上については 例えばコンテナのハイテク化がある 冷凍されたベントリンや血液製剤などの医療関連品を 冷凍機能を持つリーファーコンテナに収容し 海上貨物として輸送されている事例がある また 海上輸送は航空輸送と比較して単位トンキロあたりの CO2 排出量が低く 環境に優しい輸送手段として認識されている

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< 図表 1> 米国の仕出し国 地域別自動車部品輸入実績 ( 単位 :100 万ドル ) 輸出国 シェア 1 メキシコ 11,740 13,692 16,045 17,056 19, % 2 カナダ 7,638 8,253 8,932

海 輸 送 が 競 合 : 同 40~ 60%) 第 4 階 層 ( 海 上 輸 送 にやや 依 存 : 同 60~ 90%) 第 5 階 層 ( 海 上 輸 送 に 大 きく 依 存 : 同 90~ 100%)とした 各 年 階 層 別 に 品 目 数 とそのシェアを 示 している また 食 料

平成18年8月31日

平成28年 成田空港貿易概況(速報)

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にかかるコストをまかなえればよいという発想で安い運賃をオファーし 古紙 スクラップ 穀物 パルプなどの輸送を行っていたという話を聞かせていただいたことがある その際にはコンテナ回送の代わりに運賃を極端に低くして貨物を運んだり リーファーコンテナでも電源を入れずにドライコンテナと同じようにして運用する

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【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

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仕出国別 中国来の知財侵害物品の差止件数は 1,131 件であり 仕出国別の構成比では 前年に続き全体の約 8 割 (78.7%) を占めるに至っています 一方 2 位のフィリピン来が構成比 9.7% 3 位の香港来が同 4.8% を占めるにとどまっており 中国来への一極化の傾向にあると言えます な

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

2016 年の日本の対ロシア NIS 諸国輸出入通関実績 ( 確定値 ) ドル表示 輸出入前年輸出前年輸入合計前年 =100 =100 =100 バランス ロシア 16,410, ,125, ,285, ,159,423 ウクライナ 883,

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

平成18年8月31日

第4章 日系家電メーカーにおけるグローバル化の進展と分業再編成

,798 14, kg ,560 10, kg ,650 2, kg ,400 19, kg ,

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< 目次 > Ⅰ. 基準シナリオ : 経済成長持続ケース 1. 中間所得層 + 高所得層の推移 2. 中間所得層の推移 3. 高所得層の推移 Ⅱ. シナリオ2: 中国とインド経済が急激にダウンしたら? 1. 中間所得層 + 高所得層の推移 2. 中間所得層の推移 3. 高所得層の推移 Ⅲ. シナリオ

仕出国別 来の知財侵害物品の差止件数は 660 件であり 仕出国別の構成比では 前年に続き全体の 8 割 (79.6%) を占めるに至っている 一方 2 位の来が構成比 9.0% 3 位の来が同 4.9% を占めるにとどまっており 来への一極化の傾向にあると言える なお 前年同期 2 位であった来は

インド 12 3 エビ イカ オーストラリア 13 3 マグロ エビ フィリピン 14 1 マグロ カツオ エビ アイスランド 15 1 その他の魚 ハリバット 魚卵 スペイン 16 1 マグロ タコ マルタ 17 1 モロッコ 18 1 タコ イカ モーリタニア 19 1 タコ ニュージーランド

統計トピックスNo.92急増するネットショッピングの実態を探る

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と船種によって異なる通航料が適用されている 05 年にはコンテナ船に関する通航料が TEU ベースに変更された コンテナ船通航料を見ると 05 年から 11 年までの間に 95.2%( 年当たり 11.8%) にのぼる値上げが行われており TEU 当たりの通航料は 05 年に 42 米ドルであったが

42

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化繊輸入は 近年上昇を続けており 2016 年は前年比 10% 増の 43 万トンとなりました 素材別には ポリエステル F 長繊維不織布が中心ですが 2016 年はポリエステル S の輸入も大幅増となりました 化学繊維輸出推移 化学繊維輸入推移 生産が微減 輸出が横ばい 輸

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製造業 食料品製造業 畜産食料品製造業

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以前 製造業 食料品製造業 畜産食料品製造業

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世界14カ国で「サステナブル・ライフスタイル」意識調査を実施

以前 製造業 食料品製造業 畜産食料品製造業

平成 30 年 1 月から 6 月までの名古屋税関における知的財産侵害物品の差止状況 輸入差止件数は 936 件で 前年同期比 30.4% の減少となったものの 6 年連続で 900 件を超えました 輸入差止点数は 14,893 点で 前年同期比 46.2% の減少となりました 知的財産侵害物品の輸

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[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

地域別世界のエアコン需要の推定について 年 月 一般社団法人 日本冷凍空調工業会 日本冷凍空調工業会ではこのほど 年までの世界各国のエアコン需要の推定結果を まとめましたのでご紹介します この推定は 工業会の空調グローバル委員会が毎年行 なっているもので 今回は 年から 年までの過去 ヵ年について主

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はじめに 構成シミュレーションと注文 受け取り 1

地域 ( 国 ) 別輸出入 輸出輸入差引 価額伸率価額伸率価額伸率 総額 40,131, ,530, ,785 4 アジア 21,850, ,862, ,987, 中華人民共和国 7,655,

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愛媛の工業 ( 速報 ) - 平成 30 年工業統計調査 ( 速報 ) 結果から - 平成 29 年の愛媛県の製造業について ( 従業者 4 人以上の事業所 ) この速報は 平成 30 年 6 月 1 日現在で実施した 平成 30 年工業統計調査 をもとに 愛媛県内の製造事業所 ( 従業者 4 人以


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2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

年 年 に設定した 世界合計 の輸出金額は 年 3 兆 2,310 億ドルから 年 6 兆 1,930 億ドル 年 14 兆 6,520 億ドルと 4.5 倍に拡大した後 年秋のリーマンショックを契機として 2009 年には前年の約 3/4 に急激に落ち込み その後 徐々に回復が進み 年 16 兆

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輸入差止件数及び点数の推移 輸入差止件数は 前年に比べ 61.4% 増加の 7,923 件であり 年ベースでは過去 7 番目となりました ( 年ベースの過去最高は平成 25 年の 10,468 件 ) 輸入差止点数は 前年に比べ 31.0% 減少の 165,804 点であり 年ベースでは過去 16

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電通、「ジャパンブランド調査2014」を実施

外国貿易概況

EPA に関する各種試算 試算 1 EPA のマクロ経済効果分析 (3 ページ ) 内閣官房を中心に関係省庁と調整したシナリオに基づき 川崎研一氏 ( 内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官 ) が分析 WTO はじめ広く関係機関が活用している一般均衡モデル (GTAP モデル ) を使用 EPA

対中国における輸出入総額の推移を見てみると 1990 年頃より増加が目立ち始め ここ数年は微増傾向となっています 特徴的なのはリーマン ショックの影響が大きかった 2009 年において 対世界の輸出入総額の減少と比較して 対中国は減少の程度が少なかったことが伺えます この年の貿易額は 全国で 33.

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ま え が き

四校

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阪神港及び各港の構成比 ( 対全国 ) 全国における阪神港の構成比をみると 2014 年は輸出で 12.9% 輸入で 12.7% となり 阪神港が誕生した 2007 年と比べて 輸出は 0.8 ポイント 輸入は 0.7 ポイント拡大しました 阪神港の各港についてみると 輸出は神戸港の構成比が高く 輸

Transcription:

アセアン発北米向け海上 航空貨物輸送における競合品目 掲載誌 掲載年月 : 日刊 CARGO1207 日本海事センター企画研究部研究員川崎智也 はじめに 12 年 3 月 12 日発表のリポート ( 執筆者 : 日本海事センター 松田琢磨研究員 ) では HS コード 2 桁 ( 大分類 ) の品目を参照し アジア発米国向け海上コンテナ貨物と航空貨物の競合性についての分析が紹介された 分析の結果 国 地域別で競合度に差異がみられた 日本 韓国発貨物における海上 航空輸送の競合度が最も高く 次いで中国 台湾発の競合度が高かった アセアン発貨物輸送については 上記の東アジア諸国 ( 日韓中台 ) 発貨物と比較して競合度は低く 両者の棲み分けがまだ明確であることが示された 今回のリポートでは 海上 航空輸送にそれほど強い競合性が認められなかったアセアン発の貨物輸送を対象として より詳細の品目 (HS コード 6 桁 ) について競合品目の特定を試みることとしたい 具体的には 品目別に海上輸送と航空輸送の分担率を求め 両輸送機関分担率が同程度の品目をリストアップする 対象国はタイ マレーシア シンガポール インドネシアのアセアン 4 ヶ国とし データは Zepol 社の TradeView を用いた なお 11 年の輸送実績が 10 万米ドルを下回った品目については分析から除外した 航空 海上輸送シフトの動向品目別の海上 航空輸送の競合度を分析する前に 航空輸送から海上輸送へシフトする傾向について簡単に紹介したい アセアン発北米向けの貨物輸送について考えると 輸送機関は海上輸送 航空輸送に限定される 一般的に 航空貨物は海上貨物と比較し 高価値 軽重量などの特徴を持つとされてきたことから 輸送時間に対する敏感性は比較的強いと思われている 一方 海上輸送される品目は航空輸送のそれとは逆の特徴を有するものが多いと思われている このように 両輸送機関で取扱われる品目には明確な境界線が引かれていたというのが これまでの常識とされていた しかし 米ペンシルベニア州立大学の J.J. コイル教授などの研究によれば 海上貨物と航空貨物の競合範囲は近年拡大を続けており ほぼ完全に棲み分けが明確な品目は減少傾向にあるとされる 特に 航空輸送から海上輸送への移行が進行している 例えば 電化製品などの精密機械類 医薬品 食料品 書類 衣類などの品目では 競合度が高くなる傾向がある シンガポール国立大学の A.T. チン准教授によると 航空輸送から海上輸送へシフトする理由として 1 航空運賃の上昇 2 海上輸送サービスの向上 3 環境問題に対する意識 の 3 つが挙げられている 海上輸送サービスの向 1

上については 例えばコンテナのハイテク化がある 冷凍されたベントリンや血液製剤などの医療関連品を 冷凍機能を持つリーファーコンテナに収容し 海上貨物として輸送されている事例がある また 海上輸送は航空輸送と比較して単位トンキロあたりの CO2 排出量が低く 環境に優しい輸送手段として認識されている これを理由として 様々な企業において海上輸送を積極的に利用しようという動きが広がっている 例えば 大手パソコンメーカーのデルでは 地球温暖化対策の一環として コンピューター部品の輸送を航空輸送から海上輸送へ漸次的に切り替えている このように 航空輸送から海上輸送にシフトする動きが徐々に顕在化しており 両輸送機関が取扱う品目の境界線が曖昧になりつつある というのが最近の傾向である 品目別海上輸送分担率の推定今回の分析では タイ マレーシア シンガポール インドネシアのアセアン 4 ヶ国発の貨物を対象に 競合度が高いと推測される HS コード第 2~ 10 類の食料関連品 同 84 85 類の機械関連品について 同 6 桁まで参照し 全対象品目について海上輸送と航空輸送の分担率 ( 金額ベース ) を算出した Zepol 社の TradeView では 米国発着の海上輸送と航空輸送について 品目別に重量または金額ベースの輸送実績を把握することができる 基本的に 両輸送機関の分担率の和は 100% となる 今回は タイ 548 種類 マレーシア 502 種類 シンガポール 477 種類 インドネシア 376 種類の品目を対象として 11 年の輸送実績を用いて分析を行った 以下 分析結果を示す 図 1 に本分析で対象とした全品目 (HS コード第 2~ 10 84 85 類 ) の海上輸送分担率の分布を示す 全調査対象国において 海上輸送分担率が 0~ 10% 及び 90~100% の品目シェアが高い傾向が明確に示された これにより アセアン発米国向け貨物輸送では 食料関連品 機械関連品において 海上輸送と航空輸送の棲み分けが一定程度存在すると解釈できる 海上輸送分担率 0~ 10% の品目シェアは 4 ヶ国平均で 33% を占め 90~100% は同 36% を占めている つまり ほぼ競合性を有さない品目が 69% を占めていることになる 比較的強い競合性を持つと考えられる海上輸送分担率 45~55% の品目は 4 ヶ国平均で 3% に留まった 図 1 において国別の傾向をみると 海上輸送分担率 90~100% において シンガポール発貨物の品目数のシェアが その他 3 ヵ国と比較して低い この傾向が生じた理由として シンガポールに集積する荷主が取扱っている品目は その他 3ヵ国のそれと比べて 単位輸送金額が高額ということがある これを示す根拠として 仕出し国別の 1kg 当たりの輸送金額を求めた ( 表 1) シンガポール発貨物は 1kg 当たり 200 米ドルで 4 ヶ国中 単位重量当たりの輸送金額が最も高いことが示された 製品が高額である場合 製品の部品代も高額であることに加え 製品出荷後の販売代金の早期入金が好まれる傾 2

向がある 高額部品の代金支払いと製品出荷の代金入金までの時間差をできるだけ縮小させることで キャッシュフローの改善を図ることが可能となることから 海路よりも空路にメリットを見出す傾向があるものと推し量られる 次に 食料関連品と機械関連品の海上輸送分担率の傾向について より細かく結果を見ていく 食料関連品 ( HS コード第 2~ 10 類 ) については 海上輸送分担率 90~100% の品目が圧倒的に多く 4 ヶ国平均で 81% が海上輸送されている結果を得られた 全対象品目の傾向 ( 図 1) と比較すると 海上輸送の分担率が高く 航空輸送が独占的 ( 0~ 10%) である品目は全体の 13% に留まり 残りの僅か 6% が 10~90% に分布している 競合性が高いと考えられる海上輸送分担率 45~55% の品目については 僅か 1% に留まった その 1% は 1 品目のみ該当し マレーシア発の紅茶 (HS コード 090240) であった 機械関連品 (HS コード第 84 85 類 ) については 全品目の傾向 ( 図 1) と類似しており 海上輸送が独占的 (90~100%) な品目と航空輸送が独占的 (0~ 10%) な品目が同程度に多かった 両輸送機関で独占的に輸送されている品目は 4 ヶ国平均で 68% に上り 品目別に輸送機関の棲み分けがなされているといえる 機械関連品の海上輸送分担率が 45~55% の品目は全体の 3% となり 競合品目数は食料関連品のそれよりも多い結果が示された 競合品目の特定ここで 両輸送機関の競合性が高いと考えられる海上輸送分担率 ( 金額ベース )45~55% の品目を 4 ヶ国の仕出し国別に 表 2 にリストアップする 合計で 51 品目となり タイ発では 17 品目 マレーシア発では 15 品目 シンガポール発では 11 品目 インドネシア発では 8 品目が抽出された また参考として 表 2 の最右列に重量ベースの海上輸送分担率を載せた 仕出し国を跨いで重複している競合品目は タイ発とマレーシア発の可変抵抗器 (HS コード 853340) のみで その他の競合品目で重複するものは抽出されなかった この結果に対する一因として 生産されている品目が各国で異なることが挙げられる 例えば マレーシア発の品目で競合性が見出された 15 品目のうち 8 品目はそもそもタイでの年間輸出入額が 10 万米ドルを下回っており 分析の対象外とされている その 8 品目のうち 4 品目においては 競合性が認められた また 重量及び金額ベースの両方で海上輸送分担率が 45~55% となった品目は 7 品目のみとなった ( 表 2 において が付記されている品目 ) 基本的に 金額ベースで競合している品目は 重量ベースでは海上輸送の分担率が上昇する傾向が見受けられる 表 2 でリストアップされた品目は 精密機械やその部品など 体積が比較的低く 高付加価値のものが中心となっていることが分かる このような品目は 従来 航空輸送の範疇で取扱われていたものである このことからも 3

航空輸送から海上輸送への移行が徐々に進行していることを推し量ることができる 本分析で得られた結果は 取扱品目の拡大を目指す海運企業にとって有益と考えられる 例えば 伝統的に航空貨物として輸送されていた品目を対象に 海上貨物への取り込みを考えている場合 航空輸送による独占品目( 海上輸送分担率 0~ 10%) よりも 表 1に列挙した競合品目 ( 同 45~55%) の取り込みに力を注ぐべきである おわりに今回のリポートでは アセアン発北米向け貨物を対象にして 食料関連品及び機械関連品について HS コード 6 桁まで参照し 海上 航空輸送間の競合品目を特定した その結果 51 品目について競合性を見出すことができた 特に機械関連品で競合性を持つ品目が多く (50 品目 ) 食料関連品では マレーシア発の紅茶にのみ競合性を見出すことができた 今回の分析では 食料関連品 機械関連品 ( HS コード第 2~ 10 84 85 類 ) に絞って競合品目を特定した しかし 分析の対象外となった品目についても 競合性が認められる品目は存在しているものと考えられる 例えば 医療関連品や衣類は競合の可能性が比較的高いと考えられるため さらなる分析が望まれるところである 最後に 本リポートの執筆にあたっては 東京工業大学大学院博士前期課程 加藤智明氏の多大なご協力を得た この場を借りて謝意を表したい 4

50% 40% 品目数のシェア 30% 20% 10% タイマレーシアシンガポールインドネシア 0% 海上輸送分担率 ( 金額ベース ) 図 1 階層別海上輸送分担率の分布 ( 全対象品目 HS コード第 2~ 10 84 85 類 ) 表 1 仕出し国別の 1kg 当たりの輸送金額 仕出し国 1kg 当たりの輸送金額 ( 米ドル /kg) タイ 110 マレーシア 153 シンガポール 200 インドネシア 179 5

表 2 アセアン発米国向け貨物の競合品目一覧 ( 品目名については 筆者による略 語を含むため 詳細は HS コードから確認されたい ) HS コード 注 1: は金額ベース 重量ベースの両指標で競合性 ( 海上輸送分担率 45~ 55%) が認められた品目 注 2: 競合品目の特定は金額ベース 重量ベースの海上輸送分担率は参考として載 せている 品目 海上輸送分担率 ( 金額ベース ) 海上輸送分担率 ( 重量ベース ) タイ発米国向け 840820 エンジン 45.5% 89.2% 841950 熱交換装置 50.6% 68.8% 841989 調理機器 50.2% 86.4% 842490 噴霧用機器部品 53.4% 62.7% 843120 フォークリフト部品 47.8% 50.3% 844391 印刷機部品 50.0% 43.1% 846630 割出台 47.4% 63.0% 847790 ゴム プラスチック用加工機械部品 53.4% 56.3% 850151 750ワット以下の電動機及び発電機 49.4% 96.5% 850440 スタティックコンバーター 45.2% 64.7% 850980 家庭用電気機器 48.8% 96.9% 852340 ディスク スマートカードなど光学媒体 52.0% 81.7% 852550 テレビジョン用送信機器 48.4% 84.3% 853180 音響信号機器 ( 火災警報器など ) 45.9% 85.2% 853340 可変抵抗器 53.1% 99.3% 853590 スイッチなど電気回路の開閉用 保護用機器 50.3% 68.7% 854890 使用済み蓄電池またはそのくず 48.9% 53.1% マレーシア発米国向け 090240 紅茶 52.1% 60.9% 841990 熱交換装置部品 50.5% 70.4% 843139 その他フォークリフト部品 46.9% 71.6% 843390 収穫機及び脱穀機部品 51.3% 34.1% 847350 ワードプロセッサなど計算機器部品 45.5% 65.6% 848041 圧縮式金属鋳造用鋳型枠など成形用の型 53.2% 97.5% 848299 玉軸受及びころ軸受 46.9% 91.5% 848340 歯車及び歯車伝動機 55.5% 86.3% 850110 37.5ワット以下の電動機及び発電機 47.6% 70.7% 852849 モニター及びビデオプロジェクター 52.5% 74.8% 853339 その他可変抵抗器 54.2% 82.1% 853340 可変抵抗器 52.7% 76.1% 854290 集積回路機器部品 49.7% 80.0% 854390 電気機器部品 48.6% 84.3% 854449 その他電気絶縁をした線 ケーブル 48.0% 80.8% シンガポール発米国向け 842139 遠心式脱水機を含む遠心分離機 49.7% 77.2% 843110 プーリータックル ホイストなどの機械 47.3% 95.6% 844399 プリンタ コピー機など部品 54.0% 54.7% 846721 手持用ドリル 45.8% 65.4% 846799 その他手持工具 50.8% 87.3% 848490 ガスケットなどジョイント 45.6% 67.1% 850132 750ワット以上 75キロワット以下の電動機及び発電機 45.6% 96.6% 850140 単相交流電動機 46.5% 48.2% 851150 点火用磁石発電機など発電機 48.5% 98.7% 851850 電気式音響増幅装置 50.4% 86.8% 853661 ランプホルダー 52.8% 15.9% インドネシア発米国向け 841350 往復容積式ポンプ 52.2% 96.0% 842199 遠心分離機 50.1% 67.1% 842489 噴射用 散布用又は噴霧用の機器 53.3% 98.3% 848110 減圧弁 53.9% 51.1% 850519 電磁式のカップリング クラッチ ブレーキなど 49.9% 53.3% 852692 無線遠隔制御機器 48.8% 65.6% 853120 液晶デバイス又は発光ダイオードを自蔵する表示盤 48.5% 65.3% 853649 電気回路の開閉用 保護用又は接続用の機器 47.6% 46.7% 6