野村資本市場研究所|公表された厚生年金基金連合会の株主議決権行使基準 (PDF)

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議決権行使に係る事務取扱手続

日本版スチュワードシップ コード についての第一生命の取組み 当社は 責任ある機関投資家 の諸原則 ( 日本版スチュワードシップ コード ) の趣旨に深く賛同し 受け入れることを表明し ます 当コードの原則 1 から 7 について 以下のような方針で取り組んでいきます 原則 1 機関投資家は スチュ

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(資料4)運用機関とのコミュニケーションの取り方や情報開示の方法等(案).pdf

議決権行使に関するガイドライン (日本株式)

Institutional Shareholder Services Sumitomo Fudosan Kanda Building 16F 7 Kanda Mitoshirocho Chiyoda-ku, Tokyo T: 各位 2017 年 10

ための手段を 指名 報酬委員会の設置に限定する必要はない 仮に 現状では 独立社外取締役の適切な関与 助言 が得られてないという指摘があるのならば まず 委員会を設置していない会社において 独立社外取締役の適切な関与 助言 が十分得られていないのか 事実を検証すべきである (2) また 東証一部上場

コーポレート ガバナンスに関する報告書の主な開示項目 コーポレート ガバナンスに関する報告書 記載項目 ( 内訳 ) 記載上の注意 基本的な考え方 ( 記載例 : コーポレート ガバナンスについての取組みに関する基本的な方針 目的 ) Ⅰ コーポレート ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成

8. 内部監査部門を設置し 当社グループのコンプライアンスの状況 業務の適正性に関する内部監査を実施する 内部監査部門はその結果を 適宜 監査等委員会及び代表取締役社長に報告するものとする 9. 当社グループの財務報告の適正性の確保に向けた内部統制体制を整備 構築する 10. 取締役及び執行役員は

ガイドライン

はじめに 当社の 議決権行使精査要領 は 中長期的な企業価値向上や 株主への利益還元姿勢 コーポレートガバナンス等の観点から 客観基準に基づくスクリーニングにより 論点のある議案を効率的かつ包括的に抽出することを目的に 1998 年度に策定したものです 策定以降 日本企業の置かれた状況や法令等の改正

Stewardship2017

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平成27年5月20日

< 本制度の仕組みの概要 > 5 ポイント付与 委託者 当社 3 自己株式の処分 1 役員株式交付規程の 制定 2 信託 < 他益信託 > を設定 ( 金銭を信託 ) 3 払込 受託者 ( 予定 ) 三井住友信託銀行 ( 再信託受託者 : 日本トラスティ サービス信託銀行 当社株式 株式交付信託 信

Ⅰ. 株主総会における議決権行使結果 (2015 年度 ) 当社は投資先企業の持続的成長をサポートし 中長期的な投資リターンの拡大を図ることを目的として 議決権行使基準を定めており 当該基準に則り 議決権行使を実施しています 2015 年度に株主総会が開催された国内上場企業のうち 当社の議決権行使の

止するとともに 取締役等に付与済みのストックオプションとしての新株予約権で未行使の ものにつきましては 本制度に基づく応分のポイントを付与することを条件として 当 該取締役等において権利放棄することといたします 2. 本制度の概要 (1) 本制度の概要本制度は 当行が拠出する金銭を原資として当行株式

【PDF】コーポレートガバナンス・ガイドライン

2. BIP 信託の仕組み 1 本株主総会決議 株式市場 9 残余財産の給付 8 残余株式の無償譲渡 消却 4 当社株式 5 配当 委託者 当社 受託者 ( 共同受託 ) ( 予定 ) 三菱 UFJ 信託銀行 ( 株 ) 日本マスタートラスト信託銀行 ( 株 ) 本信託 3 信託設定 7 当社株式等

平成 26 年 5 月 13 日 各 位 会社名カルビー株式会社代表者名代表取締役社長兼 COO 伊藤秀二 ( コード番号 :2229 東証第一部 ) 問合せ先上級執行役員財務経理本部長菊地耕一 (TEL: ) 業績連動型株式報酬制度の導入に関するお知らせ 当社は 平成 26

コーポレートガバナンス・ガイドライン

株主各位 平成 29 年 8 月 2 日東京都港区虎ノ門三丁目 1 番 1 号 ITbook 株式会社代表取締役会長兼 CEO 恩田饒 ストック オプション ( 新株予約権 ) の発行に関する取締役会決議公告 当社は 平成 29 年 7 月 19 日開催の取締役会において 当社取締役 執行役員および

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2 名以上の独立社外取締役の選任状況 2 名以上の独立社外取締役を選任する上場会社の比率は 市場第一部では 9 割を超え 91.3% に JPX 日経 400では 97.7% に 2 名以上の独立社外取締役を選任する上場会社 ( 市場第一部 ) の比率推移 ( 参考 ) 100% 88.0% 91.

取締役会規定

(6) 経営会議規程 (7) 取締役会議長 CEO COO および CFO 職務分掌規程 ( その他取締役または執行役の職務または権限を定める規程 ) (8) 取締役 執行役等の定年 任期 処遇等の基準 準則等について当会社としての内規を定める場合は 当該内規 (9) 取締役 執行役等のトレーニング

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

(2) 変更の内容 定款変更の内容は別紙のとおりであります (3) 日程 定款変更のための株主総会開催日平成 28 年 6 月 17 日 ( 金曜日 ) 定款変更の効力発生日平成 28 年 6 月 17 日 ( 金曜日 ) 以上 - 2 -

評議員選任 解任委員会について点検項目 説明 参考 1 評議員選任 解任委員会の設置について すべての法人 ( 現在, 評議員会を設置している法 定款例第 6 条 評議員選任 解任委員会 を設置する旨の定款変更を行っていますか ( 又は定款変更の準備をしていますか ) いる いない 人も含む ) に

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各 位 平成 29 年 3 月 31 日 会社名株式会社システムソフト代表者名代表取締役社長岡部正寛 ( 東証一部 コード 7527) 問合せ先執行役員管理本部長森玲子 TEL 募集新株予約権 ( 有償ストック オプション ) の発行に関するお知らせ 当社は 平成 29 年

コーポレート・ガバナンス基本方針

( 第 8 条から移動 ) 第 10 条 ( 単元未満株式の売渡請求 ) 当会社の単元未満株式を有する株主 ( 実質株主を含む 以下同じ ) は株式取扱規則の定めるところに従い その有する当会社の単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の当会社の株式を売渡すよう当会社に請求することができる 第 1

第 Ⅰ 章総則 ( 目的 ) 第 1 条本ガイドラインは 群栄化学工業株式会社 ( 以下 当社 という ) が 次に定める 社是 理念 実現のため ステークホルダーと協働して企業価値を向上させ 持続的に発展できるよう より良い経営を実現することを目的とする 2. 当社は GCIグループ基本理念 を制

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開示府令改正案(役員報酬の開示拡充へ)

2 政策保有株式に係る議決権行使の基準政策保有株式の議決権行使に当たっては 投資先企業の中長期的な企業価値向上が株主利益への向上にも繋がるものであることを前提とし 株主への還元方針 コーポレートガバナンスや企業の社会的責任への取組み等総合的観点から議決権を行使する (4) 買収防衛策は 経営陣 取締

平成 28 年 3 月 22 日 各 位 東京都千代田区麹町三丁目 2 番 4 号会社名株式会社スリー ディー マトリックス代表者名代表取締役社長岡田淳 ( コード番号 :7777) 問合せ先取締役新井友行電話番号 03 (3511)3440 ストック オプション ( 新株予約権 ) の取得及び消却


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( 除名 ) 第 9 条社員が次のいずれかに該当するに至ったときは 社員総会の決議によって当該社員を除名することができる (1) この定款その他の規則に違反したとき (2) この法人の名誉を傷つけ または目的に反する行為をしたとき (3) その他除名すべき正当な事由があるとき ( 社員資格の喪失 )

また 代表取締役社長直属の内部監査部門を設置し 法令遵守 内部統制の有効性と効率性 財務内容の適正開示 リスクマネジメントの検証等について 各部門 工場 グループ会社などの監査を定期的に実施し チェック 指導するとともに 監査役との情報共有等の連携を図っております 1-4( 中長期的な経営戦略等 )

( 別紙 1) BIP 信託の概要 株式市場 残余財産の給付4 本件株式 4 代金の支払い 1 株主総会決議 委託者 5配当 受託者( 共同受託 ) ( 予定 ) 三菱 UFJ 信託銀行 日本マスタートラスト信託銀行 本 BIP 信託株式 金銭 6 議決権不行使の指図93信託設定7 株式交付 8 残

2. 本制度の仕組み 株式市場 残余財産の給付残余株式の無償譲渡 消却94 当社株式 4 代金の支払 1 本株主総会決議 54配代当金の支6 委託者 議決権不行使の指図8当社 受託者( 共同受託 ) ( 予定 ) 三菱 UFJ 信託銀行 日本マスタートラスト信託銀行 BIP 信託 当社株式 金銭 4

募集新株予約権(業績条件付有償ストック・オプション)の発行に関するお知らせ

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(2) 取締役の選任通常の手続きにより選任される取締役候補者に対しては 原則として賛成する 但し 取締役候補者が 過去又は現在において反社会的行為等の不祥事に関して責任があると認められ 株主価値を最大化する経営を行うには相応しくないと判断される場合は 反対する また 不適切な経営判断により株主価値を

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1 制定の目的 方針 当社におけるコーポレートガバナンスを向上させるための枠組みである パーク 24 コーポレートガバナンスガイドライン を制定し コーポレートガバナンスの強化 充実に努めることで 当社の中長期的な価値向上と持続的成長を実現する コーポレートガバナンスに対する基本的な考え方公正で透明

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オムロン株式会社定款 第 1 章総則 ( 商号 ) 第 1 条当会社は オムロン株式会社と称し 英文では OMRON Corporation と表示する ( 目的 ) 第 2 条当会社は 次の事業を営むことを目的とする (1) 電気機械器具の製造および販売 (2) 制御機器 コンピュータ等の電子応用

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IR 活動の実施状況 IR 活動を実施している企業は 96.6% 全回答企業 1,029 社のうち IR 活動を 実施している と回答した企業は 994 社 ( 全体の 96.6%) であり 4 年連続で実施比率は 95% を超えた IR 活動の体制 IR 専任者がいる企業は約 76% 専任者数は平

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2. 本制度の一部改定について本制度の継続にあたり 本株主総会において承認を得ることを条件として 以下のとおり既に設定している信託の信託期間を延長するとともに 従前の制度から以下の点を一部改定します (1) BIP 信託の延長及び延長時における残存株式等の承継 2018 年 8 月 31 日に信託期

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まず 取締役会は委員会及び執行役の人事を決定する すなわち 各委員会の委員は取締役の中から取締役会の決議で選定する (400Ⅱ) 各委員会の委員の人数は3 人以上でなければならず (400Ⅰ) 過半数は社外取締役でなければならない 3 (400Ⅲ) 委員会の委員は他の委員及び執行役を兼ねることはでき

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直しも行う これらの事務については 稟議規程 文書管理規程 契約書取扱規程は管理本部長が所管 情報管理規程 情報セキュリティ管理規程はコンプライアンス推進部長が所管し 運用状況の検証 見直しの経過等 適宜取締役会に報告する なお 業務を効率的に推進するために 業務システムの合理化や IT 化をさらに


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直前事業年度における ( 連結 ) 売上高 100 億円未満 直前事業年度末における連結子会社数 10 社未満 4. 支配株主との取引等を行う際における少数株主の保護の方策に関する指針 5. その他コーポレート ガバナンスに重要な影響を与えうる特別な事情

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業活動を行う上で関わる顧客をはじめとするすべてのステークホルダーとの良好なネットワークおよび関係を構築 維持することが大切であると考えます そのために 以下のコーポレートガバナンス コードにおける基本的な考え方に則って コーポレート ガバナンスの充実に取り組みます (1) 株主の権利を尊重し 平等性

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アセット マネジメント 公表された厚生年金基金連合会の株主議決権行使基準 厚生年金基金連合会 ( 以下 連合会 という ) は 2003 年 2 月 20 日 インハウス運用分の国内株式についての株主議決権行使基準を公表した 同基準は 2003 年 4 月以降開催される株主総会に適用される 1. 株主議決権行使に関するこれまでの取り組み 連合会は 厚生年金基金の短期加入者や解散基金の加入者に対する年金給付のための資産運用を行っている その運用資産は約 5.4 兆円 (2002 年 3 月現在 ) であり その 33% を国内株式の運用に振り向けている 連合会は 1999 年には 運用基本方針において 受託者責任の観点から 委託先運用機関が投資先企業に対する議決権行使を適切に行うことを定めた 2001 年 10 月には 委託先運用機関向けに 議決権行使ガイドライン を策定し 議決権行使の体制整備や議決権行使についての結果の報告を求めている それによれば 2001 年度の決算株主総会において 連合会の委託先運用機関が 問題があるとして反対票を投じた主要な議案は 退任役員の退職慰労金贈呈 (75 社で反対または棄権 ) 監査役の選任(68 社で反対または棄権 ) 取締役の選任 利益等の処分などとなっている 1 今回公表された 株主議決権行使基準 は 連合会が 2002 年度にインハウス運用 ( 国内株式のインデックス運用 ) を開始したことを踏まえ 従来の委託先運用機関に対するガイドラインとは別に策定されたものである 2. 連合会の株主議決権行使基準 連合会の議決権行使基準は 1 議決権行使に関する基本的な考え方 2コーポレート ガバナンス原則 3 具体的行使基準 からなる 基準を貫く基本的な考え方は 企業に対して 1 長期的に株主利益を最大限尊重した経営を行うこと 2そのために経営の執行と監督の分離や社外取締役の登用など 企業内部に株主利益の立場から経営をチェックする仕組みを構築すること 3 企業経営に関する十分な質 量の情報開示と説明責任を果たすこと を求めるというものである そ 1 詳細は 連合会ホームページ <http://www.pfa.or.jp/> 上の公表資料を参照 1

資本市場クォータリー 2003 年春 の内容は 具体的には次のようなものである 1) 取締役会の構成 連合会は 企業が長期にわたり株主利益の最大化を図るという目的を達成するため 企業経営における執行と監督の機能を分離し 取締役会に株主利益の観点に立って最高経営執行者 (CEO) の経営執行を監督する機能を適切に果たすことを求めている このような観点から 具体的行使基準では 1 取締役会の規模は十分に議論を尽くすことができ 迅速な意思決定が可能な人数 (20 名以内 ) であること 2 取締役会の少なくとも三分の一は当該企業と利害関係を一切有しない独立した社外取締役とすること 3( 社内 ) 取締役の増員についてはその理由が明確に説明されていること などを求めている また 委員会等設置会社への移行を積極的に評価し 重要財産委員会制度や執行役員制度の導入にも肯定的に判断するとしている ただし 執行役員制度の下で 取締役全員が執行役員を兼務することは支持しないとしている 2) 取締役及び監査役の選任 連合会は ( 社内 ) 取締役の再任は 業績責任と不祥事責任という二つの観点から判断されるとしている すなわち 当期を含む過去 3 期連続赤字決算かつ無配 あるいは過去 5 期において当期最終利益を通算してマイナスである等 株主価値の毀損が明らかな場合 在任期間中に当該企業において法令違反や反社会的行為等の不祥事が発生し 経営上重大な影響が出ているにもかかわらず 再任候補者にあげられている場合 については 肯定的な判断はできない つまり議案に対して反対票を投じたり棄権したりするとしている なお 不祥事が経営上及ぼした影響については 売上高や収益の状況 株価動向 社会的評価等を総合的に勘案して判断する としている なお 運用機関は 限られた時間の中で効率的に議案を精査する必要があることから このような業績基準を使って 精査の対象とする企業を抽出するスクリーニングを実施している例もみられる これに対し 連合会は すべての議案を精査すべきであるとのスタンスに立ち 具体的行使基準に業績責任基準を盛り込んだのである 一方 社外取締役の選任議案に対しては 当該企業と利害関係を一切有しない独立した立場であること と 他企業の社外取締役等を兼任している場合 当該企業の業務に支障を来さない範囲内であること という観点から判断する また 監査役に対しても 当該企業から独立した立場であること を求め 取締役と監査役に交互に就任している候補者 は支持しないものとしている そのほか 社外取締役や監査役の増員には原則として賛成するが 取締役の増員およ 2

公表された厚生年金基金連合会の株主議決権行使基準 び監査役の減員には明確な理由の説明がなければ反対もあり得るとしている 3) 役員報酬等に関する議案 連合会の基準では 役員報酬や退職慰労金についても 取締役の選任と同様の業績責任が求められている 具体的には 次のような基準が設けられている 当期を含む過去 3 期連続赤字等で株主価値の毀損が明らかな場合は 役員報酬の減額または無報酬とすることを求める 3 期連続赤字等により株主価値の毀損が明らかな場合や 不祥事に関与して辞任 退任している場合には退任取締役や退任監査役の退職慰労金贈呈議案を支持しない さらに 役員報酬額の改定では 大幅引き上げの場合は十分な根拠が説明されることを要し 役員数を減少する場合には報酬総額の削減もするべきとしている また 独立性を重視する観点から 社外取締役や社外監査役への退職慰労金贈呈議案は支持しない ストック オプション ( 新株予約権 ) の付与に関しては 株式価値の大幅な希薄化 ( 潜在的希薄化比率が発行済株式総数の 5% を超える場合 ) を招き 株主利益の減少となることが懸念される場合 行使価格の引下げおよび権利付与対象者の範囲と業績向上との関連性が強くない場合には支持しない 4) 資本政策等に関する議案 資本政策等に関する議案では 利益処分案や組織変更議案について次のような場合に支持しないとしている 利益処分案で 長期の業績不振 厚い自己資本を有しながら適切な事業計画もなく内部留保を積み増しているといった場合 合併 株式交換 会社分割等の組織変更には合併比率等に関する中立的な第三者による算定根拠が示され 株主価値を毀損するものでないことが明らかな場合 また 優先株等の発行や 著しく財務内容が悪化した企業が事業再編の一貫として実施する第三者割当て増資については 個別に検討するものとしている 5) その他の議案 定款変更に関する議案に関しては 商号や事業の目的など概ね原則として賛成となっている 注意を要するのは 特別決議の定足数を緩和する場合に具体的な説明を求めたり 授権株数について既存株主の持ち分に関する大幅な希薄化が懸念される場合には支持しないとしている点である 会計監査人の選任に関しては その独立性に疑義がある場合には支持しない また 3

資本市場クォータリー 2003 年春 監査方針について会社と対立したことによって会計監査人を変更する場合には 当該会社の他のすべての議案も精査するとしている 株主提案については 基本的に 株主価値の増大に寄与するものかどうかを判断基準とする 専ら特定の社会的 政治的問題を解決する手段として利用されると認められる場合は支持しないとしている 3. 米国機関投資家の議決権行使基準との比較 連合会の基準は 米国最大の公的年金基金であるカルパースなど米国機関投資家が活用している議決権行使基準などを参考に策定されている 2 しかし 両者を比較すると 日米における会社法や取締役会の機能の違いから 次のような相違点がみられる 1) 取締役の選任をめぐる考え方の違い 連合会が示した 企業経営における執行と監督を分離し 取締役会に対して株主利益の観点から経営を監督するよう求める考え方は 米国機関投資家の議決権行使基準にもみられる ただし 米国の場合 取締役の選任議案に対する判断の基準は 独立性と取締役会への出席率など時間的貢献の有無が中心とされており 業績責任や不祥事責任を問うといった考え方はみられない このような違いがみられるのは 米国では 取締役会の任務は あくまで業績向上へ向けた責任や不祥事を防止するための内部統制システムを整備する責任を負う CEO 以下経営陣を監督することにあるとの考え方が強いためである 業績悪化や不祥事といった事態が生じた場合 株主総会で株主がチェックするまでもなく 取締役会が CEO の解任などの対応を講じることが期待されているのである これに対してわが国では 社内取締役がほとんどであるため 取締役会が経営監督と業務執行という二つの機能を兼ね備えるケースが多い 連合会は こうした現実を考慮し 執行と監督を分離すべきとの考え方を示す一方で 実際の議決権行使にあたっては 業績責任や不祥事責任を考慮しながら取締役選任議案に対応するという立場をとっている なお 米国の機関投資家も 業績の推移に注目していないわけではない ガバナンスの改善によってパフォーマンスを高めようとするフォーカス ファンドは業績基準を議決権行使にあたって活用しているし 一般の運用機関であっても 直接対話や株主提案を行う目的のために対象企業を抽出する基準として業績に着目することは珍しくない 2 取締役会の構成について 三分の一以上を社外取締役にすることが望ましいという行使基準は 英国の統合規範を参考にしているようである 4

公表された厚生年金基金連合会の株主議決権行使基準 2) 役員報酬をめぐる考え方の違い わが国では 通常 役員報酬や役員退職慰労金の贈呈に関して株主は承認する権限があるものの その具体的な支給方法については 会社の内規に基づき 取締役会に一任することが求められる しかしながら ほとんど社内取締役で占められる取締役会では 報酬や退職慰労金の支給が各取締役の功績に見合う適正なものであるかどうかのチェックは難しい したがって 連合会の議決権行使基準では 業績という尺度に基づいて そうした一任要請を支持するかどうかを決めるとしている これに対して 米国では 社外取締役が多数を占める報酬委員会によって 報酬方針が定められるため 株主による直接のチェックは原則として必要ないものと考えられている 3 そのため 議決権行使基準の中に業績不振時に報酬を引下げるといった項目が盛り込まれることは少ない 3) ストック オプションをめぐる違い 米国では 一部企業におけるストック オプションの濫用が大きな問題となっていることもあり 株式を活用した報酬制度をめぐっては 議決権行使基準においても 詳細な規定が置かれることが多い 例えば 1 潜在的な稀薄化の程度 2 行使価格変更の有無 3 行使制限期間短縮の有無 4リロードオプション 4 の有無 5 行使価格が時価以下のオプションかどうか 6エバーグリーン オプション 5 かどうか といった点を精査して議案に対する態度を決めることとされている これに対して わが国では ストック オプションの活用はそれほど広範にはみられないことから 連合会の基準でも多くの判断要素を盛り込んではいない 4) 買収防衛策への対応をめぐる違い 米国では 敵対的な買収を防衛する方策として 特定の株主に有利な価格で株式を割り当てるポイズン ピルや 敵対的買収が成功すれば高額の役員報酬を支払われねばならなくなるゴールデン パラシュートなどを定款に盛り込んでいる企業が少なくない そこで 多くの機関投資家は 議決権行使基準において 敵対的買収に対する防衛策をめぐる考え方を示している 3 米国投資家の間では GE のジャック ウェルチ会長の退職後に支払われている巨額の繰延べ報酬が表面化し 問題視されるようになった 株主アクティビストとして有名な AFL-CIO( 米国労働組合産業組織協議会 ) は CEO 引退後の厚遇には株主の承認が必要として GE やバンク オブ アメリカなどに対して 改善を求め 数社がそれに応じている 4 権利行使したオプション分を随時追加発行するもの 5 発行済株式の 1 2% に相当する株数を付与するオプションを毎年発行するもの 5

資本市場クォータリー 2003 年春 これに対して 連合会基準には 買収防衛策を正面から取り上げた項目はみられない 特別決議に関する定足数の緩和措置について 変更理由等の具体的説明がない場合には支持できないとしている程度である 4. おわりに 今回の株主議決権行使基準は 連合会という資産運用業界において重要な位置を占める機関が策定した詳細かつ具体的な基準であり 今後 他の年金スポンサーや運用機関が作成する議決権行使基準の内容にも 影響を及ぼすものと考えられる しかしながら わが国の企業が開示している議決権行使のための参考書類だけでは この詳細な行使基準を正確に適用していくことは容易ではなかろう 連合会も この点を意識しているものと思われ 議案に対する明確な説明や根拠が示されない場合には支持できないという基準を設けるなど 企業側からのより一層のディスクロージャーの充実を求める姿勢を打ち出している 上場企業の側でも コーポレート ガバナンスの重要性とそれに対する投資家の関心の高まりを十分に認識し 的確な議決権行使を可能にするような情報を積極的に開示していくことが求められよう ( 橋本基美 ) 6