日本企業が中国現地会社への ライセンス時の留意点 北京林達劉知識産権代理事務所 所長弁理士 劉新宇 (Linda LIU) www.lindaliugroup.com linda@lindapatent.com 1
目次 1. ライセンスの概要 2. 技術ライセンスの留意点 2.1 全体の留意点 2.2 特許ライセンス契約作成時の留意点 2.3 ノウハウライセンス契約作成時の留意点 3. 商標ライセンスの留意点 4. まとめ 2
1. ライセンスの概要 意味 広義の譲渡に属する ライセンサーが自己の知的財産の使用権を他人に許諾し ライセンシーから使用許諾料を貰う 種類 知財権の内容から技術ライセンス - 特許 特許出願権 ノウハウ商業標識ライセンス - 商標ライセンス ほかの商業標識ライセンス著作権ライセンス - 著作権 隣接権の一部の権利ライセンス 許諾の方式から独占実施許諾 - 日本の 専用実施権許諾 に相当排他実施許諾 - 日本の 独占的通常実施権許諾 に相当通常実施許諾 - 日本の 通常実施権許諾 に相当 3
1. ライセンスの概要 関連立法情況 法律 特許法 商標法 などの知財法律 中華人民共和国契約法 行政法規 規章 技術輸出入管理条例 技術輸出入登記管理弁法 専利 ( 特許 ) 実施許諾合同届出管理弁法 商標使用許諾契約届出弁法 輸入禁止輸入制限技術管理弁法 など 司法解釈 中華人民共和国契約法 の適用における若干の問題に関する最高裁判所の解釈 (1) 技術合同紛争事件の審理における適用法律の若干の問題に関する最高裁判所の解釈 中華人民共和国契約法 の適用における若干の問題に関する最高裁判所の解釈 ( 二 ) など 4
1. ライセンスの概要 主管機関 技術ライセンスの場合 1 対外経済貿易主管機関 2 国家知識産権局 商標ライセンスの場合 1 国家工商管理総局商標局 5
2. 技術ライセンスの留意点 2.1 全体の留意点 技術ライセンスの範囲 (1) 特許権 ( 特許権 実用新案権 意匠権 ) ライセンス (2) 特許出願権 ( 出願中の特許 実用新案 意匠 ) ライセンス (3) ノウハウライセンス 留意点 ( 技術輸出入にかかる場合 ) (1) 輸入される技術の制限と届出の必要 (2) 法的権利者と非侵害に係るライセンサーの保証責任 (3) 技術品質に係るライセンサーの保証責任 (4) 改良技術の帰属の制限 (5) ライセンシーへの制限条項の禁止 6
2.1 全体の留意点 (1) 輸入される技術の制限と届出の必要 禁止技術 禁止制限技術 事前審査必要自由技術 届出 ライセンスしようとする技術は どの技術に該当するかどうかを事前に確認する必要がある 7
2.1 全体の留意点 (1) 輸入される技術の制限と届出の必要 禁止技術 禁止制限技術 事前審査必要自由技術 届出届出の意義 : 送金 税務 税関 ライセンスしようとする技術は どの技術に該当するかどうかを事前に確認する必要がある 8
技術輸出入契約登記のフローチャート 特許実施許諾契約 ノウハウ許諾契約 技術サービス契約 及び技術輸出入内容を含むその他の契約 特許権譲渡契約 特許出願権譲渡契約 3 ヶ月以内 60 日内 国家知識産権局登記部門 中国企業所在地の商務主管機関 受理 審査 受理 審査 地方の要求に応じて予備審査 電子キー準備 1 週間 1 週間 特許実施許諾契約登記証 受領 技術輸入契約登記書 又は 技術輸出契約登記書 受領 国家知識産権局受理処 30 日内 特許権書誌項目変更通知書受領 2 ヶ月内で特許公報で公告 銀行 税務など 2 ヶ月内で特許公報で公告 9
2.1 全体の留意点 (2) 法的権利者と非侵害に係る保証責任 許諾者の保証責任 1 合法な保有者であること - 法的権利者 2 譲渡又はライセンスの権利を有すること - 法的権利者 3 第三者の権利を侵害する場合 侵害責任を負うこと 許諾者は侵害責任を負う前提条件 他人の合法的権利を侵害した ライセンシーには契約の範囲と有効期間を超えた使用行為が存在しない ライセンシーは使用した技術が他人の合法的権益を侵害していると知らなかった 10
2.1 全体の留意点 (2) 法的権利者と非侵害に係る保証責任 許諾者の権利侵害責任の免責可能性? 1 国内のライセンスの場合 権利侵害責任は 原則としては ライセンサーに帰するが 別途に約定することができる ( 契約法 第 353 条 ) 2 技術輸出入にかかる場合 権利侵害責任は 強制的にライセンサーに負わせる ( 技術輸出入管理条例 第 24 条 ) Case Study: 武漢晶源 vs 富士化水 11
武漢晶源 vs 富士化水 ( 第三者権利の侵害に関する事件 ) 基本情報原審原告 : 武漢晶源環境工程有限公司 ( 特許権者 ) 原審被告 : 富士化水工業株式会社 ( ライセンサー ) 華陽電業有限公司 ( ライセンシー ) 判決の結果一審判決 1 両被告による特許侵害行為が成立する 2 富士化水は直ちに侵害行為を停止し かつ高額の損害を賠償する 3 華陽公司は引き続き本特許を使用できるものの 特許使用料を支払う 二審判決 (2 を変更 ) 富士化水と華陽公司とが共同で損害賠償責任を負う 共同で損害責任を負うが 華陽公司は 契約に従い 富士化水を追及できる 提案 1 ライセンスする時 先に 中国でライセンスする技術に関する先行権利の有無を詳しく調べる 2 契約において ライセンサーのみではなく 双方が合意の上 双方が分担して その責任を負担することを約定する 12
2.1 全体の留意点 (3) 技術品質に係る保証責任 1 技術の完全性と誤りがないことを保証 2 技術の有効性を保証 3 目標達成を保証 提案 : ライセンサーの利益を保護するため 技術ライセンス契約を締結する際 技術の達成できる目標に関する条項について 具体的実現性を明確に約定する 13
2.1 全体の留意点 (4) 改良技術の帰属の制限 1 国内のライセンスの場合 改良技術の帰属に対して当事者の間に約定することができる ( 契約法 第 354 条 ) 2 技術輸出入にかかる場合 改良技術の成果は改良側に属する ( 技術輸出入管理条例 第 27 条 ) 実務上 相手側の無償の使用権 或いは 共同共有の約定は認められる可能性がある 14
(5) ライセンシーへの制限条項の禁止 技術輸出入管理条例 第 29 条 契約法 第 329 条 343 条 技術契約紛争事件の審理における適用法律の若干の問題に関する解釈 第 10 条 1 必須でない技術 原料 製品 設備またはサービスの購入を要求する条項 2 特許権の有効期間が満了し又は特許権が無効宣告された技術について ロイヤリティの支払い又は関連義務の履行を要求する条項 3 技術の改良 又は改良した技術の使用を制限する条項 4 他の供給先から技術に類似し又は競合する技術の取得を制限する条項 5 原料 部品 製品または設備を購入するルートへの不合理的に制限する条項 6 製品の製造数量 品種 または販売価格への不合理的に制限する条項 7 輸入した技術を利用して製造した製品の輸出ルートへの不合理に制限する条項 8 技術譲受人が契約の目的物である技術の知的財産権に対し異議を申し立てること又は異議付加条件を提出することを禁ずる条項 15
2.2 特許ライセンス契約作成時の留意点 技術ライセンス契約の主要条項 1 特許の関連状況 2 ライセンスの種類と範囲 3 ロイヤリティ及び支払方式 4 特許権に瑕疵がないことの保証と有効性の維持 5 秘密保持義務 6 第三者権利侵害についての責任負担 7 改良技術の提供と共有方法 8 違約責任 9 紛争の解決方法 16
2.2 特許ライセンス契約作成時の留意点 ライセンサーの主要義務 1 法的権利者であることを保証 2 特許技術の完全性 誤りがないこと 有効性と約定された目的の達成を保証 3 特許の実施に係る技術資料を交付し 必要な技術指導を提供 17
2.2 特許ライセンス契約作成時の留意点 ライセンシーの主要義務 1 ロイヤリティを支払う 2 約定の範囲 方式 期限等に基づいて特許技術を実施 3 ライセンサーの同意を経ずに 第三者に実施を許諾して はならない 18
2.2 特許ライセンス契約作成時の留意点 留意点 1 ライセンスの種類と範囲を明記 2 ロイヤリティの計算と支払方式に留意通常 ロイヤルティーの比率の上限は 5% ライセンシーの関連財務データを検査 閲読する権利の約定 3 第三者の権利侵害責任の負担に留意 4 主管機関での届出手続を行う対外経済貿易主管機関への届出と国家知識産権局への届出 19
2.3 ノウハウライセンス契約作成時の留意点 ノウハウライセンス契約の主要条項 1 ノウハウに係る内容 2 ライセンスの種類と範囲 3 技術情報と資料の交付期限 場所 方式 4 ロイヤリティ及び支払方式 5 権利瑕疵保証と第三者侵害責任の負担 6 秘密保持義務 7 改良技術の提供と共有方法 8 違約責任 9 紛争の解決方法 20
2.3 ノウハウライセンス契約作成時の留意点 双方当事者の主要義務特許ライセンスと共通 秘密保持義務 ライセンサー : 対象ノウハウについて 契約期間に ライセンシーの同意を得ずに公開してはいけない ライセンシー : ノウハウに対して 秘密を保持しなければならない 21
2.3 ノウハウライセンス契約作成時の留意点 留意点 ( 特許ライセンスと共通 ) 1 秘密保持に留意すること 2 主管機関での届出手続を行うこと ( 対外経済貿易主管機関への届出 ) 22
3. 商標ライセンス際の留意点 商標ライセンスの対象 : 1. 登録商標 - 商標局で登録可能 2. 未登録商標 - 商標局で登録不可 23
3. 商標ライセンスの留意点 商標ライセンス契約の主要条項 1 ライセンス商標の情報 2 ライセンスの範囲 3 ロイヤリティ及び支払方式 4 品質の保証 5 違約責任 6 紛争の解決方法 24
3. 商標ライセンスの留意点 ライセンサーの主要義務 1 登録商標の有効性を保持 2 当該登録商標を使用するライセンシーの商品の 品質を監督 25
3. 商標ライセンスの留意点 ライセンシーの主要義務 1 商標のロイヤリティを支払う 2 許諾された商標を使用する商品の品質を保証 3 商標の名誉を維持 4 商品又は包装に商品の産地とライセンシーの名称を明記 5 ライセンサーの書面による許諾を得ずに商標使用権を第三者に再許諾してはならない 26
3. 商標ライセンス際の留意点 留意点 1 当事者の身分が適格であるか否かを審査すること 2 許諾商品又は役務の範囲は登録商標の商品又は役務範囲 を超えないこと 3 商品にはライセンシーの名称と産地を明記すること 4 商標使用許諾契約は商標局に届出手続を行うこと 27
4. まとめー日本企業の留意点 (1) 禁止又は制限の技術に注意すること (2) 達成できる技術目標を明確に約定すること (3) 改良技術の成果の帰属に注意すること (4) 第三者非侵害責任に注意すること (5) 約定できない制限性条項に注意すること (6) ライセンス契約の届出に注意すること (7) 商標イメージの維持に注意すること 28
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