平成 20 年 8 月 30 日 大阪大学 卒後研修 依存性薬物 - 脳研究の視点から 大阪大谷大学薬学部薬理学講座小山豊
2-1.Drug 乱用の現状 わが国での薬物乱用の歴史下には 昭和 26 年の 覚せい剤取締法 制定以降の 同法で検挙された人の数を示す 現在では 多種の Drug が社会にあふれ 第 3 次乱用期と呼ばれるように 違法な薬物を使用する人の数は多い
若年層に広がる Drug 覚せい剤使用で検挙された 中学生 高校生の数 および全検挙者中の未成年者の割合を示す 若年者に対する啓蒙活動のため 平成 8-9 年をピークとして覚せい剤の使用は現在 減少傾向にある しかし 法令に触れなければ 薬物使用は問題ない という誤った考えが 事故を起こすこともある
大生 罰ゲームで粉末飲むマジックマッシュルームか 2006 年 7 月 12 日 朝日新聞 より 大学法学部 2 年の男子学生 (19)= 大阪府枚方市在住 =が10 日夜 サークル部室で粉末を飲んだ後 同府吹田市のワンルームマンションから転落死した事故で この学生が友人とゲーム中に 罰ゲーム と称して粉末を飲んでいたことが吹田署の調べでわかった 同署は形状や色などから この粉末が麻薬として所持が禁じられている マジックマッシュルーム の可能性があるとみて調べている ( 中略 ) 粉末は4 年の男子学生が今月初め 大阪 ミナミのアメリカ村で約 0.35グラム入りを2 袋計 8 千円で買ったという 事情聴取に対し 合法ドラッグとして買った ( 死亡した学生が ) 分けてほしい と言ったので 1 袋を購入価格で譲った 過去にも服用したことはあるが 幻覚などはなかった と話しているという マジックマッシュルームは 興奮や幻覚などの症状を引き起こすとされる 学生の興奮状況が激しいことなどから 同署は粉末の成分をさらに詳しく調べている
学生の体内から 脱法ドラッグ 成分検出 大生転落死 2006 年 7 月 18 日 朝日新聞 より 大学 2 年の男子学生 (19) が10 日夜 サークルの部室で粉末を飲んだ後に興奮状態に陥り 大阪府吹田市のマンションから転落死した事故で 吹田署は18 日 学生の体内などから 5 Me O MIPT と呼ばれる薬物成分が検出された と発表した この薬物は麻薬取締法で規制対象外になっている 脱法ドラッグ で 東京都は昨年 4 月施行した条例で製造や販売などを禁じている 吹田署などによると 検出された薬物は ミプティー キューブ などの名称で売られており 麻薬と似た幻覚や興奮作用を引き起こすという 調べでは 粉末は同大学 4 年の男子学生 (23) が2 日 大阪 ミナミのアメリカ村で購入した2 袋のうちの一つ 学生の胃の内容物と袋に残っていた粉末 4 年生が所持していた1 袋のいずれからも同じ成分が検出された この若者は 脱法ドラッグ と言う言葉に 脱法 使っても犯罪にならない そんなに危なくない といった発想をしたのであろう ( 実際にはこの薬物は違法である ) このように 最近の薬物乱用のひとつの傾向としては 合法的で安全である と偽った物質を使用する ということがある
向精神薬使用の看護師死亡病院の麻酔剤など持ち出す 2006 年 4 月 26 日 山陽新聞 より 愛知県蒲郡市の 病院から麻酔剤や精神安定剤などの向精神薬を持ち出して自宅で使用していた40 代の男性看護師が 死亡していたことが26 日 分かった 病院によると 看護師は16 日に 嘔吐 ( おうと ) 物をのどに詰まらせて窒息死した状態で見つかった 蒲郡署などは 看護師が睡眠薬として多量の向精神薬を使っていたとみて 死亡との因果関係について調べている 向精神薬を注射したか 服用したかは不明という 院長によると 看護師宅や病院のロッカーからは 麻酔剤 ディプリバン の注射薬など 向精神薬のアンプルや空き瓶が多数見つかり 倒れていた看護師の周囲には酒の空き瓶やビタミン剤も残されていた また 最近の薬物乱用のもうひとつの傾向は 医薬品として医療機関にある薬物が使われる ことである
乱用される薬物を取り締まる法律 麻薬および向精神薬取締法モルヒネ類 ( 麻薬性鎮痛薬 ) コカイン 幻覚剤 (LSD MDMA PCP) 合成麻薬類 睡眠薬 ( ベンゾジアゼピン類 ) 麻酔薬 ( バルビツール酸誘導体 ) など あへん法あへん ケシ 大麻取締法大麻草 ( マリファナ ) 大麻樹脂 ( ハッシシ ) 覚せい剤取締法覚せい剤 ( アンフェタミン メタンフェタミン ) 毒物及び劇物取締法有機溶剤 ( シンナー トルエン ) 加えて 都道府県では条令により 更なる薬物に規制を設けているところもある これらの薬物を乱用した場合 5~10 年の懲役が科せられることが定められている
乱用される薬物の詳細については 2 年次以降の 薬理学 に譲りここでは 代表的な Drug の背景について述べる なおここで示す薬物名は 一般名 であり 商品名 や違法に流通する際の 俗称 ではない 麻薬 1. アヘンアルカロイド類 ( モルヒネ コデイン ) ケシの実の樹液中を固めたものが あへん であり その中の成分がモルヒネ コデインである あへん の歴史は古く 紀元前 3 世紀の文献ではその依存性と禁断症状の記載がある イギリスが 19 世紀に 中国 ( 当時は清朝 ) に行った あへん輸出 は 国家を衰退させるのに充分であった 麻薬であるがモルヒネは 鎮痛薬 コデインは 咳止め薬 として医療の現場で使われている 強い陶酔感を示す一方 大量を摂取すると呼吸困難を起こし死に至る また退薬時の禁断症状も顕著に現れる
2. コカイン 南米に生育するコカの葉の中に含まれる成分 局所麻酔作用と脳を興奮させる作用がある 米国では最も乱用されている薬物 南米では古くから 疲労感を癒すものとしてコカの葉が用いられてきた また 1886 年に米国で発売されたコカ コーラには コカインが含まれ これを飲むと活力が出てくる と宣伝に謳われた コカインをもととして 麻薬でない局所麻酔薬が合成されている コカインの医薬品としての使用は限られている 3. LSD ドイツの製薬会社が 頭痛薬の研究の過程で作り出した薬物 医薬品としての応用は無い LSD を使うと脳に変調を起こし 空間が歪む 音が見える 空がオレンジ色だ といった幻覚に獲り憑かれる 常用すると精神障害を引き起こす
覚せい剤 アンフェタミン メタンフェタミン 19 世紀の末に 喘息の治療薬であるエフェドリンをもとに 米国と日本でそれぞれ作られた 強く脳を興奮させ 睡眠障害 ( ナルコレプシー ) の治療に使われている この薬物を使うと 疲れを感じなくなる ことから 1941 年には市販薬として売られ 大きな問題を起こした その後 1951 年に覚せい剤取締法が制定され 許可無く 所持 使用することが禁じられた 常用すると 精神障害を引き起こす また 一時の大量使用でも 脳の異常な活性化による痙攣や脳出血を起こし死に至る 向精神薬 睡眠薬 麻酔薬 ( ベンゾジアゼピン類 バルビツール酸誘導体 ) 本来は医薬品として医療現場で使われる薬物であるが 最近これらの違法な流通 使用が増えている 脳の興奮を抑制する作用があり 多量の使用で 呼吸機能や体温 血圧の維持に変調を起こし 場合によってはこれで死ぬこともある
脱法ドラッグ または 合法ドラッグ と呼ばれる 違法薬物 薬物の分類名の中には 脱法ドラッグ あるいは 合法ドラッグ と呼ばれるものは無い これらは Durg を不正に流通 販売 使用する者が使っている言葉である 多くが禁止されている化合物の構造を少し変え 法の規制を逃れることを意図して作られた しかし 現在の法令でこれらは立派に違法である 薬物に対する誤った理解から 現在 脱法ドラッグ 合法ドラッグ が若年層に広がりつつある
乱用される Drug には様々な種類があり その毒性も多様である しかし これらの Drug には ある共通した性質が認められる それは 薬物の作用点が 脳 ( こころ ) にあり それを使った者には 依存 をもたらす ことである 毒性のある薬物は数多くあるが 乱用される Drug の恐ろしさが ここにある
参考資料 今回の講義資料は 以下の書籍と Web サイトを参考に作られました 皆さんも 是非 参考にして下さい 書籍 薬物乱用 いま 何を どう伝えるか 水谷修著大修館書店 薬物乱用の科学 乱用防止の知識 中原雄二著研成社 薬物依存 宮里勝政著岩波新書 Web サイト ( 財 ) 日本学校保健会 HP (http//www.hokenkai.or.jp/3/3-1/3-1.html) ( 財 ) 麻薬 覚せい剤乱用防止センター HP (http//www.dapc.or.jp) 各自治体保健衛生局 HP