ヒア ル ロ ン 酸-そ の生産 と応 用 ニ ュー バ イ オ テ ク ノ ロジ ー の 花 が 開 か れ よ うと い う とき に,30年 入 る ヒ ア ル ロ ン酸 発酵 が に わ か に脚 光 を 浴 び て き た.ヒ 高山健一郎 前 の 産 物 で あ り,伝 統 的 な 微 生 物 工 業 の 範 疇 に ア ル ロ ン酸 は 微 生 物 が つ く り うる唯 一 の 動 物 生 体 内 多糖 類 で あ り,今 後 の 応 用 へ の 進 展 が 期 待 さ れ て い る. 生 体 内 に は グ リ コ サ ミ ノ グ リカ ン(ム コ多 糖 類) と し て,ヒ ア ル ロ ン酸,コ ル マ タ ン硫 酸,ヘ ぞ れ 特 有 の 働 き を 演 じ て い る.ヒ た,こ れ ア ル ロ ン酸 は 他 の も の と 異 な り硫 酸 基 を も た ず,分 て 大 き い.ま ムは 石 油 採 掘,食 品,一 般 工 業 な ど の分 野 で,ま ン ド ロ イ チ ン硫 酸,デ パ ラ ン硫 酸 な ど が 存 在 し,そ 子量 も きわ め れ らの 中 で微 生 物 が生 産 す る こ とが で き る の は ヒ ア ル ロ ン酸 の み で あ る. 一方 中 の 主 な も の を 表1に thomonasの 示 し た.植 conostocの 表1 F:フ Zoogleaに 水 や 土 壌 中 で 生 育す る 細 菌 よっ て つ く られ る多 糖 類 は,排 水 中 の 有機 物 や 無機 物 を 吸着 す る 自浄 作 用 と土 壌 の 安 定 つ くる キ サ ンタ ンガ ム は宿 主 動 物 の 酸 菌Leu- つ くる デ キ ス トラ ンは精 糖 工 場 に とっ うに,微 生物 由 来 の 多 糖 類 は合 成 高 分 子 に 見 られ な い 特殊 な物 性 や 生 理 活 性 を も って お り,ま た 生 分 解 を 受 け 易 い とい う特 徴 もあ って,食 品,一 般 工 業 製 品,医 薬 品 な どの新 しい 素 材 と して 注 目さ れ て きて い る. ヒ アル ロン酸 は,従 来,動 物 組 織 か ら分 離 精 微 生 物 の 生 産 す る 主 な 多 糖 類 ラ ク トー ス,G:グ ビ ン 酸,R:ラ Hyaluronic *Kenichiro 308 の 物 病 原 菌Xan- 導 管 を ふ さ い で 植 物 を 枯 死 さ せ る.乳 た デ キ ス トラ ンは 代 用 血 漿 な ど 医 薬 品 の 分 野 で 利 用 され て きた.下 性 や保 水 性 に 関与 して い る と考 え られ る.こ の よ,微 生 物 は 多 く の 種 類 の 細 胞 外 多 糖 類 を, あ る 場 合 に は 著 量 に 生 産 す る こ とが で き る.そ て は 有 害 で あ る.し か し一 方 で は,キ サ ン タ ン ガ ル コ ー ス,GA:グ ム ノ ー ス,SA:コ Acid-Its Takayama ル ク ロ ン 酸,GAL:ガ ラ ク ト ー ス,M:マ ン ノ ー ス,MA:マ ハ ク酸 Production and Application, 協和 発酵工業(株)東京研究所 化 学 と生 物 Vol.26, No.5 ン ヌ ロン酸,PA:ピ ル
らに そ れ らに す る 培 養 法(23),炭 酸 ガ ス や 窒 素 ガ ス を 吹 き込 む 培 紫 外 線 や ニ トロ ソグ ア ニ ジ ンで 変 異 させ た 高 生 産 養 法(24),酸 化 還 元 電 位 を あ る範 囲 に 維 持 す る 培 養 性 株(11),ヒ 法(18)も報 告 さ れ て い る. 研 究 機 関 か ら 分 譲 を 受 け た 菌 株,さ ア ル ロ ニ ダ ー ゼ 欠 損 株(12 14),非 溶 血 性 株(12,13,15,16)な ど が 使 用 さ れ て い る.高 生産性の S. zooepidemicus NCTC 7023を 使 用 した5l- ム コ イ ド型 の 菌 か らは 生 産 性 の 劣 る 非 ム コ イ ド型 ジ ャー フ ァー メ ンタ ー に よる培 養結 果 の一 例 を図 の 変 異 体 が し ば し ば 出 現 す る が,酸 2に 素 存 在 下 では ム コ イ ド型 菌 の ほ うが 生 育 が よ い.筆 ル ロ ン 酸 生 産 菌 と し て 選 定 したS. NCTC 7023は,MacLennanに 者 らが ヒ ア zooepidemicus よ って報 告 され 示 し た.対 数増 殖 期 が 終 る 頃 か ら ヒア ル ロ ン酸 の 蓄 積 が 始 ま り,30 48時 す る.乳 間 で 培 養 は終 了 酸 も 同 時 に 蓄 積 す る.図3に 培 養初 期 (a)と ヒ ア ル ロ ン酸 が 生 産 さ れ て い る30時 間後 て い る よ うに ヒ ア ル ロ ニ ダ ー ゼ が 陰 性 で あ り,か (b)の 細 胞 の 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 豫 を 示 し た.b つ ヒ ア ル ロ ン酸 の 生 産 性 が き わ め て す ぐれ た 菌 株 で は ヒア ル ロン酸 が 付 着 して い る と見 な され る細 で あ っ た. 4. 培 養 ヒ ア ル ロ ン酸 の 発 酵 生 産 に 用 い る 炭 素 源 と し て は,グ ル コー ス が 一 般 的 に 最 良 で あ る.グ コ ー ス5 8%と ル ペ プ ト ン,酵 母 エ キ ス,リ ン酸,マ グネ シ ウ ム な どが 適 当 に 含 まれ る 培 地 が 用 い られ る.種 %あ 培 養 液 を5 10 て 生 産 用 培 地 に 接 種 し, 水 酸 化 ナ ト リウムで 培 養 中 の phを ほ ぼ7に 37 調 節 し な が ら34 の温 度 で 通 気 攪 伴培 養 (一 般 の 好 気 性 菌 の 場 合 よ り 低 通 気,低 攪 伴)を よ っ て,培 養30 48時 7mg/mlの 図2 ヒア ル ロ ン酸 発 酵 の培 養経 過 行 な うこ とに 間 で5 ヒア ル ロ ン 酸 を 蓄 積 さ せ る こ とが 可 能 で あ る. こ の と き,培 養 液 は 高 粘稠 とな り,攪 拌培 養 は ほ ぼ 限界 に達 す る.糖 濃 度 を 下 げ れ ば,粘 よ り低 く保 た れ,対 が る の で,回 度は 糖収率が上 分 培 養 法 の代 わ りに 連 続 培 養 法 や 半 連 続 培 養 法(17,19),あ る い は 培 養 菌 体 を 用 い る酵 素 的 方 法(20)も 報 告 さ れ て い る.さ 清(21),リ ら に,培 養 液 に血 ゾチ ー ム や 界 面 活 性 剤(22),あ る 種 の ア ミ ノ 酸 を 添 加 図3 ヒア ル ロ ン酸 生 産 菌 の 走 査 型 電子 顕 微鏡 像 a:培 養3時 間,b:培 養30時 間 311
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