PDA Journal of GMP and Validation in Japan Vol. 21, No. 1 (2019) バックアップの点検頻度に関する考察 ~ データインテグリティ対策 ~ 望月清合同会社エクスプロアソシエイツ論文受付日 2019 年 2 月 11 日受理日 20

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ときこやぎ
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1 PDA Journal of GMP and Validation in Japan Vol. 21, No. 1 (2019) バックアップの点検頻度に関する考察 ~ データインテグリティ対策 ~ 望月清合同会社エクスプロアソシエイツ論文受付日 2019 年 2 月 11 日受理日 2019 年 3 月 7 日 [doi /pda.21.22] Discussion on Backup Check Frequency For Data Integrity Implementation Kiyoshi MOCHIZUKI Xpro Associates LLC In the pharmaceutical industries, the Data Integrity is becoming a big issue. In order to prevent the data loss on the computer failure, the computer data should be backed up and the backup data should be exact, complete, and secure from alteration, inadvertent erasures, or loss. If the backup data is corrupted when the data restoration is required on the computerized system failure, the data could not be recovered. Therefore, the backup should be periodically veriˆed if it is complete, reliable, and ready for use. When the hard disk drive is used as a backup media, one year of the veriˆcation frequency would be enough. Keywords: Data Integrity, ALCOA, Hard Disk, Backup, Failure Rate, Reliability 1. はじめに医薬品業界においてデータインテグリティ対応が大きな課題となっている電子記録のデータインテグリティ対策として, コンピュータ化システムの障害発生にそなえデータバックアップを取得するしかしバックアップが破損していると, コンピュータ化システムに障害が発生した場合にデータを復旧できないそのため, バックアップデータが破損していないことを適宜点検する必要があるバックアップ媒体としてハードディスクを使用する場合, バックアップの点検頻度は 1 年に一回で十分であると考察したので, その結果の詳細を報告する mochizuki-kiyoshi@xpro-asso.com 2. データインテグリティの要件データインテグリティとはデータが完全で一貫性があり正確であること, つまりデータが信頼できることであるデータインテグリティの要件は ALCOA 原則 ( アルコア原則 ), もしくはその拡張版である ALCOA+( アルコアプラス CCEA) であると言われている ( 図 1 参照 ) また, 電子記録の真正性確保の要件として厚労省 ERES 指針 1) に下記事項が示されている ( 図 2 参照 ) セキュリティ監査証跡 (Audit Trail) バックアップ真正性 (Authenticity) の確保とは, 電子記録を完全, 正確, かつ信頼できるものにすることである厚労省 ERES 指針において電子記録の真正性確保の要 22

2 Vol. 21, No. 1 (2019) 図 1 ALCOA 原則と ALCOA+( プラス ) 図 3 ハッシュ値による変更有無の確認方法図 2 厚労省 ERES 指針の概要件のひとつとされたセキュリティとは,ID とパスワードなどによりシステムへのアクセスを権限者のみに制限することである保存された記録の真正性確認には監査証跡が必須である監査証跡を簡単にいうと, 記録の生成変更削除の履歴情報である監査証跡には以下の情報を含める誰が, 何時, 何から何へ, 変更削除の理由手書きの生データを変更削除する場合と同じ概念であるバックアップはシステムの障害対応および災害対応のために取得するが,PIC/S の Annex 11 2) の 7.2 には以下の説明がある定期的にバックアップを行うことバックアップデータの完全性と正確性およびデータをリストア ( 復元 ) する能力をバリデートしておくこと定期的にモニターすることバックアップデータの完全性と正確性およびデータをリストアする能力を定期的にモニターすることとは, バックアップが論理的物理的に壊れておらず劣化しておらずシステム復旧に使用できることを定期的に確認することを求めているのであるバックアップデータが壊れていないことの確認方法としては, 以下をはじめとする様々な方法があるファイルサイズが変化していないことを確認チェックディスク機能によりハードディスクに問題が生じていないことを確認ハッシュ関数 ( 与えられたデータを代表する数値を得る操作, または, その様な数値を得るための関数 ) を使用してバックアップデータが変化していないことを確認 ( 図 3 参照 ) 次章よりバックアップの定期確認頻度について以下の順に説明する考察の前提バックアップ用 HDD の信頼度データを修復できない確率 3. 考察の前提本考察における前提を以下に示す 1) バックアップ媒体はハードディスク (HDD Hard Disk Drive) とする 2) バックアップ用 HDD は使用時のみ通電するものとする 3) バックアップ用 HDD は偶発故障期間 ( 図 4 参照 ) で使用するものとする ( 摩耗故障期間では使用し 23

3 PDA Journal of GMP and Validation in Japan 表 1 点検時点におけるバックアップ用 HDD の信頼度定期点検周期 R 信頼度 Q 不信頼度 (Q=1-R) 1 ヶ月年年年年図 4 偶発故障期間とは想定した点検周期ごとの, 点検時点におけるバックアップ用 HDD の信頼度と不信頼度故障率は一定として計算した ( 注 1 参照 ) 注 1 HDD を連続使用すると 3 年を経過したあたりより摩耗故障期間に入り故障率は増大するしかし, バックアップ取得時とバックアップの点検時のみに HDD を稼働させるのであれば, 偶発故障期間は 3 年より相当長いと考えられる ( 補足情報 2)HDD の摩耗故障期間を参照 ) 図 5 ポアソン分布とはない ) 4) バックアップ用 HDD の故障率は 1 / 年 (0.01 件 / 年 ) とする ( 補足情報 1)HDD の故障率をもとに想定 ) 5) バックアップ用 HDD の故障率はポアソン分布 ( 図 5 参照 ) に従うものとする 6) バックアップ用 HDD の故障は, 点検周期においてのみ検知されるものとする 7) 点検の時点で発見された故障は, 修理するものとする ( 修理系 ) 4. バックアップ用 HDD の信頼度故障率がポアソン分布に従う場合, その信頼度は下記の式 1 で計算される R(t)=e(-lt) 式 1 R(t) 時刻 t における信頼度 ( 時刻 t において故障していない確率 ) l 故障率バックアップ用 HDD の定期点検周期を想定し, 想定した点検周期ごとに点検時点におけるバックアップ用 HDD の信頼度と不信頼度を計算したその計算結果を表 1 に示す点検時に HDD の故障が発見された場合, その HDD は修理するものとする ( 修理系 ) 修理後にはバックアップを再取得する不信頼度 Q(t) は下記の式 2 で計算される Q(t)=1-R(t) 式 2 5. データを修復できない確率コンピュータ化システムの HDD が故障した時に, バックアップ用 HDD も故障しているとデータを修復できないこのデータを修復できない確率の最悪値を定期点検周期ごとに求めるその確率は下記の式 3 で計算されるコンピュータ化システムの HDD が故障する確率件 / 年 ) バックアップ用 HDD の不信頼度式 3 計算の前提 1) コンピュータ化シスステムの HDD 故障率は, バックアップ用 HDD の故障率と同じとする (0.01 件 / 年 ) 2) バックアップ用 HDD の不信頼度は,t= 点検周期における不信頼度, つまり最大不信頼度とするデータを修復できない確率の計算結果を表 2 に示す表 2 の頻度 ( 年毎 ) は, データを修復できない事象が何年に 1 回発生するかを示したものであり, 以下の式 4 で算出される 1 確率 ( 件 / 年 )= 頻度 ( 年 / 件 ) 式 4 また 100 システムにおける頻度 ( 年毎 ) は,100 システムを所有していた場合, データを修復できない事象が何年に 1 回発生するかを 100 システム当たりで示したものであり, 以下の式 5 で算出した 1 確率( 件 / 年 ) 100 システム = 頻度 ( 年 / 件 100 システム ) 式 5 24

4 Vol. 21, No. 1 (2019) 表 2 データを修復できない確率表 3 HDD の故障率点検周期不信頼度確率 ( 件 / 年 ) 0.01 不信頼度データを修復できない頻度 ( 年毎 ) 100 システムにおける頻度 ( 年毎 ) 1 ヶ月 ,050 年 1,200 年 1 年 ,050 年 100 年 2 年 ,050 年 50 年 5 年 ,050 年 20 年 10 年 ,051 年 10 年図 6 アーカイブとは 6. おわりに上記の表 2 によれば, バックアップ用 HDD の定期点検周期を 1 年とした場合, データを修復できない事象はシステムあたり 10,050 年に 1 回発生するに過ぎない 100 システムを所有している場合でも, そのような事象は 100 年に 1 回発生するだけであるすなわち, 多くの場合, バックアップ用 HDD の定期点検周期は 1 年で十分であるまた, アーカイブ ( 図 6 参照 ) のバックアップも定期点検する必要もあるが, その定期点検周期も 1 年で十分である医薬品の当局査察や供給者監査において, バックアップの点検方法や点検周期を調査されることがあるバックアップの合理的点検手順を策定しておく必要があるが, その際に本考察がお役に立てば幸いである補足情報 1) HDD の故障率表 3 は Backblaze 社のデータセンターにおける, 2018/7/1~2018/9/30 の間の大容量 HDD 実故障データである 97,600 台の HDD における故障率の単純平均は 1.27 / 年となっている本考察対象の HDD は大容量ではなく, また過酷なアクセスもないことから, 故障率を 1 / 年と想定した 2) HDD の摩耗故障期間図 7 は HDD を連続稼働させた場合, その故障率が稼働時間とともにどのように変化するかを示した実図 7 HDD 故障率の経年変化績データである連続稼働が 3 年を超えるあたりから故障率が急激に増大し, 偶発故障期間から摩耗故障期間へ移行するのがわかるバックアップ取得時とバックアップの点検時のみに HDD を稼働させるのであれば, 偶発故障期間は 3 年より相当長いと考えられる 3) 信頼度計算信頼度の計算方法は下記サイトの情報を根拠とした 25

5 PDA Journal of GMP and Validation in Japan ~shinraisei/lecture 203.pdf 千葉大学工学部 reliability.pdf 東京工芸大学 shinraiseisuugaku.html 参考文献 shinraisei3.html#shinraido 1) 医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について薬食発第平成 17 年 4 月 1 日 (2005) 2) PE Annex 11, Computerised Systems, PIC/S, July ) PI041 1, Good Practice for Data Management and Integrity in regulated GMP/GDP environments (Draft 3), PIC/S, November

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