Microsoft Word - H21onishi

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1 仮想化技術による サーバの統合 尾西克之 情報ネットワーク室 1 はじめに大学の教育や研究に使われるコンピュータは 技術の進歩によりメインフレームと呼ばれる大型計算機から 科学技術計算などの処理機能に特化したワークステーションへと小型化が進んだ これによりコンピュータは それぞれが必要なサービスのみを提供するサーバへと細分化されていった これらサーバ群を連携させるためにネットワーク網も整備されていったが それに伴いネームサービス (DNS) やメールサービス (SMTP) などの連携のためのサービスの提供が生じた 当時これらサービスの提供もワークステーションで行っていたが が高価であったり 有償なOSが必要であったりなどの理由で 全てのサービスを1 台のサーバで行うのが一般であった そのために各サービスの更新や障害が生じた場合は 全てのサービスに影響を及ぼす可能性が高かった 2 サーバの仮想化について 2.1 サービスの分散化ここ数年のインターネットの普及で Web(HTTP) や NAT など 提供するサービスの種類も増え サーバの数も増加した また Linux などパーソナルコンピュータ (PC) 上で稼働する無償 OS の普及に加え PC 自体も高性能化 低価格化したことにより サーバの導入が容易になった これによりシステムの可用性やセキュリティ向上を考慮するなどの目的で 1サービス1サーバの構成も増え 1ドメイン毎に最低でも3 台 多いところではその倍以上のサーバが設置されるようになった 2.2 サーバの集約化このようにサービス毎にサーバを設置することは システムの可用性やセキュリティ向上などのメリットもあるが その一方でデメリットも生じる 従来のサーバの運用では 1 つの物理マシンに 1 つの OS を搭載して使用するのが一般的であった この運用は一見シンプルで問題はなさそうに見えるが 実は CPU の使用率が意外に低いという問題点がある その用途にもよるが一般的なサーバの場合 平均すると 10% 程度しか CPU リソースを使用していない 特に最近の PC は低価格化と同時に性能も大幅に向上しているため CPU リソースを大量に余らせてしまい CPU 処理能力や電力のほとんどがアイドル時間 ( なにもしない という処理 ) に消費されるようになっている これがサーバ 1 台での運用であれば この状態を放置し続けても それほど問題とはならないが サーバを複数台運用している場合であれば その台数分の CPU リソースや電力を無駄に余らせることになって

2 しまう またメンテナンスなどの手間や保守費もより多くかかる これらの問題を改善する方法の一つとして 仮想化技術を使ったサーバの集約があげられる 2.3 サーバの仮想化一般にサーバの仮想化と言うと ホストマシン上に複数の仮想マシンを作成する方法が思い浮かぶが その目的や用途により様々な方法がある 例えば 1 つの Web サーバアプリケーションソフトに複数ドメイン名を割り当てる バーチャルドメイン機能も仮想化であり また 1 つのシステムの中で複数のシステム環境を持って切り替えながら動作する仮想環境なども仮想化である 2.4 仮想化の種類仮想化の方法には いろいろあると述べたが どのレベルで仮想化するかにより大きく 3つに分けられる 1 アプリケーション ( サービスレベル ) の仮想化 Web サーバやメールサーバなどのサービスだけを仮想化する方法で 1つのサーバ (1 つの アドレス ) に対して複数のドメインを割り当て それぞれで異なるサービスを同時に稼働させる ドメイン ドメインサーバアプリケーション OS ドメイン バーチャルドメイン機能などがある 図 1 2 パーティショニング (OS レベル ファイルシステムレベル ) の仮想化 アプリケーションに対して OS を仮 想化する方法で この方法によって用意された OS を OS インスタンス ( 仮想化実体 ) もしくは 仮想環境(VE) と呼ぶ 1 台の物理サーバ上で動いて OS いる OS は 1 セットだけだが 内部で は仮想の OS セットが生成されており 図 2 動作するアプリケーションは ほかのアプリケーションとは隔離された OS 環境の中で実行される この環境は コンテナ と呼ばれる 3 レベル ( 仮想マシン ) の仮想化 一般にサーバ仮想化ソフトと呼ばれる VMware や Xen VirtualBox や Virtual PC などはを仮想化する方法で 単一のに対して複数の仮想化さ

3 れたを同時に動かします この仮想化されたを 一般に仮想マシン (Virtual Machine:VM) と呼びます これら個々の仮想マシンには それぞれ OS をインストールできますから 複数の異なった種類やバージョンの OS を 1 台のサーバ上で同時に実行できるという特徴がある このレイヤーでの仮想化製品として VMware の製品や Citrix XenServer などがある これらには Windows や MacOSX Linux といった OS の上で仮想化ソフトを実行し そこで仮想マシンを作成して実行する ホスト OS 型 と の BIOS から直接仮想化ソフトを起動して その上で仮想マシンを実行する ハイパーバイザ型 がある ケ 仮想マシンソフトウェア 仮想マシンソフトウェア ホスト OS ハイパーバイザ型図 3 ホストOS 型 図 4 ハイパーバイザ型 3 仮想サーバの構築 今回のサーバの仮想化は lns( 原子核施設 ) ドメインと HEPnet( 理 ) ドメインの2つのネットワークに対しておこなった また仮想化には jail を使用した 3.1 jail とは jail は パーティショニング ( ファイルシステムレベル ) による仮想化の一つで FreeBSD(OS) 固有の技術である jail は仮想ホスト間に破ることのできない 隔離壁 を作り お互いの存在を隠すことにより 例えば他人のファイルを改ざんする行為を ファイルに対する書き込み権限以前に jail の壁によって阻む これにより 1 台のマシンに複数の役割を期待する場合のセキュリティが大幅に向上する 今回の jail による構築には 導入の手順もわかりやすく簡単にでき また他の人でもメンテナンスしやすいように ezjail と言うパッケージを利用した また OS のヴァージョンアップ毎に jail の機能も拡張されていることから その違いの検証も含め Ver.6.4 と Ver.7.2 の2 種類の OS Version を使用してみた 3.2 構成について仮想サーバの構築には ベースとなるホストマシンが必要だが 新たなは購入せずに 使用していない既存の PC( テ スクトッフ ) を流用した また NIC ( ネットワークイ

4 ンタフェースカード ) は複数枚使用し グローバル とプライベート を設定した これは メンテナンス時のログイン接続 (ssh:22) を プライベートネットワークからに限定し ネットワークのセキュリティ性を高めるためである スペックは表 1のとおりである lns( 原子核施設 ) ドメイン HEPnet ドメイン CPU Intel Celeron 1.1GHz Intel Celeron 1GHz MEM 512MB 256MB HDD 40GB ( 3 *2 台はバックアップ用 ) 40GB ( 2 *1 台はバックアップ用 ) NIC Intel Pro/100 4 Intel Pro/100 4 表 1 構成 3.3 システム構成について仮想化したサーバは 表 2のとおりである DNS, SMTP サーバ, Web サーバとサービス毎に分けて構築することで それぞれのシステム設定も単純となり また他のサービスへの影響も軽減される lns( 原子核施設 ) ドメイン HEPnet ドメイン 対象のサーバ DNS, SMTP サーバ, Web サーバ DNS, SMTP サーバ 仮想サーバ数 3 台 2 台 表 2 想化の対象になったサービス 一般に同一のネットワーク が複数ある場合は 1 枚の NIC に alias などで設定するが NIC でのボトルネックの軽減などを考慮し Web サーバの は 別の NIC を設定した ただしこの場合 arp(address Resolution Protocol) によるメッセージが出続けるので それを回避するために 以下の設定を行った ファイル名:sysctl.conf に以下を追記 security.jail.allow_raw_sockets=1 net.link.ether.inet.log_arp_wrong_iface=0 3.4 仮想化による利点 ( メリット ) 仮想サーバ化により 以下のメリットを得ることができた 1 リソース有効利用元々が極めて負荷の少ないサーバ郡であったため CPU 処理能力やメモリといったリソースは 1% 未満と ほとんどアイドリング状態であった これらを複数の仮想サーバで分配し有効に活用できた 2 省コスト 省電力物理サーバを5 2 台と運用台数を大きく減らすことができたので 消費電力 設置スペース 管理リソースといった様々な側面でのコスト削減できた

5 消費電力 360Wh(70Wh 5 台 ) 140Wh(70Wh 2 台 ) 3 柔軟性物理的な制約が無くなり 仮想化された= 仮想マシン上で稼働する ことになり 多台数の一元管理ができた またサーバの起動時間も高速化され 再起動を伴うメンテナンス作業のダウンタイムも最小化した 更に1に記したとおり リソースにもまだまだ余裕があるので の追加無しに新たなサーバの追加が可能になった 3.5 仮想化による問題点 ( デメリット ) 仮想サーバ化により 以下のデメリットが生じた 1 耐障害性サーバ集約前では サービス毎に物理サーバを構築することにより セキュリティ性を含めた耐障害性を考慮したシステム構成であった しかし これらを1つの物理サーバ ( ) に統合したことにより 1 台の物理サーバのダウンすることで 複数の仮想サーバがダウンにつながる可能性が生じた 2 オーバーヘッド物理メモリは 仮想サーバが増える毎に消費します 更にホスト部分もその対象となるため lns( 原子核施設 ) ドメインのサーバでは マシン4 台分のメモリ消費となった 3 OS のアップデート仮想サーバの OS 部は全ての仮想サーバで共有しているので セキュリティインシデントに対応するために OS のアップデート作業を行う場合は 全ての仮想サーバに対して同時に行う必要がある 4 問題点への対策 1 耐障害性への対策 セキュリティへの対策 仮想マシン間は それぞれが完全に隔離されていることから 各仮想サーバでは使用するサービスのポート以外は閉じ 外部からのアクセスを最小限とした またメンテナンス作業も ホスト OS からのみ可能とした 更にホスト OS 自体にも内部ネットワークからしかアクセスできないように設定した システムクラッシュへの対策 構成で述べたように実マシン 1 台に対して HDD を2 台無いし3 台とし HDD のクローン化を行った これによりシステムがクラッシュした場合も直ぐに復旧でき ダウンタイムによる影響を最小限した

6 2 オーバーヘッドへの対策サーバの仮想化を jail( パーティショニング ) で行うことで オーバーヘッドは最小限に抑えているが 加えて各サーバで不要なプロセスが稼働しないように 出来る限りシンプルな設定 構成にした 3 OS のアップデートへの対策 システムクラッシュへの対策として HDD をクローン化したことにより OS のアップデートに失敗しても元の状態に戻すことができる 5 今後の課題システムクラッシュ時の復旧には HDD をクローン化することで対応できているが HDD 以外のがクラッシュした場合には対応できない これに関しては 今後セカンダリサーバを構築することで対応したいと思う またセキュリティインシデントへの対応として OS をアップデートする場合に 作業を問題なくかつ円滑に行える 最良の手順を模索したいと思う 更に今回は既存のを利用した仮想サーバの構築だったため仮想化には オーバーヘッドの少ない jail を選択したが CPU 等にパワーがあるを使って ハイパーバイザ型 など 別の仮想化で構築するなどを行ってみたいと思う 6 参考文献 [1] [2] [3] [4]