空気環境学 第 10 回室内空気清浄と健康 三田村輝章 1
本日の内容 粒子状物質の被曝機構 空気経由による被曝 物体経由による被曝 空気清浄機と粒子状物質の除去 空気清浄機の種類と特徴 ( ろ過式, 静電式, その他 ) MEPA HEPA ULPA フィルター 空気清浄機の性能表示 ( 圧力損失, 汚染除去効率, 汚染物質保持容量 ) 空気清浄機の性能計算 2
粒子状物質の被曝機構 (1/8) 空気経由による被曝 発生, 発散, 侵入, 移動, 落下, 沈積, 付着などの挙動が関係 3
粒子状汚染物質 参考 MERS(Middle East Respiratory Syndrome) 中東呼吸器症候群 2012 年に初めて確認されたウイルス性の感染症で, 原因となるウイルスは MERS コロナウイルスと呼ばれる 2003 年に流行した重症急性呼吸器症候群 (SARS) の原因となった病原体もコロナウイルスの仲間であるが,SARS と MERS は異なる 4
粒子状物質の被曝機構 (2/8) 発生 発散 咳, くしゃみ, 会話などの生理的行動による放出 身体的動作により皮膚 衣服などに付着した汚染粒子が空中に放散 活動による微生物粒子発生量提案値 5
粒子状物質の被曝機構 (3/8) 拡散移動 汚染粒子は, 室内の一般気流などに乗って移動 微小な液滴 : 短時間に蒸発して微小なエアロゾルとなり, 長時間空中に浮遊して移動 粒径 10μm 以上の大きい液滴 : 急速に落下 タバコ煙 霧 カビ バクテリア 花粉 カーボンブラック 0.001 0.005 0.01 0.05 0.1 0.5 1 5 10 50 100 500 1000 微粒子の粒径 [μm] エアロゾル : 空気中に浮遊する微小な液体または固体の粒子 6
発生した汚染物質は, 殆ど混合が行われずに吸い込み口に向けて流れるため, 発生源の下流では平均濃度よりも 1~2 オーダー高い値が出現する可能性 ある点における濃度変化 7
粒子状物質の被曝機構 (4/8) 落下 落下する汚染粒子は床面に沈積して在室者の手足などに付着 さらに他の物質表面を汚染させたり, 振動 衝撃などによる再発塵によって空中に飛散 粒子の落下速度は, 粒子の質量に関係 V t = 0.003 d 2 V t : 落下速度 [cm/s],d: 粒子直径 [μm] 8
PM2.5 などの微小粒子 水滴の直径と落下速度計算値 水滴の直径 [μm] 落下速度 [cm/s] 水滴の直径 [μm] 落下速度 [cm/s] 水滴の直径 [μm] 落下速度 [cm/s] 水滴の直径 [μm] 落下速度 [cm/s] カビ, バクテリアなど 花粉など 9
粒子状物質の被曝機構 (5/8) 吸入 人は呼吸によって 500l/h 程度の空気を吸入 吸入空気中に含まれる粒子が被曝量 吸入された粒子は, その大きさ ( 空気動力学径 ) によって到達する位置が異なる 排出機構がない肺胞近くに沈着する粒径 1μm 前後の粒子が問題 ただし, 鼻や気管などに沈着する比較的大きな粒子でも感染や気管などに炎症のよう損傷がある場合 ( 気管支喘息など ) は重要視する必要がある 10
吸入された粒子の沈着 11
粒子状物質の粒径と呼吸器系への沈着部位 出典 : 室内環境第 17 巻第 1 号 12
粒子状物質による循環器疾患発症のメカニズム 出典 : 室内環境第 17 巻第 1 号 13
粒子状物質の被曝機構 (6/8) 物体経由による被曝 メカニズム 浮遊した粒子が落下し, 物体の表面や床面に沈着 新しい汚染源 何らかの衝撃により再飛散 口あるいは皮膚を経由して体内に取り入れられる 感染やアレルギー症状の発症 浮遊粒子 再飛散 落下 沈着 14
粒子状物質の被曝機構 (7/8) 汚染対策 汚染源が人である可能性 発生 放散の防止 窓などの開口部からの流入が原因 室内圧の制御, 建物の気密化 床に沈着した汚染物質の除去 床材によっては困難な場合が多く, カーペットを真空掃除機で清掃する場合は 60~80% の除去率, 洗浄すれば完全に除去 15
粒子状物質の被曝機構 (8/8) 再飛散 舞い上がり方は床面の性質により大きく影響 カーペットは, 粒子を捕捉するため, 板張りと比較して 5~6 分の 1 程度 飛散する粒子は粒径 5~10μm 以下で短時間に落下 16
空気清浄機と粒子状物質の除去 (1/12) 空気清浄機 空調や換気を必要とする場所の空気中に含まれる不純物質を除去する装置 機器 最近では, 電子産業やバイオテクノロジー関連産業が発展し, 超清浄空間の提供が要求 家庭用空気清浄機 クリーンルームの空調 17
空気清浄機と粒子状物質の除去 (2/12) 空気清浄機の種類と特徴 ろ過式 微粒子を含む空気を繊維状の充填層に通し, 慣性効果, 拡散効果, さえぎり効果, 静電効果などの相互作用により微粒子を除去 現在, 最も多用されている方式 ろ過式換気装置の例 18
障害物である繊維に衝突し捕集 慣性効果 障害物である繊維に付着し捕集 拡散効果 繊維表面から粒子の半径以内に近づけば繊維に接触捕集 さえぎり効果 静電気効果により繊維に引き寄せられて捕集 静電効果 ろ過式の捕集原理 19
粒子径と捕集原理 20
空気清浄機と粒子状物質の除去 (3/12) フィルタ構造 自動型とユニット型に分類 自動型 ( 巻き取り式フィルタ ) ユニット型 ( 中性能フィルタ ) 21
空気清浄機と粒子状物質の除去 (4/12) ヘ パ HEPA フィルタ (High Efficiency Particulate Air filter) 粒径 0.3μm の粒子に対して 99.999% 以上の捕集率を有し, 空気清浄が要求されるあらゆる分野で使用される高性能フィルタ 22
空気清浄機と粒子状物質の除去 (5/12) ウルパ ULPA フィルタ (Ultra Low Penetration Air filter) 粒径 0.15μm の粒子に対して 99.999% 以上の捕集率を有し, 半導体の生産工場の様な高い清浄度が要求されるクリーンルームや生産装置等に使用される超高性能フィルタ 23
空気清浄機と粒子状物質の除去 (6/12) MEPA フィルタ (Medium Efficiency Particulate Air filter) 主に空調系の外気処理に使用される中性能フィルタ ULPA フィルタや HEPA フィルタの保護として使用する場合もある 24
空気清浄機と粒子状物質の除去 (7/12) 静電式 荷電部の放電線に正 (+) の高電圧をかけると, その表面から発生するコロナ放電によって流入空気中の微粒子を正に荷電 荷電部下流の正負の極板が平行している集塵部に入り, 負極板に付着して捕集 コロナ放電 : 気体中の放電の一形態で一般に高圧力の気体中で一方の電極の近辺だけに高電界が集中するときに起こる部分放電 25
空気清浄機と粒子状物質の除去 (8/12) その他 ガス吸着フィルタ : 活性炭やイオン交換樹脂などを利用し, ガス状物質や臭気を吸着 エアワッシャ : 微粒子やガス状物質を含む空気に市水や純水を噴霧して水粒子に吸着 抗菌フィルタ : ろ材に抗菌剤や酵素をコーティング, 医療施設などで使用 塩害防止フィルタ : 外気取入れでの海塩粒子とミストを含んだ空気の除去に使用 26
空気清浄機と粒子状物質の除去 (9/12) 空気清浄機の性能表示 定格風量に対する性能で表示 圧力損失 所定の空気量を通過させるときの全圧差 [Pa] 圧力損失が大きいと送風のための動力費がかさむ フィルタの捕集量が増加するにつれて抵抗が増加 圧力損失の上昇が寿命などの判定に利用される 27
空気清浄機と粒子状物質の除去 (10/12) 汚染除去効率 空気清浄機を通過する前後の空気中に含まれる汚染物質量の百分率 汚染物質保持容量 空気清浄機の使用限界 ( 寿命 ) までに捕集可能な汚染物質の質量 圧力損失が初期値の約 1.5~2 倍になった時点までに捕集された粉塵質量 28
空気清浄機と粒子状物質の除去 (11/12) 空気清浄機の効率計算 捕集効率 h η= 1 η f Q f C o + r 1 CQ r + M 1 η f Q f C o + rcq r Q s : 給気量 [m 3 /h],q r : 還気量 ( リターン )[m 3 /h],q f : 取入れ外気量 [m 3 /h], C: 室内空気汚染濃度 [mg/m 3 ],C o : 外気空気汚染濃度 [mg/m 3 ], h: 主空気清浄機捕集効率 [-],h f : 外気用空気清浄機捕集効率 [-], r: 環気再循環率 [-],M: 室内汚染発生量 [mg/h] 29
空気清浄機と粒子状物質の除去 (12/12) η= 1 η f Q f C o + r 1 CQ r + M 1 η f Q f C o + rcq r 取入れ外気量 外気用空気清浄機 主空気清浄機 給気量 外気空気汚染濃度 還気量 室内汚染発生量 室内空気汚染濃度 空調 換気システムにおける空気清浄機の例 30
フィルタ効率の計算に必要な設計値 31
エアフィルタの分類 32
700mm OA RA 参考 空気清浄機能を搭載した全館空調システム (2 階ホール吸込口 ) SA 空調 換気ダクト HP エアコン 押出法 PF 30mm GL EA コンクリート 150mm フローリング 15mm 全館空調装置 アースチューブ 150φ 33
空気清浄機 外気取入れ メッシュフィルタ- MEPAフィルタ- フ レフィルタ電子セルホ ストフィルター冷温装置各室給気口 排気 トイレ浴室台所クローセ ット室内還気口 空気清浄機能を搭載した全館空調システムの模式図 34
プレフィルター 電子セル ポストフィルター 汚染空気 清浄空気 イオン化ワイヤー ( 放電線 ) 集塵板 ( 電極板 ) 電子セル外観 空気清浄機 ( 静電式 ) の概要 35
空気清浄機能の粉じん捕集率 36
微粒子濃度 [ 個 /L] 1000000 100000 10000 1000 100 10 1 >0.3 >0.5 >0.7 >1.0 >2.0 >5.0 0.1 気中 気中 気中 気中 吹出口 気中 吹出口吸込口 気中 居間 寝室 外気 居間 寝室 ( 還気 ) 外気 旧邸 新邸 引っ越し以前の住宅 空気清浄機能を搭載した全館空調住宅 ある住宅における浮遊微粒子濃度の測定結果 37
まとめ 粒子状物質の被曝機構 空気経由による被曝 物体経由による被曝 空気清浄機と粒子状物質の除去 空気清浄機の種類と特徴 ( ろ過式, 静電式, その他 ) MEPA HEPA ULPA フィルター 空気清浄機の性能表示 ( 圧力損失, 汚染除去効率, 汚染物質保持容量 ) 空気清浄機の性能計算 38