小規模不安定斜面対策

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1 小規模不安定斜面対策 地盤品質判定士高橋一紀 ( 株式会社カナコン )

2 自己紹介 がけ地対策助成制度 対策工法あれこれ 今後の課題 内容

3 大学 ( 理学部地学科 ) 中央開発地盤コンサルタンツ日本技術開発カナコン 14 年 5 年 7 年 11 年 関西圏 ~ 九州 ~ 首都圏 神奈川県 中日本 ~ 東日本 ~ 北海道 神奈川県, 静岡, 長野 岩石鉱物学教室地質調査地盤調査地質 地下水解析調査, 点検, 設計 三浦半島の蛇紋岩類の定置 ダム, 地すべり高速道路, トンネル活断層送電鉄塔 住宅の地盤調査解析環境, トンネル, デューデリジェンス, 防災 地質調査, 橋梁 トンネル, 斜面防災, 災害復旧対策 測量士補教員免許 甲種火薬類取扱保安責任者技術士 ( 応用理学部門 ) 地すべり防止工事士 測量士道路防災点検講習 RCCM 技術士 ( 建設部門, 総合技術監理 ) 斜面安定技士 VE リーダー 応用地形マスター 1 級地盤品質判定士民事調停委員環境社会検定道路橋点検士 主な経歴

4 助成制度対象創設年 がけ地防災対策工事 擁壁の新設 法的な手続きが必要な工事で, 平成 18 年 ( 被害を出さない 築造替え 恒久対策となるもの (2006 年 ) = 未然に防ぐ ) がけ地減災対策工事 ( 被害を低減させる ) がけ地の補強 法的な手続きが不要な工事で, 暫定的な対策 一昨年 ~ 被災する対象家屋に近接し, 高さ 2m 以上, 傾斜 30 度以上の個人等所有の崖を対象 旧制度 ( 上段 ) は宅地造成規制法及び建築基準法に基づく擁壁が対象 がけ地改善工事に対する助成制度 ( 横浜市 )

5 目的工法設計等の対応 1 擁壁および崖に対策工を設けて補強を行う 法枠工 アースアンカー工 抑止工 鉄筋挿入工 待ち受け擁壁 斜面安定計算や対策工の構造計算を行い, 安全性を検証 2 法面保護または崖が崩れた場合の被害防止 軽減措置を図る 排水補強パイプ工 覆式落石防護網工 H 型鋼コンクリート防護柵 モルタル コンクリート吹付け工 落石防護柵工 簡易な計算または計算を行わなくても, 仕様等により一定の効果が得られると判断 3 現状, できる範囲で安全性を向上させる 擁壁の金網補強 平鋼補強 コンクリート補強 排水パイプの穴径, ピッチが宅造法と違うものなど 設計者 施工者からの提案書により, 崖の安全性が向上すると判断 減災対策工事の種類 ( 横浜市 )

6 段丘崖に相当手前の駐車場は沖積低地 モルタル吹付工 : 厚さ 15 cm水抜き孔 :VP50,1 本 /2 m2 減災工事個所 ( 横浜市内 ) 2016 年 4 月視察

7 減災工事個所 2015 年 9 月の豪雨で石積み擁壁が崩壊 9 月 9 日に最大時間雨量 35mm(2 年確率雨量に相当 ) 9 月 6 日 ~9 月 10 日の連続雨量 306.5mm

8 崩壊原因 軽量コンクリートブロック (CB) 塀? 石積擁壁 盛土? ローム層 地形地質的に表流水, 地下水が集中 水抜き孔が不十分だった? 擁壁に異常な水圧が作用 対策工の妥当性 凝灰質粘土層 モルタル吹付工 ( 厚さ 15cm) は概ね妥当 より簡易な工法もあったのではないか その他の対策工の例 たとえば 簡易土留め柵 + 植生工 崩壊原因と対策工選定の妥当性検討

9 編み柵工 ( 横板 : 竹 ) 編み柵工 ( 横板 : 丸太 ) プラスチック擬木による土留め柵工 その他に 考えられる 減災工法案 透水性土留め柵工

10 隣接斜面に崩壊危険性があることを指摘 最上部に軽量コンクリートブロック (CB) 擁壁を増し積みして, 庭の利用を拡張? 擁壁の水抜き孔が少ない 擁壁の一部にクラックが発生 わずかに前方に傾動 減災工事個所隣接斜面

11 最上部に軽量コンクリートブロック (CB) 壁を増し積みして, 庭の利用を拡張? 軽量コンクリートブロック (CB) 壁が前方に傾動 軽量 CB 壁 ( 増し積み ) の前傾

12 正面 推定地質断面図 ひび割れ 石積擁壁 CB 塀 盛土 ローム層 水抜き孔 凝灰質粘土層 2 段石積み擁壁 + 軽量 CB 壁 ( 増し積み ) の変状 ( ひび割れ, 前傾, 水抜き孔 2 孔 )

13 擁壁をコンクリート, 平鋼などで補強 擁壁を金網で補強 排水補強パイプの打設 最上部の盛土をジオテキスタイルに置換 排水補強パイプ打設 平鋼による擁壁補強 金網による擁壁の補強 対策案として考えられる減災工法 ジオテキスタイル補強土壁工

14 デコメッシュ ( 埋設型枠 ) 工法 NETIS 登録 :KT VE

15 斜面地における崩壊と対策事例 ( 神奈川県西部 )

16 住宅裏の狭隘斜面へ適用 ( 神奈川県西部 ) 別現場における当該工法全景 フォレストベンチ工法の採用 NETIS 登録 KT A

17 間伐材は化粧 透水性土留壁を単管パイプに固定し, ワイヤーでロックボル ト ( アンカー ) に繋いで固定 フォレストベンチ工法の原理 構造 NETIS 登録 :KT A

18 化粧なし 単管パイプを受圧板として, ロックボルト ( アンカー ) に直接固定 フォレストベンチ工法の姉妹工法 パイプグリッド工法

19 ブラフ積み 沖積低地に面した段丘縁辺 建物の建て替えでブラフ積みが後傾 練石積み 背面には池, 庭木, 防空壕があった 下部は石積み, 上部はブラフ積み 模擬調査箇所増し積み擁壁の変状 ( 横浜市 )

20 ブラフ積の積み直しを提案 庭木撤去や排土で背面土が緩んで 擁壁が後傾したと推定

21 ブラフ積の構造 ( 房州石 直方体 ) ( 控え石を入れる )

22 ブラフ積擁壁 ( 横浜山手 ) ブラフ積は石材が 凝灰質砂岩

23 大谷石積擁壁の劣化 ( 横浜市内 ) 積み方はブラフ積と同じ 石材が大谷石 ( 軽石凝灰岩 )

24 雨水が背面の土を通って, 壁面に染み出す時に塩類が晶出 し, 大谷石表面が徐々に剥離する ( 塩類風化 ) 地衣類, バクテリアなどの生物風化も作用する 大谷石塀の風化 池田宏著 地形を見る目 古今書院,p91

25 急斜面側 急斜面側 がけ地肩部にみられる変状 ( 横浜市 )

26 強震 ( 震度 5 弱 ) 後の路肩変状 ( 神奈川県西部 )

27 地震動の地形効果による変状

28 震度階級 地盤の状況 斜面などの状況 5 弱 亀裂 1 や液状化 2 を生じることがある. 落石やがけ崩れが発生することがある. 5 強 6 弱 6 強 地割れが生じることがある. 大きな地割れが生じることがある. がけ崩れや地すべりが発生することがある. がけ崩れが多発し, 大規模な地すべりや山体の崩壊が発生することがある 規模の小さい地割れを亀裂と標記する. 2 地下水が高く, 緩い砂地盤では液状化が発生することがある. 3 天然ダムが形成されることがある. 土石流が発生することもある 気象庁震度階の解説表 ( 地盤 斜面の状況 )

29 ハンドル 荷重計 荷重計 トルク計 ロッド径 :10mm ロッド長 :500mm コーン先端角 :60 コーン 独立行政法人土木研究所が主体に開発 羽根付コーン ( ベーンコーン ) 重さ約 4.5 キログラム 貫入抵抗が測定できる ( 先端コーン ) C,φ が測定できる ( ベーンコーン ) ( 土層強度検査棒による斜面の土層調査マニュアル ( 案 ) 土木研究所資料, 第 4176 号,2010 年 7 月 ) 土層強度検査棒の利用

30 表土層のせん断強度値 C,Φ の測定表土層の貫入抵抗値の測定表土層厚の測定 土層強度検査棒による崩壊土層の強度測定

31 B-5 地点 ( 横浜市内斜面上部 ) 粘着力 C=11.8kN/m 2 内部摩擦角 Φ=17.4 斜面安定解析 ( 逆算 ) で求めたせん断強度 土検棒 ( 土層強度検査棒 ) で測定したせん断強度例 粘着力 C=7.5kN/m 2 内部摩擦角 Φ=17.4 ( 固定 )

32 1. 斜面崩壊の機構の理解 研究や最新工法の情報収集 2. 狭隘箇所における既設擁壁の補強工事を取り扱う施工者の確保 3. 開発者や施工者と勉強会, 見学会などを通じて交流 情報交換 4. 行政 ( 特に市町村 ) や関係団体との連携 5. 技術者の責任問題 がけ地対策に関わる地盤品質判定士の課題

33 ご清聴ありがとうございました.