平成 25 年度自治体国際協力促進事業 モデル事業 ミャンマー国 ヤンゴン市 汚水処理改善事業 大阪市 一般財団法人 1 都市技術センター
1. 事業実施に係る経緯ミャンマーにおける 2011 年 3 月の新政府誕生 民政移管を支援する国際的な取り組みの一環として 日本政府は 過去の円借款延滞債権の放棄や 25 年ぶりの円借款再開を実施しており 日本企業のミャンマー進出が加速すると期待されている 一方 ミャンマーでは 長らく続いた軍事政権の影響もあり 電力 通信をはじめとして様々なインフラ整備が遅れており 上下水道施設の整備も大きく不足している 特にヤンゴン市の下水道人口普及率は約 7% と言われており 下水道未整備地域におけるオンサイトの生活排水処理の整備が求められている 大阪市 大阪府と経済団体で構成する 大阪水 環境ソリューション機構 においても ミャンマーにおける水 環境技術の展開に大いに関心があり 平成 24 年 2 月に関西経済連合会によるミャンマー現地調査に参加し 水 環境事業に関する本市や関係企業の技術力についてヤンゴン市等に説明した また 平成 24 年 9 月には 松井大阪府知事のヤンゴン市長表敬訪問に参加し 水 環境分野の様々な問題解決に協力していくことを報告した 平成 24 年度はさらに 国土交通省調査業務の ミャンマー国下水道整備計画等策定業務 において 大阪市が参画する官民連携チームが採択を受け 官民連携チームによりヤンゴン市における雨水排水および下水道施設の現状 今後の施設整備や維持管理等に係る課題を調査し 整備計画等を策定 提案や意見交換を行った 2. 事業の目的本事業では 大阪市建設局とヤンゴン市都市開発委員会 ( 以下 YCDC とする ) の上下水道局との技術交流を実施することにより 高度経済成長期に水質汚濁等の環境問題を克服してきた大阪市の経験やノウハウを効果的にヤンゴン市都市開発委員会に移転し また 下水道未整備地域におけるオンサイト排水処理施設のパイロット事業の計画作成を目的とする なお パイロット事業実施については 他の援助スキームの活用を検討する 3. 事業内容 (1) 事業概要平成 25 年度実施の事業概要は 以下のとおりであり 大阪市建設局と ( 一財 ) 都市技術センターが協力して実施した 1 専門家派遣 ( 日本での研修内容調整 下水処理場視察を含めた技術指導及び講義 ) 2 日本での下水道分野の研修 (2) 対象機関について 1 対象機関ヤンゴン市都市開発委員会上下水道局 2 対象機関の概要 2
ヤンゴン市の行政機関である YCDC は 20 部局から構成されている これらの部局の中で上下水道を担当しているのは Engineering Department(Water & Sanitation) である また 汚水処理の管轄部署は上下水道局 (Engineering Department, Water Supply and Sanitation) の衛生部 (Sanitation Division) である (3) 専門家派遣について 1 出張先ミャンマー国ヤンゴン市 2 期間平成 25 年 6 月 9 日 ( 日 )~15 日 ( 土 ) 3 出張者大阪市建設局下水道河川部水環境課から技術者 1 名 ( 一財 ) 都市技術センター事業部事業企画課長 ) 4 専門家派遣の目的 昨年度に実施した下水処理場調査に基づくアドバイスを現地研修として実施する 下水管渠の現状調査 平成 25 年 9 月に実施する YCDC 職員 (3 名 ) の日本での研修に関する調整 5 日程日時 内容 6/ 9( 日 ) 終日移動 ( 関空 ~ バンコク ~ ヤンゴン ) 6/10( 月 ) 6/11( 火 ) 6/12( 水 ) 6/13( 木 ) 6/14( 金 ) YCDC 上下水道局との打合せ / 本邦研修計画の提案 YCDC への講義 YCDC との下水管渠維持管理に関する打合せ下水管渠の視察ミャンマー国 ヤンゴン市上下水道調査に関するヒアリングガンドージ湖の視察下水処理場視察本邦研修運営に関する調整ヤンゴン市郊外の視察ヤンゴン出発 6/15( 土 ) 帰国 ( ヤンゴン ~ バンコク ~ 関空 ) 3
6 成果 YCDC 上下水道局との打合せ / 本邦研修計画の提案昨年度までの取組状況の報告を行い また その内容を踏まえ 今年度実施する本邦研修計画を提案し 内容の確認を行った YCDC への講義下水処理場調査結果について講義を行った MLSS が高すぎることは問題であるが 必要写真 2 YCDC 打合せ状況な量の高分子凝集剤を調達できない等の様々な問題の中で 工夫して維持管理している状況が分かったことを伝えた 下水管渠の視察圧送管及び取付管の現地調査を行った 圧送管の内側には 数センチ程度の石膏状の付着物がある状況を確認し また取り付け管及びマンホールについて 清掃 点検等が今後の課題であることが確認できた 写真 3 Inspection Chamber を開けた様子 ( かなり硬くなった管内側の付着物 ) 写真 4 取付管のマンホール (200mm パイプ ) 写真 5 Inspection Chamber の例 写真 6 Inspection Chamber の確認 4
ミャンマー国 ヤンゴン市上下水道調査に関するヒアリング現在のマスタープランの状況について 担当者にヒアリングを行い 今後の展開について確認した ガンドージ湖視察湖から雨水排水溝への outlet を確認した また 付近の雨水排水溝について 生活排水の放流状況を確認した 写真 7 Kandawgyi 湖から雨水排水溝への Outlet( 大量のアオコ発生 ) 写真 8 Kandawgyi 湖脇の雨水排水溝 ( 生活排水が放流されている ) 下水処理場視察等下水処理場の改善に関する意見交換を実施した 維持管理の問題点について議論し アドバイスを行うと共に 現地にて今後の維持管理に役立つよう 放流部の四角堰の水位測定による放流水量測定のデモを行った 写真 9 下水処理場改善に関する意見交換 写真 10 四角堰で放流水量簡易測定のデモ 5
本邦研修に関する打ち合わせ本邦研修を行うため 必要書類の確認及び 準備に必要な日数等について確認をおこなった ヤンゴン市郊外の視察ヤンゴン市郊外に計画中である新都市候補地について視察を行った (4) 日本での研修について 1 研修員ヤンゴン市都市開発委員会 (YCDC) の上下水道部下水道課の技術職員 3 名 2 目的下水道分野全般に関する技術移転 3 研修日程平成 25 年 9 月 2 日 ( 月 )~7 日 ( 土 ) 4 主な研修内容 大阪市副市長表敬訪問 大阪市の下水道事業概要 管渠施工の講義と視察 ( シールド工法 推進工法等 ) 写真 11 研修風景 下水管渠の維持管理 下水処理 汚泥処理の概要 下水処理場視察 ( 大阪市中浜下水処理場 寝屋川南部流域下水道竜華水みらいセンター ) 5 研修結果 推進工法の講義と視察ヤンゴン市では 市街地中心部のみ下水道が普及しており 現在使用している管渠は 100 年以上前に敷設されたものであり 管渠の修復 更新は 喫緊の課題である 一方 ヤンゴン市中心部の交通渋滞は特に顕著であり 非開削工法の導入は避けられないと思われる 今回の研修で必要となる推進工法に関する技術を効果的に移転することができた 写真 12 推進工法の視察 6
酸素利用速度測定の実習ヤンゴン市の下水処理場では 大量のセプティックタンク汚泥を受け入れていること 汚泥引抜量が不足していることから 良好な生物処理が行われていない 良好な生物処理の判断指標として 顕微鏡観察と酸素使用速度測定の実習を行った 研修員は ヤンゴン市でも必要な分析器具等の準備を進めていることから 今回の実習内容を現地で実施する意向を示していた 写真 13 酸素利用速度の測定 新旧下水処理場の視察中浜下水処理場 ( 視察した西系処理場は 昭和 43 年供用開始 ) と竜華水みらいセンター ( 平成 22 年供用開始 ) を視察した 中浜下水処理場では 機器の予防保全や補修により下水処理場を長期間使用している状況や 消化ガス発電等の汚泥有効利用を視察した また竜華水みらいセンターでは 下水処理場上部空間利用の実例を視察するとともに 遠方監視により無人で運転している現在の日本の下水処理場の実態を確認した 4. まとめ平成 24 年度は 国土交通省による ミャンマー国下水道整備計画等策定業務 への参加 平成 25 年度は本事業の実施により ヤンゴン市都市開発委員会と大阪市建設局及び ( 一財 ) 都市技術センターの技術協力関係が強化され JICA の草の根技術協力 ( 地域経済活性化特別枠 ) の案件を提案し 平成 25 年 11 月に内定通知を得た 今後もヤンゴン市の環境改善のための技術移転や 下水道案件の事業化に向け 市間の連携を深めていきたい 写真 14 副市長表敬 7