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目次 < 共通情報 > 1. 加盟している産業財産権関連の条約 2. 現地代理人の必要性有無 3. 現地の代理人団体の有無 4. 出願言語 5. その他関係団体 6. 特許情報へのアクセス方法 < 特許制度 > 1. 現行法令について 2. 特許出願時の必要書類 3. 料金表 4. 料金減免制度につ

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

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インド特許法の基礎 ( 第 22 回 ) ~ 特許要件 (3)~ 河野特許事務所 弁理士安田恵 1. はじめにインドにおいて特許を受けることができる発明は, 進歩性を含み, かつ, 産業上利用可能な新規の製品又は方法であり ( 第 2 条 (1)(j)), コンピュータ関連発明も発明に含まれる しかし, 数学的方法, ビジネス方法, コンピュータプログラムそれ自体, アルゴリズムは, 法上の発明に該当しないとされ ( 第 3 条 (k)), 特許を受けることができない 発明の保護対象は日本と異なる コンピュータ関連発明に係る特許性のハードルはインドの方が日本より高い また, インドにおけるコンピュータ関連発明の審査手法は, 類似の条文を有する欧州等とも異なる 2. インド特許法第 3 条 (k) (1) 関連条文コンピュータ関連発明の特許性に関連する条文を表 1に示す また, 参考までにインド特許法第 2 条 (1)(j) 及び第 3 条 (k) に対応する欧州特許条約及び英国特許法の関連条文を表 1に示す 日本特許法においては 自然法則を利用した技術的思想の創作 の要件を満たせば, コンピュータプログラムも物の発明として保護される ( 日本特許法第 2 条 1 項,3 項 ) これに対して, インド特許法においては, 発明の主題が数学的方法, ビジネス方法, コンピュータプログラムそれ自体及びアルゴリズムに該当する場合, その発明は保護されない ( 第 3 条 (k)) 細部が異なるものの, 英国特許法はインド特許法と類似の条項を有しており, インドの特許実務は少なからず英国の実務及び判例の影響を受けていると思われる 1 欧州特許条約もインド特許法と類似の条項を有しているが, その細部は異なり, 特許性の審査方法も異なる 表 1 コンピュータ関連発明の特許性に関連する条文 1 Order No.222 of 2011 において英国の Symbian 判決を参照している 1

インド特許法欧州特許条約英国特許法 第 2 条定義及び解釈 (1) 本法においては, 文脈上他の意味を有する場合を除き, (j) 発明 とは, 進歩性を含み, かつ, 産業上利用可能な新規の製品又は方法をいう 第 3 条発明でないもの次に掲げるものは, 本法の趣旨に該当する発明とはしない (k) 数学的若しくはビジネス方法, 又はコンピュータプログラムそれ自体若しくはアルゴリズム第 52 条 (1) 欧州特許は, 産業上利用することができ, 新規であり, かつ, 進歩性を有するすべての技術分野におけるあらゆる発明に対して付与される (2) 次のものは, 特に,(1) にいう発明とはみなされない (a) 発見, 科学の理論及び数学的方法 (b) 美的創造物 (c) 精神的な行為, 遊戯又は事業活動の遂行に関する計画, 法則又は方法, 並びにコンピューター プログラム (d) 情報の提示 (3)(2) は, 欧州特許出願又は欧州特許が同項に規定する対象又は行為それ自体に関係している範囲内においてのみ, 当該対象又は行為の特許性を排除する 第 1 条 (2) 特に, 本法の適用上, 次のものは発明とは認めない (a) 発見, 科学理論又は数学的方法, (b) 文学的戯曲的音楽的又は美術的著作物その他審美的創作物, (c) 精神的行動, 遊戯若しくは業務執行の計画, 規則若しくは方法又はコンピュータ プログラム, (d) 情報の提供, から構成される何らかの事柄ただし, 前記の規定は, 特許又は特許出願が当該何らかの事柄に係わる限度においてのみ, 当該何らかの事柄を本法の適用上発明として取り扱うことを禁じるものと解さなければならない (2) 第 3 条 (k) の構造インド特許法第 3 条 (k) に挙げられている発明除外対象は以下の4つであり, それ自体 (per se) の文言はコンピュータプログラムのみに係っている 数学的方法 ビジネス方法 コンピュータプログラムそれ自体(per se) 2

アルゴリズム 欧州特許法及び英国特許法においては, それ自体(as such) の文言は数学的方法, ビジネス方法等, 全ての発明除外項目に係っているが, インド特許法においては, それ自体 (per se) の文言は, コンピュータプログラムにのみ係っている 従って, 文言上, インドにおける数学的方法, ビジネス方法及びアルゴリズムに係る発明の特許性は, 欧州及び英国に比べて厳しく判断される可能性がある (3) 立法過程インド特許法第 3 条 (k) は,Trips 協定を遵守すべく,2002 年改正で導入されたものである 立法過程 2 で提示された合同委員会のレポートによれば, それ自体(per se) の文言は, 何らかの他のもの,1コンピュータプログラムに付随するもの, または2コンピュータプログラム上で開発されたものを含むコンピュータプログラムを拒絶する趣旨では無い点を明確化するために付加された 3 ものであると説明されている (4) 2004 年特許 ( 改正 ) 法令現行法の第 3 条 (k) は2002 年改正で導入された条項と同じであるが, 過去に施行された 2004 年特許法令により, 第 3 条 (k) の内容に変更が加えられたことがある 2004 年特許法令は,Trips 協定の適用期限である 2005 年 1 月 1 日に施行され, 条文上, コンピュータ関連発明の除外対象が狭められた 言い換えると, 発明の保護対象が拡大された 具体的には, 次のように修正された 第 3 条 (k) 産業への技術的応用のない, あるいはハードウェアとの組合せのないコンピュータプログラムそれ自体 4 ; (ka) 数学的方法あるいはビジネスの方法あるいはアルゴリズム しかしながら,2005 年 4 月 1 日に施行され,2005 年 1 月 1 日から遡及効を有する2005 年改正法によって, 再び現行の第 3 条 (k) に戻された 2004 年特許法令及び 2005 年改 2 PARLIAMENT OF INDIA RAJYA SABHA, THE PATENTS (SECOND AMENDMENT) BILL, 1999, REPORT OF THE JOINT COMMITTEE, (PRESENTED TO THE RAJYA SABHA ON THE 19TH DECEMBER, 2001), (LAID ON THE TABLE OF THE LOK SABHA ON THE 19 TH DECEMBER, 2001) 3 In the new proposed clause (k) the words ''per se" have been inserted. This change has been proposed because sometimes the computer programme may include certain other things, ancillary thereto or developed thereon. The intention here is not to reject them for grant of patent if they are inventions. However, the computer programmes as such are not intended to be granted patent. This amendment has been proposed to clarify the purpose., Clause 3 4 a computer programme per se other than its technical application to industry or a combination with hardware 3

正が第 3 条 (k) の法解釈に与える影響は必ずしも明らかでは無いが, 単に産業上の技術 的応用があるに過ぎないコンピュータプログラム, ハードウェアとの組合せがあるに過 ぎないコンピュータプログラムは, 法上の発明に該当しないと解釈される可能性がある 3. 審査基準についてインド特許庁は, 特許庁の特許実務及び手続の手引 5 ( 以下, 手続の手引 ) 及び コンピュータ関連の発明(CRIs) に対する審査ガイドライン 6 ( 以下, CRIs ガイドライン ) を公表している 手続の手引 及び CRIs ガイドライン の内容は, 断片的であり, 十分なものとは言えない また, これらの審査基準は法令では無く, 強制力も無いが, インドにおける審査の指針を伺い知ることはできる (1) 第 3 条 (k) の審査手順図 1に示す通り, 第 3 条 (k) の審査は2ステップで行われる 7 まず, 審査官は, 審査対象の発明が, 数学的方法, ビジネス方法及びアルゴリズムに該当するか否かを審査する つまり, それ自体 の文言が付されていない除外項目について審査が行われる 次に, 発明がこれらに該当しないと判断された場合, 審査官はその発明がコンピュータプログラムそれ自体に該当するか否かを審査する これらのいずれにも該当しないと判断された発明は, 進歩性等の他の特許要件を満たせば, 特許が認められる 図 1 第 3 条 (k) の審査手順 5 http://ipindia.gov.in/ipr/patent/manual/main%20link.htm 6 http://ipindia.nic.in/iponew/draft_guidelines_cris_28june2013.pdf 7 手続の手引 08.03.05.10, 項目 e 4

(2) 発明のカテゴリーと特許性についてコンピュータ関連発明のカテゴリーとしては, 装置, 方法, コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した記録媒体の発明等がある 装置クレーム及び方法クレームは, 第 3 条 (k) に該当しないことを条件に特許される しかし, 媒体クレームは, コンピュータプログラムそのものに過ぎないとして, 特許は認められない 8 (3) 発明除外項目 9 (a) 数学的方法 数学的方法 は, 精神的機能を使った行為と考えられ, 計算方法, 方程式の公式化, 平方根や立方根を見つける方法, 及び, 数学的方法を直接的あるいは間接的に含むその 他すべての方法は, 特許性を有しない 特許出願に係る発明の中には, 数学的方法そのものではなく, 技術的発展に関係した 発明に見せかけたものがしばしば見受けられるが, これらの方法は, どんな形態でクレ ームされようとも, クレームが実質的に数学的方法に関係している限り, 特許性がある とはみなされない 10 (b) ビジネス方法 ビジネスの方法 という用語には, 商業あるいは工業の企業体が品物やサービスの 取引に関係して行うすべての活動範囲が含まれる 直接ビジネスの方法は書かれていな いが, インターネットやネットワーク, サテライト, 遠距離通信など, これまで利用可 能な技術特徴を備えているように見えるクレームがしばしば見受けられるが, すべての ビジネスの方法が発明除外事項に当てはまるため, たとえ技術の助けを借りてはいても, クレームが実質的にビジネスの方法に関係している限り, 特許性があるとはみなされな い (c) アルゴリズム 11 アルゴリズムは 計算やその他の問題において, 特にコンピュータを使って演算を解く上で従うべきプロセスあるいは規則のセット と定義され, あらゆる形態のアルゴリズムも特許されない 12 (d) コンピュータプログラムそれ自体 8 手続の手引 08.03.05.10, 項目 f, 及び CRIs ガイドライン 4.3 9 CRIs ガイドライン 3.17, 及び 手続の手引 08.03.05.10, 項目 b 10 CRIs ガイドライン 3.18, 及び 手続の手引 08.03.05.10, 項目 c 11 CRIs ガイドライン 3.7, 及び 手続の手引 08.03.05.10, 項目 d 12 手続の手引 08.03.05.10, 項目 f 5

著作権法によれば コンピュータプログラムは, 語, コード, スキームあるいは, 機械で読み込み可能な媒体を含めたあらゆる形態で表された命令のセットで, コンピュータに, 特定のタスクを実行させ, あるいは特定の結果を達成させることができるものを意味する と定義される 13 ハードウェアと組み合わされたコンピュータプログラムの特許性について, 審査基準は, 周知の汎用コンピュータで作動するコンピュータプログラムは, 特許法の要件を満たさない ハードウェアの特徴と組み合わされたコンピュータプログラムの特許性を考慮する際には, ハードウェア部分は, 汎用の機械とは何らかの点で異なっていなければならない 装置, 機械, あるいは器具に新規性がある場合, また, その装置のクレームに, 新規あるいは周知のコンピュータプログラムとの組み合わせが, その装置の機能性を決定づけると記載されている場合, 特許性があるとみなされることがある と説明している 14 また, 審査官は, クレームされた発明の形式ではなく, 当該発明の実体に着目すべきであり, ただ単に表現によって, あるいは様々なサブルーチンが物理的に様々に異なる箇所 ( 例えばプロセッサなど ) で実行されていると述べただけでは, 特許性があるとはみなされない 15 更に, ミーンズプラスファンクション形式のクレームは, 当該手段の構造的特徴が明細書に開示されていない限り, 認められない 明細書がコンピュータプログラムのみを当該発明実現の裏付けとしている場合には, 当該手段はコンピュータプログラムそれ自体にすぎないため, ミーンズプラスファンクションは拒絶されるものとする 16 4. 補足 (1) 第 3 条 (k) の適用手法について 手続の手引 及び CRIsガイドライン には, 具体的事案への第 3 条 (k) の適用方法を説明していないが,IPAB(Intellectual Property Appellate Board) は英国の Aerotel テストに類似の考え方を採用していると推察される 17 Order No.222 of 2011 の事件において,IPABはAerotel テストを承認したSymbian 判決 18 に言及しており, 電子的公告ビジネスの方法に係る発明について, 先行技術を超える技術的前進でさえもビ 13 CRIs ガイドライン 3.10 14 CRIs ガイドライン 5.4.6 15 CRIs ガイドライン 6.2 16 CRIs ガイドライン 7 17 例えば,Order No.222 of 2011,Order No.145 of 2013 等 18 [2008] EWCA Civ 1066 6

ジネス方法の改善に過ぎないとして, その発明性を否定している つまり,IPAB は, 先行技術に対する発明の貢献を特定し, その貢献が 3 条 (k) の除外項目 ( ビジネス方法 ) に該当するかどうかを審理している たとえ発明が技術的前進を有していても, その前進が発明除外項目に該当する場合, 特許は認められないとしている Aerotel テストは,1 請求項を適切に解釈し,2 実際の貢献を特定し,3 実際の貢献が, 除外される主題の範囲内だけに該当するものかどうか,4 実際の又は主張された貢献が, 実際に技術的な性質のものかどうかを確認するという4ステップの手順からなる 要するに,Aerotelテストは, 先行技術に対する発明の貢献を特定し, その貢献が発明除外項目の範囲内だけに該当するかどうかを判断するものである (2) 新規ハードウェアの必要性について CRIs ガイドライン は, 汎用コンピュータ上で動作するコンピュータプログラム発明の特許性を否定しており, 新規ハードウェアを要求している しかしながら, 汎用のハードウェアを用いたシステムであって, ソフトウェアに新規な特徴がある発明の特許性を否定した特許庁の判断を覆した審決 19 がある IPAB は, 特許庁の判断は根拠薄弱な前提に基づくものであり, 論理性及び妥当性からかけ離れたものであるとした 当該審決は CRIsガイドライン 策定前の審決ではあるが, CRIs ガイドライン に示された指針は根拠薄弱なものであることには変わりが無く, 現在においても IPAB は上記審決と同様の判断を示すものと思われる 5. まとめ (1) 数学的方法, ビジネス方法及びアルゴリズムは, それ自体(per se) の文言が係っていない絶対的な除外項目であるため, 発明の主題をこれらの除外項目に向けるべきでは無いと考えられる 技術的な課題を設定し, 除外項目に該当しないような技術的特徴 ( 技術的貢献 ) をクレームすべきである (2) 汎用コンピュータ上で動作するコンピュータプログラムに特徴を有する発明の特許性がどのように審査されるのかについては, 不透明ではあるが, 英国の特許実務が参考になると思われる 例えば, コンピュータに内在又は外在する技術的課題, プログラミングに起因する技術的課題等を設定し, 処理速度, 信頼性等の技術的観点から汎用装置を超える装置をもたらすような技術的特徴をクレームすることが望ましいと考えられる 以上 19 Order No.283 of 2012 7