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京都精華大学紀要 図 1 調査地 第三十五号 図 2 145 北部調査地 と試料木の位置 図 2は図 1の A 付近を また図 3は図 1の B 付近の地域を拡大した もので 図 2の a と b と記した円内に は調査したアカマツの稚樹が また図 3の c d e と記した円内には調査した コジイの若齢樹があったところである また 図 2の a の円内の一部とそのす ぐ北側 上部 は 41 45年生のアカマ ツ5本とコジイ2本があったところであ 図 3 南部調査地 る そのうち アカマツの位置は図 2 に小点で示した pn05a pn06c また 41年生と45年生のコジイのあった場所は 印で示し た CN-05 CN-07 それらアカマツやコジイの位置は 先に樹幹解析を行ったアカマツ古枯 木のあった場所とは 直線距離で約50m 200m ほどしか離れていないところで 標高は約 175m 195m である a の円内のアカマツ稚樹があったところ 標高は約165m 185m も含 むそのあたりは 岩倉長谷町の北側に位置するため ここでは 北長谷 とする また アカマツ稚樹の成長を調べたもう一つの場所は 図 2の b の円内に含まれる地点で 上記 北長谷 の西方約500m ほどにある岩倉北小学校の裏山である通称 岩北山 の南西斜 面中腹である 標高は約155m 165m 北長谷 と 岩北山 は ともに人里に近い場所で 丘陵を少し上がったところである 北長谷 岩北山 ともに かつてはアカマツが主体の 林の見られるところが多かったが 近年ではアカマツの枯死により アカマツは年々減少傾向 にある 写真 1 写真 2 なお 樹幹解析を行ったコジイの若齢樹があった図 3の c d e の地点は すべて宝ヶ池

146 京都近郊におけるアカマツとコジイの近年の成長について 写真 1 調査地の現況 図 2のa付近 写真 2 調査地の現況 図 2のb付近 写真 3 調査地の現況 図 3のc付近 写真 4 調査地の現況 図 3のd付近 写真 5 調査地の現況 図 3のe付近 公園内の丘陵の尾根部であり 標高は約135 150m のところである その付近には ま だアカマツもある程度残ってはいるが 近年 のアカマツの枯死により やはりアカマツの 割合は減少傾向にある 写真 3 5 3 方法 樹幹解析を行ったアカマツ5本は 枯死後 間もないものを2005年から2006年にかけて伐倒したものである 2005年には pn05a pn05b と名付けた試料木を2本 また2006年に pn06a pn06b pn06c と名付けたものを3本伐倒し た それぞれの試料木の位置は図 2に示す通り それらの樹木から 基本的に1m ごとに 樹木円板を採取した ただし pn06a pn06b pn06c については 基部から0.5m の高さの樹 木円板も採取した それらの樹木の樹齢は41 45年で 1960年代前期に発生し成長をはじめた

m m DataPicker DendroMeasure SDA SDA Excel SDA SDA Stem Density Analyzer Nobori et al. SDA Photoshop Excel Excel CN- CN- m m CN- m CN- c d e m ct a ct a. m m. m

148 京都近郊におけるアカマツとコジイの近年の成長について とに樹木円板を採取した コジイの樹木円板の処理は 上記アカマツと同様で 年輪幅測定用の線を年輪の中心部から 直線的に2方向に引いたあとにスキャナで読み取った また その直線と年輪の中心部で直交 する2方向の線をさらに引き 年輪の中心から最も外側の年輪への平均的な長さを求めること により 年輪幅の測定値を調整した 4 結果と考察 1 近年のアカマツの成長 a 41 45年生のアカマツ 41 45年生のアカマツ5本 pn05a pn05b pn06a pn06b pn06c の樹幹解析図 図 4 8 とその樹高成長の推移 図 9 と材積成長量の推移 図 10 は 図の通りである これらの樹木は 41年から45年の歳月をかけて樹高15m pn05a から19m PN06C 材積 約133000cm³ PN05b から約225300cm³ pn05a に成長している 図 9と図 10には 先 に調べた同地域で生育していたアカマツ古木についてのデータ 小椋 2005 も参考のために 入れている 近年の41年生から45年生のアカマツは その成長にそれぞれ違いはあるものの とくに樹高 成長については 発生間もない頃から40年あまり さほど大きくない幅の中で成長しているこ とがわかる また 材積についても 成長を始め てから30年前後の頃までは pn06c は他のアカマ ツと比べると極端に遅い成長をしているが その 樹木もその後は他のアカマツ以上に急速に成長 し 43年で平均的な材積を超えるに至っている そして その樹木も含め 調査した5本のアカマ ツの高木は ある程度の幅はあるものの とくに 大きな違いのない成長をしてきたと見ることもで きる なお 発生後42年目には最大材積の樹木が 1本減り 樹木数が少ないために その時点で材 積の平均値が一時前年よりも下がることになるこ ともあり 図 10では42年以降の平均は示してい ない そうした近年のアカマツの成長を 先に調べた 図 4 pn05a の樹幹解析図

京都精華大学紀要 第三十五号 149 図 5 pn05b の樹幹解析図 図 6 pn06a の樹幹解析図 図 7 pn06b の樹幹解析図 図 8 pn06c の樹幹解析図

150 京都近郊におけるアカマツとコジイの近年の成長について 図 9 41 45年生アカマツの樹高成長 図 10 41 45年生アカマツの材積成長

. m. m. m. m. m. m. m. m cm cm cm cm cm cm cm cm b a b

152 京都近郊におけるアカマツとコジイの近年の成長について 図 11 北長谷 におけるアカマツ稚樹の樹高成長 図 12 岩北山 におけるアカマツ稚樹の樹高成長

京都精華大学紀要 図 13 第三十五号 153 岩倉北部におけるアカマツの初期樹高成長 には上記の41 45年生の近年のアカマツと同地域で明治前期に成長を始めたアカマツ古木の初 期成長 平均 のデータも加えた 結果のグラフでもわかるように 北長谷 岩北山 ともにアカマツ稚樹の成長には個体 差が大きいが その平均をとれば 北長谷 と 岩北山 のアカマツ稚樹の成長速度はかな り近いものとなっている 調査を行ったのが冬期であったためか 落葉したコナラなどの広葉 樹が多い 岩北山 の方が 常緑のヒノキ中心の 北長谷 よりもかなり明るく 典型的な陽 樹であるアカマツの成長には好都合かと思われたが 結果としては むしろ 北長谷 の方が わずかながら成長が良くなっている 一方 近年のアカマツ稚樹の成長を 北長谷 の41 45年生の近年のアカマツ また同地 域で明治前期に成長を始めたアカマツ古木の初期成長と比べると 近年のアカマツ稚樹の成長 は近年の41 45年生アカマツの初期成長と比べるとかなり悪く 北長谷 と 岩北山 のア カマツ稚樹の樹高成長の平均値が得られる発生後6年までであれば その成長は近年の41 45 年生アカマツの2分の1以下である 図 13 また 岩北山 のアカマツ稚樹は 発生後9 年で41 45年生のアカマツが同齢期であったときの樹高に最も近づくが それでもその樹高は 41 45年生アカマツの同齢期の3分の2程度である また 明治前期に成長を始めたアカマツ古木と比べると 2年目までは ほぼ同程度の成長 をしているが それ以降は近年のアカマツ稚樹の方が徐々に成長が速くなり 9年目では 古

a a CN- CN- CN- CN-

京都精華大学紀要 第三十五号 図 14 CN-05の樹幹解析図 図 15 CN-07の樹幹解析図 155

156 京都近郊におけるアカマツとコジイの近年の成長について 図 16 高木のコジイ2本の樹高成長 図 17 高木のコジイ2本の材積成長 いため グラフ上での量的比較が難しいが 表の数値としては その期間の CN-05の材積は CN-07の2分の1から4分の1程度しかない しかし CN-05は発生後24年の頃から急速な成 長に転じ 32年目以降の材積は CN-07を上回ることになる なお 2本のコジイとも ある時 点から直線的な材積成長をしている そのような変化の起点は CN-05では発生後29年の頃 CN-07では同じく20年の頃である 材積成長について 2本のコジイでやや大きな成長パターンの違いがあるのは 図 16では ややわかりにくいが 初期の樹高成長を見ると CN-07の樹高成長が CN-05と比べると極端に

CN- CN- b c e ct a e (c)

158 京都近郊におけるアカマツとコジイの近年の成長について 図 18 ct06a の樹幹解析図 図 19 ct06b の樹幹解析図 図 20 ct06c の樹幹解析図 図 21 ct07a の樹幹解析図 図 22 ct07b の樹幹解析図 図 23 ct07c の樹幹解析図 図 24 ct07d の樹幹解析図 図 25 ct07e の樹幹解析図 図 26 ct08a の樹幹解析図

京都精華大学紀要 第三十五号 図 27 コジイ若齢樹の樹高成長 図 28 コジイ若齢樹の材積成長 159

m m m m m.

a b c e SDA DendroMeasure :

pp. -. No., -. Nobori Y, Sato K, Onodera H, Noda M, Katoh T ( ): Development of stem density analyzing system combined X-ray densitometry and stem analysis, Journal of Forest Planning, ( ), -.