登録番号第 号出願日平成 15 年 8 月 25 日登録日平成 17 年 5 月 13 日登録商標 商品及び役務の区分第 24 類指定商品織物, 布製身の回り品, かや, 敷布, 布団, 布団カバー, 布団側, まくらカバー, 毛布, 織物製いすカバー, 織物製壁掛け, カーテン,

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に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

基本的な考え方の解説 (1) 立体的形状が 商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる場合は 特段の事情のない限り 商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断する 解説 商品等の形状は 多くの場合 機能をより効果的に発揮させたり 美感をより優れたものとしたりするなどの目的で

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

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平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

一括して買い受けた なお, 本件商品である コンタクトレンズ は, 本件商標の指定商品 眼鏡 に含まれる商品である (3) 使用商標は, ハートO2EXスーパー の文字からなるところ, 本件商品の容器に表示された使用商標は, ハート の文字部分だけが赤い字で, かつデザイン化されており, これに続く

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

(Microsoft Word \224\255\225\\\201yMSH\201z \224\273\214\210\201i\217\244\225W\201j.doc)

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

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事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

Microsoft Word - 中国商標判例(5)-HPメルマガ 3/10UP

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

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最高裁○○第000100号

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

出願日平成 27 年 8 月 6 日登録日平成 28 年 6 月 17 日登録商標 医心 ( 標準文字 ) 指定役務第 41 類医学 歯学 薬学又は看護学に関する知識の教授, 医学部 歯学部 薬学部 看護学部又はその他の医療系学部に関する受験勉強の教授, 医学部生 歯学部生 薬学部生 看護学部生又は

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

第 1 請求 1 被告は, ポーカー大会に係る参加者に授与するトロフィーに別紙 1 被告標章目録記載 1ないし11の各標章を付し, 又は, ポーカー大会に係る広告, 価格表若しくは取引書類に同各標章を付して展示若しくは頒布し, 若しくはこれらを内容とする情報に同各標章を付して電磁的方法により提供して

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

平成 29 年 5 月 15 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 3 月 6 日 判 決 原 告 BERNARD FRANCE SERVICE 合同会社 訴訟代理人弁護士笹本摂 向多美子 訴訟代理人弁理士木村高明 被 告 ラボラ

平成 25 年 10 月 23 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 24 年 ( ワ ) 第 号役務標章差止請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 9 月 4 日 判 決 東京都渋谷区 < 以下略 > 原 告 株式会社 KPG LUXURY HOTELS 同訴訟代理人弁護士 吉 田

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

審決取消判決の拘束力

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

最高裁○○第000100号

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

最高裁○○第000100号

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

第 2 事案の概要本件は, 原告が有する下記商標登録 ( 本件商標 ) について, 被告が行った商標法 51 条 1 項に基づく商標登録取消審判請求に対し, 特許庁がこれを認容する審決をしたことから, 原告がその審決の取消しを求めた事案である 争点は,1 原告による下記の本件使用商標 1 及び2(

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

撮影を,3 株式会社 MONDESIGN Japan( 以下 モンデザイン という ) に対して全体的なデザインをそれぞれ依頼し, 上記 1につき平成 23 年 4 月頃,2につき同年 5 月頃,3につき同年 6 月頃, 各成果物を受領し, その際, 各成果物に係る著作権の譲渡を受けた ( 甲 9,

登録番号第 号指定商品 役務第 25 類被服, 空手衣第 41 類空手の教授, 空手の興行の企画 運営又は開催登録商標別紙原告商標目録 1 記載のとおりイ本件商標権 2( 以下これに係る登録商標を 本件商標 2 という ) 出願年月日平成 16 年 10 月 15 日登録年月日平成

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

ス法人 ) である 被告 Aは, JUNKMANIA の屋号で, ウェブページ及び店舗で衣服及び靴等の販売をしている個人である (2) 原告各商標権原告は, 平成 5 年 9 月 6 日以降, 原告各商標権を保有している ( 甲 1,2) (3) 被告の行為被告は, 平成 25 年 3 月から平成

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

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EONERO のブランド名( 以下, 本件ブランド という ) 下に, 本件商標 2と同一の標章を用いて販売している (4) 控訴人は, 平成 27 年 12 月 11 日から同月 13 日にかけて ベルジュアダチ にて開催された展示販売会 ( 以下, 本件催事 という ) のチラシ ( 以下, 本

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

平成 26 年 6 月 26 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 25 年 ( ワ ) 第 号商標権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日平成 26 年 4 月 18 日 判 決 原告 P1 同訴訟代理人弁護士同同訴訟復代理人弁護士同訴訟代理人弁理士 井上正人福島敏夫小幡靖弥前田健一

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

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(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

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(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

ない 4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙 商標権目録 記載の商標権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が原判決別紙 被告標章目録 記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する行為が, 控訴人の商標権を

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第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

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( イ ) 極めて簡単で かつ ありふれた音 ( 第 3 条第 1 項第 5 号 ) 1 単音及びこれに準じるような極めて単純な音 後述の 各国の審査基準比較表 ( 識別力 ) の 類型 3 に該当 資料 2 ( ウ ) その他自他商品役務の識別力が認められない音 ( 第 3 条第 1 項第 6 号

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令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

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た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

キューピー図形事件:東京高裁平成15(行ケ)192号平成15年10月29日判決(認容・審決取消)

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

31 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 1 原告の求めた裁判 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録を無効とした審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 10 号該当性 ( 引用商標の周知性の有無 ) である 1 特許庁における手続の経

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2018 年 2 月 8 日第一東京弁護士会総合法律研究所知的所有権法部会担当 : 弁護士佐竹希 バカラ電子カードシュー 事件 知財高裁平成 29 年 9 月 27 日判決 ( 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号 ) I. 事案の概要原告 ( エンゼルプレイングカード株式会社 : カー

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

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平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

G-207 登録商標 ヨーロピアン 不使用取消審決取消請求事件 : 知財高裁平成 27( 行 ケ )10032 平成 27 年 9 月 30 日 (1 部 ) 判決 < 棄却 > キーワード 商標法 50 条 ( 登録 3 年以上の登録商標の不使用 ), 登録商標の使用 ( 自他商品の識別機能 ),

83155C0D6A356F E6F0034B16

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

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( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

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2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

(1) 主文 1ないし4 項と同旨 (2) 仮執行宣言 2 被告 (1) 原告の請求をいずれも棄却する (2) 訴訟費用は原告の負担とする 第 2 事案の概要 1 前提事実 ( 当事者間に争いがない ) (1) 当事者原告は, 一般運輸業, その他娯楽施設の経営, 不動産事業, 駐車場の経営, 物販

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2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

判決【】

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G-235 登録商標 一部取消審決取消請求事件 : 知財高裁平成 28( 行 ケ )10230 平成 29 年 9 月 14 日 (2 部 ) 判決 < 請求棄却 > キーワード 商標権 50 条 1 項 ( 不使用取消 ), 社会通念上同一と認められる商標, 平面図 形商標, 位置商標, 部分意匠

1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求の趣旨 1 特許庁が無効 号事件について平成 25 年 5 月 9 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ( 当事者間に争い

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

2016 年 5 月 25 日 JETRO アセアン知財動向報告会 ( 於 :JETRO 本部 ) ASEAN 主要国における 司法動向調査 TMI 総合法律事務所シンガポールオフィス弁護士関川裕 TMI 総合法律事務所弁理士山口現

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F-50 登録商標 SHIPS 商標権侵害差止等請求事件 : 東京地裁 ( 甲事件 ) 平成 25( ワ )27442 ( 乙事件 ) 平成 25( ワ )34269 平成 26 年 11 月 4 日 ( 民 40 部 ) 判 決 < 請求認容 > キーワード 商標的使用, 商標の類否 ( 外観 称呼 観念 ), 意匠的図柄の中の商標的識別力, 取引の実情 主文 1 被告ダイワボウテックス株式会社は, 別紙被告標章目録記載の標章を, 布地に付してはならない 2 被告らは, 別紙被告標章目録記載の標章を付した別紙被告商品目録記載の布地を販売し, 又は販売のために展示してはならない 3 被告らは, 別紙被告標章目録記載の標章を付した別紙被告商品目録記載の布地を廃棄せよ 4 訴訟費用は, 被告らの負担とする 5 この判決は, 第 1 項及び第 2 項に限り, 仮に執行することができる 事案の概要 1 本件は, SHIPS の文字を書してなる商標につき商標権を有する両事件原告 ( 以下, 単に 原告 という ) が,1 SHIPS の文字列を含むデザインを有する布地を製造 販売する被告ダイワボウテックス株式会社 ( 以下 被告ダイワボウテックス という ) に対して, 商標法 36 条 1 項, 2 項に基づき, 別紙被告標章目録記載の標章 ( 以下 被告標章 という ) を布地に付すこと及び被告標章を付した布地の販売等の差止め並びに同布地の廃棄を求め ( 甲事件 ),2 被告ダイワボウテックスから購入した上記布地を販売する被告株式会社 Y2( 以下 被告 Y2 という ) に対して, 同条項に基づき, 同布地の販売等の差止め及び廃棄を求める ( 乙事件 ) 事案である 2 前提となる事実 (1) 当事者ア原告株式会社シップスは, 衣料品及び服飾雑貨等の販売を主たる業とする株式会社である イ被告ダイワボウテックスは, 布地等の製造 販売を主たる業とする株式会社である ウ被告 Y2は, 布地等の衣料品関連製品の販売を主たる業とする株式会社である (2) 原告の商標権原告は, 以下の商標権 ( 以下 本件商標権 といい, その登録商標を 本件商標 という ) を有している 1

登録番号第 4862594 号出願日平成 15 年 8 月 25 日登録日平成 17 年 5 月 13 日登録商標 商品及び役務の区分第 24 類指定商品織物, 布製身の回り品, かや, 敷布, 布団, 布団カバー, 布団側, まくらカバー, 毛布, 織物製いすカバー, 織物製壁掛け, カーテン, テーブル掛け, どん帳, 織物製テーブルナプキン, ふきん, シャワーカーテン, のぼり及び旗 ( 紙製のものを除く ), 織物製トイレットシートカバーなお, 本件商標権の商品及び役務の区分としては, 上記のほか, 第 2 類, 第 3 類, 第 4 類, 第 6 類, 第 8 類, 第 9 類, 第 11 類, 第 12 類, 第 14 類, 第 15 類, 第 16 類, 第 18 類, 第 19 類, 第 20 類, 第 21 類, 第 2 2 類, 第 25 類, 第 26 類, 第 27 類, 第 28 類, 第 31 類がある (3) 被告らの行為ア被告ダイワボウテックスは, 被告標章を付した別紙被告商品目録 略 記載の布地 ( 以下 被告商品 という ) を製造 販売し, 被告 Y2は, その店舗において, 一般消費者向けに同布地を販売していた 原告は, 被告ダイワボウテックスに対し, 平成 25 年 9 月頃, 被告商品の製造 販売が本件商標権の侵害に当たると主張してその製造 販売の中止を求めたが, 被告ダイワボウテックスが, 被告商品における被告標章の使用は商標的使用に当たらないと主張して商標権侵害を争ったことから, 被告らに対して本件訴訟を提起した イ別紙被告商品目録記載のとおり, 被告商品の図柄には, SHIPS の文字列で構成される被告標章が付されている また, 被告商品は, 本件商標権の指定商品である 織物 に該当する 3 争点 (1) 被告標章の使用が商標的使用に当たるか否か (2) 本件商標と被告標章の類否 判断 1 争点 (1)( 被告標章の使用が商標的使用に当たるか否か ) について (1) 本件商標について本件商標は, 前記第 2,2(2) 記載のとおり, SHIPS の五つの英文字を横書きしてなるものである 証拠 略 及び弁論の全趣旨によれば, 原告の営業及び本件商標に関して, 2

昭和 50 年に設立された原告 ( 設立当時の商号は 有限会社 A 昭和 62 年に現商号 株式会社シップス に変更 ) は, 昭和 52 年に SHIPS の名称の店舗をオープンさせ, その後, いわゆるセレクトショップとして, 様々なブランドの商品を独自のコンセプトに基づいて直接買い付け, また, SH IPS のブランド名の自社商品を開発して, 紳士服, 婦人服のほか, ネクタイ, ハンカチ, 靴下, バッグ, 財布等の各種服飾品などの販売を行っていること, 原告は, 全国に, SHIPS 又はこれを含む名称の店舗を, 昭和 60 年当時 9 店, 平成 3 年当時 26 店, 本件訴え提起当時約 58 店を展開しており, 平成 25 年 2 月期の原告の売上高が215 億 4400 万円に上ること, 原告は, SHIPS ブランドの宣伝用カタログを毎年 2 回発行, 頒布し ( 平成 25 年度の発行部数は,5 種類のカタログの合計で17 万 1000 部 ), フリーペーパー SHIPS MAG を毎年 4 回頒布している ( 同年度の発行部数は, 合計 24 万部 ) ほか, 雑誌等の多くの媒体に SHIPS ブランドの宣伝広告を行っていること, 原告の発行するSHIPSメンバーズクラブカードの顧客会員数は, 平成 25 年 8 月末時点で67 万 9000 名を数えること, 原告は, 第 24 類 ( 織物, 布製身の回り品など ) のほか21の区分にわたる指定商品を有する本件商標権に加えて, 同様に SHIPS の文字列から成り, 第 35 類, 第 37 類, 第 44 類及び第 45 類の指定役務を有する商標権 ( 第 5185503 号 ) を取得し, その営業において使用していることが, それぞれ認められる これらの事実によれば, 本件商標は, 服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識されており, 強い識別力を持つ商標であると認められる (2) 被告商品について証拠 略 及び弁論の全趣旨によれば, 被告商品について, 以下の事実が認められる 被告商品は, 幅 110cmの長尺物の布地であり, そのデザインは,30c m 四方が一つの単位となり, それが生地の端部を除く全面にわたってプリントされている この30cm 四方の一単位の中には,8 個の大きめの錨マークがそれぞれ異なる方向を向いて散らばって配置されており, そのうち一つの錨マークの上下にはそれぞれ SINCE1981, SHIPS ( 被告標章 ) と表記され, 他の一つの錨マークの上下にはそれぞれ ANCHOR, Anchors can either be temporary or permanent. と表記され, 他の一つの錨マークの下には A port is a location on a coast. と表記され, 他の一つの錨マークの上には SOME ANCHORS ARE VARIOUS-SHAPED. と表記され, 他の二つの錨マークの下にはそれぞれ Ships were key in history's. と表記され, 他の一つの錨マークは Humans have navigated the seas since antiquity. との英文に円環状に囲まれており, 残りの一つの錨マークは文字列等を伴わずに, 単独で表示されている これらの錨マーク及びそれに伴う各表記以外の部分には, The earliest anchors were rocks. 及び Anchors 3

achieve holding power との各英文の表示と, 錨, ヨット, 舵, 文字からなる5 種類の郵便スタンプマークが配されている ( なお, 上記の英文字の中には, ところどころかすれており, 読み取り難い部分がある ただし, SHI PS の英文字は, 容易に読み取れる ) また, 被告商品の端の余白部分 ( デザインがプリントされていない部分 ) には, 被告ダイワボウテックスの完全親会社である株式会社ダイワボウホールディングス株式会社の登録商標であるダイワボウ商標 ( D s SELECTI ON ) が表示されている (3) 商標的使用について前記 (2) のとおり, 被告商品においては,30cm 四方のデザインの一単位に一つの被告標章が配されているところ, 証拠 略 によれば, 被告標章は, そのデザインの中において, 他の文字列から分離して表記されており, その SHIPS の文字列は, 全て大文字で, かつ, ANCHOR の文字列とともに, 他の文字列よりもやや大きい文字サイズであり, さらに, 他の文字列がいずれも文又は句を構成しているのに対して, この SHIPS 及び ANCHOR はそれぞれ一単語のみで独立して用いられていることが認められる そして, ANCHOR の文字列は, それが意味するところの 錨 のマークの上に配置され, 同マークの下の Anchors can either be temporary or permanent. の英文を含めて, 一つの固まりとして一体的に表示されているのに対して, 被告標章は, それが意味するところの 船 ではなく, 錨 のマークの下に配置され, 同マークの上の SINCE1981 の文字列を含めて, 一つの固まりとして一体的に表示されている このような被告商品における被告標章の配置, 文字の大きさ及び表示態様からすれば, 被告標章は, 被告商品のデザインの中で, 十分に独立して認識可能な標章として表示されているということができる このことに加えて, 被告標章が, 一般に企業や団体の創業年又はブランドの設立年などを表す際に用いられる SINCE の表記を伴い, 上記のとおり SINCE1981 の文字列と一体的に表示されていること, 及び, 前記 (1) のとおり, SHIPS の文字列からなる本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され強い識別力を持つ商標であることを総合すると, 被告商品において被告標章は, その需要者に対して, 商品の自他を識別し, 出所を表示する態様で用いられていると認めることができる したがって, 被告標章は, 被告商品において, 商標として使用されていると認めるのが相当である (4) 被告らの主張についてアこの点に関して被告らは, 被告商品において被告標章は装飾的 意匠的な図柄の一部をなしているにすぎず, 商標的使用に当たらないと主張する しかし, 仮に被告標章が被告商品のデザインの一部であるといえるとしても, そのことによって, 直ちに商標としての使用が否定されるものではな 4

く, 装飾的 意匠的な図柄の一部をなしている標章であっても, その標章に装飾的 意匠的な図柄を超える強い識別力が認められるときは, 装飾的 意匠的図柄であると同時に自他識別機能 出所表示機能を有する商標としての役割を果たす場合があるというべきである そして, 被告商品のデザインにおいては, 約 30cm 四方の一単位に, 被告標章以外にも複数のマークや文字が表示されており, 赤色で表示された ANCHOR の文字が目立つ態様であることは否めないが, それらの中においても被告標章が十分に独立した標章として認識されて, 被告商品において自他識別 出所表示の機能を果たしていると認められることは前記 (3) のとおりであるから, 被告らの上記主張は採用することができない また, 被告らは, 被告標章が錨マークと一体となって分離不能な 単位表示部 を形成しているから, 単独で取り出すことができないと主張する この点, 確かに被告標章は, 錨マークのすぐ下に記載されているから, 同マーク及びそのすぐ上に記載された SHINCE1981 の表示も合わせて, 一つの固まりとして一体的に配置されているといえる しかし, 錨マークは, 錨 の形をした図形であり, 一方, 被告標章である SHIP S の文字列は 船 を意味する英単語であるから, 一つの固まりの中でも, それぞれが異なる観念を持つものとして, 独立して認識し得ることは明らかである したがって, 被告標章が錨マークと分離不能であるとの被告らの主張は採用できない イ被告らは, ship(s) は平易かつ一般的な英単語であり, 錨マークの説明的な表示でもあるから, その識別力は極めて弱いと主張する しかし, ship が 船 を表す平易かつ一般的な英単語であり, s がその複数形を表すものであるとしても, 被告標章は, ship 又は ships ではなく, 本件商標と同じく SHIPS の文字列から成るものであり, かつ, その文字列の配置, 文字の大きさ及び表示態様は, 前記 (3) に記載のとおりであって, しかも, 前記 (1) のとおり, 同じ文字列から成る本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され強い識別力を有していることにも照らせば, 被告商品のデザインの中にあって被告標章の識別力が弱いということはできない また, 被告標章 ( SHI PS ) は 船 を意味するものであるから, 錨 のマークの説明的な表示であるということもできない したがって, 被告らの上記主張は採用することができない ウ被告らは, 原告が布地を販売していないため, 布地の需要者に対しては, 本件商標は周知ではなく, また, 本件商標は, セレクトショップである原告の販売形態と切り離せないから, 原告の店舗で販売される商品だけに向けられるものであると主張する しかし, 本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識されて 5

いると認められることは, 前記 (1) のとおりであるところ, 服飾品の多くは布製品であり, また, 布地の需要者はその購入した布地で服飾品を作ることも少なくないと解されることからすれば, 服飾品と布地の関連性は強いというべきであり, しかも, 服飾品は, 広く一般消費者が需要者となるべきものであるところ, そのように一般消費者に広く認識されている本件商標が, その中の布地の需要者に限って周知でないと認めるべき事情があることは窺えない また, 原告が SHIPS の名称でセレクトショップを展開し, そこで他社ブランドの商品を販売していることは事実であるが, 前記 (1) のとおり, 原告は, 自社の SHIPS ブランドの服飾品の販売も行っており, 証拠 略 によれば, 原告が取り扱う商品の多くには, 本件商標が, 単独で, 又はメーカー等の他社の商標とともに, 付されていると認められることからすれば, 本件商標は, 商品自体に付されることでその商品の出所表示として機能していることが明らかであるから, そのような機能が原告の店舗で販売される商品にしか及ばないものとは認められない したがって, 被告らの上記主張は採用することができない エ被告らは, 被告商品の端部分にはダイワボウ商標が付されており, しかも, 布地がロール状に巻かれた状態では, 被告標章よりもダイワボウ商標のほうが確認されやすいから, ダイワボウ商標のみが被告商品における自他識別 出所表示の機能を有していると主張する この点, 証拠 略 によれば, 布地には, その端部分に, 布地の製造者の名称やブランド名などが表示されることがあり, 被告商品においても, 布地の端部分に, 被告ダイワボウテックスの親会社の登録商標であるダイワボウ商標が表示されていることが認められる しかし, 商標は, 単に商品の製造者を表すためだけに用いられるものではなく, その販売者や輸入者, 使用許諾を与えたライセンサーなどを表すために用いられるものでもあり, さらには, 当該商品の商品名やブランド名を表すものとしても用いられるのであって, しかも, それらの複数の商標が一つの商品に同時に付されることも少なくないと考えられることからすれば, 商品に付された一つの商標からその製造者が認識されるからといって, 同商品に付された他の標章が商標として認識されないということにはならないというべきである そして, 被告商品においては, そのデザインの全面にわたって, 被告標章が30cm 四方に一つずつ表示されており, しかも, 前記ウのとおり, 布地の需要者においても本件商標が広く認識されているといえることからすれば, 被告商品において, 被告標章が自他識別機能を有する態様で表示されていることを否定することはできない また, 布地がロール状に巻かれた状態で販売されているとしても, 需要者が布地を選択して購入する際には, その生地のデザインを確認することは当然であるから, 被告商品の需要者が生地 6

に付された被告標章を認識しないということはできない したがって, 被告らの上記主張は採用することができない オ被告らは, SINCE1981 の表示は, デザイナーの誕生年を記載したものにすぎないこと, 及び, この表示と被告標章とが錨マークを挟んで配置され分断されているから, SINCE1981 の表示があることをもって被告標章が商標的に使用されている根拠とすることはできない旨主張する この点, 証拠 略 によれば, 被告商品に付された SINCE198 1 の表示は, そのデザインの作成者が, 自己の誕生年 (1981 年 ) に由来して記載したものであることが窺われるが, 仮にそうであるとしても, 被告商品に接した需要者が, 上記表示について, それをデザイン作成者の誕生年の表示であると認識するとは到底認められず, かえって, SHIPS という商標が広く一般消費者に認識され強い識別力を持っていること, 並びに SINCE1981 の表示の仕方, 被告標章との位置関係及び配置に照らすと, 需要者は, 上記 SINCE1981 の表示をもって, 原告又は SHIPS というブランドの設立年を表すものと認識するのが通常と認められるから, デザイン作成者の上記意図は, 被告標章が商標的使用に当たるか否かの判断を左右するものとはいえない また, 前記 (3) のとおり, SINCE1981 及び SHIPS ( 被告標章 ) の各文字列並びにこれらに挟まれた錨マークは, 被告商品のデザインの中で一つの固まりとして一体的に配置されているところ, このうち錨マークは図形であって, 英語である SINCE1981 及び SHI PS の各文字列とは性質の異なるものであるから, これらの二つの文字列は, 錨マークを挟んでいても, 互いに繋がりのあるものとして認識されるものと認められる したがって, 被告らの上記主張は採用することができない (5) 小括以上のとおり, 被告商品における被告標章の使用は, 商標的使用に当たると認められる 2 争点 (2)( 本件商標と被告標章の類否 ) について (1) 商標及び標章の類否は, 同一又は類似の商品 役務に使用された商標及び標章が, その外観, 観念, 称呼等によって取引者, 需要者に与える印象, 記憶, 連想等を総合して全体的に考察し, その取引の実情も考慮して, 商品 役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものと解される (2) 本件商標と被告標章は, いずれも大文字の SHIPS の五つの英文字を横書きしてなるものであり, その外観は似ており, その称呼は シップス と同一であり, また, 船 を意味する英単語の複数形であるという点で, その観念も同一といえる 7

この点に関して被告らは, 本件商標の文字列は, 単純なゴシック体を一部変形させ, かつ文字の間隔を詰めているのに対し, 被告標章では, 一般的なローマン体を用いているから, 両者の観念が異なると主張するが, 本件商標の字体と被告標章の字体には若干の相違はあるものの, それによる外観上の差異はわずかであり, また, その外観上の差異によって両者の観念が相違するものとは認められない そうすると, 両者の外観, 称呼, 観念を総合して全体的に考察すれば, 本件商標と被告標章がそれぞれ同一又は類似の商品に付された場合には, その商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものと認められ, 本件において, これを否定するべき取引の実情の存在は窺われないから, 本件商標と被告標章とは, 少なくとも類似するものということができる 3 まとめ前記 1 及び2によれば, 被告ダイワボウテックスが布地に被告標章を付して被告商品を製造し, 被告らがこれを販売等する行為は, 本件商標権の侵害に当たる ( 商標法 37 条 1 号 ) と認められるところ, 本件においては, 被告らは, 被告商品に付された被告標章が商標的使用に当たることを否認し, 原告の請求を争っていることから, 原告は, 被告らに対して, 各侵害行為の差止めを求めることができ, また, その侵害行為を組成する被告商品の廃棄を求めることができる ( 同法 36 条 1 項,2 項 ) 4 結論以上によれば, 原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし ( ただし, 被告商品の廃棄については仮執行宣言を付すのが相当でないからこれを付さない ), 主文のとおり判決する 論説 1. 本件は 大手布地メーカーの子会社である被告が製造, 販売した布地について 錨の図形などとともに使用していた SHIPS という表示が 原告の登録商標と類似することを理由に 被告 2 社に対し同布地の販売等の差止め及び廃棄を求める事案であり 被告を最初 1 社だけであったのを後日もう1 社を追加したことから 甲 乙両事件が併合されて審理されて判決された事案である 公開された判決文には 被告標章目録 (1)(2)(3) の表示は添付されているものの 被告が当該商品に現実に使用していた意匠的図柄の態様については 添付されていないから不明である しかし 判決文を熟読すれば筆者には想像がつくので 説示されている事項はほぼ理解することができる 2. 裁判所が最初に説示していることは 本件商標の存在意義についてであるところ 証拠等を検討した結果 原告にあっては 現商号を使用する前の昭和 52 年には SHIPS という名称の店舗をオープンし セレクトショップとして様々のブランドの商品を 独自のコンセプトに基づいて直接買い付けしたり 8

SHIPS のブランド名の自社商品を開発し 各種服飾品などの販売を行い 全国に SHIPS 又はこれを含む名称の店舗を展開し 本訴訴えの提起時には58 店を展開して売り上げ SHIPS ブランドの宣伝カタログを毎年 2 回発行, 頒布したり フリーペーパー SHIPS MAG を毎年 4 回頒布するほか 雑誌等の媒体に宣伝広告をしたり SHIPSメンバーズクラブカードの顧客会員数は平成 25 年 8 月末現在で67 万 9000 名である また 第 24 類のほか21の区分にわたる指定商品や その他の指定役務に商標登録第 5185503 号の商標権も取得している 裁判所は 原告についてのこれらの事実から 本件商標は服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され 強い識別力を持つ商標になっていると認定したのである 3. これに対して被告は 標章 SHIPS をどのような態様で使用していたのかについて証拠等によって精査したところ 被告標章 (1)(2)(3) は 図柄全体のデザイン中から 他の文字列から分離して表記され SHIPS の文字列は大文字で 他の ANCHOR とは一単語のみで独立して用いられていると認定された このような被告標章の使用上の表示態様について 裁判所は 被告商品のデザインの中で 十分に独立して認識可能な標章として表示されているということができる と認定したのである これに加えて裁判所は SHIPS の文字列から成る本件商標は 服飾品のブランドとして一般消費者間に周知商標となっているものであることを認定医したことから 商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあると認めたことから 本件商標と被告標章とは 少なくとも類似するものということができる と判示したのである 4. 筆者がこの判決文を読んで感動したことは 裁判所は本件判決の最初において 本件商標 SHIPS という比較的単純な英単語の採用の起源を紹介したり これが全国展開などされて 商標として自他商品の識別力を有する周知の商標となっていることなどをまず認定したことである けだし 本件商標はすでに登録されて発生している商標権であるから これ自体の商品の出所機能や自他商品の識別機能の発揮のことなどは あえて精査する必要はないし 商標の類否判断を行うに際しても 取引の実情を考慮しなければならないような事案でもないからである にもかかわらず そこまで追及して事実認定していることは 原告の主張や立証もあったであろうが 裁判所がそこまでよく論及して説示しているのは 本件商標が造語的商標ではなく それ自体ありふれた英単語であったことも原因となっているかも知れないのである 牛木理一 9

別紙 被告標章目録 (1) (2) (3) 10