コネクティッドカーとドイツの政策動向

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取組みの背景 これまでの流れ 平成 27 年 6 月 日本再興戦略 改訂 2015 の閣議決定 ( 訪日外国人からの 日本の Wi-Fi サービスは使い難い との声を受け ) 戦略市場創造プラン における新たに講ずべき具体的施策として 事業者の垣根を越えた認証手続きの簡素化 が盛り込まれる 平成 2

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が実現することにより 利用希望者は認証連携でひもづけられた無料 Wi-Fi スポットについて複数回の利用登録手続が不要となり 利用者の負担軽減と利便性の向上が図られる 出典 : ICT 懇談会幹事会 ( 第 4 回 )( 平成 27(2015) 年 4 月 24 日 ) 2. 現状 日本政府観光局

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監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書


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はじめに 個人情報保護法への対策を支援いたします!! 2005 年 4 月 個人情報保護法 全面施行致しました 個人情報が漏洩した場合の管理 責任について民事での損害賠償請求や行政処分などのリスクを追う可能性がござい ます 個人情報を取り扱う企業は いち早く法律への対応が必要になります コラボレーシ

Rodrigo Domingues UNDP Borja Santos Porras/UNDP Ecuador UNDP Kazakhstan 2

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タイトル

Transcription:

コネクティッドカーとドイツの政策動向 寺田 麻佑 理化学研究所革新知能統合研究センター (AIP) 客員研究員 国際基督教大学教養学部 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 1

アジェンダ 1. コネクティッドカーと付随する問題 - 日本での議論 と ICT 業界との連携の動き 2. ドイツの政策 ( 関連する政府の検討状況 法律改正 ) の紹介 3. ドイツの倫理規範 データ保護に関する考え方 4. まとめ 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 2

自己紹介 2003 年一橋大学法学部公共関係法学科卒 2006 年慶應義塾大学法務研究科 ( 法科大学院 ) 修了 2012 年一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了 2012 年より 国際基督教大学教養学部准教授 ( 行政法 環境法 Public Law, ほか担当 ) 2017 年 6 月より 理化学研究所 AIPセンター客員研究員 EU 情報通信法 (BERECという組織の在り方を中心に) の研究 AI ドローン 自動走行 航空法 空港 航空管制等の諸問題の研究 最近の関連著作 新法解説航空法の改正 : 無人航空機 ( ドローン ) に関する規制の整備 法学教室 426 号 (2016 年 3 月 ), p. 47-53 近著 EUとドイツの情報通信法制技術発展に即応した規制と制度の展開 (2017 年 1 月 勁草書房 ) 3

コネクテッドカー コネクテッドカーとは ICT 端末としての機能を有する自動車のこと 車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し ネットワークを介して集積 分析することで 新たな価値を生み出すことが期待されている 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 4

総務省平成 27 年版情報通信白書より 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 5

Connected Car の実現に向けた研究会 総務省において 2016 年 12 月から 2017 年 7 月まで開催 Connected Car 社会実現に向けて解決すべき課題 高信頼でリアルタイムな無線通信ネットワークの構築 新産業 ビジネスを創出するデータ利活用の推進 イノベーション創出環境の整備 安全 安心な利用に向けたプライバシー セキュリティ音確保 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 6

Connected Car の実現に向けた研究会 Connected Car 社会の実現 Connected Network, Connected Data, Connected Platform プロジェクト Connected Car 社会に必要な技術の確立や実証 データの利活用のモデルづくりや環境整備 多様なプレイヤーが連携できる場所の構築 プライバシー セキュリティの確保 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 7

欧州レベルの取り組み Horizon2020 Horizon 2020 という欧州の研究枠組みプログラム 2016-2017 年度も 自動運転の関連プロジェクトに約 1 億ユーロが投資され インフラの整備や公道での実証実験 受容性の評価などの実用化を想定したプロジェクトが実施されている 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 8

自動車業界と ICT 業界の連携の動きー 2016/7/9 6:00 日本経済新聞 電子版 ドイツ Volkswagen( フォルクスワーゲン ) と韓国 LG 電子は 2016 年 7 月 6 日 次世代コネクティッドカーのプラットフォームを共同開発する覚書に調印したと発表した クラウドの最新技術を使ってスマートホームやローカルサービスに接続する技術で Volkswagen の各モデルをまたいで利用できる共通プラットフォームとなる 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 9

5GAA の動き ドイツのBMW ダイムラー アウディの三社が2016 年月に 通信機器メーカーや半導体メーカー等と5Gを利用した Connected Car 関連のサービスの開発で提携をし 5GAA(5 G Automotive Association) を設立することが発表された この 5GAA の動きは 日本も含めた各国の通信事業者や関連機器メーカーなど 数十社が参画するものとなっている 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 10

ドイツにおける法制度化ー概略 2017 年 6 月改正道路交通法施行 対人 対物賠償 ( 強制保険 ) の最低保険金額の引上げ オーバーライド要請時のアラート基準や運転者の義務などを規定 2017 年 6 月交通デジタルインフラ省倫理委員会の報告書 自動運転およびコネクテッドカー 倫理面で遵守すべき要件等について有識者がガイドラインを提示 2017 年 6 月データ保護 情報自由監察官 自動運転車 コネクテッドカーに関するデータ保護法に基づく勧告 2017 年 8 月連邦政府 倫理委員会報告書に基づくアクションプラン を公表 2019 年まで改正道交法の枠組みで運営し その後見直し予定 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 11

自動運転円卓会議 Der Runde Tisch Automatisiertes Fahren 2014 年より検討開始 連邦交通デジタルインフラ省 (BMVI) とともに検討 2015 年 9 月 自動化され かつ ネットワーク化された運転の戦略 Strategie automatisiertes und vernetztes Fahren を公表 公表された戦略に基づき ドイツの高速道路テスト走行区域 (Degitales Testfeld Autobahn) おける実証実験等においてデータを収集 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 12

ドイツにおける道路交通法改正 2016 年 7 月 交通デジタルインフラ省は 自動運転に対応するための道路交通法 (Straßenverkehrsgesetz StVG) 改正草案を作成 2017 年 1 月 25 日道路交通法改正草案を閣議決定 2017 年 2 月 20 日に連邦議会に提出 改正された道路交通法は2017 年 6 月 21 日に施行 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 13

ドイツ改正道路交通法 人が最終的な責任を負う ブラックボックスに記録されたデータに基づき システムの製造者の損害の賠償責任については決定される 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 14

倫理指針の検討 2016 年 9 月 30 日 交通デジタルインフラ大臣は 法学者や哲学者 社会科学者 技術の評価者 消費者関係者 自動車産業やソフトウェア開発の代表者から構成される倫理委員会を設置 2017 年 6 月 20 日 当該倫理委員会は ドイツにおける自動運転のための改正道路交通法が施行される前日に 倫理指針を公表 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 15

倫理指針の内容 ( 抜粋 ) 自動化され コネクテッドされた走行は 人間が運転するよりも少ない事故となることがわかっている場合 倫理的にも必要とされる 財産への損害は 人間の損傷を避けるためには認められなければならない 危険が生じるような状況においては 人間の生命の保護がもっとも優先されるべき 避けられない事故が起きるような場合においては 人の特徴 ( 年齢 ジェンダー 肉体的 精神的状態 ) に基づく分類 ( 区別 ) を行うことは禁止される すべての走行状況において 走行の責任者 ( 当該ドライブの責任を負うのはだれかということが ) 明確に定められなければならない 人間なのか コンピューターなのかということについて そして だれが走行責任者なのかということについては ( 可能性として起こりうる責任問題を解決するために ) 書面化され 記録されなければならない ドライバーは 自身のドライビングに関するデータに関する利用や共有について 基本的に決定することができなければならない 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 16

ドイツにおける連邦データ 情報保護観察官の 13 の勧告 2017 年 6 月 1 日 連邦データ 情報保護観察官 Andrea Voßhoff デジタル化された交通システムのなかでも 特に自動化され コネクティッドされた車におけるデータ保護に関する13の勧告 自動化され コネクトされた車におけるデータ保護 というベルリンでのシンポジウムにおいて公表 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 17

[ 抜粋 ] 車の利用者は 法律の正当化理由に基づいて どのようなパーソナルデータが車の利用者の合意なしに集められるのかについて明確に知らなければならない 必要があれば 利用者は パーソナルデータの伝達に関係するすべての情報にアクセスする地位を有する 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 18

まとめ ドイツにおいては 国家的プロジェクトとして 各界の関係者が円卓会議を開催し 連邦政府と合わせてコネクティッドカーや自動走行車に関する検討を進めてきた現状がある その結果 すでに 2017 年の 6 月には道路交通法が改正された ( 日本においては 各省庁において検討が進められている段階であり 道路交通法の改正などはまだ行われていない ) ドイツにおいては データ保護に関する議論の蓄積が多い 道路交通法改正に関して データの記録に関する要求等は国際的なルールに基づくものとなるだろうとの予測もされているが 国内における勧告等もあり ドイツにおいては厳格なデータ管理が要求される可能性が高い また 法制定と同時期に制定された倫理規則は ドイツのコネクティッドカーのプログラミングに大きな影響を与えるものであるこの倫理規則に従ったプログラミングの設計が必要とされている 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 19

まとめ 続き 日本においては コネクティッドカーが生み出すデータの利活用の側面を重視する議論がなされているように見受けられる たしかに セキュリティの維持や安全 安心な活用といったことは謳われているが 倫理的な問題点への言及は少ない ドイツの検討状況をみると 倫理的側面からの検討や 個々人のパーソナルデータの保護やデータの管理に関する検討を 様々な責任に関する法的問題と合わせて深く議論している このような倫理指針を策定することは日本においても重要であろう 2018/2/19 第 2回法と技術シンポジウム 20