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とはありません 5. 個人情報の利用目的 (1) 当社は お客様よりご提供いただいた個人情報を次の目的のために利用いたします 第二種金融商品取引業および当該業務に関連 付随する業務を行うため 金融商品 ( ファンド ) 第二種金融商品取引業に関する情報を提供するため 取引時確認を行うため お客様との

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5 その他一般に公開されている情報等から取得しています (2) 個人情報等の利用目的 当金庫は 次の利用目的のために個人情報等を利用し それ以外の目的には利用しません 個人番号については 法令等で定められた範囲内でのみ利用します また お客さまにとって利用目的が明確になるよう具体的に定めるとともに

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個人データの安全管理に係る基本方針

2-3. 上記 2-2 以外の利用目的は以下の通りです 利用目的対応する利用者情報の項目 (1) 当社のサービスに関連して 個人を識別できない 端末情報形式に加工した統計データを作成するため ログ情報 Cookie 及び匿名 ID 位置情報 (2) 当社又は第三者の広告の配信又は表示のため 端末情報

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本サイトにおける個人情報の利用目的は以下のとおりです 当社は 本人の同意なく目的の範囲を超えて利用しません (1) 本サイト会員登録者の個人認証及び会員向け各種サービスの提供 (2) インターネットまたは電話を通じて提供する 宿予約サービス 及びそれに付帯関連する業務の遂行 (3) 上記 (2) に

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目 次 第 1 はじめに 2 1 ガイドライン策定の目的 2 2 ガイドラインの対象となる防犯カメラ 2 3 防犯カメラで撮影された個人の画像の性格 2 第 2 防犯カメラの設置及び運用に当たって配慮すべき事項 3 1 設置目的の設定と目的外利用の禁止 3 2 設置場所 撮影範囲 照明設備 3 3

1 策定の目的 この手引書は 茅ヶ崎市地域防犯カメラ ( 以下 地域防犯カメラ という ) の設置及び運用について配慮すべき事項を定めることにより 地域防犯カメラの有用性とプライバシー保護等との調和を図り 地域防犯カメラを適切かつ効果的に活用し 茅ヶ崎市の安心して安全に暮らせるまちづくりを推進するこ

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「個人情報の保護に関する法律」に基づく公表事項


Transcription:

平成 28 年 6 月 12 日 ( 日 ) 情報法制研究会第 4 回シンポジウム 名簿販売事業者における 個人情報の提供等に関する 実態調査報告 消費者庁表示対策課課徴金審査官 前 消費者制度課企画官 笠原慎吾

調査の目的 パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱 ( 平成 26 年 6 月 24 日 ) 名簿販売事業者が販売した個人情報に起因する問題が継続して検討すべき課題とされる ベネッセ事案において漏えいした個人情報が名簿販売事業者を通じて転売され 他の事業者の事業活動に利用されていたことが問題視 2

調査の目的 このように消費者被害 プライバシーに係る問題が指摘される一方 名簿販売事業者による個人情報の流通 利用実態は不明 名簿販売ビジネスの概要を把握するために 名簿販売事業者等からのヒアリング調査を実施 本年 3 月 25 日に報告書を公表 公的機関が行った名簿販売ビジネスの実態に関する ( おそらく ) 初めての包括的調査 3

調査方法 <ヒアリング対象 > 名簿販売事業者 8 社 一般事業者 11 社 ( 名簿等の販促活動利用が想定される業種 * ) * 総合警備業 金融業 貴金属 衣料品販売業 結婚相談業 不動産業等 < ヒアリング実施時期 > 名簿販売事業者昨年 8~9 月 一般事業者昨年 9~10 月 4

調査結果 - 名簿販売事業者 - 個人情報の種類入手経路提供形態データ提供先等 冊子 同窓会名簿各種会員名簿等 電子データ 1 通販利用者リスト各種購買者リスト等 電子データ 2 イベント参加者名簿 アンケート回答者等 電子データ 3 インターネット掲載データ等 住民基本台帳データ ( 平成 18 年以前 ) コンパイルデータ ( 注 ) 上記をデータベース化し 特定の属性により抽出 リスト化したもの 古書店 廃棄物回収 事業者等 個人からの 持込み ( 各種名簿類 廃業に伴う データ処分等 ) 同業者 ( コンパイル データ 名 簿類の入手 ) 協力会社 ( インターネットデータの抽出等 ) 名簿販売事業者 冊子 名簿コピー等 コンパイルデータ等 ( 電子データ ) 名簿の閲覧 コピーサービス データベース化 データベースによる検索 コンパイルデータの販売 属性別ファイルの作成 データの加工 編集 住所の正規化 不着デー タの削除 統合 ( 名寄せ ) 電話番号のチェック等 データの転売 ( 仕入れ 小売 ) 関連 付加サービス DM 発送代行 テレアポ代行等 事業者 ( 個人事業者を含む ) * 販促目的に使用 ( 富裕層 ) 投資 呉服 宝飾 不動産 ( マンション等 ) 等 ( シニア層 女性向け ) 健康食品等 ( 新成人向け ) 晴れ着 自動車教習所 ( 教育産業 ) 学習塾 学習教材 ( 通販事業者 ) ( 例外的に ) 個人 ( 同窓生の消息探し等 ) 同業者 ( 注 ) 個人情報データベースから特定の属性 ( 例 : 年代 居住地域 職業 購入履歴等 ) により個人情報を抽出 リスト化したデータ 5

調査結果 名簿販売事業者 - < 取り扱う名簿等 > 取扱名簿冊子数は最多の事業者で 15,000~18,000 冊程度 データベース化した個人情報数は延べ 6000 万 ~1 億件強が多く 最多の事業者で 3 億件程度 年々 新たな名簿 データが出回らなくなり 既存リストも経年により鮮度が低下している < 買取価格 > 買取単価は 冊子形式が1 冊 7 千 ~3 万円程度 データ形式が1 件当たり0.1~10 円程度 概ね販売価格の半値 6

調査結果 名簿販売事業者 - < 取得時の手続 > 事業者 ( 同業者含む ) から取得する場合 従来から取引があれば特段入手経路等の確認はしない 新規であればインターネットで事業内容等を確認したり 契約書を締結するところもある 取引書類の保管や取引記録の管理は多くで行われている 個人から取得する場合 免許証等により身元確認するところもあるが 多くでは入手経 路等の確認や取引記録の管理はされていない 7

調査結果 名簿販売事業者 - < 提供先 > 販促活動に利用する事業者 原則個人には販売しない 提供するデータ規模は数千 ~ 数万件程度が多い 以前に比べ顧客数は減少傾向にある < 提供価格 > 提供単価は 10~15 円 / 件程度が相場 8

調査結果 名簿販売事業者 - < 提供時の手続 > 固定顧客を含めて多くの場合特段の手続はない 新規顧客の場合に 目的外利用や転売を禁止する契約書を締結するところもある 取引記録は管理されている 9

調査結果 名簿販売事業者 - 消費者等からの苦情等は 直接又は販売先事業者を経由 年間数十件程度が多い 本人から第三者提供 利用停止等の求めがあった場合は 第三者提供を停止するだけでなく データベースからの削除や販売先への削除要請を行っている 8 社はプライバシーマーク等を取得していない ベネッセから漏えいしたリストは 数社が購入したほか 売込みを受けたが購入しなかったとするところも 10

調査結果 一般事業者 - 入手経路 取得方法取得情報 付加情報等利用形態 自社ウェブサイト 資料請求用データ 自社等の商品 サービス の紹介 ( 販促 ) 広告 宣伝 (TV 新聞 雑誌 折込広告等 ) インターネット広告 ( 検索連動型広告 アフィリエイト広告 比較サイト等 ) DM ポスティング 訪問営業のフィードバック 電 窓話口 メでーの相ル等談で 契の約問手い続合等わせ 契約者情報 その他の関連 情報 ( 家族 趣味 嗜好等 ) 付加情報等 自社の商品 サービスの提供 ( 契約管理 保守や問い合わせ対応等 ) グループ会社等との共同利用 本人同意を得た提供 ( 関連商品 サービスの案内 保守 点検 付加サービスの提供等 ) グループ会社等からの提供 共同利用 商品 サービスの その他 既存顧客からの紹介 名簿販売事業者からの名簿等の入手 利用履歴データ等 自社 グループ会社等での商品 サービス向上のための調査 分析等 11

調査結果 一般事業者 - 個人情報は 消費者からの相談 問い合わせの受付時や契約時に本人から直接取得する場合がほとんど インターネット広告の場合も 消費者を自社ウェブサイト等に誘導した上で取得するもの 間接的な取得として グループ会社等からの提供 ( 本人同意取得済 ) やグループ会社等での共同利用 既存顧客からの紹介による取得も 一部ある 名簿販売事業者からの入手もこのタイプ 11 社中 1 社が 名簿販売事業者から名簿 ( 住民基本台帳データ ) を購 入していると回答 ( そのほか 過去に購入していたとの回答が 1 社 ) 不特定多数への DM 送付等の販促活動を行っていないため 名簿を入手する必要がないとするところが多い 12

分析 考察 < 名簿販売事業者の個人情報取扱いに係る法令遵守状況 > 個情法の遵守を心掛けているとするが 実際の対応には不十分な面も プライバシーポリシー等のウェブサイト上での記載について 1 利用目的に第三者提供を挙げていないところや 2オプトアウトによる第三者提供に必要な法定記載事項がないところがある 本人からの苦情等や第三者提供 利用停止等の求めの受付は 直接自社に来たものを除き 原則販売先で対応させているところが多い 古本屋等や廃業事業者による名簿 顧客リストの持込みは 第三者提供に当たり得る ( 後者は廃業事業者から持込者への第三者提供 ) 名簿販売事業者が 提供元が個情法ルールに則していないと知った上で買い取ることは 適正取得義務 (17 条 ) に違反するおそれ 改正個情法で導入されるトレーサビリティ確保に関して 取得時 提供時ともに 特に従来から取引のある事業者 ( 同業者含む ) については入手 経路等の確認が行われていない 13

新たな名簿等の入手や情報鮮度の維持が困難になり 需要も減少 14 分析 考察 < 名簿販売事業を取り巻く市場環境の変化と事業への影響 > 主に以下の 2 つの要因により 名簿販売事業者の売上や顧客数は年々 減少している 1. 法規制及びプライバシー意識の変化 個人情報保護法全面施行 ( 平成 17 年 4 月 ) と住民基本台帳法改正法施行 ( 平成 18 年 11 月 ; 住民基本台帳が原則非公開化 ) により個人情報の取得 提供に一定の規制 プライバシー意識の高まりや相次ぐ個人情報漏えい事案により 消費者 事業者ともに個人情報の提供 取得 利用がより慎重に

個人情報の流通形態が構造的に変化し 従来型の名簿販売事業の市場が縮小しているといえる 15 分析 考察 2. インターネット ICTの普及 進展に伴う市場環境の変容 インターネット等の普及が 自社ウェブサイト等による効率的な情報提供 主体的に情報にアプローチする消費者行動 プル型広告ツールの定着を促進 企業のマーケティング戦略における個人情報の取得 利用形態が変容 企業において 顧客情報等を重要な経営資源と位置付け 独自に入手し囲い込む傾向なども強まる DM や訪問営業のために名簿販売事業者から個人情報を入手する ニーズが減少

今後の課題 関係各機関において 一般事業者における名簿の購入実態のより精緻な把握 アンダーグラウンドで行われている個人情報売買の正確な実態把握 データブローカーと呼ばれる新たなタイプの個人情報提供ビジネスの動向の注視 ( 個情法は移管されたが ) 消費者庁としても 個人情報にまつわる消費者被害の防止は消費者の権利利益の増進 確保の観点から重要 引き続き 個人情報保護委員会等の関係機関と協力 連携 ( 情報共有 ) しつつ 必要な政策的対応を図っていく 16

- ご清聴ありがとうございました < 報告書本体 > 消費者庁ウェブサイト http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/other/pdf/160 325_consumer_system_other.pdf 17