で,ダクト 内 に 平 面 音 波 しか 伝 播 しな いような 低 周 波 数 域 の 音 響 伝 播 を 検 討 するときは, エンジンのマフラーのようにリアクティブ 効 果 を 考 慮 した 検 討 が 必 要 である.そこで 管 路 系 の 伝 達 マトリックスや 音 源 の 音 響 インピーダンスを 計 測 し,それらを 用 いて 伝 達 マトリックス 法 により 複 雑 管 路 系 を 解 析 する 手 法 を 構 築 した [16,17]. 以 上 は 波 動 論 に 基 づいた 解 析 であるが,さらに 高 周 波 数 になるとエネルギー 論 的 な 取 り 扱 いが 必 要 になる.そこで, 統 計 的 エネルギー 法 (SEA 法 ) にヒントを 得,ダクト 内 の 右 進 行 波 エネルギーと 左 進 行 波 エネルギーのパワーバランスを 解 く, 音 響 パワーバランス 法 によるダクト 音 響 解 析 を 案 出 した [18].これはちょうど 私 が 姫 路 工 業 大 学 の 社 会 人 博 士 課 程 に 在 籍 していた 時 で, 土 曜 日 一 日 で ほぼ 内 容 の 骨 子 を 作 成 した 印 象 深 い 仕 事 である. 私 の 博 士 論 文 は, 上 記 低 周 波, 中 周 波, 高 周 波 の ダクト 音 響 解 析 手 法 に 後 述 のダクト 出 口 放 射 音 の アクティブコントロールを 加 えて, ダクト 系 で の 音 響 伝 ぱ 解 析 とその 消 音 対 策 法 に 関 する 研 究 としてまとめた [19]. 3.3 音 質 評 価 現 在, 自 動 車 や 家 電 等 生 活 に 身 近 な 製 品 は, 音 響 設 計, 快 音 化 設 計 などと, 単 なる 低 騒 音 化 だけ ではなく, 如 何 に 適 正 な 音 質 の 製 品 に 仕 上 げるか が 注 目 されるようになってきている. 私 自 身 も, 製 品 はそれ らしい 音 に 仕 上 げることが 重 要 と 主 張 してきている [20].しかし, 私 が 空 調 機 の 音 質 を 定 量 化 する 音 質 評 価 システムを 構 築 するように 指 示 を 受 けたのは,1980 年 頃 で,まだ 騒 音 を 如 何 に 低 減 するかが 注 目 されていた 時 期 である. 先 例 がなく, 協 和 音 や 不 協 和 音 の 勉 強 をしたり, 聴 覚 心 理 の 専 門 家 である 大 阪 大 学 の 難 波 教 授, 桑 野 教 授 のご 指 導 を 受 けたりして, 自 分 なりに 音 質 評 価 の 因 子 を 以 下 の 5 因 子 に 絞 り,それぞれの 因 子 の 評 価 値 から 総 合 的 な 評 価 指 数 を 求 める 手 法 を 提 案 した [21]. 具 体 的 には, 騒 音 レベル,ベースス ペクトルパターン, 純 音 度 ファクター,レベル 変 動 度 の 大 きさ,レベル 変 動 度 の 周 期 性 の 強 さを 評 価 因 子 とした.これらは 現 在 用 いられている 評 価 手 法 に 通 じるものであると 自 負 している. 当 時 構 築 した 音 質 評 価 システムの 考 え 方 を 図 6 に 示 す. (a) (b) 空 調 機 の 主 音 質 と 要 因 [21] 図 6 空 調 機 の 音 質 評 価 システムの 考 え 方 3.3 アクティブノイズコントロール(ANC) [15] 図 5 吸 音 ダクトの 設 計 チャート 例 神 戸 造 船 所 の 設 計 者 が, 新 聞 を 持 って 相 談 に 来 た. スピーカから 逆 位 層 の 音 を 出 してエンジンの

7 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 工 学 部 研 究 報 告 第４３巻 Ẽ㦁㡢 ᾘࡍ ࡇ ࡋ ࡀ㸪ࡇ ࡁ 㸽 1979 ᖺ㡭 ヰ 㸬ࡇ ࡀ ࢬࢥ 㸦ANC㸧 ฟ 㸪ࡑ ௨᮶ 30 ᖺ௨ ࡁ 㸬 ཎ ࡁ ࡎ 㸪 ᐇ㦂ࡍ 㸪 㡢ᡂศ ࡘ ᾘ㡢ࡍ ࡇ ࡀ ࡁࡓ ࡀ㸪 ࢢࢩࢫ ࡓ ᡂศ ࡘ ᾘ㡢 ࡁ ࡗࡓ㸬 ࡔ ࡔᐇ 㐲 ᢏ 㸪 ㄪᰝ ຮᙉࡔࡅ 㸪ࡑ ᨺ ࡋ ࡓ㸬1983 ᖺ ᅜ㝿 Ꮫ ࡍ [22,23]ᶵ ᚓࡓ 㸪 ㄪᰝ [24] ࡗࡓ ࢠ ࢫ ぢᏛࡉࡏ ࡗ ࡓ㸬ࡑ ࡀᅗ㸵 ࡍ ࢫ 㸪 ฟ 72 ಶ ࢫ タ ࡋ㸪 ࢪ ࢥ 㸪ప Ἴ㡢 ぢ ᾘ㡢ࡋ ࡓ㸬ไᚚᡭἲ ẚ ༢ 㸪 ࡇ ࡁ ಙࡋ㸪 ࡗ ࡓ㸬 ࡎ㸪ᅛᐃఏ㐩㛵 ἲ 㸪 ฟ ᨺ ᑕ㡢ไᚚ ᇶ ᐇ㦂 ᐇ ࡋ㸪 㡢ࡀᾘ㡢 ࡍ ࡇ ㄆࡋࡓ [25]㸬ḟ Ἴᙧ ᮇἲ ᦚ ࡋ ࡓࢥ 〇సࡋ㸪 㡢ሙไᚚ ヨ 㸪ඹ㬆㡢ሙ ᑐ 㠀ᖖ ᯝ ࡇ ࡋࡓ [26]㸬௨ᚋ㸪 ࡃ ᐇᶵ㐺 ヨ㦂 㐍 ࡔ㸬 ࡎ㸪DSP(Digital Signal Processor) ᦚ ࡋࡓࢥ ෆసࡋ㸪Filtered-X-LMS ࢦ ࢬ ㄪ ᾘ㡢 ࡗࡓ [27]㸬ࡇ ࢫ ࡋ㸪Ẽὶ ᅽຊኚ ཧ 㸪 㛫 ࢥ ࢫపῶᑐ ὀຊࡋࡓ㸬 1 ḟඖ ࡋ 㸪 㟁ᶵ Ẽ㦁㡢ᑐ [28,29] 㸦ᅗ㸶ཧ 㸧㸪 ᆺ ὶ 㢼 ᶵ ప Ἴ㡢ᑐ [30] 㐺 ヨ 㦂 ᐇ ࡋ㸪ࡑ ࡒ 15㹼20dB ᗘ ῶ㡢 ᯝࡀ ᚓ ࡇ 㸪 ศ ࡇ ㄆࡋ ࡓ㸬 㛫 ᾘ㡢 ࡋ 㸪᪂ࡋࡃ ࡋࡓ ࢢ ᮇᘧ LMS ࢦ ࢬ ࡓ ࢩ ෆ 㡢 ప ῶ [31] 㸪 Multiple Filtered-X-LMS ࢦ ࢬ ࡓ ࢥ ᶵෆ㡢 పῶ [32],Ἴᙧ ᮇἲ 㐠 ᖍ ࢪ ࡇ 㡢ไᚚ ࡗࡓ㸬ࡇ ࡍ ヨస ヨ㦂 ࡋ ᡂ ࡋࡓࡀ㸪ࢥࢫ 㸪 ࢫ ṧᛕ ࡀ ရ ࡋ ୡ ฟ ࡇ ࡗࡓ㸬 㐠 ᖍ ࡇ 㡢ไᚚ 㸪 ᦚ ࡋࡓ ヨ㦂 ᡂ ࡋࡓ ṧᛕ 㸬 ᅗ㸵 ࢫ Ẽ ANC [24] ࢫ 㓄 ῶ㡢 ᯝ ANC ࢩ ࢫ ᵓ ᡂ㸦Ἴᙧ ᮇἲ㸧 ᅗ㸶 㟁ᶵ Ẽ㡢 ANC [28] ᪂〇ရ ୡ ฟࡍ 㸪タィ㸪Ⴀᴗ ศ㔝 ࡗ ά ࡍ ᚲせ ③ឤࡋࡓ㸬 ᗘࡑ 㡭㸪 ᅜ UTRC(United Technology Research Center) 㔜ᕤࡀඹ ࡍ ヰࡀ㣕 ࡁࡓ㸬UTRC ࢪ ࢪ Platt & Whitney ᴗࢢ ᶵ㛵 㸪ANC ḟ ᒎ㛤 ࡓ 㸪ࠕANC ᢏ ࡓࢪ ࢪ 㡢 㛤

8 西 村 正 治 : 革 新 的 低 騒 音 化 技 術 を 求 めて を 提 案 し, 採 用 された. 具 体 的 には 図 9に 示 すよ うに, 壁 面 に AAT(Active Acoustic Treatment) セルと 呼 ばれる 多 数 のセルを 並 べることによって, 壁 面 の 音 響 インピーダンスを 自 由 に 制 御 し 消 音 効 果 を 高 めるものである. 各 々の AAT セルは, 表 面 材,マイクロホン, 振 動 板,アクチュエータとア ンプ,コントローラから 成 り 立 っており, 入 射 し てくる 音 波 に 合 わせて 振 動 板 (スピーカ)を 振 動 させ,AAT セル 表 面 で 所 定 の 反 射 率 が 実 現 される ように 制 御 される. 個 々の AAT セルは 独 立 に 制 御 され,ただ 並 べるだけで 良 い. 究 極 の 分 散 制 御 で ある. 他 に 消 音 器 の 低 周 波 性 能 改 善 やホールの 吸 音 率 の 可 変 制 御 などにも 適 用 が 期 待 される. 共 同 研 究 ではプロトタイプの AAT セル,それを 並 べた AAT シートを 試 作 し, 期 待 通 りの 効 果 を 確 認 する ことができた [33,34].AAT は 私 の 現 在 の 研 究 のメイ ンテーマの 一 つである アクティブセルを 用 いた 音 場 境 界 の 分 散 制 御 の 原 点 である. 共 同 研 究 は 他 のテーマも 合 わせて 5~6 年 続 いたが 非 常 に 貴 重 な 経 験 をすることができた. その 頃, 国 道 43 号 線 の 騒 音 訴 訟 に 対 して 最 高 裁 で 国 の 敗 訴 が 確 定 し, 道 路 用 防 音 壁 の 高 性 能 化 ニーズが 高 まっていた.AAT の 適 用 先 に 悩 んでい た 私 は,ASE(Active Soft Edge)を 提 案 した.ASE とは, 防 音 壁 頂 部 に AAT セルを 並 べ, 音 圧 ゼロ 境 界 (ソフト 境 界 )を 実 現 することにより, 回 折 音 を 大 幅 に 低 減 しようとするものである. 制 御 スピ ーカすぐ 前 の 音 圧 をフィードバック 制 御 している ことから,あらゆる 方 向 からの 音 波, 移 動 音 源 に も 対 応 可 能 であるという 特 徴 を 有 している [35]. 当 時 の 土 木 研 究 所 と, 国 の 予 算 で 研 究 開 発 を 進 める ことになり, 試 験 走 路 に 40m 長 の 試 作 ASE 防 音 壁 を 設 置 し,トラックの 実 走 行 試 験 による 効 果 確 認 を 行 った.その 結 果, 同 一 高 さの 通 常 の 防 音 壁 に 比 べて 5dB 程 度 高 性 能 であることが 判 明 した [36]. その 後 後 輩 たちの 努 力 により, 改 良, 耐 久 試 験 な どが 実 施 され, 国 道 43 号 線 の 芦 屋 地 区 に 施 工 され た [37] ( 図 10 参 照 ).これは ANC の 道 路 騒 音 への 世 界 で 初 めての 実 用 化 例 であり, 注 目 された. 当 初 は,コスト 面, 耐 久 性, 環 境 変 化 への 性 能 追 従 等 多 くの 懸 念 があったが,それを 見 事 クリアした 後 輩 諸 氏 の 努 力 に 感 謝 する. その 他,アクティブコントロール 技 術 を 流 れの 制 御 に 適 用 した.Feedback LMS アルゴリズムを 用 いたキャビティ 音, 管 群 共 鳴 音 など, 自 励 音 の 制 御 は 非 常 に 有 効 であった [38].これは 音 場 のダンピ ングを 制 御 し, 結 果 的 に 自 励 音 の 発 生 を 防 止 する ものである. (a) AAT セル AAT の 基 本 構 成 (b) AAT シート 図 9AAT(Active Acoustic Treatment) [33] 図 10 ASE(Active Soft Edge) [37] その 他 の 要 素 技 術 としては, 音 響 信 号 処 理 や 音 響 利 用 などを 手 掛 けた. 音 響 インテンシティ 計 測 装 置 を 自 作 し, 音 響 エネルギーフローを 計 測, 可 視 化 した [39].また, 音 響 による 異 常 診 断 システム の 構 築 では, 広 域 モニタリングにメリットはある ものの, 外 乱 対 策 に 苦 労 した. 超 音 波 を 用 いた 煙 草 の 煙 の 凝 集 試 験 で, 止 めていた 煙 草 が 復 活 した り, 音 響 スートブローで 騒 音 屋 が 騒 音 を 出 して どうする と 怒 られたり, 懐 かしい 思 い 出 である.

9 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 / 工 学 部 研 究 報 告 第 43 巻 4. 大 学 での 研 究 開 発 私 は 11 年 前 54 歳 で 大 学 に 移 ってきた. 当 初 は のんびりやっていこうと 思 っていたのだが,とん でもないことであった.そこで,いつも 学 生 に 言 っていることであるが, 同 じやるなら 本 気 でや ろう, 楽 しもう と 研 究, 教 育,その 他 活 動 に 取 り 組 んできたつもりである. 研 究 はいまさらアカデミックな 基 礎 研 究 は 無 理 だろう, 自 分 の 特 性 を 活 かして, 実 用 化 研 究 で 大 学 と 企 業 の 橋 渡 しをやろうと 決 めた.ただ, 自 分 の 経 験 から, 世 界 で No.1 クラスにならないと 企 業 も 振 り 向 いてくれないと 自 戒 した. 研 究 開 発 内 容 は 引 き 続 き 機 械 の 静 粛 化 技 術 が 中 心 で, 企 業 時 代 に 中 途 半 端 に 終 わって,そのメ カニズムの 解 明 ができていないもの, 関 連 して 出 てきた 新 しいアイデア, 企 業 からの 依 頼 による 共 同 研 究 などを 行 った.また 学 生 時 代 からの 夢 であ りながら 手 を 付 けることができなかった, 新 しい 飛 行 体 の 開 発 にも 取 り 組 んだ. 図 11 に 計 測 制 御 工 学 研 究 室 (MCS Lab.:Measurement & Control System Lab.)の 基 本 スタンスを 示 す. 図 11 研 究 室 (MCS Lab.)の 基 本 スタンス 4.1 空 力 騒 音 空 力 騒 音 ではまず 柔 毛 材 の 発 生 音 低 減 メカニ ズムを 解 明 したく, 表 面 性 状 適 正 化 による 空 力 発 生 音 の 制 御 について 研 究 した.その 結 果, 柔 毛 材 は 99% 程 度 の 気 孔 率 を 有 する 多 孔 体 と 同 様 で, 流 れに 適 度 な 抵 抗 を 与 えることにより, 上 流 乱 れに 対 しては, 内 部 で 渦 を 徐 々に 減 衰 させ, 後 流 渦 放 出 に 対 しては,せん 断 層 を 穏 やかにするこ とにより 放 出 渦 を 弱 める.その 結 果, 圧 力 変 動 が 柔 毛 材 無 し 柔 毛 材 有 り 図 12 柔 毛 材 による 空 力 発 生 音 低 減 メカニズム [40] 弱 められ 発 生 音 が 低 減 すると 考 えられた [40]. この 時 静 電 植 毛 が 使 えるとのアイデアが 生 ま れ,ファンなど 任 意 の 形 状 の 任 意 の 箇 所 に 植 毛 で きるようになった. 小 型 の 植 毛 ファンを 製 作 し 性 能 試 験 を 行 ったところ, 植 毛 により 抵 抗 が 増 加 す るため, 発 生 音 も 低 減 するが, 性 能 も 劣 化 するこ とになった [41].そこで 翼 先 端 や 前 縁 など 必 要 なと ころにわずかに 植 毛 すれば, 空 力 性 能 は 変 化 せず 発 生 音 を 1,5dB ほど 低 減 できることが 分 かった. 本 技 術 は 非 常 に 反 響 が 大 きく, 雑 誌 やテレビのニ ュースで 取 り 上 げられた.また 幾 つかの 企 業 が 実 用 化 に 向 けて 検 討 を 始 めた. 大 学 に 移 って 以 来,10 年 間 ずっと 企 業 と 高 速 車 両 の 騒 音 低 減 に 関 して 共 同 研 究 を 実 施 してきた. その 中 で 台 車 キャビティ 部 での 空 力 騒 音 が 大 き な 騒 音 源 と 予 測 され,その 対 策 が 必 要 になった. 種 々の 形 状 を 検 討 したが, 担 当 学 生 の 発 想 でスク ープ 整 流 板 というアイデアが 生 まれた.キャビテ ィでの 空 力 騒 音 は, 上 流 エッジから 放 出 された 渦 が 下 流 エッジに 衝 突 するときに 発 生 する 圧 力 変 動 が 原 因 であると 考 えられる.そこで 一 般 的 には, 上 流 側 に 流 れを 跳 ね 上 げる 変 流 板 を 取 り 付 けて, 渦 の 後 流 エッジへの 衝 突 を 回 避 したり, 後 流 エッ ジを 丸 くして 渦 衝 突 時 の 急 激 な 渦 の 加 速 度 運 動 を 低 減 することにより, 音 の 発 生 を 低 減 するなどの 対 策 が 取 られる.しかし, 双 方 向 に 走 行 する 車 両 には 適 さない.スクープ 整 流 板 とは, 図 13 に 示 すように,キャビティの 両 エッジ 部 内 側 に 渦 を 掬 い 上 げるような 段 差 をつけることである. 適 切 な 寸 法 にすると,そこに 圧 力 溜 りが 生 じ, 渦 を 直 接

10 10 西 村 正 治 : 革 新 的 低 騒 音 化 技 術 を 求 めて エッジ 部 に 衝 突 しないように 跳 ね 上 げ, 発 生 音 を 低 減 する 効 果 があることが 分 かった [42,43].これは 非 常 にシンプルな 対 策 であり, 種 々の 箇 所 への 実 用 化 が 期 待 される. d l l/d=3 sound pressure level [db] Hz 100Hz 125Hz 160Hz 160Hz 100Hz 130Hz 135Hz 200Hz 200Hz Frequency [Hz] [43] 図 13 スクープ 整 流 板 とその 効 果 空 力 騒 音 としては, 最 近 では 流 れと 音 場 の 干 渉 問 題 に 注 目 し,ダクト 開 口 端 における 音 圧 反 射 率 に 対 する 流 れの 影 響 や 低 亜 音 速 噴 流 発 生 音 に 対 す る 音 場 の 影 響 [44] などにも 取 り 組 んでいる.これら の 検 討 では CFD(Computational Fluid Dynamics) を 用 いた 解 析 も 行 うが,CFD はあくまでの 現 象 理 解 のためのツールとの 位 置 づけで 活 用 している. また, 昔 からの 懸 案 事 項 である 風 洞 の 脈 動 現 象 や 燃 焼 振 動 の 解 析 に 関 しては, 企 業 時 代 の 後 輩 が 社 会 人 博 士 課 程 に 入 学 して 検 討 を 深 め, 纏 め 直 して くれている [45,46]. 4.2 音 場 制 御 (パッシブ) Normal Cavity (U=25m/s) Normal Cavity (U=15m/s) W Scoop (U=25,t=123mm) W Scoop (U=15,t=123mm) パッシブ 技 術 を 用 いた 音 場 制 御 としては,まず ガスタービンの 排 気 超 低 周 波 音 で 問 題 になってい た, 煙 突 での 気 柱 共 鳴 低 減 のために, 多 孔 側 壁 の 検 討 を 行 った.これは,ダクトの 開 口 端 付 近 を 多 孔 側 壁 など 適 切 な 流 れ 抵 抗 を 持 った 壁 で 構 成 する ことにより,ダクト 開 口 端 での 低 周 波 の 音 響 反 射 率 を 大 幅 に 低 減 でき, 減 衰 が 増 加 して,ダクトの 共 鳴 倍 率 が 低 減 するという 現 象 である. 企 業 時 代 に,ダクトでの 音 響 ダンピングを 増 加 させようと あちこち 穴 をあけているうちに, 先 端 付 近 だけで [3] 図 14 多 孔 側 壁 による 開 口 端 反 射 率 の 低 減 例 十 分 効 果 があることを 偶 然 発 見 したものである. 理 論 解 析 と 実 験 により,ダクト 径, 多 孔 側 壁 の 長 さ, 表 面 インピーダンスと 開 口 端 反 射 率 の 関 係 を 明 らかにした [3] ( 図 14 参 照 ). 本 技 術 もいろいろ なところに 適 用 可 能 である. OA 機 器 の 冷 却 ファンの 騒 音 対 策 について 企 業 と 共 同 研 究 を 実 施 した 折,コンパクトなスペース で 薄 い 吸 音 材 しか 使 えず, 低 周 波 の 消 音 対 策 には 限 界 があった. 悩 んだ 末, 低 周 波 音 は 開 口 端 で 多 く 反 射 しているのだから,その 音 波 をそのまま 本 体 基 盤 の 方 へ 導 いてやれば 消 散 減 衰 するのではな いかと 思 いついた.そこで 圧 力 は 通 さないが 音 は 通 すフィルムのような 素 材 でダクトを 作 成 したと ころ, 非 常 にうまくいき,モックアップ 試 験 では 騒 音 レベルで 7dB ほど 減 音 した.それを 音 響 透 過 壁 と 呼 び, 不 要 なところへ 音 を 逃 がし, 目 的 とす るところの 音 を 低 減 する 技 術 として 開 発 を 進 めた. 具 体 的 には, 実 機 天 井 換 気 扇 やカーエアコンダク トへの 適 用 試 験 を 行 い,いずれも 数 db の 減 音 効 果 を 確 認 することができた [47,48]. 図 15 に 天 井 換 気 扇 への 適 用 例 を 示 す. 本 手 法 は 薄 い 音 響 透 過 壁 で, スペースがなくても 低 周 波 の 減 音 を 図 れることが 特 徴 である.なお, 量 産 できる 透 過 壁 素 材 の 開 発 が 今 後 の 課 題 である. 音 響 透 過 壁 の 構 造 を 検 討 しているとき,フィル ムを 網 や 多 孔 板 に 直 接 接 触 さすと, 圧 力 をかけた ときに 極 端 に 音 響 透 過 性 能 が 劣 化 することが 認 め られた [49].そこで 思 いついたのが 空 気 圧 を 利 用 し た 薄 膜 軽 量 遮 音 構 造 の 開 発 である. 袋 状 にした 薄 膜 を 3 mm~10 mmのメッシュの 金 網 で 抑 え 内 圧 をか けると, 図 17 に 示 すように, 内 圧 に 応 じて 遮 音 量

11 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 / 工 学 部 研 究 報 告 第 43 巻 11 における 遮 音 量 も 増 大 している [51]. 本 遮 音 壁 は, 従 来 の 遮 音 壁 と 併 用 することにより, 軽 量 で 特 に 低 周 波 における 遮 音 量 の 大 きな 遮 音 構 造 を 実 現 で きるものと 期 待 され, 現 在 実 用 化 に 向 けて 開 発 中 である. 他 に 要 素 技 術 として 記 憶 に 残 っているのは, 多 孔 板 の 音 響 インピーダンスの 計 測 である. 企 業 時 代 から 使 用 していた, 大 音 圧 や 直 行 流, 並 行 流 な ど 非 線 形 の 影 響 も 考 慮 できる Guess の 式 の 妥 当 性 を 試 験 装 置 を 工 夫 して 改 めて 確 認 した [52].また, 交 通 安 全 環 境 研 究 所 との 共 同 研 究 で, 新 しく 考 案 した 消 音 ホイールカバーによるタイヤ 騒 音 の 低 減 に 取 り 組 んだ. 実 走 行 試 験 で 騒 音 レベルを 2~ 4dB 低 減 することができたが, 実 用 化 には 軽 量 化 など 課 題 も 多 い [53,54]. 4.3 アクティブノイズコントロール 図 16 音 響 透 過 壁 を 用 いた 天 井 換 気 扇 の [47] 騒 音 対 策 [50] 図 17 空 気 圧 を 利 用 した 薄 膜 軽 量 遮 音 壁 が 0dB~20dB 程 度 変 化 する [50].これは, 網 でメッ シュ 状 に 区 切 られた 小 さな 薄 膜 に 内 圧 により 張 力 が 発 生 し,その 固 有 振 動 数 が 10kHz オーダーまで 上 昇, 剛 性 則 によって 遮 音 効 果 が 発 生 したためと 考 えられる.また 網 自 身 も 空 気 という 質 量 をほぼ 無 視 できる 媒 体 で 剛 性 を 増 すことができ, 低 周 波 ANC の 実 用 化 については 企 業 で 散 々 苦 労 を 経 験 してきたので, 大 学 では, 実 用 化 一 点 張 りではな く, 多 少 遊 び 心 も 入 れて,ANC でしかできないも の, こんなものができたら 良 いなーー と 思 える 夢 のあるもの, 単 に 技 術 的 興 味 があるものも 含 め て 取 り 組 んできた.その 中 でも 分 散 制 御,シンプ ル 化 を 重 要 なキーワードの 一 つとした. まず 取 り 組 んだのは, 分 散 制 御 の 考 え 方 を 取 り 込 んだアクティブ 遮 音 構 造 (ASI: Active Sound Insulation)の 開 発 である. 図 18 に 示 すように, 二 重 壁 の 内 部 をセル 状 に 分 割 し,そこの 音 圧 を 内 部 に 備 えたマイクロホンとスピーカでフィードバ ッ ク 制 御 す る も の で あ る [55]. 各 セ ル は SISO (Single Input Single Output)システムで 独 立 に 制 御 され,セル 内 に 均 一 音 場 が 成 立 する 周 波 数 ま で 制 御 が 可 能 である.まだ 音 源 信 号 を 参 照 信 号 と したフィードフォワード 制 御 の 段 階 であるが,セ ル 内 の 音 圧 を 制 御 対 象 周 波 数 で 20dB 程 度 低 減 で きることは 確 認 した [56].また, 本 コンセプトを 床 衝 撃 音 の 遮 音 に 適 用 すべく 試 験 を 行 い,フィード バック 制 御 で 若 干 減 音 効 果 が 得 られた [57].しかし, ASI の 実 用 化 には, 固 体 伝 播 音 の 防 止,スピーカ の 軽 量 化, 制 御 アルゴリズムの 改 善 などまだまだ 課 題 が 多 い. 風 は 通 すが 音 は 通 さない 窓 が 実 現 できれば 素 晴 らしいなと 考 え, 開 発 に 取 り 組 んだのが,AAS (Active Acoustic Shielding)で ある. これは, 図 19 に 示 すように, 参 照 マイクロホンと 制 御 スピ ーカをほぼ 同 一 位 置 に 設 置 したアクティブ 音 響 セ ルを 制 御 対 象 音 波 の 波 長 に 比 べて 十 分 短 い 間 隔 で

12 西村正治 革新的低騒音化技術を求めて 12 Sound Wave Cell Speaker Microphone Cell Controller Type-A Type-B ᅗ 19 AAS ᇶᮏᵓᡂ ᅗ 18 ASI(Active Sound Insulation) [55] ୪ 㸪ධᑕ㡢Ἴ ᑐࡋ 㡢Ἴ ᡂࡍ ไᚚࡍ 㸪 ࢫ ཎ ᇶ ࡁ㸪 ព ධᑕἼ㠃 ᑐࡋ 㸪 ᗘ ᖜ Ἴ㠃 ᙧᡂࡍ ࡇ ࡀ 㸬ࡋࡓࡀࡗ 㸪 ཧ ไᚚࢫ ᅛᐃ ఏ㐩 ࡇ 㸪 ᪉ 㐩ࡍ 㡢Ἴ㸪 㡢 㡢Ἴ㸪 㡢 㡢Ἴ ไᚚ 㸬 ࡓࡑ ࡒ 㡢㡪 㸦ࡇ ሙ AAS 㸧 ಶ ไᚚࡉ [58]㸬 ᅗ 20 ᑠᆺ AAS-Window ヨసヨ㦂 ᯝ ࡍ㸬 ᐊෆ ᗈ 㛫 ࡓࡗ 㸪500Hz㹼2kHz 15㹼 20dB ῶ㡢 ᯝࡀᚓ ࡇ ࡀ 㸬ࡇ ࡇ ไᚚᑐ Ἴ ANC ࡋ 㧗ࡃࡋࡓ 㸪 㛤 ᥋ 㐣ࡋ ࡃ 㡢 Ἴ ࡇ ࡓ Ἴ ᖏᇦࡀᨭ㓄 ࡓ 㸬ไᚚ ࡈ ไᚚ ࡗ ࡀ㸪ཧ ไᚚࢫ 㞳 50 㠀ᖖ ࡃࡍ ࡇ ᡂ ࡋ 㸬ࡇ ࢧ ࢢ Ἴ 48kHz 㠀ᖖ 㧗 ࡍ ࡇ ࡗ ᐇ ࡁࡓ 㸬 ࡇ 㸪 ධᑕ㡢 㸪 㡢 㸪 㡢 ᑐࡋ ᵝ ῶ㡢 ᯝࡀᚓ ࡇ ㄆ ࡋ 㸬 ࡓ ไᚚᅇ ᅛᐃ ᐇ ࡉ 㸪㒊ᒇ ᑕ᮲ ኚ 㒊ᒇෆ ヰ ᑐࡋ ไᚚ ᯝࡀᙳ㡪 ࡅ ࡇ ᑡ ࡃ㸪Ᏻᐃࡋࡓ ࡍ ࡇ ࡀ ࡁ [59]㸬 ࡓ㔞 㸬 ᅾ㸪 ప Ἴ㡢 ᣑ ࡍ ࡇ 㸪 ᆺ ᣦࡋ ウ ࡅ [60,61] 㸬 ࡇ ᢏ ๓ ASE 㧗 ࡘ ࡀ ࡗࡓ㸬ASE ๓㠃 㡢ᅽ ᑠ ไᚚࡍ ࡓ 㐽㡢ቨ㡬㒊 ᪉ ᅇᢡ㡢 ప ῶ ࡀ㸪ᅇᢡゅ ᑠࡉ ᪉ 㡢 ヨ㦂 ῶ㡢 㸦ṇ㠃㡢 ሙ 㸧 ῶ㡢ࢥ 㸦ṇ㠃㡢 ሙ 㸧 ᅗ 20 AAS ヨసヨ㦂 ᯝ [59]

13 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 / 工 学 部 研 究 報 告 第 43 巻 13 の 低 減 量 は 僅 かであった. 高 速 道 路 横 に 高 いマン ションなどが 立 ち 並 ぶ 都 会 では,このような 上 方 への 音 の 低 減 が 要 求 されるようになってきている. そこで,AAS と 同 様 の 音 響 セルを 防 音 壁 頂 部 に 並 べ,フィードフォワード 制 御 で, 回 折 角 の 小 さな 方 向 への 回 折 音 の 低 減 を 達 成 することが 可 能 にな った [62]. 更 にこの 技 術 を 発 展 させ,オフィスのパ ーティションへの 適 用 を 狙 った, 双 方 向 の 回 折 音 の 低 減 を 可 能 に す る AAP (Active Acoustic Partition)の 開 発 を 進 めている [63]. 大 きな 開 口 部 に,200 mm 程 度 の 短 いダクトを 格 子 状 に 積 み 上 げ,それぞれのダクト 内 に 独 立 した 単 チャンネルの ANC システムを 組 み 込 んだのが, AAF(Active Acoustic Filter)で ある. ファン の 広 帯 域 音 のように 近 傍 で 波 面 が 明 確 でない 音 源 に 対 しても,ダクトを 通 すことにより, 明 確 な 波 面 が 形 成 され, 効 果 的 な 消 音 を 可 能 にしている.ま た,ダクト 径 を 100 mmとすることにより,2khz 程 度 まで 減 音 を 可 能 としている [64,65].これにより, ラジエータファンや 換 気 ファンの 近 傍 に 設 置 可 能 な 薄 い 消 音 フィルタの 実 現 が 期 待 される. 以 上 の 分 散 制 御 の 成 功 例 は, 高 速 信 号 処 理 によ り,フィードフォワード 制 御 における 参 照 マイク ロホンと 制 御 スピーカの 距 離 を 大 幅 に 短 くしても 因 果 律 が 満 足 できることに 依 るところが 大 きい. そこで,さらなる 高 速 処 理 を 狙 って,FPGA(Field Programmable Gate Array)を 用 いた ANC コントロ ーラの 開 発 に 取 り 組 んでいる [66].これは 将 来 の 革 新 的 ANC につながるものと 期 待 している. ANC の 研 究 開 発 としては 他 に, 下 記 のようなユ ニークな 課 題 に 取 り 組 んできている.まず,ANC 技 術 を 応 用 したカラオケでの 完 全 ハウリング 防 止 装 置 である.この 開 発 では, 単 にあらゆる 条 件 においてマイクロホン スピーカ 間 のハウリング を 防 止 するだけでなく,カラオケ 装 置 として 歌 い 手 の 臨 場 感 を 阻 害 しないことにも 成 功 した [67]. 次 に, 企 業 時 代 に 単 チャンネルシステムを 開 発 した 周 期 音 を 対 象 にした 波 形 同 期 法 を 多 チャンネルシ ステムに 発 展 させ, 移 動 する 人 間 の 両 耳 元 を 部 屋 に 設 置 した 固 定 スピーカで 消 音 する AAC (Active Acoustic Cap)の 開 発 を 行 っている [68]. 更 に, 床 衝 撃 音 に 対 しては, 受 音 室 でのこもり 音 が 問 題 で あることに 着 目 し,フィードバック 制 御 による 床 衝 撃 音 のこもり 対 策 に 取 り 組 んでいる [69].また, 最 近 では, 携 帯 電 話 通 話 音 声 が 隣 人 に 迷 惑 をかけ ていることに 注 目 し,ANC 技 術 を 応 用 し, 音 声 を 通 話 相 手 には 届 けるが 周 囲 に 漏 らさない Voice Shutter の 開 発 も 手 掛 けている. 図 21 後 置 静 翼 制 御 機 構 を 用 いた UAV 4.4 ロボメカ 関 係 UFO のような 飛 行 をする 飛 行 体 の 開 発 は 学 生 時 代 からの 夢 であった. 大 学 に 入 って 何 か 新 しいこ とを 始 めたいと 思 い,その 開 発 に 取 り 組 んだ. 当 初 は 後 述 の DaVinci プロジェクトの 一 環 として 取 り 組 み, 種 々 の 形 状 を 検 討 し た. 今 で は UAV (Unmanned Aerial Vehicle)の 位 置 づけで, 後 置 静 翼 で 反 トルクを 補 償 する,テールロータが 不 要 なヘリコプターに 似 た 機 体 を 開 発 している. 図 21 参 照. 本 飛 行 体 は 軸 対 象 でジャイロ 効 果 による 安 定 したホバリング 性 能 が 期 待 できる. 何 とか 今 年 度 中 に 飛 び 立 って 欲 しいものである. 私 が 所 属 する のは 計 測 制 御 工 学 研 究 室 ( MCS Lab.)であるから, 本 来 はその 制 御 が 研 究 対 象 で ある. 空 を 一 つのキーワードとし,ビジョンセ ンターを 用 いた 自 立 飛 行 制 御 や 飛 行 体 から 伸 びる マニピュレータの 制 御 などを 手 掛 けている.また 最 近 では, 草 抜 き 機 や 生 活 支 援 ロボット 等, 生 活 の 質 向 上 に 関 与 するロボットも 研 究 対 象 になって きている.ただし,これらの 制 御 については,も っぱら 准 教 授 や 助 教 の 先 生 に 頼 っており, 私 はミ ーティングで 口 を 出 す 程 度 である. 4.5 研 究 資 金 上 記 の 研 究 開 発 は 基 本 的 には 外 部 資 金 で 実 施 した.まず 科 学 研 究 費 であるが, アクティブ 音 響 シールディングに 関 する 基 礎 研 究 と 多 チャン ネル 波 形 同 期 法 を 用 いたアクティブ 移 動 消 音 に 関 する 基 礎 研 究 の 2 件 (いずれも 基 盤 研 究 C)を 獲 得 することができた.JST( 科 学 技 術 振 興 機 構 ) の 予 算 としては,いずれもシーズ 発 掘 レベルのも のであるが, 植 毛 を 用 いたファン 低 騒 音 化 技 術 の 開 発, 空 気 圧 を 利 用 した 薄 膜 軽 量 遮 音 構 造 の 開 発 の 2 件 が 採 択 された.

14 14 西 村 正 治 : 革 新 的 低 騒 音 化 技 術 を 求 めて しかし, 最 も 大 きいのは, 企 業 との 共 同 研 究, 奨 学 寄 付 金 等, 企 業 からの 資 金 である.11 年 間 で 延 べ 21 社 からトータル 60 百 万 円 を 超 える 研 究 資 金 をいただいている. 中 でも 3 年 以 上 継 続 が 4 社, 5 年 以 上 継 続 が 3 社,10 年 間 継 続 して 共 同 研 究 を 実 施 している 企 業 も 1 社 ある.これら, 継 続 して 研 究 開 発 を 続 けられるのは, 当 方 がそれなりのア ウトプットを 出 し, 相 手 企 業 の 期 待 にある 程 度 応 えられている 証 しであると 自 負 している. 実 際 に, 研 究 に 従 事 した 学 生 に 感 謝 したい. 5. 大 学 での 活 動 5.1 教 育 正 直 言 って, 私 は 教 育 に 関 してはあまり 大 きい ことは 言 えない.30 年 間 大 学 から 遠 ざかっている うちに 大 学 の 教 育 環 境 は 全 く 変 わってしまってい た. 分 からないのは 学 ぶ 側 の 責 任 ではなく, 教 え る 側 の 責 任 になってしまっていた.また 授 業 に 出 席 しなければならないというのも 不 思 議 に 感 じた. 単 位 が 欲 しければその 人 なりの 方 法 で 勉 強 して 試 験 に 合 格 すれば 良 い. 学 生 にもっと 学 び 取 る という 姿 勢 を 持 ってほしい.もしかしてこのよう な 学 生 が 少 ない 責 任 は,このような 甘 えた 制 度 を 作 った 我 々の 側 にあるのかもしれない. それはさておき, 今 だから 言 えることであるが, 最 初 の 3 年 間 は, 教 科 書 の 知 識 を 間 違 いなく 教 え るだけで 精 一 杯 であった. 担 当 した 科 目 が 制 御 工 学, 確 率 統 計 学 で, 私 自 身 ほぼ 一 からの 勉 強 であ った.4 年 目 以 降 学 問 の 体 系 が 少 し 見 えてきて, 徐 々に 余 裕 が 出 てきたようである.しかし,これ らの 講 義 は 所 詮 知 識 の 伝 授 である. 本 来 学 生 が 教 科 書 を 読 んで, 分 からないところを 聞 きに 来 るだ けで 済 む 話 とも 思 える. 私 が 少 しでも 教 育 ができたな と 感 じるのは, 実 践 プロジェクトと 卒 研, 修 論 指 導 である. 課 題 の 掘 り 起 こし 方, 分 析 とアプローチの 仕 方, 研 究 計 画, 実 験 計 画 の 立 て 方,データの 見 方, 物 理 現 象 の 洞 察, 纏 め 方,プレゼンの 仕 方, 相 手 とのコ ミュニケーションの 取 り 方, 等 実 践 的 に 指 導 した つもりである. 個 々の 学 生 の 性 格 や 能 力 に 合 わせ て, 指 導 の 仕 方 も 種 々 変 えるように 努 力 した. 特 に 重 要 と 思 ったことはモティベーションの 与 え 方 で, 本 人 さえやる 気 になれば, 学 生 は 見 違 える ように 成 長 するものである. 5.2 ものづくり 教 育 実 践 センター 2008 年 4 月 ~2012 年 3 月 まで, 私 は 工 学 部 も のづくり 教 育 実 践 センター 長 を 務 めさせていただ いた. 就 任 当 初 は, 右 も 左 もわからず, 継 続 の 特 別 教 育 研 究 予 算 もあったこともあり, 前 任 の 早 川 教 授 がひかれたレールの 上 を 歩 いた.ただ, 週 1 回 関 係 者 全 員 でミーティングを 行 い,そのあと 一 緒 に 弁 当 を 食 べることにより,センターとしての 団 結 力 を 高 める 努 力 をした.その 中 で,センター の 主 な 役 割 は, 実 践 プロジェクトを 工 学 部 全 体 に 広 め 人 間 力 豊 かな 人 材 を 育 てること, 委 託 生 産 工 事 の 依 頼 を 工 学 部 全 体 さらに 大 学 全 体 に 広 める こと, 学 生 自 主 ものづくり 工 房 の 利 用 率 を 高 め, 学 生 ものづくりサークル 活 動 を 支 援 すること で あると 確 認 していった.その 目 標 は 徐 々に 達 成 さ れ, 機 械 の 実 習 工 場 から 工 学 部 のものづくりセン ター,ひいては 全 学 のものづくり 教 育 実 践 センタ ーとして 認 知 されるようになってきている. 私 の 就 任 期 間 中 1 件 だけ 外 部 からの 委 託 生 産 工 事 を 行 った. 鳥 取 市 からの 依 頼 で 風 紋 発 生 風 洞 を 製 作 したのである. 本 センターの 業 務 であるか どうか 少 し 悩 んだが, 公 的 内 容 であり, 地 域 貢 献 の 一 つと 考 えて 実 施 した. 技 術 職 員 の 方 はものづ くりのプロとはいえ, 風 洞 に 関 しては 素 人 である. うまくいくかどうか 心 配 であったが, 昔 の 経 験 を 思 い 出 して 書 いた 私 の 簡 単 なポンチ 絵 を 基 に, 見 事 に 風 洞 を 作 り 上 げてくださった. 試 運 転 で 見 事 風 紋 が 発 生 したときは 感 動 ものであった.この 風 洞 は, 鳥 取 砂 丘 ジオパークセンターで 毎 日 風 紋 を 発 生 し 続 けている( 図 22 参 照 ).ちなみに.この 風 洞 は 風 洞 メーカに 依 頼 すると 数 百 万 円 はかかる 代 物 であるが,センターでは 百 万 円 強 で 収 めるこ とができた. 図 22 風 紋 発 生 風 洞 装 置

15 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 工 学 部 研 究 報 告 第４３巻 ᩍ ண ࡀ 2010 ᖺ 3 ษ ࡋ ࡇ 㸪ḟ ண ᚓࡍ ࡃᴫ せồ ࡋࡓ㸬ࡑ Ꮫ ࡅ Ⰽࠎ ࡋࡓࡀ ࡎ㸪 ᯝ ࠕ どⅬ ࡗࡓඛ㐍 ࡃ ᩍ ࢢ 㛤 㸦2011 ᖺ 4 㹼2016 ᖺ 3 㸧ࡀ ᩍ ࢢ ࡋ ᥇ᢥࡉ ࡓ㸬ࡇ 㸪Ꮫ㝿 ၥ㢟ゎỴᆺ ࡃ ᩍ ࡋ 㸪㫽 Ꮫ ᩍ ࢢ ࢨ 㐀 ࠕ 㛫ຊ ᅗ 㸪1 ࡘ ᑓ㛛 ᙺ ࡘከゅ ᣢ ࡗࡓ 㛫ຊ ᡂࡍ ᩍ ࢢ 㛤 ᣦࡍ 㸬 ᅾ 2 ᖺ ධࡗ ࡀ㸪ࡇ ࢪ ຍ ࡗ ࡓࡔ ࡓ 4 ᩍဨ ᚰ 㸪 ࠕ ࡃ 㸪 ᙧ ࡍ ࡇ ᐃ ࡋ㸪ᖜᗈ ࡃ ᩍ య 㛤ㅮࡋࡘࡘ 㸬 ࡇ య ᩍ ࢢ ᡂࡉࡏ㸪㫽 Ꮫ ࡘ ࡋ ᐇ ࡁ ࡇ 㸪 ࡓࡑ ෆᐜ 㫽 ࡋ ᅜ Ꮫ ᬑཬࡉࡏ ࡇ ᮇᚅࡋࡓ 㸬 ࡇ ά ᙉຊ ᥎㐍ࡋ ࡃ ࡓ ࡀ㸪㛗ᓥ ᩍ㸦 㸪 Ꮫ ᆅᇦ㐃ᦠ᥎㐍ᶵ ᵓ ᩍ 㸧㸪ᓥ ᩍ㸦 㸪 ศ Ꮫㅮᖌ㸧㸪 ᾆ ᩍ 3 㸬 4 ᖺ㛫 㛫 ࡓ ࡓ ࡇ 3 ࡍ ࡇ ࡗࡓࡀ㸪ࡑ ࡒ 㠀ᖖ 㸪 グ ᙼ ᴗ ࡇ ࡀ ࡁ 㸬 㸳㸬㸱 ᪂ࡋ 㣕 య స ࡇ 㸪㛵 ࡀศ ᢸࡋ 㛤 㐍 ࡓࡀ㸪 ᐊ ࡋ 㥆ᰁ ᐊ 㸪ḟ 㸪 ᐊ 㛵㐃 ࡋ㸪 ㄽࡍ ሙ ኚ㑄ࡋ ࡗࡓ㸬ࡓࡔ㸪ᩍဨ Ꮫ ࡀ ࡗ ㄽࡍ ࢫ くࡋ 㸬 㸪Ꮫ ࡃ ࢧ ࡀⱆ 㸪ᙼ ά ࡋ㸪ᨭ ࡍ ࡀ ά ࡘࡘ 㸬 ࢪ Ꮫ ᐊෆ㣕 㑅ᡭᶒ ά ᣦࡋ 㸪Ᏹᐂ 㸦T-SAT ࢪ 㸧 Ꮫ ᑠᆺ ᡴࡕ ࡆ ᣦࡋ㸪 ᖺ ᗘ ௦Ᏹᐂ ཧຍࡋࡓ㸬Ꮫ㒊 Ꮫ ቑ 㸪㠃ಽ ぢ ⱝ ඛ ᪉ ຍ ࡗ ࡓࡔ ࡁ㸪ẖ 1 ᮌ᭙ 㸯 ᐊࡀ 㸬 ࡇ DaVinci ࢪ ᙧ ḟ ኚ ࡗ ࡁ 㸬 ཧຍࡋ ࡓࡔ ⱝᡭᩍဨ 㸪 ࠕ ఱ 㸟 ヰ ฟࡘࡘ ࡃ㸬ࡇ ࡇࡑࡀ ព ᅗࡋࡓࡇ 㸪 ᚋ ࡍ ࡍࡑ ࡁ ࡀฟ ࡃ ࡇ ᮇᚅࡋࡓ 㸬 DaVinci ࢪ Ꮫ ࡗࡓᙜ 㸪 ᴗ 㐪 ࠎ ࢩ ࡅࡓ㸬ࡑ 㸪 Ꮫ ಶࠎ ࢩ 㧗 㞟 ࡔࡀ㸪ࡑ ࡒ 㸪 ࡋ ຊࡀ ࡁ Ⅼࡀ Ẽ ࡗࡓ㸬 ࢪ 㐍 ᴦࡋࡉ ᯝ ࡉ 㦂 ࡋ ࡋ ᛮࡗ ࡓ ඛ㸪 21 ୡ COE ࢢ ເ㞟ࡀ 㸪ᛧ ࡎ 㸪ᶵ 㸪 ᛂ 㸪 㸪 㸪㟁Ẽ ከࡃ ඛ ኌ ࡅ㸪 ࠕᮍ᮶ Vehicle ࢢ స ࡆᛂເࡋࡓ㸬 ᅗ 23 ᙜ ᮍ᮶ Vehicle ࢥ ᅗ ࡍ ࡀ㸪 ぢ 㢦 ⅆࡀฟ ᛮ 㸬 ᐃ ᥇ᢥ ࡗࡓࡀ㸪ࡇ ᶵ ௰㛫ࡀ㞟 ࡗ ࠎ ㄽࡋ㸪 ࡘ ᶆ ࡗ 㛤 㐍 ࡃ㔜せ ᑐࡍ ㄆ ࡀ㧗 㸪 ᅾ DaVinci ࢪ ࡘ ࡀࡗࡓ ᛮࡗ 㸬ࡑ ヂ DaVinci ࢪ ᙜ 㸪 15 ᅗ 23 ᮍ᮶ Vehicle DaVinci ࢥ

16 16 西 村 正 治 : 革 新 的 低 騒 音 化 技 術 を 求 めて 5.4 学 会 活 動 私 が 所 属 している 学 会 は, 日 本 機 械 学 会, 日 本 音 響 学 会, 日 本 騒 音 制 御 工 学 会, 米 国 航 空 宇 宙 学 会 (AIAA)である. 中 でも, 日 本 機 械 学 会 と 日 本 騒 音 制 御 工 学 会 が 活 動 の 中 心 で, 年 齢 を 重 ねると ともにいろいろな 役 どころが 回 ってきた. 日 本 機 械 学 会 では 2007 年 度,2008 年 度 とそれ ぞれ 環 境 工 学 部 門 副 部 門 長, 部 門 長 を 務 めた.ま た 2009 年 度,2010 年 度 とそれぞれ 中 国 四 国 副 支 部 長, 支 部 長 を 務 めた.いずれも 就 任 時 赤 字 体 質 であり,その 立 て 直 しに 努 力 したことが 記 憶 に 残 っている.また, 我 々の 研 究 室 では, 卒 研 生 全 員 に 3 月 に 行 われる 中 国 四 国 支 部 学 生 大 会 卒 研 発 表 会 での 発 表 をノルマとしており, 会 員 増 強 にも 貢 献 している. 日 本 騒 音 制 御 工 学 会 では, 何 期 か 理 事 を 務 めて いるが,2010~2011 年 度 に 研 究 部 会 長 を 務 め, 研 究 発 表 会 などのお 世 話 をした. 同 時 期 に, 騒 音 制 御 の 代 表 的 な 国 際 学 会 である Internoise2011 を 大 阪 で 開 催 することになり,Technical Program Co-chair として, 全 世 界 から 寄 せられる 1000 件 近 い 論 文 をアレンジし,プログラムの 作 成 を 行 っ た. 東 日 本 大 震 災 の 年 であり, 開 催 が 危 ぶまれた が, 無 事 終 了 し 大 任 を 果 たすことができた.その 時 は 大 変 だったが,あとで 振 り 返 ればよい 経 験 を させていただいたと 思 っている. 6.エピローグ 以 上, 振 り 返 ってみると 我 ながら 色 々なことを やってきたと 感 心 する.それぞれ 楽 しんだし, 仕 事 に 感 動 を 味 わうことができた. 色 々な 人,もの との 出 会 い, 機 会 を 前 向 きにとらえ, 本 気 で 取 り 組 み 自 分 のものにしていったのが 良 かったのか なと 思 う. 機 械 の 低 騒 音 化 の 仕 事 は,これまでの 騒 音 対 策 (マイナスをゼロに 戻 す 技 術 )から 音 響 設 計 ( ら しい 音 の 実 現 ;プラス( 付 加 価 値 )を 付 ける 技 術 )に 移 ってきている. 物 理 現 象 を 追 いかけてい けばそこに 必 然 的 な 答 えが 見 えてくると 思 う.ま だまだ 新 しいアイデアが 生 まれることを 期 待 した い. 私 はエンジニアの 歓 びは, 自 分 のアイデアが 基 礎 試 験 で 検 証 され, 試 作 が 成 功 し, 製 品 開 発 につ ながり, 商 品 になり, 売 れて 利 益 が 上 がって 初 め て 味 わえるものであると 思 っている.これは 取 り も 直 さず 自 分 のアイデアが 世 の 中 に 受 け 入 れられ, 世 の 中 の 人 々の 役 に 立 ったことの 証 明 であろう. しかし 後 流 に 行 くほどハードルが 高 くなる. 私 が 携 われたのは 高 々 製 品 開 発 止 まりで, 本 当 に 世 の 中 の 役 に 立 ったのか, 不 安 をぬぐえない. 私 は, 大 学 に 入 ってからは 大 学 と 企 業 の 橋 渡 しを 使 命 と して 取 り 組 んだが, 今 後, 基 礎 研 究 だけでなく, 実 践 的 な 研 究 もして, 成 果 を 企 業 の 製 品 開 発 に 結 び 付 ける 活 動 を 行 ってくれる 研 究 者 が 増 えること を 期 待 したい. さて,これから 何 をしようか? 色 々やりたいこ とはあるが,やはり,どうしたら 音 が 静 かになる かを 考 え 続 けているのではないだろうか. 相 田 み つをの 言 葉 を 借 りて, 一 生 感 動, 一 生 青 春, 生 涯 一 技 師 で 過 ごしたい. 謝 辞 最 初 に, 私 がこの 分 野 に 入 るきっかけを 与 えて くださり, 丁 寧 にご 指 導 いただいた, 斎 藤 保 夫 様, 白 木 万 博 様 はじめ, 三 菱 重 工 時 代 の 先 輩, 同 輩, 後 輩 諸 氏 に 感 謝 します. 楽 しい 会 社 生 活 でした. 大 学 に 移 ってからは, 学 生 に 若 さと 元 気 をもら いました. 有 難 うございました.また, 大 学 に 不 慣 れな 私 に 対 して, 良 い 面 も 悪 い 面 も 含 め, 大 学 とはこういうところだと 教 えていただいた 工 学 研 究 科, 中 でも 機 械 工 学 講 座 の 教 員, 職 員 の 皆 様 に 感 謝 します. 計 測 制 御 工 学 研 究 室 (MCS Lab.)で 一 緒 に 教 育 研 究 に 携 わった 仲 間, 後 藤 知 伸 教 授, 伊 藤 和 寿 教 授, 和 田 信 敬 准 教 授, 金 森 直 希 元 助 教, 竹 歳 大 樹 技 術 職 員, 山 本 さちこ 事 務 職 員 に 感 謝 します. 皆 様 のおかげで, 研 究 が 進 展 し, 学 生 が 育 ち, 無 事 研 究 室 を 運 営 することができました. ものづくり 教 育 実 践 センターでお 世 話 になっ た, 長 島 正 明 准 教 授, 島 田 和 典 講 師, 三 浦 政 司 助 教, 技 術 職 員 の 皆 様, 特 任 教 員 の 皆 様 に 感 謝 しま す. 皆 様 のおかげで,センターを 軌 道 にのせ, 運 営 することができました. 共 同 研 究 などを 一 緒 に 行 わせていただいた 企 業 の 皆 様 に 感 謝 します. 担 当 した 学 生 たちも 良 い 経 験 をさせていただきました. 最 後 に, 私 の 我 儘 を 支 えてくれた 妻 と 子 供 たち 孫 たちに 感 謝 します. 週 末 の 種 々のイベントが 私 をリフレッシュさせてくれました. 皆 様,まだまだ 頑 張 りますので, 今 後 ともよろ しくお 願 いします.

17 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 / 工 学 部 研 究 報 告 第 43 巻 17 参 考 文 献 [1] Nishimura, M. : Ionization relaxation in shock heated argon, 修 士 論 文 ( 京 都 大 学 ),1972 [2] 西 村 正 治, 山 口 正 博 : 新 交 通 システムの 騒 音 源 と その 対 策, 日 本 音 響 学 会 講 演 論 文 集 平 成 4 年 3 月, pp , 1992 [3] Nishimura, M. and Ikeda, K. : Reduction of sound reflection coefficient at open end by using porous side wall, Journal of Environment and Engineering, Vol.3, No.2, pp , 2008 [4] Nishimura, M., Kudo, T., Nakagawa, K., Maruoka, A., Zenda, Y. and Nishioka, M. : Development of quieting techniques for wind tunnel, Proc. of Internoise97, pp , 1997 [5] 西 村 正 治, 片 岡 正 純, 山 口 勉, 松 崎 克 也,: 大 音 響 発 生 装 置 の 開 発, 第 8 回 流 力 騒 音 シンポジウム 予 稿 集,1988 [6] Mori, T., Komatsu, Y., Kaneko, H., Sato, R., Yakushi, R. and Iyota, M. : Hydrodynamic design of the Flow Noise Simulator, Proc. of FEDSM03, 4 th ASME/JSME Fluids Engineering Conference, FEDSM , 2003 [7] Kudo, T., Nishimura, N., Sawada, S., Mori, T. and Sato, R. : Noise prediction of the cavitation tunnel, Proc. of FEDSM03, 4 th ASME/JSME Fluids Engineering Conference, FEDSM , 2003 [8] Yamaguchi, N., Nishimura, M., Tominaga, T. and Kataoka, M. : Broadband noise in axial-fan blade cascade, MHI Technical Review, Vol.15, No.2, 1978 [9] 西 村 正 治, 深 津 智, 谷 口 裕 : 蒸 気 放 出 用 サイレン サ 用 多 孔 質 金 属 ディフューザの 開 発, 日 本 騒 音 制 御 工 学 会 技 術 発 表 会 講 演 論 文 集, pp , [10] 西 村 正 治, 深 津 智 : 多 孔 質 金 属 利 用 低 騒 音 弁 の 開 発, 日 本 機 械 学 会 流 体 工 学 部 門 講 演 会 講 演 論 文 集, pp , [11] 柴 田 勝 彦, 西 村 正 治, 五 十 嵐 一 弘 : 高 速 走 行 車 両 の 車 外 騒 音, 三 菱 重 工 技 報,Vol.29, No.6, 1992 [12] 西 村 正 治, 藤 田 勝 久, 長 谷 川 直 幹 : 管 群 共 鳴 音 の 発 生 限 界 判 別 式 に 関 する 一 考 察, 第 44 回 応 用 力 学 連 合 講 演 会 講 演 論 文 集,pp , 1995 [13] 西 村 正 治, 長 谷 川 直 幹 : 管 群 共 鳴 音 の 発 生 限 界 に 関 する 研 究 ( 第 二 報 : 音 場 のダンピング 調 整 によ る 発 生 限 界 の 把 握 ), 日 本 機 械 学 会 関 西 支 部 第 255 回 講 演 論 文 集,pp.79-80, 1997 [14] 斎 藤 保 夫, 西 村 正 治, 深 津 智, 鵜 飼 修, 片 山 圭 一 : 内 張 りダクトの 減 音 量 に 関 する 研 究, 三 菱 重 工 技 報,Vol.15, No.3, 1978 [15] 西 村 正 治 : 消 音 器 の 基 礎 と 実 際, 日 本 音 響 学 会 誌, Vol.56, No.12, pp , 2000 [16] 西 村 正 治, 深 津 智, 泉 山 和 雄, 長 谷 川 素 由 : 伝 達 マトリックス 法 に 基 づく 実 験 的 音 響 管 路 解 析 の 研 究 ( 第 1 報, 管 路 要 素 の 伝 達 マトリックスの 計 測 手 法 ), 日 本 機 械 学 会 論 文 集 (C 編 ),Vol.54, No.504, pp , 1988 [17] 西 村 正 治, 深 津 智, 泉 山 和 雄, 長 谷 川 素 由 : 伝 達 マトリックス 法 に 基 づく 実 験 的 音 響 管 路 解 析 の 研 究 ( 第 2 報, 並 列 回 路 モデル 化 と 音 源 インピーダ ンスの 計 測 ), 日 本 機 械 学 会 論 文 集 (C 編 ),Vol.54, No.504, pp , 1988 [18] 西 村 正 治, 林 泰 道, 北 川 和 夫, 長 谷 川 素 由 : 音 響 パワーバランスに 基 づいたダクト 騒 音 予 測 法 の 研 究, 日 本 機 械 学 会 論 文 集 (B 編 ),Vol.55, No.517, pp , 1989 [19] 西 村 正 治 :ダクト 系 での 音 響 伝 ぱ 解 析 とその 消 音 対 策 法 に 関 する 研 究, 博 士 論 文 ( 姫 路 工 業 大 学 ), 1990 [20] 西 村 正 治 :21 世 紀 の 静 粛 化 技 術, 日 本 機 械 学 会 誌, Vol.104, No.995, pp , 2001 [21]Hisashima, S., Tomimasu, K. and Nishimura, M. : Analysis and evaluation of the quality of air conditioner noise, MHI Technical Review, Vol.23, No.3, 1986 [22]Nishimura, M., Fukatsu, S. and Akamatsu, K. : Measurement of transfer matrices of duct elements and source impedances, using the pair-microphones technique, Proc. of Internoise 83, pp , 1983 [23]Nishimura, M. and Akamatsu, K. : A simple method to analyze fast fluctuating signal, Proc. of 11 th I.C.A., 1983 [24]Ross, C.F. : An algorithm for designing a broad band active sound control system, J. of Sound & Vib. Vol.80, pp , 1982 [25] 西 村 正 治, 新 井 隆 範 :ダクト 出 口 放 射 音 のアクテ ィブコントロール, 日 本 音 響 学 会 誌,Vol.45, No.9, pp , 1989 [26] 西 村 正 治, 新 井 隆 範 : 閉 空 間 のアクティブノイズ コントロール(その1) 波 形 同 期 法 による 周 期 音 の 制 御, 日 本 音 響 学 会 講 演 論 文 集,pp , [27]Iwata, H., Nishimura, M., Aoi, F., Abe, M. and Watabe, S. : Development of active noise control duct system, Proc. of International Symposium on Active Control of Sound and Vibration, pp , 1991 [28]Ohnuma, T., Sugimura, J., Konuma, Y., Nishimura, M.

18 18 西 村 正 治 : 革 新 的 低 騒 音 化 技 術 を 求 めて and Arai, T. :Active control of exhaust noise of diesel engine by Wave Synthesis method, Proc. of International Symposium on Active Control of Sound and Vibration, pp , 1991 [29] 西 村 正 治, 林 洋 一 郎, 宮 脇 一 弘, 新 井 隆 範 :ディ ーゼルエンジン 排 気 音 用 アクティブ 消 音 器 の 開 発, 日 本 機 械 学 会 第 8 回 環 境 工 学 総 合 シ ン ポ ジ ウ ム 98 講 演 論 文 集,pp.66-68, 1998 [30]Nishimura, M. : Some problems of active noise control for practical use, Proc. of International Symposium on Active Control of Sound and Vibration, pp , 1991 [31]Nishimura, M., Matsunaga, Y. and Hata, S. : Multi-timing Synchronized Multiple Error Filtered-X-LMS algorithm and its application for reducing cab noise, Proc. of ACTIVE95, pp , 1995 [32] 柴 田 勝 彦, 上 野 篤, 松 崎 克 也, 山 本 圭 子, 西 村 正 治, 新 井 隆 範 :ヘリコプター 機 内 音 のアクティブ 音 響 制 御, 日 本 航 空 宇 宙 学 会 第 30 回 関 西 中 部 支 部 合 同 秋 季 大 会 講 演 論 文 集, [33]Nishimura, M., Ohnishi, K., Patrick, W.P., and Zander, A.C. : Development of Active Acoustic Treatment Phase 1: Basic concept and development of AAT-Cell, Proc. of ACTIVE97, pp , 1997 [34]Patrick, W.P., Zander, A.C., Mehta, P.G., Nishimura, M., and Ohnishi, K., : Development of Active Acoustic Treatment Phase 2: Duct test of AAT-Sheet, Proc. of ACTIVE97, pp , 1997 [35] 大 西 慶 三, 寺 西 進, 西 村 正 治, 上 坂 克 巳, 大 西 博 文 :アクティブソフトエッジ 遮 音 壁 の 基 本 コンセ プトと 無 響 室 内 実 験 による 減 音 効 果, 日 本 音 響 学 会 誌,Vol.57, No.2, pp , 2001 [36] 上 坂 克 巳, 木 村 健 治, 並 河 良 治, 大 西 博 文, 大 西 慶 三, 寺 西 進, 西 村 正 治 :アクティブソフトエッ ジ 遮 音 壁 の 開 発 と 減 音 効 果 の 評 価, 日 本 音 響 学 会 誌,Vol.58, No.12, pp , 2002 [37] 大 西 慶 三 : 分 散 能 動 騒 音 制 御 を 用 いた 屋 外 の 騒 音 対 策 に 関 する 研 究, 博 士 論 文 ( 鳥 取 大 学 ),2008 [38]Nishimura, M. and Fujita, K. : Active adaptive feedback control of sound field, JSME International Journal, Series C, Vol.37, No.3, pp , 1994 [39] 西 村 正 治, 中 川 敬 三, 泉 山 和 雄, 大 西 慶 三 : 音 響 エネルギーフローの 騒 音 対 策 への 応 用, 第 2 回 音 響 イ ン テ ン シ テ ィ シ ン ポ ジ ウ ム 論 文 集, pp , 1988 [40]Nishimura, M. and Goto, T. : Aerodynamic noise reduction by pile fabrics, Fluid Dynamic Research, Vol.42, ( 電 子 版 17pp), 2010 [41]Nishimura, M., Goto, T. and Ito, T. : Study on reducing noise from a small axial cooling fan by using pile-fabrics, Proc. of Internoise2006, CD-ROM, 2006 [42]Nishimura, M., Goto, T. and Kimura, A. : Study on reducing aerodynamic random noise from cavity, AIAA Paper, AIAA , 2008 [43] 西 村 正 治, 日 名 川 武, 後 藤 知 伸 :スクープ 整 流 板 を 用 いたキャビティ 音 の 低 減, 日 本 機 械 学 会 2009 年 度 年 次 大 会 講 演 論 文 集,pp , 2009 [44] 佐 々 木 良 太, 西 村 正 治, 後 藤 知 伸, 重 森 正 宏, 秋 下 貞 夫 : 数 値 予 測 による 亜 音 速 噴 流 音 の 評 価, 日 本 機 械 学 会 2012 年 度 年 次 大 会 講 演 論 文 集,CD-ROM 論 文 集,2012 [45] 工 藤 敏 文 : 風 洞 の 低 騒 音 化 技 術 に 関 する 研 究, 博 士 論 文 ( 鳥 取 大 学 ),2009 [46]Ikeda, K., Matsuyama, K. and Nishimura, M. : Robust gas turbine combustor with acoustic liner, Journal of Thermal Science and Technology, Vol.7, No.1, pp , 2012 [47] 西 村 正 治, 中 根 卓 治, 長 田 篤 : 音 響 透 過 壁 を 活 用 した 天 井 埋 め 込 み 型 換 気 扇 の 騒 音 低 減 に 関 する 研 究, 日 本 機 械 学 会 第 18 回 環 境 工 学 総 合 シンポジウ ム 2008,CD-ROM 論 文 集, 2008 [48] 山 田 大 智, 松 田 知 倫, 西 村 正 治, 後 藤 知 伸, 堀 田 勝 治, 増 井 慎 一, 戸 根 節 男, 荒 川 優 : 音 響 透 過 壁 を 用 いた 騒 音 低 減 に 関 する 研 究 (カーエアコンダ クトへの 応 用 ), 日 本 機 械 学 会 第 21 回 環 境 工 学 総 合 シンポジウム 2011,CD-ROM 論 文 集,2011 [49] 松 田 知 倫, 西 村 正 治, 長 田 篤 : 音 響 透 過 壁 を 用 い た 騒 音 低 減 に 関 する 研 究 ( 反 射 率 に 及 ぼす 加 圧 条 件 の 影 響 ), 日 本 機 械 学 会 第 19 回 環 境 工 学 総 合 シ ンポジウム 2009,CD-ROM 論 文 集,2009 [50] 西 村 正 治, 糟 谷 秀 太 朗, 後 藤 知 伸 : 空 気 圧 を 利 用 した 遮 音 量 可 変 型 軽 量 遮 音 構 造 の 開 発 ( 第 1 報 : 基 礎 試 験 ), 日 本 機 械 学 会 論 文 集 (B 編 )Vol.78, No.789, pp , 2012 [51]Nishimura,M., Kuwahara, Y., Kasuya, S. and Goto, T. : Development of a light sound insulation structure with variable insulation performance by using air pressure, Proc. of Internoise2012, CD-ROM, 2012 [52] 栗 山 哲 典, 西 村 正 治, 後 藤 知 伸 : 多 孔 板 の 非 線 形 音 響 特 性 に 関 する 研 究, 日 本 機 械 学 会 中 国 四 国 支 部 第 43 期 総 会 講 演 会 講 演 論 文 集,pp , 2005 [53] 西 村 正 治, 後 藤 知 伸, 廣 津 誠, 田 中 丈 晴, 坂 本 一 朗, 桂 直 之 : 消 音 ホイールカバーによるタイヤ 騒 音 低 減 に 関 する 研 究 (その 2), 日 本 機 械 学 会 第 16

19 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 / 工 学 部 研 究 報 告 第 43 巻 19 回 環 境 工 学 総 合 シンポジウム 2006 講 演 論 文 集, pp.89-92, 2006 [54] 田 中 丈 晴, 坂 本 一 朗, 西 村 正 治, 後 藤 知 伸, 中 村 重 徳, 桂 直 之 : 吸 音 ホイールカバーによるタイヤ 道 路 騒 音 の 低 減, 日 本 機 械 学 会 第 18 回 環 境 工 学 総 合 シンポジウム 2008,CD-ROM 論 文 集,2008 [55]Kanamori, N., Nishimura, M. and Mishiro, T. : Feedback control of an active sound insulation unit, JSME International Journal, Series C, Vol.49, No.3, pp , 2006 [56] 大 谷 昌 央, 西 村 正 治, 伊 藤 和 寿, 金 森 直 希, 古 屋 敷 憲 之, 西 谷 伸 介 : 平 面 スピーカを 用 いたアクテ ィ ブ 遮 音 ユ ニ ッ ト の 開 発, 日 本 機 械 学 会 D&D Conference2008, CD-ROM 論 文 集,2008 [57]Umebayashi, Y., Nishimura, M., Kanamori, N. and Furuyashiki, N. : Basic research on active sound insulation unit for floor impact noise, Proc. of Internoise2006, CD-ROM, 2006 [58]Nishimura, M., Ohnishi, K., Kanamori, N. and Ito, K. : Basic study on Active Acoustic Shielding, Proc. of Internoise2008, CD-ROM, 2008 [59]Nishimura, M., Murao, T. and Wada, N. : Basic study on Active Acoustic Shielding : Phase 2 Noise reducing performance for a small open window, Proc. of Internoise2010, CD-ROM, 2010 [60] Murao, T. and Nishimura, M. : Basic study on Active Acoustic Shielding : Phase 3 Improving noise reducing performance in low frequency region, Proc. of Internoise2011, CD-ROM, 2011 [61] Murao, T., Nishimura, M. and Sakurama, K. : Basic study on Active Acoustic Shielding : Phase 4 Improving noise reducing performance in low frequency region - 2, Proc. of Internoise2012, CD-ROM, 2012 [62] 河 崎 博 秋, 西 村 正 治, 金 森 直 希, 渡 辺 敏 幸 : 防 音 壁 用 ANC システムの 高 性 能 化 に 関 する 基 礎 検 討 ( 第 2 報 : 無 響 室 実 験 ), 日 本 機 械 学 会 第 18 回 環 境 工 学 部 門 総 合 シンポジウム 2008,CD-ROM 論 文 集,2008 [63] 森 本 篤 司, 村 尾 達 也, 西 村 正 治, 桜 間 一 徳 :アク ティブ 音 響 パーティションに 関 する 基 礎 研 究, 日 本 騒 音 制 御 工 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集, pp.69-72, [64] 松 岡 融 矢, 西 村 正 治, 金 森 直 希, 李 鍾 先, 齋 藤 昌 弘 :ラジエータファン 用 アクティブ 音 響 フィルタ ーに 関 する 基 礎 研 究, 日 本 機 械 学 会 第 19 回 環 境 工 学 総 合 シンポジウム 2009,CD-ROM 論 文 集,2009 [65] 松 岡 融 矢, 西 村 正 治, 和 田 信 敬, 齋 藤 昌 弘 :FB,FF 制 御 を 併 用 したラジエータファン 用 アクティブ 音 響 フィルター, 日 本 機 械 学 会 中 国 四 国 支 部 第 49 期 総 会 講 演 会 講 演 論 文 集,pp , 2009 [66] 達 可 裕 己, 西 村 正 治, 茂 木 建 二 :FPGA を 用 いた ANC 用 高 速 信 号 処 理 ボードの 開 発 ( 低 周 波 域 での 減 音 効 果 の 改 善 ), 日 本 機 械 学 会 D&D Conference2011, CD-ROM 論 文 集,2011 [67] 水 川 洸 一, 西 村 正 治, 金 森 直 希, 茂 木 建 二 : 音 楽 ソースを 用 いた 拡 声 装 置 のハウリングキャンセラ ーに 関 する 研 究 (その2), 日 本 機 械 学 会 中 国 四 国 支 部 第 45 期 総 会 講 演 会 講 演 論 文 集,pp , 2007 [68]Maeda, S., Nishimura, M. and Shigeki, K. : A basic study on ANC with multi-channel wave synthesis method, Proc. of Internoise2012, CD-ROM, 2012 [69] 田 中 俊 博, 寺 井 健, 西 村 正 治, 島 田 伸 也 : 受 音 室 のアクティブノイズコントロールによる 床 衝 撃 音 対 策 技 術 の 開 発, 日 本 騒 音 制 御 工 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集,pp.65-68, 2012 ( 受 理 平 成 24 年 10 月 29 日 )

20 20 井 上 真 二 山 田 茂 : 高 信 頼 性 ソフトウェア 開 発 のための 一 般 化 離 散 型 信 頼 度 成 長 モデル 高 信 頼 性 ソフトウェア 開 発 のための 一 般 化 離 散 型 信 頼 度 成 長 モデル 井 上 真 二 山 田 茂 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 社 会 経 営 工 学 講 座 Generalized Discrete Software Reliability Growth Modeling for Developing a Highly Reliable Software Shinji INOUE and Shigeru YAMADA Department of Social Management Engineering, Graduate School of Engineering, Tottori University Tottori, Japan {ino,yamada}@sses.tottori-u.ac.jp Abstract: Unification of software reliability growth models gives us useful information for understanding properties of a software reliability growth model theoretically. And, a modeling framework for the unification enables us to develop plausible SRGM's reflecting the software failure-occurrence phenomenon in a testing-phase of a software development process. In this paper, focusing on software reliability growth process depending on discrete-time domain, such as the number of executed test cases, we propose a generalized discrete SRGM assuming that the software failure-occurrence times distribution follows a discrete Weibull distribution by developing a modeling framework for unification of discrete-time software reliability models. And we discuss parameter estimation of our generalized discrete SRGM, which is based on a heuristic algorithm. Finally, we show numerical examples of our generalized discrete SRGM by using actual fault counting-data. Key Words: Software reliability growth model, Discrete-time model, Program-size, Binomial process, Discrete Weibull distribution, Software reliability analysis. 1.はじめに ソフトウェアの 信 頼 性 (software reliability)は, ソフトウェアの 重 要 な 品 質 特 性 の 1 つであり,そ れをテスト 工 程 および 運 用 段 階 において, 定 量 的 かつ 可 能 な 限 り 正 確 に 計 測 評 価 する 必 要 がある. ソフトウェアの 信 頼 性 を 定 量 的 に 評 価 する 基 盤 技 術 の 1 つとして,ソフトウェア 信 頼 性 モデルがあ る.その 中 の 動 的 モデルであるソフトウェア 信 頼 度 成 長 モデル(software reliability growth model, 以 下 SRGM と 略 す)[1-4]と 呼 ばれる 数 理 モデルは, テスト 工 程 および 運 用 段 階 でのソフトウェア 実 行 過 程 に 伴 うソフトウェア 故 障 発 生 時 間,もしくは, ソフトウェア 故 障 発 生 頻 度 を 確 率 的 現 象 として 捉 え, 確 率 モデルによって 記 述 するモデルである. これまでに,このような 確 率 的 現 象 に 関 する 様 々 な 特 徴 を 反 映 しながら, 数 多 くの SRGM が 提 案 さ れている. しかしながら,テスト 工 程 において 観 測 される 様 々なソフトウェア 故 障 発 生 パターンに 対 しても 柔 軟 に 対 応 できる SRGM は 数 少 ない.このような 問 題 を 解 決 するための 1 つの 手 法 として, 順 序 統 計 量 [5], 無 限 サーバ 待 ち 行 列 理 論 [6], 累 積 ベルヌ ーイ 試 行 過 程 [7]などを 用 い,ソフトウェア 故 障 発 生 現 象,もしくは,フォールト 発 見 事 象 を 理 論 的 かつ 統 一 的 に 取 り 扱 いながら SRGM を 構 築 する ための 一 般 化 枠 組 みに 関 する 議 論 が 行 われている. また, 適 用 性 の 観 点 から 多 く 実 用 に 供 されている 非 同 次 ポ ア ソ ン 過 程 ( nonhomogeneous Poisson process, 以 下 NHPP と 略 す)モデルが, 算 術 平 均, 幾 何 平 均,および 調 和 平 均 のような 概 念 を 用 いて 記 述 できることに 着 目 しながら,NHPP モデルの 一 般 化 枠 組 みも 提 案 されている[8].このような 一 般 化 枠 組 みは,SRGM の 新 しい 構 築 枠 組 みとして も 考 えられ, 近 年 では, 既 存 の 一 般 化 枠 組 みに 基 づいて,どのようなソフトウェア 故 障 発 生 パター ンにも 比 較 的 柔 軟 に 対 応 できる SRGM の 開 発 も 行 われている[9].ただし,これらの 議 論 は, 連 続 時 間 モデルに 関 するものが 大 半 を 占 める.テスト 工 程 において 実 行 されたテストケース 数 や, 月 お

21 鳥 取 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 / 工 学 部 研 究 報 告 第 43 号 巻 21 よび 週 もしくは 日 などのカレンダー 時 間 の 単 位 で 推 移 するソフトウェア 信 頼 度 成 長 過 程 を 記 述 する 離 散 時 間 モデル[10]に 対 しては,それらの 議 論 が 十 分 であるとは 言 えない. 本 研 究 では,Langberg and Singpurwalla による SRGM の 一 般 化 手 法 [5]に 基 づき, 上 述 した 離 散 型 SRGM の 一 般 化 モデル 構 築 枠 組 みを 構 築 する. 特 に 今 回 は, 信 頼 性 評 価 精 度 のさらなる 改 善 のため, ソフトウェア 信 頼 性 に 影 響 を 与 える 要 因 であるプ ログラム 規 模 も 同 時 に 考 慮 した 一 般 化 枠 組 みを 与 える.また,この 枠 組 みに 基 づいて,ソフトウェ ア 故 障 発 生 時 間 が 離 散 型 ワイブル 分 布 に 従 うもの と 仮 定 す る こ と で 構 築 さ れ る 離 散 ワ イ ブ ル 型 SRGM を 構 築 す る. 本 研 究 で 構 築 す る 離 散 型 SRGM は, 離 散 型 ワイブル 分 布 を 用 いてソフトウ ェア 故 障 発 生 パターンを 記 述 するため,これまで に 議 論 されている 典 型 的 なソフトウェア 信 頼 度 成 長 パターンを 比 較 的 柔 軟 に 記 述 できるものと 考 え られる. 本 研 究 では,さらに, 最 ゆう 法 および 発 見 的 手 法 に 基 づいた 提 案 モデルのパラメータ 推 定 手 法 についても 議 論 する. 最 後 に, 実 際 のソフト ウェア 開 発 プロジェクトにおいて 観 測 されたフォ ールト 発 見 数 データを 用 いて, 提 案 モデルの 適 用 例 を 示 す. 2. 離 散 ワイブル 型 ソフトウェア 信 頼 度 成 長 モデ ル 離 散 型 SRGMを 理 論 的 かつ 統 一 的 に 取 り 扱 うた めの 基 本 的 モデリング 枠 組 み[5,11]に 基 づいて,プ ログラム 規 模 を 考 慮 した 離 散 型 SRGMの 新 たな 構 築 枠 組 みについて 議 論 する.また,この 枠 組 みに おいて,ソフトウェア 故 障 発 生 時 間 分 布 が 離 散 型 ワイブル 分 布 に 従 うような 新 しい 離 散 型 SRGMの 構 築 も 行 う. 2.1 モデリング 枠 組 み プログラム 規 模 を 考 慮 した 離 散 型 SRGMの 構 築 枠 組 みを 構 築 するにあたり,テスト 工 程 における ソフトウェア 故 障 発 生 現 象 に 対 して,まず, 以 下 のような 基 本 的 仮 定 を 与 える. (A1) ソフトウェア 故 障 が 発 生 した 場 合,その 原 因 となるフォールトは, 直 ちにかつ 完 全 に 修 正 除 去 される. (A2) 各 ソフトウェア 故 障 は,それぞれ, 独 立 かつ 時 間 に 関 してランダムに 発 生 し, 各 ソフトウ ェア 故 障 発 生 時 刻 は,それぞれ, 同 一 の 離 散 型 確 率 分 布 P (i) ( i 0,1,2, ) に 従 う. (A3) テスト 開 始 前 にソフトウェア 内 に 潜 在 する 総 フォールト 数 ( 初 期 潜 在 フォールト 数 ) N 0 は, ある 確 率 分 布 に 従 う 確 率 変 数 とする. テスト 開 始 後 i 期 目 までに 発 見 される 総 フォー ルト 数 を 表 す 離 散 型 確 率 過 程 { N ( i), i 0,1,2, } を 導 入 する.このとき,ソフトウェア 故 障 発 生 現 象 もしくはフォールト 発 見 事 象 に 関 する 上 述 の 基 本 的 仮 定 から,テスト 開 始 後 i 期 目 までに m 個 のフォ ールトが 発 見 される 確 率 関 数 は, Pr{ N ( i) m} n m n m { P( i)} {1 P( i)} Pr{ N 0 n} (1) n m ( m 0,1,2,, n), のように 求 められる. 式 (1)において,テスト 工 程 におけるソフトウェア 故 障 発 生 現 象 もしくはフォ ールト 発 見 事 象 に 関 する 確 率 的 挙 動 は, 初 期 潜 在 フォールトを 表 す 確 率 変 数 N にある 適 切 な 確 率 0 分 布 を 与 えることで, 特 徴 付 けられることがわか る. 例 えば, N 0 に 対 してパラメータ のポアソン 分 布 を 仮 定 した 場 合,テスト 工 程 におけるソフト ウェア 故 障 発 生 現 象 は, 平 均 値 関 数 P(i) をもつ NHPPに 従 うことが 知 られている[11]. 2.2 プログラム 規 模 を 考 慮 したモデリング 枠 組 み 本 研 究 では, 式 (1)における 初 期 潜 在 フォールト 数 を 表 す 確 率 変 数 N に 対 して, 以 下 のような,パ 0 ラメータ ( K, ) をもつ 二 項 分 布 を 仮 定 することで, プログラム 規 模 を 考 慮 した 離 散 型 SRGM を 構 築 するための 枠 組 みを 与 える. K n K n Pr{ N 0 n} (1 ) n (0 1; n 0,1,2,, K ), (2) 式 (2)には, 初 期 潜 在 フォールト 数 に 関 する 以 下 の ような 物 理 的 意 味 が 含 まれている. (B1) テスト 開 始 時 点 におけるプログラムは,K コ ード 行 (LOC)で 構 成 される. (B2) 各 コードは,それぞれ 一 定 の 確 率 で 1 個 の フォールトを 含 む. (B3) プログラム 内 のコード 中 に 潜 在 するフォー ルトにより 引 き 起 こされるソフトウェア 故 障 は,それぞれ 独 立 かつランダムに 発 生 する.

22 22 井 上 真 二 鳥 山 取 田 大 茂 : 学 高 大 信 頼 学 性 院 ソフトウェア 工 学 研 究 開 科 発 / のための 工 学 部 一 研 般 化 究 離 報 散 型 告 信 第 頼 度 成 号 長 モデル 初 期 潜 在 フォールト 数 を 表 す 確 率 変 数 N に, 式 0 (2)のような 二 項 分 布 を 仮 定 することによって,プ ログラム 規 模 がソフトウェア 信 頼 度 成 長 過 程 に 与 える 影 響 を,SRGM に 反 映 することができる[12]. 一 般 的 に,プログラム 規 模 は,ソフトウェアの 信 頼 度 成 長 過 程 に 影 響 を 与 える 要 因 として 考 えられ るソフトウェアの 複 雑 性 メトリクス[13]の1つと して 知 られている.また,ソフトウェア 複 雑 性 メ トリクスの 中 でも 最 も 単 純 で 一 般 によく 使 われる いるメトリクスの 1 つでもある. 従 って, 式 (2) のような 手 法 を 用 いてこのような 複 雑 性 メトリク スを SRGM に 反 映 することは,ソフトウェアの 信 頼 性 評 価 を 行 う 上 で 有 効 な 手 法 であると 考 えるこ とができる. 式 (2)を 式 (1)に 代 入 して 整 理 すると,テスト 開 始 後 i 期 目 までに m 個 のフォールトが 発 見 される 確 率 関 数 は, 次 式 のように 求 められる. Pr{ N B K ( i) m} { P( i)} m ( m 0,1,2,, K ). m {1 P( i)} K m (3) 式 (1)における 初 期 潜 在 フォールト 数 N が 式 (2)の 0 ような 二 項 分 布 に 従 う 場 合,テスト 工 程 における ソフトウェア 故 障 発 生 現 象 もしくはフォールト 発 見 事 象 は, 離 散 型 二 項 過 程 に 従 うことがわかる. また,ソフトウェア 故 障 発 生 時 刻 に 関 するある 適 切 な 離 散 型 確 率 分 布 P(i) を, 式 (3)に 適 用 すること で,プログラム 規 模 を 考 慮 した 離 散 型 SRGM を 容 易 に 構 築 できる. 2.3 ソフトウェア 故 障 発 生 時 間 分 布 式 (3)に 基 づいて 具 体 的 な 離 散 型 SRGM を 構 築 す るためには, 式 (3)に 含 まれるソフトウェア 故 障 発 生 時 間 分 布 P(i) に 対 して,ある 適 切 な 離 散 型 確 率 分 布 関 数 を 与 える 必 要 がある.この 場 合,ソフト ウェア 故 障 発 生 時 間 分 布 としては,その 特 徴 を 比 較 的 柔 軟 に 捉 えることができる 離 散 型 確 率 分 布 を 適 用 することが,ソフトウェア 故 障 発 生 現 象 もし くはフォールト 発 見 事 象 を 一 般 的 に 記 述 する 意 味 で 重 要 となる. 本 研 究 では, 離 散 型 確 率 分 布 の 中 でも, 上 述 した 性 質 を 有 する 離 散 型 ワイブル 分 布 (discrete Weibull distribution)[14]を,ソフトウェ ア 故 障 発 生 時 間 分 布 として 適 用 することにする. 離 散 型 ワイブル 分 布 の 分 布 関 数 は, 次 のように 与 えられる. P( i) 1 (1 p) i ( i 0,1,2, ; 0, 0 p 1). (4) ここで, p は 単 位 期 間 当 りに 1 つのソフトウェア 故 障 が 発 生 する 確 率 を 表 し, は 形 状 パラメータ を 表 す.ところで,1 つのソフトウェア 故 障 に 対 するハザードレートは, 式 (4)から, z( i) 1 (1 p) ( i 1) i, と 導 出 できる.すなわち, 式 (4)の 離 散 型 ワイブル 分 布 は, 形 状 パラメータ によって,ソフトウェ ア 故 障 発 生 時 間 分 布 の 確 率 的 挙 動 を 柔 軟 に 記 述 す ることができる.すなわち, 形 状 パラメータが 1, 1,または 1のような 値 を 取 るとき, ソフトウェア 故 障 発 生 時 間 分 布 は,それぞれ,DFR (decreasing software failure rate),cfr(constant software failure rate ), IFR ( increasing software failure rate)の 性 質 をもつ 離 散 型 確 率 分 布 となる. 3.ソフトウェア 信 頼 性 評 価 尺 度 SRGM を 用 いてテスト 工 程 におけるソフトウェ ア 故 障 発 生 現 象 の 確 率 的 特 徴 を 記 述 した 後,ソフ トウェア 信 頼 性 評 価 に 有 用 な 尺 度 に 基 づきながら, 定 量 的 なソフトウェア 信 頼 性 評 価 を 行 うことは, ソフトウェアの 品 質 管 理 やプロジェクトマネジメ ントの 観 点 から 重 要 である. 本 研 究 では, 議 論 し た 一 般 化 枠 組 みに 基 づいて, 種 々のソフトウェア 信 頼 性 評 価 尺 度 を 一 般 的 に 導 出 する.その 後 に, 初 期 潜 在 フォールト 数 を 表 す 確 率 変 数 が, 式 (2) のような 二 項 分 布 に 従 う 場 合 に 対 するソフトウェ ア 信 頼 性 評 価 尺 度 を,それぞれ, 具 体 的 に 導 出 す る. 3.1 発 見 フォールト 数 の 期 待 値 および 分 散 本 研 究 では,テスト 開 始 後 i 期 目 までに 発 見 さ れる 総 フォールト 数 N (i) を 確 率 変 数 として 取 り 扱 っているため,その 期 待 値 や 分 散 から,ソフト ウェア 信 頼 度 達 成 状 況 などの 情 報 を 得 ることは 極 めて 重 要 である. 式 (1)より,テスト 開 始 後 i 期 目 までに 発 見 され る 総 フォールト 数 N (i) の 期 待 値 [ N ( i)] は, 次 の ように 導 出 される.