図表 1 将来減算一時差異とは 課税所得の計算上 差異が生じたときに加算され 将来解消するときに減算されるものです 税効果会計の適用において最も取り扱う機会が多いのが将来減算一時差異です 貸倒引当金の損金算入限度超過額 賞与引当金及び退職給付引当金の額 減価償却費の損金算入限度超過額 棚卸資産等に係

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ことが見込まれる当期末に存在する将来加算 ( 減算 ) 一時差異の額 ( 及び該当する場合は 当該事業年度において控除することが見込まれる当期末に存在する税務上の繰越欠損金の額 ) を除いた額のことです ( 下記図表 1 参照 ) 例えば 図表 1 の X2 期の場合 将来の事業年度における課税所得

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第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

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営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

目次 1. 回収可能性適用指針の公表について (1) 公表の経緯 (2) 税効果会計プロジェクトの全体像 (3) 適用時期 2. 回収可能性適用指針の概要 (1) 繰延税金資産の回収可能性の基本的な考え方 (2) 課税所得と一時差異等加減算前課税所得 (3) 企業の分類に応じた取扱い総論 (4) 各

特集 : 税効果会計の見直しについて 企業会計基準適用指針第 26 号 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 の公表について PwCあらた監査法人第 3 製造 流通 サービス部パートナー加藤達也 はじめに 2015 年 12 月 28 日 企業会計基準委員会 ( 以下 ASBJ という ) より

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

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固定資産の減損損失に係る将来減算一時差異の取扱い 36 役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異の取扱い 37 その他有価証券の評価差額に係る一時差異の取扱い 38 退職給付に係る負債に関する一時差異の取扱い 43 繰延ヘッジ損益に係る一時差異の取扱い 46 繰越外国税額控除に係る繰延税金資産 47

連結会計入門 ( 第 6 版 ) 練習問題解答 解説 練習問題 1 解答 解説 (129 頁 ) ( 解説 ) S 社株式の取得に係るP 社の個別上の処理は次のとおりである 第 1 回取得 ( 平成 1 年 3 月 31 日 ) ( 借 )S 社株式 48,000 ( 貸 ) 現預金 48,000

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連結の補足 連結の 3 年目のタイムテーブル B/S 項目 5つ 68,000 20%=13,600 のれん 8,960 土地 10,000 繰延税金負債( 固定 ) 0 利益剰余金期首残高 1+2, ,120 P/L 項目 3 つ 少数株主損益 4 1,000 のれん償却額 5 1,1

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平成31年3月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)

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連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

税効果会計の対象となる税金及び適用する税率 積立金方式による諸準備金等の取扱い 繰延税金資産の回収可能性と控除額 繰越外国税額控除の税効果 表示方法 45 税務申告上の取扱い 46 Ⅲ 設例による解説設例 1 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算設例 2

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

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平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

計算書類等

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平成28年度 第144回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

具体的な組替調整額の内容は以下のとおりです その他の包括利益その他有価証券評価差額金繰延ヘッジ損益為替換算調整勘定 組替調整額 その他有価証券の売却及び減損に伴って当期に計上された売却損益及び評価損等 当期純利益に含められた金額 ヘッジ対象に係る損益が認識されたこと等に伴って当期純利益に含められた金

第4期 決算報告書

3. その他 (1) 期中における重要な子会社の異動 ( 連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動 ) 無 (2) 会計方針の変更 会計上の見積りの変更 修正再表示 1 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 無 2 1 以外の会計方針の変更 無 3 会計上の見積りの変更 無 4 修正再表示 無 (3)

平成26年度 第138回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

第101期(平成15年度)中間決算の概要

Transcription:

税効果会計 第 1 回 : 税効果会計の意義と計算構造 2010.08.06 (2012.04.23 更新 ) 新日本有限責任監査法人公認会計士友行貴久 1. はじめに平成 10 年 10 月に企業会計審議会より 税効果会計に係る会計基準が 同年に会計制度委員会報告として 個別財務諸表及び連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針が公表され 平成 11 年 4 月 1 日以後開始する事業年度から適用されています 本解説シリーズでは税効果会計の適用に当たっての留意事項を解説します なお 文中の意見に関する部分は私見であることをお断り申し上げます また 平成 23 年の税制改正では 法人税率変更 ( 引き下げ ) 復興特別法人税の創設 さらに欠損金の繰越控除制度の見直しが行われています これらの改正が税効果会計に与える影響は 第 5 回平成 23 年税制改正における税率変更等の影響 にて詳しく解説します 2. 税効果会計の意義 対象税効果会計とは 企業会計上の収益又は費用と 課税所得計算上の益金又は損金の認識時点が異なることから 会計上の資産 負債と課税所得計算上の資産 負債の額に相違がある場合に 法人税その他所得を課税標準とする税金を適切に期間配分することにより 法人税等 ( 法人税 住民税 所得を課税標準とする事業税及び地方法人特別税 ) を控除する前の税引前当期純利益と税金費用を合理的に対応させることを目的とする会計手法です 税効果会計の対象となる税金 ( 法定実効税率の算定に含められるもの ) は 利益に関連する金額を課税標準とする税金です 法人税 住民税 ( 市町村民税 道府県民税 ) 地方法人特別税や 事業税 ( 所得割 ) が対象となります したがって たとえば 収入金額その他利益以外のものを課税標準とする事業税 ( 外形標準課税 ) 等は含められません 3. 繰延税金の計算方法と会計処理 (1) 一時差異の把握会計上の収益及び費用と 税務上の益金及び損金の認識時点が相違することから両者の間に差が生じます この差のうち 将来解消されるものを一時差異と呼び 税効果会計の対象となります 一時差異には 将来減算一時差異と将来加算一時差異の 2 種類があります また将来の課税所得と相殺可能な繰越欠損金は 繰越外国税額控除も含めて 一時差異に準ずるものとして扱われます 永久差異は交際費の損金不算入額 受取配当金の益金不算入額などをいい 会計上は費用及び収益となりますが税務上は永久に損金及び益金とはなりませんから税効果会計の対象とはなりません ( 図表 1) 1

図表 1 将来減算一時差異とは 課税所得の計算上 差異が生じたときに加算され 将来解消するときに減算されるものです 税効果会計の適用において最も取り扱う機会が多いのが将来減算一時差異です 貸倒引当金の損金算入限度超過額 賞与引当金及び退職給付引当金の額 減価償却費の損金算入限度超過額 棚卸資産等に係る評価損などが該当し 回収が見込まれる期の実効税率を乗じて繰延税金資産を計上します 将来加算一時差異とは 課税所得の計算上 差異が生じたときに減算され 将来解消するときに加算されるものです 剰余金の処分によって積み立てられた租税特別措置法上の諸準備金等が該当し 支払いが見込まれる期の実効税率を乗じて繰延税金負債を計上します なお 実効税率は次のように算定します ( 注 1) ( 注 1) 平成 24 年 4 月 1 日以後開始する事業年度から 3 年間の実効税率は 平成 23 年税制改正で創設された 法人税額 の 10% を税額とする復興特別法人税が課されるため 以下の算式により算定します なお 税務上の繰越欠損金は一時差異ではありませんが 繰越欠損金のうち 将来の課税所得と相 殺可能な部分は 一時差異と同様な税効果が生じるため 一時差異と同様に取り扱います 一時差 異と税務上の繰越欠損金を総称して一時差異等といいます (2) 繰延税金資産 ( 負債 ) の算定別表 5 の利益積立金額で一時差異に該当する項目が計算対象です ただし未払事業税も一時差異に該当するため計算に含めます 一時差異の合計金額に法定実効税率を乗じたものが繰延税金資産 ( 負債 ) で 期首の繰延税金資産 ( 負債 ) と期末の繰延税金資産 ( 負債 ) との差額が損益計算書の法人税等調整額となります 2

図表 2 では 期首から期末までの一時差異及び繰延税金を一覧する表としたもので 一時差異に法定実効税率を乗じたものが繰延税金であり 期首の繰延税金資産 ( 負債 ) と期末の繰延税金資産 ( 負債 ) との差額が損益計算書の法人税等調整額となることが理解できると思われます 図表 2 (3) 表示方法の検討貸借対照表における繰延税金資産及び繰延税金負債は 流動資産と流動負債 固定資産と固定負債を相殺して表示します 流動と固定の分類は貸借対照表に計上した資産又は負債との関連に基づく分類のほかに 税効果の実現する時期が 1 年以内であるか否かによる分類 (1 年基準 ) があります つまり貸借対照表の資産 負債と関連性が認められる繰延税金資産 繰延税金負債は当該資産 負債の表示区分に従い 貸借対照表の資産 負債と関連性が認められない繰延税金資産 繰延税金負債は 1 年基準によって流動 固定の区分を行います 図表 3 では 図表 2 における繰延税金の期末残高につき 流動固定分類を行っています 図表 3 3

4

税効果会計 第 2 回 : 繰延税金資産の回収可能性 2010.08.06 1. 繰延税金資産の回収可能性判断繰延税金資産は 将来の課税所得を減少させることにより 将来の税負担を軽減することが認められることを条件に資産計上が認められる資産です よって将来の課税所得を減少させ 税負担を軽減すると認められる範囲での計上が要求されており 繰延税金資産の計上は 将来減算一時差異のスケジュ-リングなど 慎重かつ十分な検討を行い決定することが必要です 以下では その判断要件及び留意事項についてご説明いたします (1) 回収可能性の判断要件 1 収益力に基づく課税所得の十分性繰延税金資産の回収可能性の判断において まず収益力に基づく課税所得の十分性が問題とされます 収益力に基づく課税所得の十分性は 将来減算一時差異の解消年度ないし税務上の繰越欠損金の繰越期間において課税所得が発生する可能性が高いと見込まれるか否かにより判断されることとなります 課税所得が発生する可能性が高いかどうかを判断するためには 過年度の業績及び将来の業績予測等を総合的に勘案し 課税所得の額を合理的に見積る必要があります 実務においてこの将来の課税所得を合理的に見積ることが最も難しいと考えられます なお ここで言うところの 課税所得 とは 一時差異のうち解消が見込まれる各年度の解消額を加算ないしは減算する前及び税務上の繰越欠損金を控除する前の繰越期間の各年度の所得見積額であり 税法上の課税所得と異なる点に注意してください 2タックス プランニングの存在タックス プランニングとは 将来減算一時差異の解消年度や税務上の繰越欠損金の繰越期間において 具体的な課税所得を発生させることを計画することをいいます 含み益のある固定資産または有価証券を売却するなどタックス プランニングが存在することにより 将来減算一時差異等の減算が生じる年度における課税所得を確保することで繰延税金資産の回収可能性が確実なものとなります 3 将来加算一時差異の十分性 ( イ ) 将来減算一時差異に係る税効果の認識将来減算一時差異の解消年度に将来加算一時差異の解消が見込まれること ( ロ ) 税務上の繰越欠損金に係る税効果の認識繰越期間に税務上の繰越欠損金と相殺される将来加算一時差異の解消が見込まれること 2. 繰延税金資産の計上限度額と回収可能性の見直し 5

将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産は 回収可能性の判断要件を考慮した結果 当該将来減算一時差異 ( 複数の将来減算一時差異が存在する場合には それらの合計 ) 及び税務上の繰越欠損金が将来の課税所得を減少させ 税金負担額を軽減することができると認められる範囲を超える部分が生じることがあります 当該超過部分については 評価性引当額として繰延税金資産を計上しないことになります また 繰延税金資産の計上額は会社の決算日ごとに見直し 回収可能性の判断要件を満たさなくなった場合には 計上されていた繰延税金資産のうち過大となった金額を取り崩さなければなりません 3. 将来年度の課税所得による繰延税金資産の回収可能性に関する判断指針将来の課税所得の見積りの問題は 監査委員会報告第 66 号 繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い ( 以下 委員会報告 66 号 ) が公表されているためこれに従った対応が要求されます 委員会報告 66 号 では 繰延税金資産の回収可能性は 多くの場合 将来年度の会社の収益力に基づく課税所得に基づいて判断することになりますが 将来年度の会社の収益力を客観的に判断することは実務上困難であるとした上で 過去の業績等の状況を主たる判断基準として 会社の状況を代表的な五つの場合に分け 回収可能性を判断するに当たっての考え方を示しています 1 期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上している会社将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上している会社で その経営環境に著しい変化がない場合は 将来においても一定水準の課税所得を発生させることが可能であると考えられます 2 業績は安定しているが 期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社過去の業績が安定していて 当期及び過去 ( 概ね 3 年以上 ) 連続してある程度の経常的な利益を計上している会社は 将来においても同水準の課税所得の発生が見込めると判断します この2 分類に属する会社は 一時差異等のスケジューリング結果に基づいて それにかかる繰延税金資産につき 回収可能性があると判断します 3 業績が不安定であり 期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社過去の経常的な損益が大きく増減しているような会社の場合は 通常 長期にわたる安定的な課税所得を見積ることができないと考えられます よって合理的な見積可能期間 ( 概ね 5 年 ) 内の課税所得の見積額を限度として 当該期間内の一時差異等のスケジューリング結果に基づいて計上した繰延税金資産は回収可能と判断します 2 分類と3 分類との相違点は 3 分類においては スケジューリング期間を見積り可能な 5 年間と限定していますが 2 分類においては そのようなスケジューリング期間の限定はないということにあります 4 重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社税務上の繰越欠損金に重要性が存在する会社 過去 ( 概ね 3 年以内 ) に重要な税務上の欠損金が期限切れとなったような会社または当期末において重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる会社は 通常 将来の課税所得を合理的に見積ることは困難であると判断されます 従って そのような会社においては 翌期の課税所得の発生が 確実に見込まれる場合であって かつその範囲内に 6

おいて 翌期の一時差異のスケジューリング結果に基づき繰延税金資産を計上している場合には 当該繰延税金資産に回収可能性があるものと判断します しかし 税務上の繰越欠損金が リストラを実施したなどの特別な要因に基づいて発生したものであり それを除けば課税所得を毎期計上しているような場合は 将来の合理的な見積可能期間 ( 概ね 5 年 ) 内の課税所得を限度に繰延税金資産を計上することができると考えられます 4 分類と3 分類との相違点は 重要な税務上の繰越欠損金が存在する点であり 4 分類本則と4 分類ただし書きとの相違点は 税務上の繰越欠損金の発生原因です 3 分類と4 分類ただし書きは いずれも 5 年間の課税所得の見積りと一時差異等のスケジューリングによりますが 4 本則では 翌期の課税所得の確実な見積りと一時差異等のスケジューリングによるということになります 5 過去連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社過去連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社や 債務超過又は資本の欠損が長期間続いているような会社は 通常 将来の課税所得の発生を合理的に見積ることができないと考えられるため 繰延税金資産の回収可能性はないものと考えられます また 債務超過の状況にある会社や資本の欠損の状況が長期にわたっている会社で かつ 短期間に当該状況の解消が見込まれない場合には これと同様に取り扱うものとされます 4. 違法配当の危険性について繰延税金資産は その後の事業年度に回収不能が明らかになり 取り崩しがなされることがあります 繰延税金資産が計上されている事業年度に繰延税金資産に相当する金額が 配当の原資として使われている場合には 繰延税金資産計上時点にさかのぼって繰延税金資産計上の妥当性を問われることがあり 当時の配当決議が違法配当と判断される可能性があることに十分留意する必要があります 7

税効果会計 第 3 回 : 連結財務諸表と税効果会計 2010.08.06 連結財務諸表に税効果会計を適用するには 連結消去仕訳の段階で次のような連結固有の税効果 を認識します 1. 未実現損益の消去に関する事項連結会社間の物品販売取引等で 当該物品がグループ企業外に販売されず 連結会社内に在庫として残っている場合 当該在庫に対して販売元が計上した損益を未実現損益といいます 以下特に断りのない限り未実現利益を前提にします 税効果会計の考え方には財産的なアプローチによる資産負債法と損益的なアプローチによる繰延法の二つがあります 税効果会計の導入は 国際財務報告基準でも採用されている資産負債法を基本に制度化されたものですが 未実現利益の消去には繰延法の考え方が採用されています 資産負債法と具体的な相違として以下のようなものが挙げられます 上図のような場合において 親会社の個別財務諸表ですでに課税済みとして処理した 200 の利益 ( 売却価格 1,000- 製造原価 800) は連結上未実現として消去されます ここで個別財務諸表上の簿価と 連結財務諸表上の簿価に一時差異が生じるため税効果を認識するわけですが 税金を計上した親会社に税効果が生じるのか 一時差異を有する子会社に税効果が生じるのかが問題となります 資産負債法の考え方からは 将来の税金費用を軽減する効果を有している子会社の実効税率を使って繰延税金資産を計上するということになりますが 国際的にも未実現損益については例外的な方法で繰延 8

法を採用していることや実務動向に配慮して 販売元の実効税率を使って繰延税金資産を計上するという繰延法の考え方を採用することとしました 仕訳 ( 借方 ) 繰延税金資産 80 ( 貸方 ) 法人税等調整額 80 親会社の実効税率を 40% とすると 80= 未実現利益 200 40% 翌期の開始仕訳仕訳 ( 借方 ) 繰延税金資産 80 ( 貸方 ) 利益剰余金期首 80 この考え方は個別財務諸表で計上した税金費用 ( 販売元で納付済みであり確定している ) を連結上将来に繰り延べるものであるため 税率が変更になった場合でも繰延税金資産の見直しを行わないことに留意する必要があります また 個別財務諸表で計上し 納付した税金費用を繰り延べるため将来の回収可能性について検討する必要はありませんが 個別財務諸表で計上した税金費用以上に繰延税金資産を計上することはできません 100% グループ内の法人間の資産の譲渡損益の繰延べが適用される場合の税効果会計平成 22 年度の税法改正において 100% グループ内の内国法人間における一定の資産の譲渡損益については 100% グループ内の会社へ譲渡した段階では 譲渡損益を認識せず 再譲渡したときに その移転を行った法人において譲渡損益を計上するという いわゆる 100% グループ内の法人間の資産の譲渡損益の繰延べが導入されました ここに一定の資産とは 1,000 万円以上の固定資産 土地 有価証券 ( 売買目的有価証券を除く ) 金銭債権及び繰延資産であるとされます 100% グループ内の法人間の資産の譲渡損益の繰延べが適用される場合の税効果会計の適用は以下のとおりです 1 繰り延べられた譲渡損益に係る税効果 100% グループ内の法人間の資産の譲渡損益の繰延べが適用される場合 対象資産を譲渡した会社で譲渡益が計上される場合には 譲渡益に係る法人税等が繰り延べられることになるので 当該対象資産を譲渡した会社の個別財務諸表において繰延税金負債が計上されます 譲渡益を 200 法定実効税率を 40% とすると 仕訳は以下のとおりです 仕訳 ( 借方 ) 法人税等調整額 80 ( 貸方 ) 繰延税金負債 80 2 未実現利益の相殺消去と税効果の修正当該対象資産が 連結グル-プ内にとどまっている場合には 当該対象資産の譲渡益 200 は未実現利益として 連結手続において相殺消去されます 仕訳 ( 借方 ) 譲渡益 200 ( 貸方 ) 対象資産 200 9

一方で 対象資産を譲渡した会社において計上された繰延税金負債も 税効果がなかったものと考え 反対仕訳を行います 仕訳 ( 借方 ) 繰延税金負債 80 ( 貸方 ) 法人税等調整額 80 なお 企業集団内での投資 ( 子会社株式または関連会社株式 ) を売却した場合は 上記とは取扱いが異なる点に留意する必要があります ( 連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針 30-2) 2. 債権債務の消去に伴い減額修正される貸倒引当金に関する事項連結会社間の債権債務の消去に伴い減額修正された貸倒引当金は 個別財務諸表上では損金算入されますが 連結上 債権の消去に伴い貸倒引当金が減額修正されるので 個別財務諸表上の簿価と連結財務諸表上の簿価に一時差異が生じるためこれに対して税効果を認識します 例えば 連結会社が他の連結会社に対する債権 1,000 を有しており連結手続上 50 の貸倒引当金を計上 ( 損金算入 ) していたとすると 連結上以下の消去仕訳とともに 50 に対して税効果を認識します 連結消去仕訳 ( 借方 ) 買掛金 1,000 ( 貸方 ) 売掛金 1,000 ( 借方 ) 貸倒引当金 50 ( 貸方 ) 貸倒引当金繰入 50 税効果の仕訳 ( 借方 ) 法人税等調整額 20 ( 貸方 ) 繰延税金負債 20 20=50 実効税率 40% 翌期の開始仕訳 ( 借方 ) 利益剰余金期首 20 ( 貸方 ) 繰延税金負債 20 ( 借方 ) 貸倒引当金 50 ( 貸方 ) 利益剰余金期首 50 なお 上記のように無税で処理された貸倒引当金ではなく 有税で処理された貸倒引当金がある場合 は注意が必要です 無税で処理された貸倒引当金は 減額修正された段階で将来加算一時差異が 発生するため繰延税金負債を計上しますが 有税で処理された貸倒引当金は 減額修正された段階 で 個別財務諸表において認識した将来減算一時差異が消滅するため これに対して計上した繰延 税金資産を取り崩すことになります 次のように子会社に対する債権の回収可能性に懸念があり 税務上の損金算入限度額以上に貸倒 引当金を計上したような場合は無税で処理されている部分と有税で処理されている部分に分けて税効 果の仕訳を行います 10

親会社の損金算入限度額 800 無税 有税引当額 200 有税 個別財務諸表上の税効果認識額 80(=200 実効税率 40%) 親会社の個別財務諸表上の仕訳 ( 借方 ) 繰延税金資産 80 ( 貸方 ) 法人税等調整額 80 連結消去仕訳 ( 借方 ) 買掛金 1,600 ( 貸方 ) 売掛金 1,600 ( 借方 ) 貸倒引当金 ( 無税 ) 800 ( 貸方 ) 貸倒引当金繰入 800 ( 借方 ) 貸倒引当金 ( 有税 ) 200 ( 貸方 ) 貸倒引当金繰入 200 税効果に影響する仕訳 ( 借方 ) 法人税等調整額 320 ( 貸方 ) 繰延税金負債 320 ( 借方 ) 法人税等調整額 80 ( 貸方 ) 繰延税金資産 80 無税部分の税効果 : 320=800 実効税率 40% 有税部分の税効果 : 80=200 実効税率 40% 業績が悪化した連結子会社に対する貸倒引当金の減額修正連結会社相互間の債権債務の相殺消去に伴い減額修正された貸倒引当金が 税務上損金算入されたものであれば 減額修正により将来加算一時差異が発生し この将来加算一時差異に対して連結手続上 原則として繰延税金負債を計上しますが 債務者である連結子会社の業績悪化に伴い 債権者が個別財務諸表上で貸倒引当金を計上し 税務上損金算入した場合には 当該将来加算一時差異につき税効果を認識しないことになります これは 税務上の損金算入が認められる貸倒引当金が 債権債務の相殺消去に伴い減額修正されても 債権が回収されない限り 将来加算一時差異に係る税金は将来においてその支払いが見込まれないと考えられるからです 11

3. 新規連結と税効果会計親会社がある会社の支配を獲得した場合には 新規連結となりますが 新規連結の場合には 支配獲得日において 子会社となる会社の資産及び負債の全てを支配獲得日の時価により評価する方法 ( 全面時価評価法 ) により評価します ( 連結基準 20) 時価評価に伴い 子会社の資産及び負債の時価による評価額と当該子会社の税務上の資産 負債の帳簿価額に乖離 ( かいり ) が生じますが この乖離が一時差異となり繰延税金の計上の検討が必要になります 以下 設例により説明します < 条件 > (1)3 月決算会社である P 社 ( 公開企業 ) は 1 年 3 月末に A 社の株式の 80% を 2,500 で買収し子会社化した (2) 1 年 3 月末における P 社 A 社の個別貸借対照表は 以下のとおりである (3)A 社の個別財務諸表上 時価評価すべき資産は土地であり 支配獲得時の時価は 3,000 であ る (4) 実効税率を 40% とする < 支配獲得時の連結仕訳 > (1) 土地の時価評価替え ( 借方 ) 土地 600 ( 貸方 ) 評価差額 600 (2) 評価差額に係る税効果の認識 ( 借方 ) 評価差額 240 ( 貸方 ) 繰延税金負債 240 計算式 =600 40%=240 評価差額は 一時差異であることから 税効果が認められるため繰延税金負債が計上されます 評価替え後の A 社貸借対照表 12

(3) 資本連結 13

税効果会計 第 4 回 : その他有価証券の評価差額に対する税効果会計 2010.08.06 その他有価証券の時価評価に伴い発生する評価差額は 税効果会計適用上の一時差異に該当し これについて繰延税金資産又は繰延税金負債が認識されます 1. 原則的な処理 評価差額を 評価差損と評価差益に区分し 銘柄ごとに繰延税金資産又は繰延税金負債を認識しま す 2. 許容される処理 1その他有価証券の評価差額のうちスケジューリング ( 一時差異の将来解消見込年度のスケジューリングをいいます ) が可能なもの原則的な処理と同様に 評価差額を評価差損と評価差益に区分し 銘柄ごとに評価差損 ( 将来減算一時差異 ) については回収可能性を検討した上で繰延税金資産を認識し 評価差益 ( 将来加算一時差異 ) については繰延税金負債を認識します 2 その他有価証券の評価差額のうちスケジューリングが不能なもの 評価差額を評価差損と評価差益に区別することなく 各合計額を相殺した後の純額の評価差損又 は評価差益について 繰延税金資産又は繰延税金負債を認識します ( ア ) 純額で評価差益の場合純額で評価差益の場合には 繰延税金負債を認識します ただし 当該評価差益はスケジューリング不能な将来加算一時差異ですので 繰延税金資産の回収可能性の判断に当たっては 評価差額以外の将来減算一時差異とは相殺できないものとして取り扱います ( イ ) 純額で評価差損の場合純額の評価差損はスケジューリング不能な将来減算一時差異ですので 原則として当該繰延資産の回収可能性は無いものとして取り扱います ただし その他有価証券は 通常は随時売却が可能であり 長期的には売却が想定される有価証券ですので 会社の業績等の状況を回収可能性の判断基準とすることができるとされます 業績等の状況を判断基準とするということは 委員会報告 66 号 における1 分類 ~5 分類への当てはめにより 回収可能性の判断基準とするものであり 以下の場合には 純額の評価差損に係る繰延税金資産についても回収可能性があると判断されます 14

(1)1( 期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上している会社 ) 分類及び 2( 業績は安 定しているが 期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社 ) 分類の場合 純額の評価差損に係る繰延税金資産につき 回収可能性があると判断します (2)3( 業績が不安定であり 期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社 ) 分類及び4( 重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社 ) 分類のただし書きの会社将来の合理的な見積可能期間 ( 概ね 5 年 ) 内の課税所得の見積額からスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額を限度として 純額の評価差損に係る繰延税金資産を計上しているときは 当該繰延税金資産は回収可能性があると判断します < 設例 > 1. 原則的な処理 仕訳 A 株式 ( 借方 ) 投資有価証券 1,000 ( 貸方 ) 有価証券評価差額金 600 繰延税金負債 400 B 株式 ( 借方 ) 有価証券評価差額金 300 ( 貸方 ) 投資有価証券 500 繰延税金資産 200 C 株式 ( 借方 ) 投資有価証券 300 ( 貸方 ) 有価証券評価差額金 180 繰延税金負債 120 D 株式 ( 借方 ) 有価証券評価差額金 300 ( 貸方 ) 投資有価証券 300 回収不能として繰延税資産は計上しない 15

まとめ ( 借方 ) 投資有価証券 500 ( 貸方 ) 有価証券評価差額金 180 繰延税金資産 200 繰延税金負債 520 2. 許容される処理 (1) スケジューリング可能なものとスケジューリング不能なものが混在している場合 1 スケジューリング可能であり回収可能であると判断された銘柄 仕訳 A 株式 ( 借方 ) 投資有価証券 1,000 ( 貸方 ) 有価証券評価差額金 600 繰延税金負債 400 B 株式 ( 借方 ) 有価証券評価差額金 300 ( 貸方 ) 投資有価証券 500 繰延税金資産 200 2 スケジューリング不能と判断された銘柄 仕訳 ( 借方 ) 投資有価証券 100 ( 貸方 ) 有価証券評価差額金 60 繰延税金負債 40 スケジューリング不能と判断された銘柄については 純額で評価差益となるので 繰延税金負債を認 識します 1 と 2 の合計 仕訳 16

( 借方 ) 投資有価証券 600 ( 貸方 ) 有価証券評価差額金 360 繰延税金資産 200 繰延税金負債 440 (2) 全てスケジューリング不能であり 純額で評価差損となる場合 ア. 委員会報告 66 号 5.(1) の 1 及び 2 に該当する会社の場合 仕訳 ( 借方 ) 有価証券評価差額金 540 ( 貸方 ) 投資有価証券 900 繰延税金資産 360 委員会報告 66 号の1 及び2 分類に該当する場合には 純額の評価差損に係る繰延税金資産につき 回収可能性があると判断します イ. 委員会報告 66 号 5.(1) の3 及び4のただし書きに該当する会社の場合 前提 : 将来 5 年間の課税所得の見積額 2,000 仕訳 ( 借方 ) 有価証券評価差額金 700 ( 貸方 ) 投資有価証券 900 17

( 5) 繰延税金資産 200 5. 純額の評価差損に係る繰延税金資産の総額 =500 40%=200 1 委員会報告 66 号の3 及び4 分類ただし書きに該当する場合には 将来の合理的な見積可能期間 ( 概ね 5 年 ) 内の課税所得の見積額からスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額を限度として 純額の評価差損に係る繰延税金資産を計上することとなります 18

税効果会計第 5 回 : 平成 23 年税制改正における税率変更等の影響 2012.04.23 新日本有限責任監査法人公認会計士友行貴久 1. 改正の概要平成 23 年税制改正のうち 税効果会計に特に影響を与える改正として 以下のものが挙げられます これらは 平成 23 年 12 月 2 日に公布され 平成 24 年 4 月 1 日以後開始する事業年度から適用されます また これらの改正をうけて 税効果会計に関する Q&A ( 日本公認会計士協会会計制度委員会 ) も平成 24 年 2 月 14 日に改正されています (1) 法人税率の引き下げと 3 年間の復興特別法人税の創設法人税率が従来の 30% から 25.5% へと引き下げられました また 平成 24 年 4 月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日内に最初に開始する事業年度開始の日から同日以後 3 年を経過する日までの期間内の日の属する事業年度において 法人税額 ( 基準法人税額 ) の 10% を税額とする復興特別法人税が新たに創設されました (2) 欠損金の繰越控除制度の見直し繰越期間の延長現行の欠損金繰越期間は 7 年ですが 平成 20 年 4 月 1 日以後終了の事業年度に発生した欠損金は 繰越期間が 9 年になります 欠損金の控除限度額事業年度の所得から控除できる欠損金の限度額は 平成 24 年 4 月 1 日以後開始する事業年度より 繰越控除前の所得の 80% となります この改正は中小法人等には適用されませんが 大法人の 100% 子法人である中小法人には適用されます 2. 税制改正による会計上の影響 (1) 法定実効税率の変更法人税率が引き下げられたこと および 3 年間の復興特別法人税の創設により 各年度の法定実効税率は図表 1 のように算定されます ( 東京都 資本金 1 億円超 3 月決算会社を前提とします ) 図表 1 19

法定実効税率は 復興特別法人税を含めた以下の式で算定します 改正税法の公布日は平成 23 年 12 月 2 日です 改正税法が決算日までに交付されている場合は 改正後の税率を適用することとされています ( 個別税効果実務指針 18 項 ) 改正により 実効税率が年度によって異なることとなりましたので 一時差異および税務上の繰越欠損金の回収または支払のスケジューリングにもとづき 回収または支払が見込まれる事業年度の税率を用いて繰延税金資産および繰延税金負債を計算します 監査委員会報告第 66 号における1 分類の会社 ( 第 2 回参照 ) においても 一時差異解消のスケジューリングを実施して 回収または支払の見込まれる年度の実効税率で繰延税金資産および繰延税金負債を計算します ( 税効果会計に関する Q&A Q14) スケジューリングが不能な一時差異については 復興特別法人税が課税される期間に解消するとは見込めないことから 復興特別法人税が課税されない年度の税率 ( 図表 1の平成 28 年 3 月期以降の税率 ) を用いて繰延税金資産および繰延税金負債を計算します また その他有価証券評価差額金のうちスケジューリングが不能なものについて 評価差益と評価差損の純額について繰延税金資産および繰延税金負債を計上している場合も 同様の考え方により復興特別法人税が課税されない年度の税率を用います ( 税効果会計に関する Q&A Q14) (2) 既に計上された繰延税金資産および繰延税金負債の再計算既に当期首までに計上されていた繰延税金資産および繰延税金負債についても同様に 回収又は支払が見込まれる年度の 改正後の税率により再計算し 繰延税金資産および繰延税金負債の金額を修正します この修正差額は損益計算書の法人税等調整額に計上します ただし その他有価証券評価差額金など 直接に純資産の部に計上される項目にかかる繰延税金資産および繰延税金負債の修正差額は 評価差額に直接に加減 ( 連結上はその他包括利益に表示 ) します 20

(3) 欠損金の繰越控除制度の見直しによる影響欠損金の繰越期間が 9 年に延長されること および所得から控除できる欠損金の限度額が繰越控除前の所得の 80% となることは 図表 2 のように税務上の繰越欠損金の回収のスケジューリングに影響を与えます 図表 2 改正前 改正後 改正後の規定にもとづいて税務上の繰越欠損金の回収スケジュールを見直し 一時差異と同様に回 収又は支払が見込まれる年度の改正後の税率により繰延税金資産を計算します 3. 税制改正に伴う注記に関する留意事項 (1) 税率変更の影響額の注記税率の変更により繰延税金資産および繰延税金負債の金額が修正されたときは その旨および影響額 ( 繰延税金資産および繰延税金負債の金額の修正額 ) を注記する必要があります ( 財務諸表等規則 8 条の 123 連結財務諸表規則 15 条の 53) この影響額は 期末における一時差異及び税務上の繰越欠損金の残高について 改正前の税率で計算した金額と 新税率で計算した金額との差額として算出します ( 税効果会計に関する Q&A Q14) 期末時点の一時差異等について影響額を算出するため 改正税法公布日を含む四半期 (3 月決算会社の場合は 第 3 四半期末 ( 平成 23 年 12 月 31 日 )) において算出 注記した影響額と 事業年度末において算出する影響額とは 当然には一致しないことになります また 会社法計算書類については 会社計算規則には税率変更に関する注記の規定はありませんが 会社の財産 損益の状況を正確に把握するために必要な事項として 追加情報としての注記を記載することが考えられます ( 会社計算規則 98 条 I15 116 条 ) 21

(2) 税率差異の注記税率差異の注記 ( 法定実効税率と損益計算書における法人税等の負担率との差異の内訳の注記 ) における法定実効税率は 当年度の税率を指します ( 財務諸表等規則 8 条の 122 連結財務諸表規則 15 条の 52) すなわち 繰延税金資産および繰延税金負債の計上に用いた 将来年度の税率ではなく 当年度の法人税等の計算に適用される税率を指します 22