平成 25 年 2 月 18 日共に語ろう高レベル放射性廃棄物大阪ワークショップ 1 放射性廃棄物の地層処分について 東京大学大学院工学系研究科原子力専攻 木村浩
2 放射性廃棄物とは 放射性物質を含む廃棄物のこと ただし ここで扱うのは 事業から出た 放射性廃棄物 高レベル放射性廃棄物 : ガラス固化体 低レベル放射性廃棄物 : 高レベル放射性廃棄物以外の放射性物質を含む廃棄物
3 地層処分とは 放射性廃棄物の処分方法のひとつ 放射性廃棄物の種類によって さまざまな処分方法が実施 検討されている 浅地中処分 浅地中トレンチ処分 浅地中ピット処分 余裕深度処分 地層処分
4 処分方法 処分方法概要廃棄物の例 浅地中処分 トレンチ処分ピット処分 余裕深度処分 地層処分 人工構築物を設けない浅地中への埋設処分コンクリートピットを設けた浅地中への処分 一般的な地下利用に対して十分余裕を持った深度 ( 地下 50~100m) に処分地下 300mより深い地層中に処分 コンクリート 金属の廃棄物等廃液 フィルター 消耗品 ( 手袋等 ) 等の廃棄物制御棒 炉内構造物等の廃棄物 TRU 廃棄物 ( 一部 ) ガラス固化体 低レベル放射性廃棄物 TRU : transuranic (transuranium)( 超ウラン ) ウランよりも原子番号の大きい元素のこと 高レベル放射性廃棄物
5 原子力委員会新計画策定会議資料を一部修正地下 300m より深い地層 25m 50m 100m 300m 0m 浅地中トレンチ処分浅地中ピット処分余裕深度処分ウラン廃棄物長半減期低発熱放射性廃棄物発電所廃棄物 研究所等廃棄物高レベル放射性廃棄物地層処分放射能レベル低高 ( T R U 廃棄物 )
高レベル放射性廃棄物 6 高レベル放射性廃棄物とは 原子力発電 燃料ペレット 再処理 プルトニウム ウランと
7 NUMO 公募関係資料 より抜粋
8 高レベル放射性廃棄物の特性 放射性物質のかたまり ただし ウラン プルトニウムは取り出されている 物質が外にでないようにするのが大切 強い放射能を持つ = 強い放射線を出す できたてで 至近であれば 20 秒で即死のレベル だんだん弱くなるが 自然のレベルには5 万年程度 中性子線はほとんど出ないので 遮蔽しやすい できたときの表面温度は 200 できたのち 30 年 ~50 年は冷却 ( 六ヶ所村 )
9 放射能と放射線 放射線 放射性物質 放射能 ( 放射線を出す能力 )
10 閉じ込めと遮へい 放射線 閉じ込め 放射性物質 放射能 ( 放射線を出す能力 ) 遮へい
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現在 貯蔵中 12 貯蔵管理中 1, 702 本 ( 平成 22 年 10 月末現在 ) 既に発生約 23,100 本相当 ( 平成 21 年 12 月末 ) 1 1: 特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画 ( 平成 20 年 3 月 14 日閣議決定 ) における見込み NUMO 公募関係資料 に加筆
13 地層処分 地下 300m より深く埋める 放射性物質を閉じ込める NUMO 公募関係資料 に加筆
14 ウラン鉱石レベル ( 目安 ) 数万年 隔離 希釈分散 処分概念 最低でも 1000 年間は工学的に 隔離 を保証しようとしている 核燃料サイクル開発機構 (1999): わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性 - 地層処分研究開発第 2 次取りまとめ -, 分冊 2 地層処分の工学技術, に追記
15 補足 : 他の処分方法の検討も NUMO 公募関係資料 に加筆
16 緩衝材 ( ベントナイト ) NUMO 公募関係資料 に加筆
17 地上は 1~2km 2 程度 地下は最大でも 10km 2 程度 NUMO 公募関係資料 に加筆
18 六ヶ所村から輸送 NUMO 公募関係資料 より抜粋
19 順番につくり 置いて 埋める NUMO 公募関係資料 より抜粋
20 閉鎖後!? NUMO 公募関係資料 に加筆
21 別の廃棄物も地層処分へ NUMO ホームページより抜粋
地層処分を行う 低レベル放射性廃棄物とは 22 原子力発電 地層処分へ 廃棄物の一部を 低レベル放射性 燃料ペレット 再処理 プルトニウム ウランと 高レベル放射性廃棄物
23 具体的には 平成 20 年 3 月末ドラム缶 145,000 本分 NUMO 公募関係資料 に加筆
24 同時に地層処分することも選択可能 NUMO ホームページより抜粋
25 処分事業の進め方 平成 20 年度原子力白書に加筆
方針検討段階 公募中 文献調査 概要調査 精密調査 建最設終地処の分選施定設 申請 安全審査 (H23 年 8 月現在 ) 建設 操業等 26 日本 ( 公募中 ) 中国 ( 甘粛省北山ほか ) フランス ( ビュール近傍 ) *4 フィンランド ( オルキルオト ) 米国 ( ユッカマウンテン ) *6 韓国 カナダ *1 スイス * 2 英国 *3 ドイツ ( ゴアレーベン ) *5 スウェーデン ( フォルスマルク ) *1: サスカチュワン州 オンタリオ州の 8 地点に対し初期スクリーニングが行われ 7 地点で良好な結果が得られている *2: 連邦政府が 3 つの候補サイト地域を公表 (2008 年 10 月 ) し 審査等を実施中 *3: カンブリア州 (2008 年 12 月 ) と同州内の 2 つの市 (2008 年 7 月 2009 年 2 月 ) が関心表明を政府に提出し 初期選別を実施 2010 年 10 月に初期選別結果の報告書が公表された *4: 実施主体である ANDRA が詳細調査を行う候補サイト区域 ( ビュール地下研究所近辺 30km 2 の区域 ) を政府に提案 (2009 年 12 月 ) し 2010 年 3 月に政府が了承 *5: 2009 年秋 ゴアレーベンでの探査凍結を解除する方針が示され 2010 年 11 月に同サイトでの探査活動を再開 *6: 現政権はユッカマウンテン計画を中止する方針 2010 年 3 月 DOE( 連邦エネルギー省 ) は許認可申請の取下げ申請書を NRC( 原子力規制委員会 ) に提出し NRC が取扱いを検討中 また DOE は代替方策を検討するために特別委員会 ( ブルーリボン委員会 ) を設置 (2010 年 1 月 ) して検討を行っており 2011 年 7 月 29 日にドラフト報告書が公表された 注 ) 国旗に括弧が付された国は 現段階での事業の進捗を示しているものの 計画の中止などで変更があり得る
参考資料 27
28 エネルギー白書 2012
29 エネルギー白書 2012
30 エネルギー白書 2012
31 エネルギー白書 2012
32 原子構造と放射線 重粒子線 アルファ線 ( ヘリウム原子核 ) 原子構造 陽子線 中性子線 ベータ線 ( 電子線 ) 陽子 中性子 電子 ガンマ線 X 線
33 放射線の遮へい あとみん http://www.atomin.go.jp/index.html
34 放射線の生き物への影響 X 線を照射された様々な生物の半数致死線量 ゾウリムシ 3,500 (Gy Sv) アメーバー 1,000 酵母 300 大腸菌 56 うさぎラット 8.4 6.8 マウスサルヒト 7.0 5.3 4.0 イヌ 3.7
35 放射線の 人体影響 放射線影響協会 放射線がわかる本 http://www.rea.or.jp/
日常生活と放射線 ブラジル ガラパリの放射線 ( 年間 大地などから ) 自然放射線 放射線の ( ミリシーベル量ト ) 人工放射線 胸部 X 線コンピュータ断層撮影検査 (CT スキャン )(1 回 ) 36 宇宙から 0.39 1 人当たりの自然放射線 ( 年間 ) 大地から 0.48 ( 世界平均 ) 食物から 0.29 一般公衆の線量限度 ( 年間 ) ( 医療は除く ) 岐阜 神奈川 吸入により 1.26 ( 主にラドン ) 国内自然放射線の差 ( 年間 ) ( 県別平均値の差の最大 ) 胃の X 線集団検診 (1 回 ) 東京 - ニューヨーク航空機旅行 ( 往復 ) ( 高度による宇宙線の増加 ) 胸の X 線集団検診 (1 回 ) 原子力発電所 ( 軽水炉 ) 周辺の線量目標値 ( 年間 ) 人工放射線 TRU 廃棄物からの地下水等の媒介による年間最大線量 処分後約 1 万年後に最大 高レベル放射性廃棄物からの地下水等の媒介による年間最大線量 処分後約 80 万年後に最大 六ヶ所再処理工場からの放出により 施設周辺で受ける線量評価値 ( 年間 ) 資源エネルギー庁 原子力 2008 に一部加筆
37 使用済み燃料の貯蔵状況 平成 21 年度原子力白書
これまでの公募に係る検討の状況 38 報道開始時期 自治体動機検討期間 2003.4 福井県和泉村財政再建 地域振興 6 日 2003.12 高知県佐賀町 ( 不明 ) 約 9 ヶ月 2004.4 熊本県御所浦町議会からの要請 1 日 2005.1 鹿児島県笠沙町財政再建 地域振興 2 日 2005.7 長崎県新上五島町 ( 不明 ) ( 不明 ) 2005.10 滋賀県余呉町 ( 不明 ) 約 4 ヶ月 2006.8 鹿児島県宇検村財政再建 地域振興 4 日 2006.8 滋賀県余呉町 ( 再 ) 財政再建 地域振興約 3 ヶ月 2006.9 高知県津野町財政再建 地域振興約 2 ヶ月 2006.9 高知県東洋町財政再建 地域振興約 9 ヶ月 2006.12 長崎県対馬市 ( 不明 ) 約 1 ヶ月 2007.2 福岡県二丈町 ( 不明 ) ( 不明 ) 2007.3 鹿児島県南大隅町財政再建 地域振興 ( 不明 ) 2007.7 秋田県上小阿仁村財政再建 地域貢献 5 日 日本原子力学会 2009 年春の年会古川匡ら
国名廃棄物形態実施主体 ( 形態 ) 米国 フィンランド 使用済燃料 ガラス固化体 使用済燃料 スウェーデン使用済燃料 フランス ドイツ スイス 英国 カナダ ガラス固化体 使用済燃料 ガラス固化体 使用済燃料 ガラス固化体 ガラス固化体 ( 今後 使用済燃料も対象となる可能性がある ) 使用済燃料 DOE OCRWM [ エネルギー省民間放射性廃棄物管理局 ] ( 国 < 連邦政府 >) Posiva [ ポシヴァ社 ] ( 民間会社 ) SKB 社 [ スウェーデン核燃料 廃棄物管理会社 ] ( 民間会社 ) ANDRA [ 放射性廃棄物管理機関 ] ( 商工業的性格を有する公社 ) BfS [ 連邦放射線防護庁 ] ( 国 < 連邦政府 >) NAGRA [ 放射性廃棄物管理共同組合 ] ( 発生者出資の共同組合 ) NDA [ 原子力廃止措置機関 ] ( 国 < 外郭公共団体 >) NWMO [ 核燃料廃棄物管理機関 ]( 非営利法人 ) 各国の状況 処分地 ( 候補地 ) ネバダ州ユッカマウンテン ユーラヨキ自治体オルキルオト エストハンマル自治体フォルスマルク 候補サイトとなる区域 (ZIRA) を特定 ( ビュール地下研究所近傍 ) ニーザーザクセン州ゴアレーベン 未定 未定 未定 操業予定 経緯 状況 1983 年よりサイト選定開始 ( 実施主体による候補地絞り込み ) 2002 年処分地が決定 2020 年頃 2008 年建設認可申請 2009 年ユッカマウンテン計画は中止 (2010 年代替案の検討開始 ) 1983 年よりサイト選定開始 ( 実施主体による候補地絞り込み ) 2001 年議会承認により処分地が決定 2020 年頃 2004 年より 地下特性調査施設の建設を開始 精密調査等を実施中 2012 年に建設の許可申請を予定 1992 年よりサイト選定開始 ( 公募と申し入れ方式の組合わせ ) 2002 年より 処分候補地を含む2 自治体で調査を実施中 2025 年頃 2009 年にSKB 社が処分場をフォルスマルクに決定 2011 年に立地 建設の許可申請を予定 2025 年に試験操業開始 1980 年代よりサイト選定を開始するも 反対運動により中断 1991 年放射性廃棄物管理研究法により 地層処分 核種分離 変換 長期地上貯蔵の3 研究を実施 2025 年頃 2006 年に地層処分を基本方針とする放射性廃棄物等管理計画法を制定 ( 地下研究所による調査対象地層でのサイト決定を規定 ) 2009 詳細調査の候補サイトを政府に提案し 政府が了承 2014 年末迄に処分場の設置許可を申請 1979 年ゴアレーベン サイトでの適合性調査 2035 年頃 2000 年適合性調査一時中断 2009 年政府が適合性調査凍結撤廃の方針を提示 1970 年代後半よりNAGRAが 処分の可能性調査を開始 2008 年 4 月に連邦政府がサイト選定基準や手続を定めた特別計画 地層処分場 を策定 2008 年 10 月にNAGRAが候補サイト地域を提案しサイト選定を開始 2050 年頃 2008 年 NAGRAの検討結果に基づいて 連邦政府が3つの候補サイト地域を公表し 審査等を実施中 2018~19 年 概要承認によりサイトが決定予定 ( その後 地下での精密調査等を開始 ) 2006 年 CoRWMによる管理方法検討 勧告 政府による管理方針案の決定 2008 年管理方針に係る白書によりサイト選定開始 ( 公募方式 ) 2040 年頃 2008~9 年にかけ カンフ リア州と同州内の2つ市が関心表明を政府に提出し 初期選別を実施 2010 年英国政府が英国地質調査所 (BGS) による初期選別結果の報告書を公表 2002 年に核燃料廃棄物法に基づきNWMO 設立 廃棄物管理アプローチの検討開始 2035 年頃 2007 年廃棄物管理アプローチを 適応性のある段階的管理 (APM) に決定 2010 年サイト選定計画を策定し サイト選定開始 ( 公募方式 ) 39 資源エネルギー庁資料
革新的エネルギー 環境戦略平成 24 年 9 月 14 日エネルギー 環境会議決定 40 使用済核燃料の問題 すなわち原子力のバックエンドの問題は解決できるのかといった原子力に対する不安や懸念に対して どう克服するかを示す必要がある 特に 今回の選択を契機に 改めて浮き彫りになった核燃料サイクル政策を含む原子力のバックエンドの問題に正面から取り組んでいく必要がある 長い間 私たちは使用済核燃料の処理や処分の方法に目途が立っていないことに 目を背けてきた この問題には 過去の長い経緯とその間の青森県の協力があったという事実に 消費地も含めて国民全体で真摯に向き合うところから始めた上で 今回こそ先送りせずに解決の道を見出していく
革新的エネルギー 環境戦略核燃料サイクルについて 41 直接処分の研究に着手する もんじゅ については 国際的な協力の下で 高速増殖炉開発の成果の取りまとめ 廃棄物の減容及び有害度の低減等を目指した研究を行うこととし このための年限を区切った研究計画を策定 実行し 成果を確認の上 研究を終了する 廃棄物の減容及び有害度の低減等を目的とした使用済核燃料の処理技術 専焼炉等の研究開発を推進する バックエンドに関する事業については 民間任せにせず 国も責任を持つ 国が関連自治体や電力消費地域と協議をする場を設置し 使用済核燃料の直接処分の在り方 中間貯蔵の体制 手段の問題 最終処分場の確保に向けた取組など 結論を見出していく作業に直ちに着手する