原告は, 平成 26 年 12 月 9 日, 指定役務を第 35 類 市場調査又は分析, 助産師のあっせん, 助産師のための求人情報の提供, 第 41 類 セミナーの企画 運営又は開催, 電子出版物の提供, 図書及び記録の供覧, 図書の貸与, 書籍の制作, 教育 文化 娯楽 スポーツ用ビデオの制作

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平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

最高裁○○第000100号

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

4F1803FBFF227B8C E002B126

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

平成 25 年 12 月 17 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 10 月 17 日 判 決 原告エイトマイハートイン コーポレイテッド 訴訟代理人弁護士 五十嵐 敦 出 田 真樹子 弁理士 稲 葉 良 幸 石 田 昌 彦 右

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

31 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 1 原告の求めた裁判 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録を無効とした審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 10 号該当性 ( 引用商標の周知性の有無 ) である 1 特許庁における手続の経

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

助産実践能力習熟段階 ( クリニカルラタ ー ) * レベル Ⅲ 認証制度について 日本助産実践能力推進協議会 * 助産実践能力習熟段階 ( クリニカルラタ ー ) :CLoCMiP(Clinical Ladder of Competencies for Midwifery Practice) 1

1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は, 平成 25 年 11 月 19 日, 山岸一雄 の文字を標準文字で表して成る商標 ( 以下 本願商標 という ) について, 商標登録出願をした ( 商願 号 以下 本願 という 甲 7) (2) 原告は, 上記商標登録出願に対

最高裁○○第000100号

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

1DD CC A CA

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

平成 25 年 4 月 24 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 3 月 11 日 判 決 原 告 X 訴訟代理人弁理士 松 下 昌 弘 被 告 特 許 庁 長 官 指定代理人 井 出 英一郎 同 水 莖 弥 同 堀 内 仁 子

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

年 1 月 9 日に第 40 類 布地 被服又は毛皮の加工処理 ( 乾燥処理を含む ), 裁縫, ししゅう, 木材の加工, 竹 木皮 とう つる その他の植物性基礎材料の加工 ( 食物原材料の加工を除く ), 食料品の加工, 廃棄物の再生, 印刷 を指定役務 ( 以下 本件指定役務 という ) とし

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

Microsoft Word - TOKLIB01-# v1-Chizai_Bukai_ docx

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

11総法不審第120号

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

(イ係)

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

( 登録の審査及び登録 ) 第 7 条市長は, 前条の規定による申請を受けたときは, 第 5 条に規定する登録の要件を満たしていることを確認の上, 届出のあった情報を登録するものとする ( 登録情報の利用 ) 第 8 条市長は, 次に掲げる事由に該当するときは, 市民等の生涯学習活動を促進し, 又は

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

(Microsoft Word \224\255\225\\\201yMSH\201z \224\273\214\210\201i\217\244\225W\201j.doc)

一括して買い受けた なお, 本件商品である コンタクトレンズ は, 本件商標の指定商品 眼鏡 に含まれる商品である (3) 使用商標は, ハートO2EXスーパー の文字からなるところ, 本件商品の容器に表示された使用商標は, ハート の文字部分だけが赤い字で, かつデザイン化されており, これに続く

平成 24 年 8 月 24 日判決言渡 平成 23 年 第 284 号代議員会議決無効確認請求事件 判 主 決 文 1 原告が, 平成 23 年 1 月 18 日をもって被告の設立事業所でないことを確認する 2 被告は, 原告のために,A 厚生年金基金規約別表第 1から 株式会社 B, 長野県諏訪

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

最高裁○○第000100号

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

8823FF07EC A80018A5B

主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

原判決は, 控訴人ら及び C の請求をいずれも棄却したので, 控訴人らがこれを不服として控訴した 2 本件における前提事実, 関係法令の定め, 争点及びこれに対する当事者の主張は, 後記 3 のとおり, 原判決を補正し, 後記 4 のとおり, 当審における当事者の主張 を付加するほかは, 原判決 事

の商標権者である ( 甲 1,45) 登録商標 : 別紙 1 本件商標目録記載のとおり登録出願 : 平成 26 年 3 月 14 日登録査定日 : 平成 26 年 8 月 22 日設定登録 : 平成 26 年 9 月 26 日指定役務 : 第 35 類 広告業, 経営の診断又は経営に関する助言, 市

事案である 3 仲裁合意本件では 申立人の申立書において仲裁合意の内容の記載があり 被申立人は答弁書においてこれを争わなかったので 本件についての書面による仲裁合意が存在する なお 被申立人は審問期日においても本仲裁に応じる旨の答弁をした 4 当事者の主張 (1) 申立人の主張申立人は 請求を基礎づ

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

文書管理番号

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

21855F41214EA DB3000CCBA

1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求の趣旨 1 特許庁が無効 号事件について平成 25 年 5 月 9 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ( 当事者間に争い

4390CD461EB D090030AC8

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

1 特許庁における手続の経緯原告は, 名称を 5 角柱体状の首筋周りストレッチ枕 とする発明につき, 平成 20 年 10 月 31 日に特許出願 ( 本願 特願 号, 特開 号, 請求項の数 1) をし, 平成 25 年 6 月 19 日付けで拒絶

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

答 申 第 1 審議会の結論名古屋市長 ( 以下 実施機関 という ) が 本件異議申立ての対象となる保有個人情報を一部開示とした決定は 妥当である 第 2 異議申立てに至る経過 1 平成 23 年 12 月 21 日 異議申立人は 名古屋市個人情報保護条例 ( 平成 17 年名古屋市条例第 26

19 条の4 第 2 項の規定により, 特別職の公務員であるから, 本件不開示情報は, 公務員としての職務遂行情報であり, 精神保健指定医が, 客観的な生体検査もなく, ただその主観に基づいて, 対象者を強制入院させることができるという性質の資格であること, 本件開示請求に係る精神保健指定医らが対象

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

審決取消判決の拘束力

2018 年 2 月 8 日第一東京弁護士会総合法律研究所知的所有権法部会担当 : 弁護士佐竹希 バカラ電子カードシュー 事件 知財高裁平成 29 年 9 月 27 日判決 ( 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号 ) I. 事案の概要原告 ( エンゼルプレイングカード株式会社 : カー

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

<4D F736F F D2094DB944690BF8B818C8892E BC96BC8F88979D8DCF82DD816A2E646F63>

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

エーシーニールセン・コーポレーション株式会社 個人情報保護方針

職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反

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非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

Taro-052第6章1節(p ).jtd

(2) 総合的な窓口の設置 1 各行政機関は 当該行政機関における職員等からの通報を受け付ける窓口 ( 以下 通報窓口 という ) を 全部局の総合調整を行う部局又はコンプライアンスを所掌する部局等に設置する この場合 各行政機関は 当該行政機関内部の通報窓口に加えて 外部に弁護士等を配置した窓口を

個人情報の保護に関する規程(案)

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平成 29 年 9 月 14 日判決言渡 平成 29 年 ( 行ケ ) 第 10049 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 7 月 13 日 判 決 原告一般財団法人日本助産評価機構 同訴訟代理人弁護士成川弘樹 目黒豪 被 告 特 許 庁 長 官 同指定代理人 真 鍋 伸 行 中 束 と し え 山 田 正 樹 板 谷 玲 子 主 文 1 特許庁が不服 2016-1536 号事件について平成 29 年 1 月 11 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 事実及び理由第 1 請求の趣旨主文同旨第 2 事案の概要本件は, 商標登録出願に係る拒絶査定不服審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 7 号該当性の有無である 1 特許庁における手続の経緯 - 1 -

原告は, 平成 26 年 12 月 9 日, 指定役務を第 35 類 市場調査又は分析, 助産師のあっせん, 助産師のための求人情報の提供, 第 41 類 セミナーの企画 運営又は開催, 電子出版物の提供, 図書及び記録の供覧, 図書の貸与, 書籍の制作, 教育 文化 娯楽 スポーツ用ビデオの制作 ( 映画 放送番組 広告用のものを除く ), 興行の企画 運営又は開催 ( 映画 演芸 演劇 音楽の演奏の興行及びスポーツ 競馬 競輪 競艇 小型自動車競走の興行に関するものを除く ), 映画 演芸 演劇 音楽又は教育研修のための施設の提供, 第 44 類 助産, 医業, 医療情報の提供, 健康診断, 調剤, 栄養の指導, 介護, 医療看護その他の医業 及び第 45 類 乳幼児の保育 を指定役務として, Advanced Midwife アドバンス助産師 の文字を横書きしてなる商標 ( 以下, 本願商標 という ) の登録出願をし ( 商願 2014-108031 号 甲 29), 平成 27 年 7 月 8 日付けで, 本願商標の指定役務から, 第 45 類 乳幼児の保育 を除く補正をした ( 甲 30) が, 同年 11 月 6 日付けで拒絶査定を受けた ( 甲 31) ので, 平成 28 年 2 月 2 日, これに対する不服審判請求をした ( 不服 2016-1536 号 甲 47) 特許庁は, 平成 29 年 1 月 11 日, 本件審判の請求は, 成り立たない との審決をし, その謄本は, 同月 24 日に原告に送達された 2 審決の理由の要点本願商標は, Advanced Midwife アドバンス助産師 の文字を横書きしてなるところ, その構成中前半の, Advanced の欧文字は, 上級の 等の意味を有する英語であり, Midwife の欧文字は, 助産師 の意味の英語であることから, 構成中前半の Advanced Midwi fe の欧文字は, 上級の助産師 の意味合いが生じるものである また, その構成中の アドバンス の片仮名は, 上級の を意味するものとして我が国において馴染みのある, 比較的平易な外来語であることから, 本願商標の構成中後半の アドバンス助産師 の文字からも, 上級の助産師 の意味合いが想起されるものである - 2 -

そして, その構成中, 助産師 の文字は, 保健師助産師看護師法 ( 以下, 保助看法 という )3 条に規定される国家資格の名称であり, 同法 42 条の3 第 2 項において, 助産師でない者は, 助産師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない と, 名称の使用について規定されているから, その資格を得ることができない請求人 ( 原告 ) が, 助産師 の文字を有し, 上級の助産師 の意味合いが想起される本願商標を, その指定役務に使用することは, 上記保助看法 42 条の3 第 2 項の規定に抵触するおそれがあり, かつ, 本願商標に接する取引者, 需要者は, その構成中の アドバンス助産師 の文字を捉え, 国家資格である 助産師 の上級の国家資格であるかのごとく誤信する場合があるものといえる ところで, 国家資格に係る規定は, 国家が, 公共の福祉その他政策上の目的のために, 国民の職業選択の自由を制限してでも, 一定の能力を有すると判定された者に限って一定の地位又は権限を付与する必要があると認めて法令をもってそのように定めたものである したがって, 国家資格と誤信されるおそれのある商標を登録し役務に使用することは, これに接する一般世人において, 国家資格である 助産師 の制度に対する社会的信頼を失わせ, ひいては公の秩序を害するおそれがあるものといえる よって, 本願商標は, 商標法 4 条 1 項 7 号に該当するものと認められる 第 3 原告主張の審決取消事由 1 本願商標は,1 国家資格に対する社会的信頼を害さず,2 他の国家資格と誤信されることはなく,3 厚生労働省が承認しており,4かえって, 本願商標の登録を認めないことによる害悪が発生し,5 他の商標との均衡の点も考慮すると, 公序良俗に反しないものである (1) 国家資格に対する社会的信頼を害さないこと原告は, 平成 27 年度より アドバンス助産師 の認証業務を運営している 原告は, 助産師資格保有者による公共的な性格を有する職能団体であり, 助産関連 5 団体 ( 原告, 公益社団法人日本看護協会, 公益社団法人日本助産師会, 一般社団法 - 3 -

人日本助産学会, 公益社団法人全国助産師教育協議会 以下, 助産関連 5 団体 という ) が制定した認証要件 ( 一定の実務経験, 助産能力についての要件 ) を充たす助産師資格保有者に対してのみ, アドバンス助産師 の認証を行っている 原告が実施する研修等は, 助産関連 5 団体が定めた上記認証要件に即した内容である したがって, 原告が, アドバンス助産師認証業務を運営することにより, 助産師資格に対する社会的信頼が害されることは想定できない また, 実際に アドバンス助産師 という認証名を用いているのは, 国家資格である助産師を保有する者であるため, 周産期医療の利用者による国家資格である助産師に対する信頼が害されることもない (2) 他の国家資格との誤信がないこと Advanced 等の英単語を片仮名表記にして, 漢字からなる国家資格名と組み合わせて, 上級の国家資格を表す例はない したがって, アドバンス助産師 という認証名称が, 国家資格と誤信される可能性はない (3) 厚生労働省の承認厚生労働省の公式文書である 疾病 事業及び在宅医療に係る医療体制について ( 医政地発 0331 第 3 号 ) と題する通知の 別表 9 周産期医療の医療体制構築に係る現状把握のための指標例 において, アドバンス助産師数 を 助産師数 とは別項目として, 新生児集中ケア認定看護師数 と並列する形式で指標に掲げるなど, 厚生労働省は, アドバンス助産師 が周産期医療において重要な役割を担っていることを認めているから, 厚生労働省は, アドバンス助産師 名称を用いた認証制度を承認している (4) 本願商標の登録を認めないことによる害悪平成 27 年の認証業務の開始より, 現に就業している助産師のうち約 3 分の1の助産師が アドバンス助産師 の認証を受けて, 業務を行っている そして, 当該助産師が所属する病院等において, 認証を受けたことが公表されており, 周産期医療の利用者から, 一定水準の能力を有するアドバンス助産師に対しての信頼が形成 - 4 -

されている それにもかかわらず, 本願商標を登録することができず, アドバンス助産師 の名称使用をコントロールできないのであれば, アドバンス助産師 と類似した名称の認証制度が生じてくるおそれがあり, 医療の現場や周産期医療の利用者に混乱を生じさせるおそれがある 審決は, アドバンス助産師 認証制度と類似する名称の使用等に関しては, 保助看法による助産師の名称独占の規定により対処されるべきものであり, 商標権により保護すべき理由とはならない, とする しかし, 保助看法が定める刑事罰による規制と, 商標権による名称使用のコントロールとは, 手続主体, 手続内容等が異なるから, 代替できるものではない (5) 他商標との均衡公益社団法人日本看護協会は, 一定の専門的能力を有する看護師に対して, 認定看護師 専門看護師 という資格を付与しており, 認定看護師 及び 専門看護師 の商標権は, 登録されている 認定看護師 専門看護師 の資格制度と, アドバンス助産師 認証制度は, 実質的に異なるものではないから, 本願商標の登録が認められないのは, 均衡を欠く 2 特許庁は, 国家資格名を包含する商標について, 一定の例外に該当する商標以外は, 公序良俗に反する商標であると認定するという厳格な運用を行っている しかし, 国家資格名を包含する商標を, 使用する主体や具体的な使用方法等を考慮することなく, 一定の例外に該当する商標以外は登録査定を行わないという審査基準は, 商標が公序良俗違反にならない場合を不当に制限しているものである 第 4 被告の主張 1 本願商標が商標法 4 条 1 項 7 号に該当することについて (1) 本願商標について本願商標のうち アドバンス助産師 の文字部分からは, 上級の助産師 程の意味合いが生じるものである また, 本願商標のうち Advanced Midw ife の文字部分の Advanced, Midwife の各欧文字は, 上 - 5 -

級の, 助産師 をそれぞれ意味する英語であるから, Advanced Mid wife の欧文字部分からは, 上級の助産師 の意味合いが生じるものである そうすると, 本願商標は, 上級の助産師 の意味合いが生じる語を日本語表記及び英語表記で表示したものと認識, 理解させるものということができ, 本願商標全体としても, 上級の助産師 の意味合いを認識させるということができる アドバンス の文字は, 各種の資格において, 上級の ( 上位の等級の ) 程の意味合いを表す語として使用されている実情がある ( 乙 10~20) 現在, 我が国においては, 法律に基づき, 国又は国から委任を受けた機関が実施する国家資格, 地方行政機関等が実施する公的資格及び上記以外の団体, 企業等が実施する民間資格など多数の資格が存在しているところ, これらにおいて, その知識や技能の難易度等に応じて, 同種の資格の中でも段階的にレベル分けがされているものが多数存在し ( 乙 21~36[ 枝番を全て含む 以下同じ ]), また, 上位の等級の資格を表す語として 上級 の文字が使用されている実情がある ( 乙 29~ 36) 以上のとおり, アドバンス の文字が資格の名称とともに表示された場合には, これが, 当該資格における上位の等級の資格を表すものであると, 一般の取引者, 需要者に認識, 理解されるというべきである したがって, アドバンス助産師 の文字を, 本願商標の指定役務に使用した場合, これに接する一般の取引者, 需要者は, 分娩を助け, また妊婦 褥婦 新生児の保健指導を職業とする者である 助産師 の上位の等級の資格, すなわち, 助産師 と何らかの関係を有する医療 助産分野に関連した国家資格であると認識, 理解するというべきである (2) 国家資格の制度に対する社会的信頼を失わせるおそれのある商標であることについてア商標法以外の法律によって, その使用等が禁止されている商標であることについて - 6 -

本願商標は, その構成中に 助産師 の文字を含んでなるものであり, かつ, その文字を含む アドバンス助産師 の文字部分は 上級の助産師 の意味合いを理解させるものである しかるところ, 助産師 の文字は, 保助看法 3 条に規定される国家資格の名称であり, 同法 42 条の3 第 2 項において, 助産師でない者は, 助産師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない と, 名称の使用について規定されている その趣旨は, 助産師でない者が 助産師 の名称を使用することによって, その者を助産師であると一般世人が誤信することを防止しようとするものであると解される その資格を得ることができない原告が, 助産師 と紛らわしい名称を含む本願商標を登録し, その指定役務に使用することは, 助産師 及びこれに関連した国家資格の制度に対する社会的信頼を失わせることになり, 社会公共の利益に反するものというべきである イ国家資格であるかのように誤信するおそれのある商標であることについて前記 (1) のとおり, 本願商標は, それ自体が国家資格であるかのように認識, 理解されるというべきである しかし, アドバンス助産師 なる名称の国家資格は, 存在しない したがって, 本願商標に接する一般の取引者, 需要者は, これが国家資格であるかのように誤信するおそれがあるというべきである そして, 原告は, 助産師 に関する国家資格の認定機関ではない そうすると, 国家資格と誤信されるおそれのある本願商標を登録し, これをその指定役務について使用することは, これに接する一般世人において, 国家資格である 助産師 及びこれに関連した国家資格の制度に対する社会的信頼を失わせることになり, 社会公共の利益に反するものというべきである (3) 小括したがって, 本願商標は, 商標法 4 条 1 項 7 号に該当する 2 原告の主張に対する反論 (1) 国家資格に対する社会的信頼を害することについて - 7 -

アドバンス助産師 制度の認証を受ける者が, 国家資格たる 助産師 資格を保有する者であったとしても, 助産師 の中でも 国により 当該資格の上級と認定される者であると一般の取引者, 需要者において認識されるのであれば, あたかも国が認めた優れた技術 知識を有する助産師であるかのように思われるため, 当該国家資格の制度に対する社会的信頼を失わせるおそれがあるといえる そして, 原告から提出された証拠を勘案しても, 同制度が国家資格とは異なる制度であって, 助産師 又は 助産師 と何らかの関係を有する医療又は助産分野に関連した国家資格と誤信しないといえる程度にまで, 審決時において, 一般世人に対して同制度が広く知られていたとはいえないものである また, アドバンス助産師 認証制度は, 助産師資格の監督官庁である厚生労働省が実質的に認証している機関において実施されている制度とはいえず, 国家資格である 助産師 又はそれに準ずる国が認める資格に係るものであるとはいえないことから, 国家資格と誤信させるおそれのある本願商標を商標登録し, 使用することは, これに接する一般世人において, 国家資格の制度に対する社会的信頼を失わせることになり, 社会公共の利益に反するものというべきである (2) 国家資格と誤信されることについて アドバンス の文字は, 資格の名称とともに用いられた場合においては, 上級の資格 を表す語として, 一般的に広く知られており, 英語を片仮名表記にして漢字と組み合わせた国家資格が多数あることからすると, 英語を片仮名表記にして漢字と組み合わせた構成からなる アドバンス助産師 についても, 国家資格である 助産師 における上位の等級の資格, すなわち, それ自体が国家資格であるかのように認識, 理解されるものであるといえる (3) 厚生労働省の承認について厚生労働省の通知である 疾病 事業及び在宅医療に係る医療体制について は, 疾病 事業及び在宅医療に係る医療体制に関する専門的な分野についてのものであって, 周産期医療の利用者である妊婦やその家族を含む一般世人が目にする機会が - 8 -

普通にあるとはいえないものである そして, 仮に一般世人においてその通知を目にする機会があったとしても, アドバンス助産師 の文字は, その通知内における指標例の項目として, 助産師数 と上下に並んで アドバンス助産師数 と記載されているにすぎず, かつ, その通知の内容自体に, アドバンス助産師 に言及した記述はないから, その通知の上記項目の配置から, 一般世人が アドバンス助産師 を 助産師 と同じ国家資格であると誤信することがあるとしても, これが国家資格とは異なるものであると理解することはできず, また, 厚生労働省が国家資格として アドバンス助産師 を承認したものとはいえない (4) 本願商標の登録を認めないことによる害悪について原告は, アドバンス助産師 制度を実施するに際し, 本願商標以外の名称を採択し, 使用することができたにもかかわらず, 本願商標を採択したものである そして, 本願商標については, これを登録し, その指定役務に使用することが商標法 4 条 1 項 7 号に該当するものであるか否かが問題であって, これと, 原告の事情により採択した名称の使用をコントロールする必要があることとは, 別の問題というべきものである したがって, そのような事情が存することが, 同号に該当する商標を登録しなければならない理由にはならない (5) 他の商標との均衡について商標法 4 条 1 項 7 号に該当するか否かは, 査定時又は審決時における個別具体的な事情に基づき判断されるものであるから, 原告の挙げた商標登録の例があるからといってその判断が左右されるべきものではない 第 5 当裁判所の判断 1 認定事実以下に掲記する証拠及び弁論の全趣旨によると, 次の事実が認められる (1) 原告の前身である特定非営利活動法人日本助産評価機構は, 平成 19 年 1 月に設立され ( 甲 4,37), 平成 20 年 4 月 8 日, 専門職大学院のうち助産分野の評価を行う認証評価機関として, 学校教育法 110 条の規定によって, 文部科学大 - 9 -

臣に認証された ( 甲 5,37,40) (2) 原告は, 平成 26 年 11 月 25 日, 母子を中心とした一般市民を対象として, 助産実践及び教育の第三者評価及び認証に関する事業を行うことで, 助産教育及び実践の質の向上と利用者の選択の利便を支援すると共に, その成果を助産教育機関 助産所 実践助産師 一般市民に情報開示し, 社会における助産サービスの質がより一層向上し, ひいては母子の保健 福祉の向上に寄与すること を目的として設立された ( 甲 2) 原告は, 引き続き, 専門職大学院の評価事業を行うほか, 助産師養成機関や助産所の第三者評価事業を行ってきた ( 甲 4,37) (3) 助産関連 5 団体は, 既に助産師資格を有する者のうち, 公益社団法人日本看護協会が開発した助産実践能力習熟段階 ( クリニカルラダー ) のレベルⅢである, 入院期間を通して, 責任をもって妊産褥婦 新生児の助産ケアを実践できる, 助産外来において, 個別性を考慮したケアを自律して提供できる, 助産外来において, 指導的な役割を実践できる, 院内助産において, 自律してケアを提供できる 及び ハイリスクへの移行を想起に発見し対処できる といったレベルに到達している者を アドバンス助産師 と認証する制度を創設し, 原告にその認証を行わせることとして, 原告は, 平成 27 年 8 月 1 日から, 認証申請の受付を開始した ( 甲 1,8~12,37) 原告は, 同年 12 月 25 日, 申請者のうち5562 人を アドバンス助産師 と認証した ( 甲 13,14,53) (4) 厚生労働省は, 平成 27 年 10 月 15 日, 第 2 回周産期医療体制のあり方に関する検討会を開催し, この中で, アドバンス助産師認証制度が紹介された ( 甲 15) (5) 原告は, 平成 28 年 12 月 24 日, 申請者のうち5440 人を アドバンス助産師 と認証した ( 甲 42,53) (6) 厚生労働省医政局地域医療計画課長は, 平成 29 年 3 月 31 日, 各都道府県衛生主管部 ( 局 ) 長に対する 疾病 事業及び在宅医療に係る医療体制について と題する通知において, 周産期医療の体制を構築するに当たっての現状把握のため - 10 -

の指標例として, アドバンス助産師数 を挙げた( 甲 48,49,51,52) (7) 病院によっては, ウェブサイトに アドバンス助産師 が病院内に存在することを記載し, 充実した周産期医療を提供できることを広報している病院がある ( 甲 17~24,26,27) (8) 原告は, アドバンス助産師 の認証を行う団体として, 類似の民間資格等が出現することを防ぐために本願商標の出願をした 2 判断 (1) 前記 1(3),(8) のとおり, アドバンス助産師 認証制度は, 既に助産師資格を持つ者であって, 一定の助産実践能力を有する者を アドバンス助産師 と認証するものであるところ, 原告は, アドバンス助産師 を認証する団体であることから, 本願商標の出願をしたものである そうすると, 本願商標は, 助産師でない者を 助産師 と称するために出願されたものではないから, 本願商標が登録されたからといって, 保助看法 42 条の3 第 2 項の規定に違反する事態が発生するおそれがあるということはできない (2) 本願商標のうち Advanced Midwife の文字部分の A dvanced, Midwife の各欧文字は, 上級の, 助産師 をそれぞれ意味する英語である ( 乙 3,4) から, Advanced Midwife の欧文字部分からは, 上級の助産師 の意味が生じるものと認められる また, 本願商標のうち, アドバンス助産師 の文字部分からは, 上級の助産師 という意味が生じるものと認められる そうすると, 本願商標は, 上級の助産師 の意味が生じる語を日本語表記及び英語表記で表示したものであって, 本願商標全体としても, 上級の助産師 の意味を生じるということができる ところで,1 前記 1(3) のとおり, アドバンス助産師 制度は, 助産関連 5 団体によって創設されたもので, アドバンス助産師 を認証するための指標は, 公益社団法人日本看護協会が開発したものであるから, その専門的知見が反映されている - 11 -

ものと推認されること,2 前記 1(1),(2) のとおり, 原告は, 専門職大学院の評価事業のほか, 助産師養成機関や助産所の第三者評価事業を行っており, 助産分野の評価を適切に行えるものと推認されること,3 前記 1(6) のとおり, アドバンス助産師数 は, 厚生労働省により周産期医療体制の現状把握のための指標例とされていること, 以上の事実からすると, アドバンス助産師 認証制度は, 一定程度の高い助産実践能力を有する者を適切に認証する制度であると評価されるべきものと認められる また, 前記 1(3),(5) のとおり, アドバンス助産師 認証制度は, 平成 27 年から実施され, 既に1 万人を超える アドバンス助産師 が存在すること, 前記 1(7) のとおり, 各病院において, ウェブサイトに アドバンス助産師 の認証を受けた助産師が存在することを記載し, 充実した周産期医療を提供できることを広報していることからすると, アドバンス助産師 は, 国家資格である助産師資格を有する者のうち, 一定程度の高い助産実践能力を持つ者を示すものであることが, 相当程度認知されているものと認められる そうすると, 本願商標に接する取引者, 需要者は, アドバンス助産師 を, 助産師のうち, 一定程度の高い助産実践能力を持つ者であると認識するということができるところ, その認識自体は, 決して誤ったものであるということはない (3) 国家資格の中には, 知識や技能の難易度等に応じて, 同種の資格の中で段階的にレベル分けされているものがあることが認められる ( 乙 21~28) が, 上級の資格を アドバンス と称する国家資格があるとは認められないこと ( 甲 28 参照 ) や前記のとおり アドバンス助産師 制度が相当程度認知されていることからすると, アドバンス助産師 が 助産師 とは異なる国家資格であると認識されるとは認められないし, 仮に, そのように認識されることがあったとしても, 以上の (1),(2) で述べたところからすると, 本願商標が国家資格等の制度に対する社会的信用を失わせる 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標 ということはできない (4) したがって, 本願商標が 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある - 12 -

商標 ( 商標法 4 条 1 項 7 号 ) に当たるということはできない 第 6 結論よって, 原告の請求には理由があるから, 本件審決を取り消すこととして, 主文のとおり判決する 知的財産高等裁判所第 2 部 裁判長裁判官 森義之 裁判官 永田早苗 裁判官 古庄研 - 13 -