4.1.2 非接触 IC カードと NFC(Near Field Communication) (1) 近接型非接触 IC カードの種類近接型非接触 IC カードには3 種類の方式がある 図表にこの概要を示す 図表 4.1.2-1 近接型非接触 IC カードの無線通信方式 ISO/IEC14443 Type A ISO/IEC14443 Type B FeliCa Interface 通信方式 PICC PCD ビット コーディング PCD PICC 変調方式搬送波通信速度 Miller NRZ Manchester Manchester NRZ ASK100% ASK10% カードからR/WはBPSK Fc = 13.56MHz 副搬送波 Fc/16(847kHz) 106kbps ~ Manchester ASK10% Fc = 13.56MHz 副搬送波なし 212kbps ~ 通信形 非対称形カードから R/W の通信には副搬送波 ( サブキャリア ) を利用 対称形 ISO/IEC 14443TypeA は日本では IC カード方式のテレホンカードなどで利用され いている ISO/IEC 14443TypeB は 住民基本台帳カードなどに使われている FeliCa は 交通用途や電子マネーの Edy に使用されている 以下 FeliCa の例をあげて非接触 IC カードに関する解説を行う (2) 非接触 IC カードとリーダ ライタ FeliCa の無線通信は 10 センチ程度の距離で無線通信を行う技術である FeliCa の大きな特徴は 対称形であるという点である リーダー ライタ側 IC カード側が対象になっているのでどちらがどちらになっても良いという特徴を持つ 図表に FeliCa の IC カードとリーダ ライタの様子を示す - 1 -
図表 4.1.2-2 IC カードとリーダ ライタ Remote Card IC Chip 非接触 IC カード IC カードとリーダ ライタ間は暗号通信を実施 通信速度 : 212kbps~ 13.56Mhz Control Board リーダ ライタ サーバ側と暗号化通信 (3) FeliCaOS の特徴 FeliCa には FeliCaOS といわれるセキュアなデータ管理をする部分がある 図表に FeliCaOS の特徴を示す 図表 4.1.2-3 FeliCaOS の特徴 高速トランザクション 独自認証 暗号化シーケンスによるトランザクション処理の高速化 ( 通常処理なら 100m 秒で完了 ) セキュリティ 相互認証 / 暗号通信 カード内のサービス ( ファイル ) をそれぞれ個別の鍵 / アクセス権で管理 マルチアプリケーション 一枚のカードに複数のアプリケーションを搭載 アンチ ブロークントランザクション - 2 -
モバイル端末アプリFeliCaOS は セキュリティやデータを蓄積する時のマルチアプリケーションを実現している部分である FeliCa は交通系で使われており 交通用途においては かざしてトランザクションが完了するまで 0.1 秒以内という要望があった 現在の FeliCa としてはこうした要望を実現したものとなっている セキュリティの面では FeliCa は相互認証と暗号通信によるセキュアな通信が可能 である その際 カードの中には複数のサービスがファイルの形で存在しているが それぞれに対してアクセス権や鍵の管理を行うことができる マルチアプリケーションとして 一枚のカードの中に 社員証や Edy の電子マネーが入っているなど 複数のアプリケーションを搭載することが可能である アンチ ブロークントランザクションとは 通信が完了せずに中断された場合 データが破壊されたり 整合性がとれなくなる危険性を回避するためのもので 全データが更新されるか更新されないかのどちらかに転ぶようになっている (4) モバイル FeliCa IC チップ搭載モバイル端末 おサイフケータイに使われているモバイル FeliCa IC チップでできることは 基本 的に 3 つある 図表にこの様子を示す 図表 4.1.2-4 モバイル FeliCa IC チップ搭載モバイル端末 2Viewer 機能 3オンライン トランザクション 1リアル利用 AP R/W 機能 Mobile FeliCa IC Chip カード機能リ店舗等への設置装置 サーバ 各種サービスプロバイダ 店舗 改札口 自販機 イベント会場 等 ひとつめはリアルな店舗で Edy のような形で使用される場合である POS 端末などに携帯電話をかざすと決済される 2 番目はビューワー機能である 通常の IC カードでは 表示装置がないので残高が - 3 -
わからないが 携帯電話には液晶表示装置があるので 残高を表示することが可能となる これは大きなメリットであるといえる 3つめはオンライン トランザクションで 携帯電話はパケット網を使ってサーバーと接続できるので セキュアにサーバーにアクセスして オンラインでバリューのチャージをすることが可能になる この 3 つの特徴を持ったものがモバイル FeliCa IC チップであり ドコモのおサイフケータイに組み込まれている (5) NFC(Near Field Communication) がもたらす世界 NFC は Near Field Communication の略で 基本的には非接触 IC カードの無線通信技術をそのまま応用し 国際的に規格化が進められている技術である 図表に NFC 技術がもたらす世界について示す 図表 4.1.2-5 NFC(Near Field Communication) 技術がもたらす世界 非接触 IC カード技術との組み合わせによるセキュアなアプリケーションの実現 Secure Transaction Data Exchange NFC Technology 使い易さと速さを両立させた CE 機器間の汎用データ転送 User Interface 近づけるだけで始まるユーザーインターフェースを機器間通信にも適用 NFC のひとつの特徴は Data Exchange( データ交換 ) で 汎用的にデータをやりとりできる仕組みを実現している これは 今までの非接触 IC カードが カードの世界とリーダ ライタ 例えば POS 端末とか改札などとのやりとりを行うのが基本だったのに対して FeliCa の双方向 対称性をうまくいかし 例えば二つの携帯電話の間で P2P(Point to Point) のやりとりができるようにプロトコルを拡張したものである その際には FeliCa のデータだけではなく テキストデータなどさまざまなデータを汎用的にやりとりすることが可能である - 4 -
NFC の 2 番目の特徴は Secure Transaction で 非接触 IC カード技術と組み合わせ ることによりデータを転送する際に非接触 IC カードのセキュアなアプリケーション を連携させることができる点である NFC の3 番目の特徴は User Interface で かざして簡単に使える点である 利用者にとってもっとも利便性の高い特徴である Suica の例では タッチするだけで簡単に使えるという点が大きく評価されている 機器と機器とを近づけるだけでデータの通信ができるため 機器間の通信に応用することが可能である (6) FeliCa と NFC の関係 NFC と FeliCa の関係については FeliCa には FeliCaOS といわれるセキュアなデータ管理をする部分がある FeliCa 無線通信技術とあわせて FeliCa と呼んでいるが NFC はその内の無線通信技術と ISO/IEC14443 TypeA の無線通信技術をパックにして 二つの無線通信技術を併用している 加えて P2P の機器間通信のプロトコルがサポートされているのが NFC である 最初に標準化されたのが NFCIP-1 規格であり NFCIP-2 に関しては ISO/IEC 14443TypeB と ISO/IEC 15693(RFID タグの規格のひとつ ) がサポートされたものである これらは既に国際標準規格になっている 図表 4.1.2-6 にこの様子を示す 図表 4.1.2-6 FeliCa と NFC の関係 FeliCa ファイルシステムコマンド レスポンス仕様 FeliCa OS セキュリティ制御データ管理 機器間通信プロトコル 無線通信プロトコル FeliCa Interface (Card R/W 機器間 ) ISO/IEC 14443 Type A (Card R/W 機器間 ) NFC (NFCIP-1) 14443 Type A/B (R/W) ISO/IEC 15693 (R/W) NFC (NFCIP-2) - 5 -
(7) NFC の持つ機能 ( ア ) 非接触 IC カードリーダ機能 NFC でできることは 大きく分けて 3 つある ひとつは非接触 IC カードのリーダ ライタ機能である FeliCa 技術を適用した製品である PaSoRi( パソリ ) というソニーのリーダ ライタと同じ機能になる モバイルに限らず いろいろなデバイスに NFC のチップ アンテナを入れると PaSoRi と同じものとして使える FeliCa のカードをかざすと残高が見える この時に ISO/IEC 14443 TypeA のカードも読め フィリップスが推進している MIFARE という IC カードを読むことも可能である 日本では FeliCa が主に使用されている 図表 4.1.2-7 NFC の非接触 IC カードリーダ機能 NFC 機器がリーダ ライタとして機能します (PaSoRi と同等機能 ) CPU NFC chip FeliCa or Mifare Offline Viewer ( イ ) 汎用データ通信機能 2 点目は汎用データ通信機能であり NFC のチップとアンテナをさまざまなデバイスに入れておけばデータ通信を行うことができる 簡単な例をあげれば カメラ付きの携帯で撮影を行い 携帯をテレビに近づけると カメラ画像がテレビに転送されて大写しにされ共有できるといったことが実現できる さまざまなフォーマットのデータを簡単にやりとりすることができる - 6 -
図表 4.1.2-8 汎用データ通信機能 NFC 機器同士で汎用的なデータ通信ができます CPU Memory NFC chip ( ウ ) 非接触 IC カード機能 3 点目の特徴は非接触 IC カード機能である NFC はカード側 リーダー側の両方として利用することができる その際 NFC は FeliCaOS が入っていないが CardSAM(SAM:Secure Application Module) を FeliCaOS のセキュアチップとして併用すると セキュアな FeliCa 非接触 IC カードとして機能する 交通のデータ 電子マネーのデータなどさまざまなアプリケーションのデータをセキュアなチップに入れておき POS システムに近づけると決済が行われる NFC は リーダー ライタとして使われ また カードにもなり かつ汎用的なデータ通信が行えるのである 図表 4.1.2-9 非接触 IC カード機能 FeliCaOS 搭載セキュアチップとの併用により NFC 機器が非接触 IC カードとして機能します CPU 交通電子マネーチケット会員証 NFC chip Card SAM(*) POS System Multi Application (*)SAM : Secure Application Module - 7 -
(8) NFC の標準化標準化に関しては NFCIP-1 NFCIP-2 とも標準化は完了している 実際に NFCIP-2 の標準化が完了したのは 2005 年 1 月である これから立ち上げの時期になると考えられる 図表 4.1.2-10 NFC の標準化 ECMA-340 (NFCIP-1) - 最初の標準規格として NFCIP-1 が正式に採用 (2003/1) ISO/IEC 18092 -Fast track ballot ( 投票 ) を 2003/10/22 に実施 -2003/12/08 国際標準成立をソニーが発表 ECMA-352 (NFCIP-2) -TypeB, RFID タグ (ISO/IEC15693) の R/W 機能との互換性を考慮した標準規格を策定 (2003/12) ISO/IEC 21481-2005 年 1 月 ISO 取得完了 2005 年 1 月に開催された 2005 International CES(Consumer Electronic Show) において NFC に対応した携帯電話として モトローラ ノキアが試作機を発表している モトローラの携帯電話には NFC のチップが入っており POS 端末に接続するリーダ ライタにかざすと決済ができる 現在は NFC フォーラムが設立されており ソニー フィリップス ノキアが幹事を行っている 2005 年 2 月には 米 Texas Instruments(TI) 松下電器産業 NEC マイクロソフト 韓国 Samsung Electronics 米モトローラなどが参加し ワールドワイドで NFC を推進する土台ができつつある - 8 -