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942 日本大腸肛門病会誌 年間 1-10 号 第 66 巻第 10 号 a 2013 年 10 月 樫田博史 b d c e 図 1 ポリペクトミーの 1 例 a S 状結腸 10mm の Ip ポリープ 茎部が太い b 留置スネアを基部にかけ c 結紮した d 頭部寄りの茎部にスネアをかけて e 切離した する目的で 逆に接触面積を広くする方がよい を保持する e 切除が早すぎると出血しやすく 通電が長すぎ 1 局注 ると穿孔や貫壁性の熱傷をきたす恐れがある なか 病変の肛門側すぐ近傍から病変の直下に向かって なか切除できない場合や患者が疼痛を訴える場合 穿刺し 生理食塩水 生食 の局注を行う は 手技を中断し原因を考える 2 スネアリング f 茎部が太い場合は出血をきたしやすい 留置ス 側方断端陽性にならないよう 正常粘膜が少し含 ネアを用いて茎部を結紮し その頭部寄りにスネア まれるようにスネアリングする 通常 スネアの先 をかけて切除すると出血を回避できることが多い 端を病変の口側に軽くあてた状態でゆっくり開き 図 1 その後のスネアリングの妨げにならぬよう 根元を病変の肛門側に押し付けながら絞扼してい 留置スネアは可能な限り基部寄りにかけるが 茎が く 短い症例では留置スネア使用を断念せざるを得な 3 通電切除 スネアを腸壁に押し付けず 病変を少し持ち上げ い 留置スネアの緊縛部には電流が流れやすいので るようにして通電切除する EPMR の場合は 内部 通電中は同部の色調変化に注意する に取り残しをきたさないよう注意しながらスネアリ B EMR EPMR 図 2 ングを繰り返す 粘膜下層の切除断面を巻き込むと 1,2) 一括切除を目指すか分割するかは予め決めておく が 一括切除を目指していても 結果的に分割切除 穿孔の恐れがあるので注意し 適宜局注を追加しな がら行う になってしまうことも珍しくない 癌を疑わせる箇 切除直後は 断面に病変の遺残がないかどうか注 所があれば その部分を分断しないよう作戦を立て 意深く観察し 認められればホットバイオプシーや る 病変が画面の 4-8 時方向に来るようにスコープ APC による治療を追加する 側方断端の判定には拡
日本大腸肛門病会誌 年間 1-10 号 第 66 巻第 10 号 a b c d e 2013 年 10 月 樫田博史 943 f 図 2 EMR の 1 例 a S状結腸 32mm の LST-NG PD b 局注によって十分な拳上が得られた c スネアで絞扼したところ d 切除直後の断面 e 切除標本 f 同 ルーペ像 大内視鏡による観察が有用である ESD の際は原液で使用できるが EMR/EPMR の際 4 標本回収 は粘度が高すぎてスネアが滑りやすく また通電に 切除標本は 3 脚や 5 脚の鉗子で回収する 切除標 時間がかかるので 生食で 2-3 倍程度に希釈する方 本が大きい場合は回収ネットを使用する 回収した がよい 濃グリセリン 果糖液 グリセオール も 標本は十分に伸展させ 細いステンレスピンを使用 時に使用されるが 保険適用外である して ゴム板やコルク板の上に貼付してからホルマ b 彎曲部やヒダにまたがっている病変では 肛門 リンに浸漬する 側からの局注では病変が口側に向いてしまうことが 3-5) コツとポイント 多いので 病変の口側から局注を開始する a 局注液にはいくつか種類があるが 大きい病変 c 穿刺が浅すぎると粘膜内注入になって血腫を形 や EPMR になって治療に時間がかかると予想され 成してしまうことが多い 逆に穿刺が深すぎて筋層 る場合は ヒアルロン酸ナトリウム ムコアップ や漿膜を貫くと 適切な膨隆が得られない 注入は が病変の膨隆 挙上を維持するのに適している 微量で開始し 病変が少し挙上するのを確認してか
944 日本大腸肛門病会誌 年間 1-10 号 第 66 巻第 10 号 a b c d 2013 年 10 月 樫田博史 f e 図 3 ESD の 1 例 a 盲腸 48mm の LST-G Homo b 周囲粘膜切開直後 c 粘膜下層剥離中 d 切除標本 e 同 ホルマリン固定後 f 同 ルーペ像 ら注入を続ける f 通電中に患者が疼痛を訴える場合 通電時間が d 局注中は 針を押しつけたままでは液が側方へ 長くかかってなかなか切れない場合 およびスネア 広がりやすいので 針で病変を少し持ち上げるよう にゴムのような弾力を感じる場合は 筋層を巻き込 にし 介助者に注入させながら針をゆっくり引き戻 んでいる可能性が高いので 手技を中止する していく g 大きい病変では無理な一括 EMR より EPMR e 切除を始める前にスネアを少し緩めながら送気 の方が安全な場合がある 特に ヒダをまたぐよう して もう一度スネアを締め直す この操作によっ に広がる LST で 口側を十分観察できないような て余分な正常粘膜や筋層の巻き込みを解消する 状態での一括切除は 穿孔に注意を要する
ESD 3 7 1 1
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Endoscopic Resection of Colorectal Tumors: From Polypectomy, EMR to ESD Endoscopic treatments for colorectal neoplasia include polypectomy for pedunculated or semipedunculated lesions, endoscopic mucosal resection (EMR), endoscopic piecemeal mucosal resection (EPMR) and endoscopic submucosal dissection (ESD) for superficial or sessile lesions. Majority of colorectal neoplasms are adenomas and most of early colorectal cancers which are indicated for endoscopic treatment are less than 2 cm in diameter; therefore conventional EMR is the standard. Endoscopic piecemeal mucosal resection is acceptable in very large adenomas and intramucosal dysplasias. Endoscopic submucosal dissection is the best method of endoscopic resection. It is a recommended treatment for an early colorectal cancer which is more than 2 cm in diameter and which would be very difficult to be resected with a snare. However, pretreatment analysis is very important to ensure that the lesion should be cured by an endoscopic resection.