ハンダポットを 使ったはんだ付け講座 はんだポットでの実践的な知識 講座時間約 40 分 2012.06.04 01
準備するもの 1 ハンダポット ( 鉛フリーハンダ用に使うと決めたもの ) 2 鉛フリー棒ハンダ (SMIC ECO M705 Sn-Ag-Cu) 1 2 3 液状フラックス ( スパークルフラックス ES-1061) 3 4 フラックス希釈液 ( タムラ製 #2300) IPA: イソプロピルアルコール 4 5 フラックスを入れる磁器の皿 ( 浅めの皿 ) 5 6 ワイパー ( チタン製が良い ) 鉄製や亜鉛メッキした安物はハンダ内に溶け出る 6 02
はんだ付けの準備口出線の絶縁被膜が剥離されたもの 1 1 ハンダポットの温度設定 (290 ±15 ) とする 2 2 棒ハンダをポット内に入れて溶かす 3 ハンダ液面が作業に適したところまでハンダを入れて溶かす 4 溶けたハンダの温度が設定温度になるのを待つ 5 ハンダ温度を温度計で測定し 275 ~305 であることを確認する 6 吸煙器を使いフラックスの煙を吸煙する 03
良いはんだ付けを行う手順 1 リード線先端にフラックスを少量つける 2 溶融ハンダの表面の酸化膜を ワイパーできれいに除去する 3 リード線先端を静かに挿入 挿入速度は ハンダの濡れを見ながら行う 4 所要の長さを挿入したならば ハンダ表面に浮いてきた汚いフラックスのない面に移動させる 5 即座にリード線を引き上げる 04
補足 : リード線の芯線にコイル口出線のからげ方 芯線に口出線を 5~7 回 間隔をあけて巻きつける 密接して巻きつけるハンダが口出線と芯線に入り込みにくい 05
リード線の芯線にコイル口出線のカラゲ方 (7 回カラゲ ) http://youtu.be/-g-d5dfrqa4 youtube で動画見ること出来ますタイトル : 1 倍速口出線の芯線へのカラゲ リード線芯線構成 0.2(7/0.203) マグネットワイヤー φ0.13 1 倍速再生 06
リード線の芯線にコイル口出線のカラゲ方 (7 回カラゲ ) http://youtu.be/u-w2q17hoxq youtube で動画見ること出来ますタイトル : 0.5 倍速口出線の芯線へのカラゲ リード線芯線構成 0.2(7/0.203) マグネットワイヤー φ0.13 0.5 倍速再生 07
補足 : カラゲた口出線のハンダへ浸ける所要の長さ 6~7 段目カラゲは断線防止のためはんだ付けはしない カラゲ総数 7 段 5 段目カラゲは毛細管現象と濡れではんだ付けできる 1~4 段目カラゲまでハンダへ浸ける長さ 08
カラゲ総数 7 段目までハンダ付けすると 7 段目の付け根部で断線する可能性が高くなる またハンダが芯線内を浸み込んで 曲げ部を固くしてしまう カラゲ総数 7 回 09
ハンダポットを 使ったはんだ付けの手順 1~5 10
これから説明することの前提条件 口出線の銅線 ( マグネットワイヤー ) の絶縁被膜は剥離されているものを使用例 )H 種用の銅線 (EIW,AIW) F 種用の銅線 (PEW) はリード線芯線にカラゲる前工程で絶縁被膜は剥離されているので銅そのものにハンダ付けされることになる そのため ハンダポット内のハンダ温度は 275 ~305 としている 口出線の絶縁被膜は剥離されている ハンダ付けエナメル銅線 (SF BW) は絶縁被膜を剥離しないでハンダ付けをするので ハンダポット内にハンダ温度は 380 ~410 に設定する必要がある 11
1 リード線先端にフラックスを少量つける 浸けるフラックスが少量でも リード線の芯線の毛細管現象でカラゲた銅線に十分に付く 先端部 ポイント : 浅めの磁器の皿を使う フラックス液 IPA 磁器の皿 ES-1061 12
2 溶融ハンダの表面の酸化膜をワイパーできれいに除去する 酸化膜 ( 水酸化錫 ) 275~305 鉛フリーハンダ ハンダポット ワイパー ハンダ温度は 275 ~305 設定温度の理由 1 鉛フリーハンダ融点 217 2SN-Cu の合金層形成約 250 3 ハンダ槽は熱容量が大きい 13
3 リード線先端を静かに挿入挿入速度は ハンダの濡れを見ながら行う 金属表面に薄くハンダが流れている状態 ハンダポット 14
4 所要の長さを挿入浮いてきた汚いフラックスのない面に移動させる 5 即座にリード線を引き上げる 汚いフラックス ハンダポット 15
補足 : ハンダ温度の違いでのはんだ付けの出来具合 ハンダポットの表面から約 10mm のところのハンダ温度を測定 1 は合金層形成温度 (250 ) にハンダ温度が達していないのでリード線芯線と口出線とはハンダ結合不具合状態 1 2 3 X X 230 280 ~290 450 2 は良品です蓄熱がすくないので早く冷却され為ハンダにツヤがある 3 は一見すると良品ですが温度が高いためフラックスが炭化してこびりついているハンダ部の熱容量が多いのでハンダがゆっくり冷却され錫の表面結晶化でハンダ付け部が白っぽくなっているまた 高温になるためリード線被覆が溶ける 16
ハンダポットを使ったはんだ付けの注意点 銅食われで銅線が痩せる 5 即座にリード線を引き上げるいつまでもハンダ内に浸けていると 銅食われで 数秒で口出線 芯線が痩せ細る ( 鉛フリーハンダでは顕著 ) 口出線や芯線の銅がハンダ内へ溶けだす Cu 鉛フリーハンダ 17
ハンダポットを使ったはんだ付けの注意点 芯線の先端にブツブツ 焼けたフラックスの付着 芯線を深くハンダ内に入れると 先端のフラックスはハンダ液面から数ミリしか持たない フラックスはハンダ液面に浮き上がってしまう 芯線の先端部はフラックスがない状態で ハンダと同温度まで加熱され酸化膜に覆われる 芯線の先端では イモハンダ状態になる 芯線の凸凹部に付着した汚れやフラックスが炭化する 鉛フリーハンダ 芯線を引き上げるとブツブツ ( イモハンダ ) 焼けたフラックス付着 18
ハンダポットで注意すべきこと 錫食われ鉛フリーハンダは銅だけでなくステンレスも腐食させる ハンダポットのステンレス槽も高温 長時間で槽に穴が明きます槽の材質をチタンやセラミックに替える チタンも腐食されます 高温のハンダが槽から流れだし非常に危険です 対策 ハンダ槽を鉛フリーに対応したものに交換する 19
ハンダポットで注意すべきこと 静止槽の場合使っている間に酸化したハンダ ( 酸化錫 酸化銅 ) が増えてきます ヒーター ヒーター 対策は ドロス ( 酸化物 ) がポットの底にたまって ハンダの粘度が増し ハンダの成分構成が変わってハンダの付きが悪くなる ヒーターの熱が伝わり難くなり温度調整が上手くいかない 定期的にドロスをすくい出して ハンダを補充する 1 時間ぐらい経って成分が安定してから使う ポット一杯分のハンダ金額は約 2,500 円なので 入れ替えた方が安上がりです 20
ハンダポットで意外な盲点 ハンダ槽表面に 金色や紫色の酸化膜が払っても払ってもすぐ覆ってしまう ハンダ付けの作業性に大きく悪影響を与える 亜鉛 (Zn), アルミ (Al) が溶け込んだ? 真鍮 ( 黄銅 ) に含まれる金属成分 アルミや真鍮製のヘラを使った ( 亜鉛メッキのヘラも要注意 ) 小ねじやナットをポットの中に落とした 21
ハンダポット内のハンダ温度の計測方法 ( 動画 ) 剥離された口出線のはんだ付けの場合 温度プローブの先端をハンダ液面から約 10mm 中へ入れる ハンダ温度 290 ±15 http://youtu.be/qmeitjtones youtube で動画見ること出来ますタイトル : ハンダポットの温度測定 作業標準 ハンダ温度 290 ±15 作業始業時に温度計測をする 計測結果を温度管理帳に記入する 22 22
剥離された口出線のはんだ付け ( 動画 ) http://youtu.be/svecaamfzxq youtube で動画見ること出来ますタイトル :1 倍速剥離された口出線のはんだ付け リード線芯線構成 0.2(7/0.203) マグネットワイヤー φ0.16 1 倍速再生 23
剥離された口出線のはんだ付け ( 動画 ) http://youtu.be/lqhpngdxsiq youtube で動画見ること出来ますタイトル :0.25 剥離された口出線のはんだ付け ( 動画 ) リード線芯線構成 0.2(7/0.203) マグネットワイヤー φ0.16 スロー再生 24
口出線の絶縁被膜を剥離しないはんだ付けエナメル銅線 (SF BW 線 ) の場合は 25
ハンダポット内のハンダ温度を 380 ~410 にする ( 銅線の絶縁被膜を溶かすため ) ちなみに SF-BW の被膜が溶ける温度は約 370 です 26
これから説明することの前提条件 口出線の銅線 (SF BW マグネットワイヤー ) の絶縁被膜は剥離されていない ハンダ付けエナメル銅線 (SF BW) は 絶縁被膜を剥離しないではんだ付けをするので ハンダポット内にハンダ温度は 380 ~410 に設定する必要がある 口出線の絶縁被膜は剥離なし 27
1 リード線先端にフラックスを少量つける 浸けるフラックスが少量でも リード線の芯線の毛細管現象でカラゲた銅線に十分に付く 先端部 ポイント : 浅めの磁器の皿を使う フラックス液 IPA 磁器の皿 ES-1061 28
2 溶融ハンダの表面の酸化膜をワイパーできれいに除去する 酸化膜 ( 水酸化錫 ) 多く発生する 380~410 鉛フリーハンダ ハンダ温度は 380 ~410 ワイパー設定温度の理由 1 絶縁被膜を溶かす 370 ~38 0 2 その後に口出線と芯線をハンダ付け ハンダポット 29
3リード線先端を静かに挿入挿入速度は 絶縁被覆の溶けそしてハンダの濡れを見ながら 絶縁被覆が溶ける時間約 2 秒 /380 ハンダが付くのが約 1 秒 金属表面に薄くハンダが流れている状態 ハンダポット 30
4 所要の長さを挿入浮いてきた汚いフラックスと絶縁被膜のカスのない面に移動させる 5 即座にリード線を引き上げる 汚いフラックス絶縁被膜のカス ハンダポット 31
ハンダポット内のハンダ温度の計測方法 ( 動画 ) 温度プローブの先端をハンダ液面から約 10mm 中へ入れる 剥離なし口出線のはんだ付けの場合 ハンダ温度 395 ±15 http://youtu.be/fqqregnzcjw youtube で動画見ること出来ますタイトル : 剥離なしハンダポット温度計測 作業標準 ハンダ温度 395 ±15 作業始業時に温度計測をする 計測結果を温度管理帳に記入する 32
剥離なし口出線のはんだ付け ( 動画 ) http://youtu.be/fbfezvpsua8 youtubeで動画見ること出来ますタイトル剥離なしハンダポット温度計測 :1 倍速剥離なし口出線のはんだ付け ( 動画 ) リード線芯線構成 0.2(7/0.203) マグネットワイヤー SFWB 2-φ0.13 1 倍速再生 33
剥離なし口出線のはんだ付け ( 動画 ) http://youtu.be/ejpkx0yryas youtube で動画見ること出来ますタイトル :0.25 倍速剥離なし口出線のはんだ付け ( 動画 ) リード線芯線構成 0.2(7/0.203) マグネットワイヤー SFWB 2-φ0.13 スロー再生 34
ハンダポットを使ったはんだ付けの講座は終了です 35