ROSE リポジトリいばらき ( 茨城大学学術情報リポジトリ ) Title 足アーチ構造と跳躍能力との関係 Author(s) 岩本, 美咲 ; 渡邊, 將司 Citation 茨城大学教育学部紀要 ( 自然科学 ), 65: Issue Date URL htt

Size: px

Start display at page:

Download "ROSE リポジトリいばらき ( 茨城大学学術情報リポジトリ ) Title 足アーチ構造と跳躍能力との関係 Author(s) 岩本, 美咲 ; 渡邊, 將司 Citation 茨城大学教育学部紀要 ( 自然科学 ), 65: Issue Date URL htt"

そうすけあきくぼ
5 years ago
Views:

1 ROSE リポジトリいばらき ( 茨城大学学術情報リポジトリ ) Title 足アーチ構造と跳躍能力との関係 Author(s) 岩本, 美咲 ; 渡邊, 將司 Citation 茨城大学教育学部紀要 ( 自然科学 ), 65: Issue Date URL Rights このリポジトリに収録されているコンテンツの著作権はそれぞれの著作権者に帰属します引用転載複製等される場合は著作権法を遵守してくださいお問合せ先茨城大学学術企画部学術情報課 ( 図書館 ) 情報支援係

2 茨城大学教育学部紀要 ( 自然科学 )65 号 (2016)37-42 足アーチ構造と跳躍能力との関係岩本美咲 * 渡邊將司 * (2015 年 11 月 18 日受理 ) Relation between foot arch structure and jump performance Misaki IWAMOTO * and Masashi WATANABE * (Received November 18, 2015) はじめに運動能力を決定する要因の一つとして, 身体の形態的特徴があげられる Hunter et al. (2011) は, アキレス腱の長さとランニングエコノミーとの間に関係性があると報告しているランニングエコノミーとは, 走の経済性と訳され, ある走速度に対してどのくらい少ないエネルギーで走れるかを評価するものであり ( 榎本,2013), アキレス腱の長さとランニングエコノミーは正の相関関係を表すランニングのような筋出力の小さい運動とは逆に, 高い筋出力を要する跳躍運動では, 腱容積と正の関係性があることが示されている ( 勝田ほか,1998) 一方, 遠藤 (2014) はアキレス腱長やアキレス腱モーメントアーム長と跳躍能力との間に関係性を見出すことができなかったと報告している足アーチの形態と運動能力の関係性については,Lin et al.(2001) が,2 ~ 6 歳の就学前児童を対象として運動能力を調査し, 足アーチ高の低い子どもは全身弛緩性が高く, 連続しゃがみ立ち運動回数など,6 種類の運動課題において有意に成績が劣ることを報告しているまた, 野田 (1998) による, 小学生 (6 歳 ~ 12 歳 ) を対象とした運動能力の調査において, 内側縦アーチの未形成者は形成者に比べ, 立ち幅跳び,50 m 走の成績が低いことから, 跳躍能力および走能力が低いことがわかったしかし, これらはいずれも成長過程にある子どもを対象とした研究であり, 発達途中の横断的研究であるそのため, 成長度合いの違いにより運動能力形成の要因が多数介在し, 本質は明らかでないアーチ形成の度合いを見ても身体形態発達が終了した成人を調査対象とすることが, 年齢に起因する形態学的な影響を制御できると考えられるしかし, 成人を対象とした足アーチ構造と運動能力の関係についての先行研究は非常に少ない唯一ある研究では, ランニングエコノミーと足アーチの歪みエネルギーには正の相関がみられ, 足アーチが大きく歪むほど, エネルギー消費量が少なく, 効率よく走っていることを示している (Ker et al. * 茨城大学教育学部 ( 水戸市文京 2-1-1;College of Education, Ibaraki University, Mito Japan).

3 38 茨城大学教育学部紀要 ( 自然科学 )65 号 (2016) 1987) 静止時におけるアーチを計測した報告は数多く存在するのに対し, 運動中の計測となると最適な計測装置が存在しないため, 研究は進んでいない跳躍能力と形態との関係に関する研究は今までにも多く報告されており, 身体形態に関して, 田中ほか (1977) の研究によると, 跳躍能力に優れるものは体脂肪率が基準値よりも著しく少ないことがわかっているまた Nahbiya and Mohd(2013) の研究においても, 体脂肪率と垂直跳びの記録に有意な負の相関があることが報告されており, さらに女子よりも男子の方がその影響を強く受けることがわかったまた, バレーボール選手において身長に対して長い下肢を持つ選手は跳躍能力に優れるという報告もある (Aouadi et al 2012) しかし, 遠藤 (2014) が, 陸上, バレーボール, バスケットボールを専門とする大学生を対象としたころ, 下肢長と跳躍能力に関係性は見られなかった先行研究により, ランニングエコノミーと足アーチの構造の関係性が明らかになり, 筋出力の小さい運動では足アーチの歪みがプラスの影響を与えているのに対し, 跳躍のような筋出力の高い運動においてはどのような関係があるのかは明らかになっていないそこで本研究は, 跳躍前の足アーチの歪みの大きさ, 足アーチ高に着目し, 足アーチ構造が跳躍能力にどのくらい関係しているかを明らかにすることを目的とする方法 1 対象大学の剣道部に所属する大学生, 男子 12 名, 女子 7 名の計 19 名を対象とした身体的特性は表 1 に示す対象者の競技レベルは全国大会入賞レベルから地区大会入賞レベルであった調査時の対象者全員に, 足部に骨折や捻挫など研究に影響するようなけがはなかった測定への参加には, 本人に対して本研究の内容を説明し, 同意を得られた学生を対象とした 2 測定項目及び測定方法 2-a 跳躍能力の評価方法跳躍能力は, 垂直跳び, リバウンドジャンプ (RJ), 立ち幅跳び, ホッピングの 4 項目で評価した垂直跳びは, 腕を振ることによる反動動作を用いることがないように腰に両手をあてた状態で実施すること, できるだけ高く垂直方向に跳びあがることを指示した記録の測定にはマットスイッチ (DKH 製 ) を使用した RJ は, 垂直跳び同様に両手を腰にあてた状態で行い, できるだけ短い接地時間で, 高く, 垂

岩本渡邊 : 足アーチ構造と跳躍能力との関係 39 直方向に連続で 6 回跳び上がるように指示をした RJ には, 短い接地時間でどれだけ高く跳躍できるかという点に評価の観点がある ( 図子高松,1995) したがって, 跳躍高を接地時間で除した数値である RJ 指数を用いて評価した記録は, 連続 6 回のジャンプの中で最も高い RJ 指数を採用した立ち幅跳びは,

4 岩本渡邊 : 足アーチ構造と跳躍能力との関係 39 直方向に連続で 6 回跳び上がるように指示をした RJ には, 短い接地時間でどれだけ高く跳躍できるかという点に評価の観点がある ( 図子高松,1995) したがって, 跳躍高を接地時間で除した数値である RJ 指数を用いて評価した記録は, 連続 6 回のジャンプの中で最も高い RJ 指数を採用した立ち幅跳びは, 踏み切りライン前端につま先を揃えて立ち, 両足の間隔が肩幅程度に開いた姿勢から, 助走を付けずに前方上方向に跳躍するように指示した踏み切りライン前端から, 着地した部位の最も踏み切りラインに近い部分までの距離を跳躍記録としたホッピングは, 踏み切りライン前端に片足のつま先を付けた姿勢から, 助走をつけずに連続して片足で 3 回跳躍するように指示した 3 回の跳躍後に着地した部位の最も踏み切りラインに近い部分までの距離を跳躍記録とした右脚, 左脚ともに実施したすべての跳躍において, 十分なウォーミングアップを行い, 測定前に各動作につき本番と同じ動きを 1 回ずつ行い確認した測定は全ての項目で 2 回ずつ実施し, そのうち優れた記録の方を採用した 2-b 足アーチの評価方法足アーチ角度は, 舟状骨粗面, 足指先端, 踵骨隆起の 3 点を結んだ際にできる舟状骨粗面部の角度と定義した足指先端は 1 番突出した指 ( 第 1 指または第 2 指 ) に, また踵骨隆起および舟状骨粗面は触診をし, 最も前方に突出した部分にマーキングをした跳躍前立位時を足アーチ変化前, 跳躍直前の踏み込み動作時の足関節が最も背屈した時を足アーチ変化後とし, 変化後角度から変化前角度を除し, 足アーチ角度変化率を求めた角度変化率は小数第 3 位まで求めたハイスピードカメラで跳躍前の立位時から跳躍後の立位時までを撮影し, その映像上で三点計測器 ( フリーソフト ) を用いて評価した撮影は全員左足に統一した

5 40 茨城大学教育学部紀要 ( 自然科学 )65 号 (2016) 3 統計処理足アーチ角度変化率と, 各跳躍能力 ( 垂直跳び,RJ 指数, 立ち幅跳び, 右脚ホッピング, 左脚ホッピング ) の関係性を調べるために,Pearson の積率相関分析を用いた統計ソフトは JMP8.0(SAS Institute, Tokyo, Japan) を用いたまた, 体重の影響を考慮するため偏相関分析を用いた統計的有意水準はすべて 5% とした結果 1 被験者の形態的体力的特徴形態項目および各跳躍能力の統計値を表 2 に示した男子において, 跳躍前の踏み込み動作の特徴により足アーチ角度変化率の算出が不可能な被験者がいたため, 被験者が 11 名となった 2 足アーチ角度変化率と跳躍能力の相関関係足アーチ角度変化率と各種跳躍能力の相関係数の一覧を男女別に表 3 に示した男子では, 垂直跳び, 立ち幅跳びに有意な負の強い相関関係 (r = ,- 0.72) が見られた RJ 指数に有意な中程度の負の相関 (r = ) が見られた女子では全ての項目で有意な相関は見られなかった

6 岩本渡邊 : 足アーチ構造と跳躍能力との関係 41 3 体重の影響を除外した足アーチ角度変化率と各種跳躍との関係体重を制御因子とした偏相関分析の結果を表 4 に示した偏相関分析において, 体重制御因子としたとき, 男子では垂直跳びで有意な負の強い相関関係 (r=- 0.84) がみられ,RJ 指数, 立ち幅跳びで強い相関関係 (r=- 0.62,- 0.70) がみられた女子においては全ての項目において相関関係は見られなかった考察足アーチと跳躍能力との関係性を男女別に調査した結果, 相関分析では, 女子は足アーチ角度変化率との関連が見られなかったが, 男子は垂直跳び,RJ 指数, 立ち幅跳びで負の強い相関関係がみられたこのことから, 立位時から跳躍動作前の踏み込みへの移行時にかけて, アーチの沈み込みが少ない被験者ほど跳躍力が高いことがわかったまた, 足アーチの歪みの度合いは負荷の大きさに影響されるため, 体重が踏み込み時の負荷の重さに影響し得ることが考えられるそこで体重を制御因子とした偏相関分析を行ったところ, 体重の影響を除いても垂直跳びでは有意な負の相関関係が見られ,RJ 指数, 立ち幅跳びでも有意ではなかったが, 中程度の相関関係が見られたこのことから, 体重の影響を除いても, 足アーチ角度変化が跳躍能力に影響していることがわかった Ker et al.(1987) の研究により, ランニングエコノミーと足アーチの歪みエネルギーには正の相関がみられ, 立脚時から移行時に際して足アーチが大きく歪むほど, エネルギー消費量が少なく, 効率よく走っていることがわかっているこの結果と本研究の結果をふまえると, 足アーチの歪みの効果が逆に作用していることが明らかになった走行は, 踏み返し動作を連続し足アーチのバネの推進力を用いて行われる長い時間の連続した運動においては, 小さなエネルギーで推進力を得ることが効率よく走るために重要であるそのため柔らかく, 収縮しやすい足底腱膜の方がランニングエコノミーに良い影響があると考えられるしかし, 跳躍は, 垂直跳びや立ち幅跳びなどの運動動作の遂行時間 ( 踏切時間 ) は,0.5 から 1.0 秒程度で, どれも極めて短時間に行われるものであり, 瞬間的に大きな力を発揮させなくてはいけない運動動作である ( 高松ほか,1989) そのような動きのなかでは, 柔らかい足底腱膜では収縮に時間がかかり, 十分なパワーを発揮することができないしたがって, 硬くて伸縮性の低い足底腱膜の方が好影響をもたらすのではないかと考えられる

7 42 茨城大学教育学部紀要 ( 自然科学 )65 号 (2016) 要約本研究は, 足アーチの形態変化が跳躍能力にどのように影響しているのかについて分析したその結果から, 足アーチの角度変化が少ない, つまり, 歪みが小さいほど, 跳躍能力に好影響をもたらしていることが分かった引用文献 Aouadi,R., C.Jlid,M., R.Khalifa., S.Hermassi., S.Chelly,M., R.Van.Den.Tilaar., and T.Gabbett Association of anthropometric qualities with vertical jump performance in elite male volleyball players.j.sports Med.Fitness, 52,7-11. 遠藤園子跳躍能力に影響する形態的体力的要因に関する研究平成 25 年度茨城大学大学院教育学研究科修士論文榎本靖士長距離選手のランニングエコノミーに影響を及ぼす体力および技術的要因の検討筑波大学体育学紀要 36, Hunter,C.R., K.Katsoulis., P.Mccarthy. J., W.Ogard., M.Bamman., K.William., S.Wood,D., D.Hollander,J., E.Blaudeau,T., and R.Newcomer,B Tenon length and Jointflexibility are related to running economy. Med Sci Sports Exerc 43 (8), 勝田茂, 高村英幸, 中林真知子, 稲木光春, 福原語三, 村木征人, 尾懸貢, 新津守アキレス腱の形態的特性がジャンプパフォーマンスに及ぼす影響筑波大学体育科学系紀要 21, Ker. R.F., B.Bennett,M., R.Bibby, S., C.Kester, R., and M.Alexander.,R., 1987 The spring in the arch of the human foot. Nature 325 : Lin,C.J., A.Lai,K., S.Kuan,T., L.Chou,Y Correlating factors and clinical significance of flexible flatfoot in preschool children.j Pediatr Orthop. 21 (3), Muraoka T, T.Muramatsu, T.Fukunaga, and H.Kanehusa Elastic properties of human Achilles tendon are correlated to muscle strength. J Appl Physiol, 99 (2), Nahbiya,Z.A. and A.Mohd,B Prediction of vertical jump height from anthropometric factors in male and female arts athletes. Malays. J.Med.Sci, 20 (1), 野田雄二足の裏から見た体 ( 講談社 ) 東京高松薫, 図子浩二, 会田宏, 吉田亨, 石島繁デプスジャンプにおける台高と踏切中の膝曲げ動作の相違が跳躍高および下肢にかかる負荷特性に及ぼす影響日本体育協会スポーツ医科学研究報告 NO.IX 中田信雄, 辻田純三, 堀清記, 千賀康利, 大槻寅之助, 山崎武スポーツマンの体格および体型に関する研究 - 競技種目による運動選手の体格の差異について- 体力科学 26, 図子浩二, 高松薫バリスティックな伸張 - 短縮サイクル運動の遂行能力を決定する要因 - 筋力および瞬発力に着目して- 体育科学 44,

スマホ利用によるコミュニケーションの変容 ( 上 ) SNS ( 概要 ) SNS , LINE 90 SNS SNS LINE 2011 SNS LINE LINE 2 SNS はじめに

スマホ利用によるコミュニケーションの変容 ( 上 ) SNS ( 概要 ) SNS , LINE 90 SNS SNS LINE 2011 SNS LINE LINE 2 SNS はじめに ROSE リポジトリいばらき ( 茨城大学学術情報リポジトリ ) Title スマホ利用による若者のコミュニケーションの変容 ( 上 ) : SNS は若者の感性を変えたのか Author(s) 村上, 信夫 Citation 茨城大学人文社会科学部紀要. 人文コミュニケーション学論集, 2: 145-167 Issue Date 2018-03 URL http://hdl.handle.net/10109/13523