原判決は, 控訴人ら及び C の請求をいずれも棄却したので, 控訴人らがこれを不服として控訴した 2 本件における前提事実, 関係法令の定め, 争点及びこれに対する当事者の主張は, 後記 3 のとおり, 原判決を補正し, 後記 4 のとおり, 当審における当事者の主張 を付加するほかは, 原判決 事

Similar documents
控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

(イ係)

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

いう ) に対し, 本件周辺道路整備工事の係る公金の支出 ( ただし, 支出命令を除く ) の差止めを求めるとともに, 文京区と東京大学との間で締結した 小石川植物園と区道の整備に関する基本協定書 による本件周辺道路整備工事に関する基本協定 ( 以下 本件基本協定 という ) に基づく年度毎の協定の

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

平成17年度財団法人東京都体育協会に対する補助金交付要綱

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

11総法不審第120号

旨の申告 ( 以下 本件申告 という ) をしたところ, 処分行政庁から, 本件不動産取得税を還付しない旨の処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 処分行政庁が所属する東京都を被告として, 本件処分の取消しを求める事案である 原判決は, 控訴人の請求を棄却したので, これを不服とする控

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

平成  年(オ)第  号

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

 

21855F41214EA DB3000CCBA

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

賦課決定 ( 以下 本件賦課決定 といい, 本件更正と併せて 本件更正等 という ) を受けたため, 本件更正は措置法 64 条 1 項が定める圧縮限度額の計算を誤った違法なものであると主張して, 処分行政庁の所属する国に対し, 本件更正等の一部取消し等を求める事案である 原審は, 控訴人の請求をい

私立幼稚園教育振興補助金交付要綱 ( 趣旨 ) 第 1 県は, 私立幼稚園の教育条件の維持及び向上並びに私立幼稚園に在園する幼児に係る修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立幼稚園の経営の健全性を高め, もって私立幼稚園の健全な発達に資するため, 私立幼稚園における教育に係る経常的経費について,

48

平成  年(あ)第  号

平成14年度財団法人東京都歴史文化財団

市町村合併の推進状況について

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

株式等に係る譲渡損失の額を控訴人申告に係る3196 万 8863 円から813 万 9478 円と更正したため 控訴人が 処分行政庁の属する国に対し 本件更正処分のうち上記更正に係る部分が違法であると主張してその取消しを求める事案である 原判決は 控訴人の請求を棄却したため 控訴人が控訴した 1 法

平成  年(行ツ)第  号

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

国籍確認請求控訴事件平成 12 年 11 月 15 日事件番号 : 平成 12( 行コ )61 大阪高等裁判所第 4 民事部 裁判長裁判官 : 武田多喜子 裁判官 : 正木きよみ 松本久 原審 : 大阪地方裁判所平成 11 年 ( 行ウ )54 < 主文 > 一. 原判決を 取り消す ニ. 訴訟費用

* 1.請求の要旨

審決取消判決の拘束力

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

11総法不審第120号

Microsoft Word - 文書 1

い ( ただし 当該書面を交付しないで是正の要求等をすべき差し迫った必要がある場合 は この限りでない ) こととされていることに留意すること (2) その他地方自治法第 245 条の5 第 5 項の規定により 是正の要求を受けた地方公共団体は 当該事務の処理について違反の是正又は改善のための必要な

11総法不審第120号

にもかかわらず同項を適用して本来許容され得る範囲を超えて容積率の緩和を許可している点で違法である,2 本件確認処分は, 違法な本件許可処分を前提としているから違法であるなどとして, 本件許可処分及び本件確認処分の各取消しを求める事案である 2 原審は, 控訴人 D 寺及び同 Eの訴えは, 同控訴人ら

最高裁○○第000100号

松本市補助金交付規則 昭和 37 年 7 月 27 日規則第 16 号改正昭和 45 年 9 月 12 日規則第 31 号昭和 53 年 12 月 8 日規則第 25 号昭和 63 年 4 月 1 日規則第 18 号 ( 目的 ) 第 1 条この規則は 法令又は条例等に特別の定めのあるもののほか 補

平成 27 年度 特定行政書士法定研修 考査問題 解答と解説 本解答と解説は 正式に公表されたものではなく 作成者が独自に作成したものであり 内容の信頼性については保証しない 以下の事項に全て該当 遵守する場合にのみ 利用を許可する 東京都行政書士会葛飾支部会員であること 営利目的でないこと 内容を

厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律

4 処分行政庁が平成 25 年 3 月 5 日付けでした控訴人に対する平成 20 年 10 月 1 日から平成 21 年 9 月 30 日までの事業年度の法人税の再更正処分のうち翌期へ繰り越す欠損金 4 億 万 6054 円を下回る部分を取り消す 5 処分行政庁が平成 25 年 3 月

第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項に より いずれも棄却すべきである 第 5 調査審議の経過審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日審議経過 平成 30 年 3 月 6 日 諮問 平成 30 年 4 月 26 日審議 ( 第

定している (2) 通達等の定めア 生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について ( 昭和 29 年社発第 382 号厚生省社会局長通知 以下 昭和 29 年通知 という 乙 1) は, 一項本文において, 生活保護法第 1 条により, 外国人は法の適用対象とならないのであるが, 当分の間,

無い (3) 特定市が振興協会会長 Aと市教育委員会とで一体に推進した当該文化事業は事業の実施前と実施後のまちの変化における事業の効果について国への報告義務があり, 公正に適法に事業を行う責務の存在は当該文化事業の目標の1は中心市街地の賑わいの促進にあって中心市街地活性化ソフト事業であって公開されて

19 条の4 第 2 項の規定により, 特別職の公務員であるから, 本件不開示情報は, 公務員としての職務遂行情報であり, 精神保健指定医が, 客観的な生体検査もなく, ただその主観に基づいて, 対象者を強制入院させることができるという性質の資格であること, 本件開示請求に係る精神保健指定医らが対象

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

事実及び理由控訴人補助参加人を 参加人 といい, 控訴人と併せて 控訴人ら と呼称し, 被控訴人キイワ産業株式会社を 被控訴人キイワ, 被控訴人株式会社サンワードを 被控訴人サンワード といい, 併せて 被控訴人ら と呼称する 用語の略称及び略称の意味は, 本判決で付するもののほか, 原判決に従う

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

11総法不審第120号

主 文 本件控訴を棄却する 控訴費用は, 控訴人の負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 外務大臣が控訴人に対して平成 18 年 4 月 27 日付けでした行政文書の開示請求に係る不開示決定 ( 情報公開第 号 ) を取り消す 3 訴訟費用は, 第 1,2 審を通じ,

豊中市ブロック塀等撤去補助金交付要綱 平成 30 年 8 月 10 日実施 ( 目的 ) 第 1 条この要綱は 本市の区域内に存する道路に面するブロック塀等の撤去を実施する者に対し 豊中市ブロック塀等撤去補助金 ( 以下 補助金 という ) を交付することについて必要な事項を定め もって地震等により

11総法不審第120号

茨木市人権擁護委員会事業補助要綱 茨木市人権擁護委員会補助要綱 ( 昭和 58 年 12 月 1 日実施 ) の全部を改正する ( 目的 ) 第 1 この要綱は 茨木市人権擁護委員会が実施する事業に対し 市が補助金を交付することにより人権擁護活動を促進し もって自由人権思想の普及高揚を図ることを目的

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

式会社 (A) の債務に係る保証債務及び清算人を務める株式会社 (B) の債務の履行にそれぞれ充てた控訴人が 上記各債務の履行に伴って生じた求償権を一部行使することができなくなったとして これに相当する金額につき 譲渡所得の金額の計算上なかったものとみなす所得税法 ( 法 )64 条 2 項の規定を

PowerPoint プレゼンテーション

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

Ⅱ. 主な内容 第 1 部公益法人の概況 1. 法人数 平成 29 年 12 月 1 日の公益法人は 9,493 法人 ( 前年比 +35) である 公益法人数の変動は 公益認定又は移行認定により増加し 法人の解散 公益認定の取消し及び合併に伴う減少がある ( 注 ) 公益認定 : 一般法人で公益認

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

書 ( 様式第 1 号 ) に次に掲げる書類を添付して 市長に提出しなければならない (1) 発表会開催要項又はこれに準ずる書類 (2) 収支予算書 (3) 発表会に参加する者の名簿 ( 学生等により構成される団体が補助金の交付を受けようとする場合に限る ) (4) 前 3 号に掲げるもののほか 市

処分済み

ない 4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙 商標権目録 記載の商標権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が原判決別紙 被告標章目録 記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する行為が, 控訴人の商標権を

最高裁○○第000100号

13 条,14 条 1 項に違反するものとはいえない このように解すべきことは, 当裁判所の判例 ( 最高裁昭和 28 年 ( オ ) 第 389 号同 30 年 7 月 20 日大法廷判決 民集 9 巻 9 号 1122 頁, 最高裁昭和 37 年 ( オ ) 第 1472 号同 39 年 5 月

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

公表監第 3 号 地方自治法第 199 条第 9 項の規定により提出した定期監査 ( 環境局 ) 出資団体監査 ( 財団法人西宮市都市整備公社 ) 財政援助団体監査 ( 特定非営利活動法人西宮市シニ アライフ協会 ) 指定管理者監査 ( パーク二四 株式会社 ) の結果報告に対して 西宮市長 より措

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

品川区町会・自治会館等葬祭設補助金交付要綱

4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨主文と同旨第 2 事案の概要 1 本件は, 競馬の勝馬投票券 ( 以下 馬券 という ) の的中による払戻金に係る所得を得ていた控訴人が, 平成 17 年から平成 21 年までの各年分の所得税に係る申告期限後の確

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

PPTVIEW

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

それぞれ改める 原判決 7 頁 9 行目の 国の機関 から同頁 14 行目末尾までを次のとおり改める 国の機関, 独立行政法人等, 地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって, 公にすることにより, 次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上, 当該事務又は事業の適正

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

環境保全型農業直接支援対策交付金交付要綱 制定改正 平成 23 年 4 月 1 日付け22 生産第 号平成 24 年 4 月 6 日付け23 生産第 6218 号農林水産事務次官依命通知 ( 通則 ) 第 1 農林水産大臣は 環境保全型農業直接支援対策を実施するため 環境保全型農業直接支

上告理由書・構成案

被告は 高年法 9 条 2 項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わ なかったものと認めることはできず 本件就業規則 29 条が高年法附則 5 条 1 項の要件を具 備していないというべきである 本件継続雇用制度の導入を定める本件就業規則 29 条は 手続要件を欠き無効であり 原

ブロック塀撤去補要綱

Transcription:

平成 2 5 年 7 月 1 7 日判決言渡 平成 2 5 年 行コ 第 1 1 号教育振興費補助金支出取消等請求控訴事件 主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 本件控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 福岡県知事が学校法人 A 学園 ( 以下 本件 A 学園 という ) に対して平成 2 2 年 3 月 3 1 日にした 8 0 0 万円の補助金交付決定を取り消す 3 被控訴人福岡県知事 B は本件 A 学園に対し 6 7 8 万 3 0 0 0 円を請求せよ 4 訴訟費用は第 1, 2 審とも被控訴人らの負担とする 第 2 事案の概要等 1 事案の概要 本件は, 福岡県の住民である控訴人ら及び C が, 被控訴人福岡県に対し, 福岡県知事が平成 2 2 年 3 月 3 1 日に本件 A 学園に対してした教育振興費補助金 8 0 0 万円を支出する決定 ( 以下 本件支出負担行為 という ) につき, 教育基本法 1 4 条 1 項, 憲法 8 9 条, 拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律 ( 以下 北朝鮮人権侵害対処法 という )2 条,3 条に違反するとして, 地方自治法 2 4 2 条の 2 第 1 項 2 号に基づき, その取消しを求めるとともに, 同項 4 号に基づいて, 被控訴人福岡県知事に対し, 上記教育振興費補助金 8 0 0 万円のうち既に返還された 1 2 1 万 7 0 0 0 円を除いた 6 7 8 万 3 0 0 0 円を本件 A 学園に返還請求するよう求めた事案である

原判決は, 控訴人ら及び C の請求をいずれも棄却したので, 控訴人らがこれを不服として控訴した 2 本件における前提事実, 関係法令の定め, 争点及びこれに対する当事者の主張は, 後記 3 のとおり, 原判決を補正し, 後記 4 のとおり, 当審における当事者の主張 を付加するほかは, 原判決 事実及び理由 の第 2 の 2, 3, 4 ( 原判決 4 頁 7 行目から同 1 0 頁 7 行目まで ) に記載のとおりであるから, これを引用する 3 原判決の補正 原判決 7 頁 9 行目の そもそ から同 1 2 行目の 公金を支出することは までを 本件 A 学園の教育事業への公金支出は, 公教育の趣旨, 目的に適合していないし, 公の支配に属さない教育事業への公金支出として と改める 原判決 7 頁 1 3 行目の 本件支出負担行為 から同 1 4 行目の いて までを削除する 原判決 7 頁 2 0 行目の 本件 A 学園は から同 2 2 行目の いえず までを 本件 A 学園の教育事業は, 日本における公教育適合性がないものであるから, かかる教育事業への公金支出は と改め, 同 2 2 行目の 公金 の次に 支出 を加える 原判決 7 頁 2 5 行目の 仮に から同 8 頁 1 行目の べきである までを削除する 4 当審における当事者の主張 ( 控訴人らの主張 ) ア憲法 8 9 条後段は, 公の支配に属しない 教育事業への公金支出等を禁止しているが, その趣旨は, 教育の名の下に公教育の趣旨, 目的に合致しない教育活動に公の財産が支出されたり, 利用されたりすることを防ぎ, 当該教育事業が公の利益に沿わない場

合にはこれを是正しうる途が確保されていることにある そうすると, 憲法 8 9 条後段にいう 公の支配 に属するか否かを判断するに当たっては, 公の財産が濫費されることを防止できるような公的規制が構築されているか否かという観点のみでなく, 当該事業内容が 公の利益に沿わない場合には, これを是正する途 が確保されているか否かという観点が必要である ( 東京高裁平成 2 年 1 月 2 9 日判決 高民集 4 3 巻 1 号 1 頁参照 ) イ本件 A 学園の教育事業の実態は, 朝鮮民主主義人民共和国 ( 以下 北朝鮮 という ) を支配する D 党から政治上, 法律上の支配を受けて, D 党の主張する歴史認識及び政治的見解をすべてそのまま生徒に教え込み, 生徒がその立場で行動することを強いるものであり, その政治的見解は日本政府に敵対するものであるから, およそ日本における公教育適合性がない また, 本件支出負担行為の対象とされた個々の事業内容も, 運動選手の遠征費用, 観劇, 夏祭り等の娯楽費用であって, 私立学校振興助成法 ( 以下 私学助成法 という ) の目的にそぐわないものである 本件 A 学園の教育事業は, 学校教育法, 私立学校法, 私学助成法上の各種規制を受けてはいるものの, これらの規制は本件 A 学園の教育事業の本質を左右するものではない 本件 A 学園の教育事業については, 公権力による人事, 予算等について直接関与がされておらず, これを是正する途が確保されていないから, 本件 A 学園の教育事業は憲法 8 9 条後段の 公の支配 に属するとはいうことはできない よって, 本件支出負担行為は憲法 8 9 条後段に違反する 教育基本法 1 4 条 2 項は, 法律に定める学校が, その教育の場で政治的中立性を保持する必要がある旨定めているが, その趣旨は国

又は地方公共団体が各種学校に公的助成をする場合において, その助成対象とされた私立の各種学校にも及ぶものと解すべきである 本件 A 学園は, 上記のとおり, 日本政府に敵対する政治教育, 政治的活動を行っているから, 本件 A 学園への公金支出は教育基本法 1 4 条 2 項に違反する 本件支出負担行為は, 北朝鮮に対する援助となり, 北朝鮮が日本国民を拉致したとされるいわゆる拉致問題の解決を遠ざけることになるから, 拉致問題を解決するため国及び地方公共団体に対し最大限の努力をするよう義務付けた北朝鮮人権侵害対処法 2 条, 3 条にも違反する ( 被控訴人らの反論 ) 憲法 8 9 条後段が公の支配に属しない事業に対する公金支出等を禁止しているのは公費濫用防止のためと解されている したがって, 私立学校の教育事業への公金支出が憲法 8 9 条後段に違反するか否かを判断するに当たっては, 当該教育事業につき, 公の財産が濫費されることを防止できるような公的規制がされているか否かという観点から判断すれば足り, それ以上に支出の対象となる教育事業が公教育の趣旨, 目的に適合しているか否かにまで立ち入って検討する必要はない 本件 A 学園の教育事業は, 学校教育法, 私立学校法, 私学助成法上の各種規制を受けており, これらの規制により, その教育事業が公の利益に沿わない場合にこれを是正する途が確保され, 公の財産が濫費されることを防止できるようになっているから, 本件 A 学園の教育事業は, 憲法 8 9 条後段の 公の支配 に属するというべきである 本件 A 学園は, 各種学校であって, 学校教育法 1 4 条 2 項の適用

を受けないから, 本件支出負担行為は同項の理念に反しない また, 北朝鮮人権侵害対処法 2 条, 3 条の定める努力義務の不履行が直ちに違法となるわけではない 第 3 当裁判所の判断 1 当裁判所も, 控訴人らの請求はいずれも棄却すべきものと判断する その理由は, 原判決 1 0 頁 1 9 行目の 本件 A 学園 から同 2 0 行目の というべきであり を 本件 A 学園の設置する各種学校が政治教育その他政治活動をしていても, 同法 1 4 条 2 項違反を理由にこれを是正することは予定されていないのであり と改め, 同 1 2 頁 1 5 行目の ことができる の次に とされている と加え, 同 1 3 頁 1 2 行目の なお から同 1 7 行目の 採用できない までを削除し, 当審における控訴人らの主張に対する判断 を後記 2 のとおり付加するほかは, 原判決 事実及び理由 の 第 3 当裁判所の判断 ( 原判決 1 0 頁 9 行目から同 1 3 頁 2 3 行目まで ) に記載のとおりであるから, これを引用する 2 当審における控訴人らの主張に対する判断 控訴人らは, 本件 A 学園の教育事業には公教育適合性がなく, また, 被控訴人福岡県知事のした本件支出負担行為は私学助成法の目的にそぐわないものであるにもかかわらず, 学校教育法等の各種規制ではこれを是正する途が確保されておらず, 憲法 8 9 条後段の 公の支配 に属するとはいうことはできないから, 本件支出負担行為は憲法 8 9 条後段に違反する旨主張する しかしながら, 普通地方公共団体は, その公益上の必要がある場合には, 補助金を交付することができるとされており ( 地方自治法 2 3 2 条の 2 ), その公益上の必要性の判断については, 補助の要否を決定する地方公共団体の長に一定の裁量権があるから, 地方公共

団体の長に裁量権の逸脱又は濫用があったと認められる場合に限って当該補助金の交付は違法となると解される そして, 公益上の必要性に関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があったか否かの判断に当たっては, 当該補助金交付の目的, 趣旨, 補助の対象となる事業の趣旨, 目的等の諸般の事情を総合的に考慮する必要がある 原判決が説示するとおり, 本件 A 学園が設置する E 学校, F 学校及び G 学校は, いずれも各種学校であって, 学校教育を行う学校教育法上の学校 ( 学校教育法 1 条 ) ではなく, 学校教育に類する教育を行うものであり ( 同法 1 3 4 条 1 項 ), 公の性質を有する学校教育法上の学校に適用される教育基本法 1 4 条 2 項等の制限は私立学校法及び私学助成法には規定されておらず, 私立学校法 5 9 条, 私学助成法 1 6 条, 同法 1 0 条により, 国又は地方公共団体は, 各種学校に対する補助金等の助成をすることが許容されている そして, 前記引用に係る原判決認定の事実及び証拠 ( 甲 1, 7, 乙 1, 2, 4 ないし 9 ) によれば, 被控訴人福岡県は, 近年の国際化に伴い, 県内に私立外国人学校を設置する学校法人の教育 文化活動等の振興を図るため, 私学助成法 1 0 条に基づき, 外国人学校教育振興費補助金を交付することとし, 福岡県私立外国人学校教育振興費補助金交付要綱 ( 以下 本件要綱 という ) を定めて, 平成 4 年 4 月 1 日から, これに従って上記補助金の交付を行っていたこと, 本件 A 学園は, 平成 2 1 年度の上記補助金について, 被控訴人福岡県知事に対し, 本件要綱に基づき, 上記補助金の交付申請手続をしたこと, 被控訴人福岡県は, 本件支出負担行為をした上, 本件 A 学園に上記補助金を交付したこと, 被控訴人福岡県の総務部私学学事振興局私学振興課 ( 以下 私学振興課 という ) は, 平成 2 3 年 1 月 1 9 日, 過去 5 年間分の上記補助金に係る調査を行い, 本件 A 学園が被控訴

人福岡県と北九州市に対する二重申請による重複受領を行ったのは, 本件 A 学園内部の事務処理の確認懈怠によるものであり, 詐欺的であるとの証拠はなく, その余は適正に実施されているとして, 本件 A 学園に対し, 上記重複受領に係る部分についての返還を求め, その返還を受けたことが認められる 上記認定事実によれば, 本件支出負担行為は, 私学助成法 1 0 条等に基づき, 本件要綱の定める手続に従って補助金支出が決定され, その補助額が確定されたものであり, 私学振興課による上記補助金の過去 5 年間にわたる調査においても, 上記重複受領を除いた部分は適正なものと判断されていることからすると, 本件支出負担行為は同法 1 0 条の目的, 趣旨に沿うものであったと認められる 他に本件支出負担行為に係る公益上の必要性に関する判断につき被控訴人福岡県に裁量権の逸脱又は濫用があったことをうかがわせる事情は認められない また, 前記引用に係る原判決認定の事実によれば, 本件 A 学園は, 昭和 3 9 年 8 月 2 6 日, 私立学校法 6 4 条 4 項の各種学校のみを目的として, 被控訴人福岡県知事の認可を受け, 学校教育法 1 3 4 条 1 項の学校教育に類する教育を行う各種学校として E 学校等を設置している準学校法人であること, 国又は地方公共団体は, 本件 A 学園に対し, 補助金支出等の助成ができる ( 私学助成法 1 6 条, 1 0 条 ) が, 助成に関し必要があると認める場合, 本件 A 学園から, その業務若しくは会計の状況に関し報告を徴し, 又は当該職員に本件 A 学園の関係者に対し質問させ, 若しくはその帳簿, 書類その他の物件を検査させ, 本件 A 学園の予算が助成の目的に照らして不適当であると認める場合において, その予算について必要な変更をすべき旨を勧告し, また, 本件 A 学園の役員が法令の規定, 法令の規定

に基づく所轄庁の処分等に違反した場合において, 当該役員の解職をすべき旨を勧告する権限を有していること, さらに, 本件 A 学園が, 法令の規定に違反し, 又は法令の規定に基づく所轄庁の処分に違反した場合において, 他の方法により目的を達することができない場合には解散命令 ( 私立学校法 6 4 条 5 項, 6 2 条 ) を, 法令の規定に故意に違反したとき, 法令の規定により都道府県知事がした命令に違反したとき, 又は 6 か月以上授業を行わなかったときは, 閉鎖命令 ( 学校教育法 1 3 4 条 2 項, 1 3 条 1 項 ) をそれぞれ発することができると定められていることが認められる そうすると, 本件 A 学園の教育事業への本件支出負担行為等の補助金交付が公の利益に沿わない場合には, 上記の各法規制によりこれを是正しうる途が確保され, 上記補助金が濫費されることを防止しうるものと認められるから, 本件 A 学園の上記教育事業は憲法 8 9 条後段の 公の支配 に属するものというべきである また, 控訴人らは, 公権力と政治教育との結びつきを禁じた教育基本法 1 4 条 2 項の趣旨は, 本件 A 学園が設置する各種学校に及ぶと解すべきであるから, 被控訴人福岡県知事が, 上記実態を有する本件 A 学園の教育事業に対し本件支出負担行為をしたことは教育基本法 1 4 条 2 項の理念に違反する旨主張する しかしながら, 教育基本法 1 4 条 2 項の趣旨は, 公の性質を有する学校教育法上の学校において, その政治的中立性を確保するため, 学校教育における党派的政治教育を禁止するというものであるところ, 本件 A 学園が設置した各種学校には教育基本法 1 4 条 2 項の適用はなく, また, 各種学校の党派的政治教育を禁止した規定も私立学校法及び私学助成法上はなく, 具体的な教育内容は各種学校に委ねられている そして, 前記認定のとおり, 上記補助金は, 国際化

が進む中, 県内にある外国人学校と県民等との交流を通して学校の教育活動等を推進するため, その経費の一部を支援するものであること, 私学助成法 1 0 条等に基づき, 本件要綱による上記補助金交付が長期間にわたって行われてきたことが認められる これらの事情によれば, 被控訴人福岡県知事が本件 A 学園に対して行った本件支出負担行為をもって教育基本法 1 4 条 2 項の理念に違反するということはできない 控訴人らは, 本件支出負担行為は, 北朝鮮に対する援助となり, いわゆる拉致問題の解決を遠ざけることになるから, 北朝鮮人権侵害対処法 2 条, 3 条に違反する旨主張する しかしながら, 北朝鮮人権侵害対処法 2 条はいわゆる拉致問題に関する国の責務等について規定するものであり, 同法 3 条は, 地方公共団体に対し, 国と連携を図りつつ, 上記拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図る努力義務を課したものであって, 同法 3 条違反の有無は, 上記補助金支出の違法性に影響することはないというべきであるから, 上記主張は採用できない 第 4 結論 以上によれば, 本件控訴は理由がないからこれをいずれも棄却することとして主文のとおり判決する 福岡高等裁判所第 4 民事部 裁判長裁判官原敏雄 裁判官小田幸生

裁判官佐々木信俊