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蓄電池の再利用による CO₂ 排出量の大幅削減 1 川谷勝俊 1 坂角淳一 1 新潟国道事務所防災情報課 ( 950-0912 新潟県新潟市中央区南笹口 2-1-65) 昨今の高度情報化の進展は 電気への依存度が極めて高くなり 一瞬の停電 電圧低下も許されない そのため万一の停電時のバックアップ対策として設置されている蓄電池の役割がますます重要となるが この蓄電池は 7~9 年使用すると能力 ( 容量 ) が低下するため これまでは新品との交換を実施してきた しかし新製品を作るための CO₂ 排出が地球温暖化に与える影響を考慮して 低下した能力を甦らせる 蓄電池再生技術 を北陸地整管内で初めて導入し延命化を行った これにより 産業廃棄物量も大幅に低減でき かつコストも新品交換費用の 1/2 程度で実施することができた 本論文は この蓄電池再生技術の概要と実施結果について報告し 今後の取扱いについて述べるものである キーワード CO₂ 排出量削減 コストダウン 産業廃棄物量低減 環境問題 再生 1. はじめに 私達は 災害の危険性が高い箇所については各種の観測機器を集中的に設置し 常時 24 時間の観測を行うとともに 整備された防災情報ネットワークを通じて その情報をリアルタイムに中央機関はじめ関係先に発信している また 関係機関との連携を強化し 住民の 安心 安全 防災 減災 に寄与している ( 図 1) こうしたネットワークは 地上系通信網と衛星系回線により整備されているが すべての電源の万一の停電 ( 計画停電含む ) に備えてのバックアップ電源として蓄電池が設置されている 費用負担で処分が義務付けられていることに加え 廃棄による法的債務 ( マニフェスト発行 管理 専門業者への委託契約等 ) が厳しいといった制約があるため費用と手間がかかるので 不法投棄が後を絶たない 着眼点 廃棄しないで再利用できないか 以下 新国管内使用の鉛蓄電池について記述する 図 2 図 -2 今回蓄電池延命化対策をした箇所 (5 箇所 6 施設 ) (1) 今回の新技術導入の着眼点現代社会に欠かすことができない蓄電池に求められることは ノー モア 大量生産 大量消費 大量廃棄である ところが 日本では 年間約 4,000 万個の電池が産業廃棄物になっているということや すべて使用者の 図 -1 防災ネットワーク図

2. 蓄電池の概要 (1) 蓄電池の種類蓄電池には 主に一次電池と二次電池があり a) 一次電池は 一度放電して使い切ってしまうと再び使用できないもの 再生利用できない ( マンガン アルカリ リチウム乾電池など ) b) 二次電池は 充放電を繰り返して使用できるもの再生技術により延命化が可能なものは 以下に示す表 -1 の通りである 新国管内では主に MSE 形が多く使用されている 図 3 充電中の化学変化は 正極 負極ともに 放電中と逆に変化し 硫酸基は電解液中に戻り 液は濃くなる 長年充電と放電の繰返しをしていると 負極板上で硫酸鉛の結晶が硬化していく これがサルフェーションで絶縁物である 写真 2 正極負極写真 -2 活物質の形態 (20% 放電時 ) 1) b) 充放電特性鉛蓄電池の放電及び充電特性を図 -5 に示す 3) 表 -1 蓄電池の主な種類と期待寿命 鉛 ベント形 シール形 アルカリ形 2) 写真 -1 鉛蓄電池とアルカリ蓄電池の外観写真 ⑵ 蓄電池の原理と特性鉛蓄電池は 電気を貯えたり 放出したりする活物質 ( 極板の材料 ) として 正極には二酸化鉛 (PbO₂ ) 負極には海綿状鉛 (Pb) が用いられている そして 電解液である希硫酸 (SO₄ ) に浸されており 活物質と電解液の化学反応を利用したものである その構造を図 3 に示す 図 -3 鉛蓄電池の構造例 1) 図 -5 鉛蓄電池の充放電曲線 ( 電圧及び比重の変化 ) 即ち 端子電圧は放電開始直後から低下し 放電末期には電圧は急速に低下する これは 極板内部の硫酸の枯渇や 活物質表面がサルフェーションで被覆されるためである 一方 充電時の端子電圧の変化は 充電開始直後に抵抗などにより急上昇し 円滑な充電反応を経た後 電圧は急上昇して 水素及び酸素ガス発生の過充電領域 ( 水の電気分解を生じ電解液が薄まる ) となる ⑶ 鉛蓄電池の劣化パターン a) 放電中の化学変化 図 5 図 -4 鉛蓄電池の化学反応の仕組み ( 放電時 ) 図 -6 制御弁式据置鉛蓄電池の基本劣化パターン 2)

a) 正極板の劣化原因正極板の劣化原因は 1 活物質の軟化 2 格子腐食などであるが シール形 ( 密閉型 ) 蓄電池の場合は ベント形 ( 開放型 ) に比べて 活物質の軟化は起こりにくく さらに格子の腐食や伸びも少ない b) 負極板のサルフェーション負極板のサルフェーションは 蓄電池を完全充電することなく 常時は部分的に放電した状態で使用する場合に起きやすい 当該システムが管理電圧に達すると自動的に充電を休止 ( 過充電防止 ) する仕組みであり 蓄電池は一部 ( 数 % 程度 ) 未充電部分を持ちながら運用されるため 極板上の活性部位の一部が未活性の状態を保ちながら充電されている 従って 浮動充電 ( 蓄電池に一定電圧を加えて充電状態にしておく ) 下においてもサルフェーションが発生することになる このサルフェーションの生成過程を走査型電子顕微鏡 (SEM) で観察した結果を写真 -3 に示す 照射して 結晶のイオン結合を分解 除去し 電解液内に戻すことで 蓄電池の能力を定格容量の 90% 以上 < 動力用は 80% 以上 > に回復させる技術である b) 物理的劣化蓄電池の回復は難しい物理的劣化 極板腐食や破損 活物質の脱落 セパレータのずれ 破損などが発生している蓄電池は再生効果が得られない場合がある 写真 -4 再生処理装置と容量試験装置 c) 劣化蓄電池再生フロー 再生処理作業 図 -8 再生作業フロー ( 標準 ) 写真 -3 サルフェーションによる極板劣化経過 ( 蓄電池の寿命の考え方 JIS 規格では 定格容量の 80% 以下となった段階を 劣化 と判定している 図 -8 に示す通り 再生処理作業中の約 10 日間は 同容量の仮設蓄電池を現地に設置し 切替 運用を行うことから 電源システムに支障を及ぼすことはない d) サルフェーションの分解 除去経過観察再生技術は 劣化原因であるサルフェーションを分解 除去して新品同様にまで戻す技術であり その過程を走査型電子顕微鏡 (SEM) で観察した結果を写真 - 5 に示す 2) 図 -7 蓄電池の使用期間と容量の関係 3. 劣化二次蓄電池再生技術の概要と実施結果 (1) 本蓄電池再生技術は NETIS に登録済技術名称 : 劣化二次蓄電池再生技術登録 No:HR-090005-A 最終更新 :2011.2.25 写真 -5 サルフェーションの分解 除去経過 参考に サルフェーションの分解 除去と同時に 充電によりガスが発生している状況を写真 -6 に示す (2) 概要 a) 化学的劣化蓄電池を甦らせる技術廃棄物処理している能力 ( 容量 ) 低下蓄電池を対象に 充電と同時に高周波の電気パルスをサルフェーションに 写真 -6 分解 除去中のガス発生状況 ( ベント形 )

e) 蓄電池再生の実績蓄電池再生は 2000 年に製鉄業界から導入が始まり 以降鉄鋼 電機 電力 鉄道 病院 情報通信 商業ビル 工場 ホテルなど様々な業種で蓄電池再生が行われてきた 最近では東北地整や自治体 オフィスビル 劇場 TV スタジオなど幅広く行われている こうした中で 一番最初 ( 約 10 年前 ) に再生したものが未だに使用されており トラブル等も報告されていない f) 蓄電池再生後の追跡調査結果ベント形 (CS) 蓄電池再生後 追跡調査を行った結果は図 -9 の通りである しビジュアル化することもできる 図 -11 各セル毎の能力比較 4. 期待効果と新国管内での適用評価 (1) 環境負荷軽減への寄与蓄電池再生再利用の大きなメリットは 図 -12 にイメージとして示す通り 環境負荷低減 (CO₂ 排出量削減と産業廃棄物量低減 ) とコストダウンである 図 -9 再生実施後の容量追跡調査結果 平成 12 年に再生を実施 ( 上段 ) し 4 年と 6 年経過時調査 ( 下段 : 左 中 ) を経て 7 年目に 2 セルの容量低下が見られたので 再生済蓄電池と交換をした g) 再生処理実施結果図 -10 は 今回再生を実施した津川出張所の MSE -300*25 セルの 10 時間率放電試験データである JIS 規格による 10 時間率放電停止電圧は 1.8V であり この電圧まで低下したセルにより容量を判断する ここでは セル番号の No.10 が 466 分 定格容量の 77.0% であったが 再生後は 567 分に伸び 定格容量の 94.0% と 約 20% 回復が見られ 使用期待年数としては 電池メーカーの交換推奨年数 7~9 年に対して 6.6~8.5 年が見込まれる 図 -12 蓄電池再生のメリット a)co₂ 排出量の削減地球温暖化防止に寄与する指標としての CO₂ 排出量ついては 図 -13 に示す通り 新品への取替に比べて 再生利用では大幅に削減できる 図 -13 CO₂ 排出量の取替 再生比較 ( 再生前 ) ( 再生後 ) 図 -10 再生前後の放電試験データ比較 同様に この容量試験装置 (BDT) では 図 -11 のように 各セル毎に再生前と再生後の容量比較を計測 蓄電池再生には定格容量の 5% 程度の充電電流を 24 時間流すため 使用電力量は次のようになる 500Ah*5%*2V*24H=1.2 kw h 電気の CO₂ 換算係数は 電気事業連合会が公表している CO₂ 排出原単位 412(g-CO₂ /kwh) を使用すると 以下のとおりとなる

1.2 kw h*54 セル *0.412=26.7 kg ( 試算条件 ) MSE 500Ah*54 セル 設置後 15 年で算出 ( 初期設置に係る CO₂ 排出量も含む ) 蓄電池 取替 も 再生 も 8 年目実施とする 新品の CO₂ 排出量 ( 素材 + 製造段階 ) は 電池メーカー資料による ([ 材料 ]3,677+ [ 製造 ]810=4,487 kg ) 再生利用により CO₂ 排出量は 166 分の 1 に! 新国管内での再生効果 CO₂ 排出量 今回実施の 6 設備で削減効果を比較した試算結果は 新品製造過程 ( 素材 + 製造 ) での CO₂ 発生量が 2,8 51.8 kgに対して 再生時の電気使用分 CO₂ 発生量が 11.9 kgとなり 2,839.9 kgの CO₂ 排出量の削減となる b) 産業廃棄物量の低減環境負荷低減には CO₂ 削減と同時に 廃棄物量低減も重要な課題であるが 図 -14 に示す通り 蓄電池の再生利用により大幅に低減できる 図 -15 取替 再生のコストメリット比較 ( 試算条件 ) 対象蓄電池は MSE-300Ah*54 セルで 工場再生とする 蓄電池再生費用は建設物価表示価格の 40% 工事費は ( 仮設蓄電池費用 + 入替費用 + 現場管理費 + 運搬費 + 諸経費 ) とする 新品蓄電池は建設物価表示価格の 85% 工事費は ( 労務費 + 入替費用 + 工具損料 + 現場管理費 + 撤去電池処理費 + 運搬費 + 諸経費 ) とする 再生利用により 1/2 以上のコスト低減 新国管内での再生効果 コストダウン 今回再生した 6 設備すべてを新品に取替えた場合 総費用が約 7.6 百万円に対して 再生費用の合計は約 3.5 百万円 ( 約 46%) と大幅なコストダウンが図れた 図 -14 取替 再生の産業廃棄物低減量比較 ( 比較例 ) 鉛蓄電池を約 7 年間使用し入替を実施した場合の比較 排出される蓄電池の量 :33.6 トン 使用年数 7 年で 再生率 95% 以上 再生による廃棄物低減量 :31.92 トン 再生不可廃棄処分量 :1.69 トン 再生利用により廃棄物量は約 19 分の 1 に! 新国管内での再生効果 廃棄物量 今回実施の 6 設備で廃棄物削減効果を試算したところ 新品総重量 1,221.5 kgがすべて再生できたことから 廃棄物量は 0 となった c) コストの低減新品か再生かを選定する上で 最も重要になってくるのはコスト比較である 図 -15 に示すのは下記の試算条件を元に取替と再生のコスト比較をしたものである d) 再生利用のデメリット蓄電池再生のデメリットとして 実施してみなければ分からない部分がある といったことが挙げられる 事前調査では 使用年数 外観検査 電圧 内部抵抗測定及び液比重測定 ( 液式のみ ) を実施し 再生可否判断に供しているが 以下のように確定ができない 1 使用年数調査では 電池メーカー交換推奨年数当たりが再生実施の目安で 寿命領域を超えて使用されているものは再生率が悪い 2 外観検査でメーカー基準の 電槽 蓋などに亀裂 変形 変色等の損傷及び漏液がないこと となっており 外観異常が見られるときは再生不可能であるが この判定が難しい場合がある 3 電圧測定では 寿命末期でないと電圧のバラツキが顕著に現れず 全セル均一に劣化している場合は判定が難しいが あくまでも判定の目安である 4 内部抵抗測定では 電池メーカーから示される警告値及び寿命値に対して どの位置付けにあるかを判定の目安にしているが 予算との絡みもあり再生時期の判断が難しい 図 -16 に見る通り 内部抵抗は使用年数とともに上昇し 劣化様相に至ると急激に変化するた

め 過去のデータを分析管理することが重要である 生実績を有する 本格的な取り組みはその後の検証が行われ その結果をふまえた上で 東北地方整備局管内の国道事務所や今回新潟国道事務所で再生が行われた これらのデータ検証も行い 適用にあたっての仕様を含めた標準化等の条件整備を行う必要がある 図 -16 使用年数と内部抵抗値の変化 但し ベント形やアルカリ形では 内部抵抗測定は可能であるが 寿命期の内部抵抗変化がシール形に比べて小さいことから劣化診断データとして使用することが困難である 5 比重 ( シール形 アルカリ形を除く ) で 電池メーカー基準値を大きく外れた場合は そのセルの能力回復は大きく低下するが 再生可否判断のための目安が確定できない 5. 今後の課題 (1) 追跡調査等による技術検証 2000 年に本技術の開発が行われてから 据置用蓄電池をはじめ 小型の UPS フォークリフト用 自動車用 ゴルフカート用等々 様々な用途に使用されている蓄電池が再生されている これまでの実績の中で 再生後容量試験において規定値以上に再生された製品が納入されている例もある ただ 再生実施後の能力追跡調査を行うには設備停止 仮設蓄電池との切替が絡んでしまうため実施が困難である よって実績データが少ない 従って 再生後の期待寿命と能力の保証を確定付けるため 相互に協力し実施検証を行っていく必要性がある 更に技術的に可能なのは 1 度再生した蓄電池を再び再生するということである しかし 未だにその実績はないため今後の課題である 6. おわりに 本論文では 北陸地方整備局管内で初めて適用した 蓄電池再生技術 について報告を行った 2008 年には米国における金融危機に端を発した経済不況が 瞬く間に世界を席捲し 100 年に 1 度 という深刻な状況に陥ったが見事に立ち直りの兆しを見せている 日本では この 3 月に東日本大震災が発生し これまた 100 年に 1 度 の想定外災害と言われ さらに放射能による汚染も深刻な事態になっている 1 日も早い収束と復興に向けて一丸となって突き進まねばならない そうした中 環境 は グリーン ニューディール の言葉にも代表されるように これらの困難から脱出するにあたってのキーワードとしても注目される 日本は京都議定書を基に その後の気候変動枠組条約や生物多様性条約など地球環境保全に関連した国際的な枠組みの中で より具体的に取り組まねばならないが 私達も自らの固有技術に磨きをかけ 時代の変化や要望に的確に応えるべく日常の業務に取り組んでいる これからも着実にその歩みを進めていきたい 最後に 新潟国道事務所では 地球温暖化防止策の一環として グリーン庁舎基準 を策定し推進しているが その グリーン化技術 による環境配慮度を再生蓄電池で評価すると 図 -17 の通りである 省エネ指針 S55 以前 S55 以降 蓄電池評価 (2) 蓄電池の延命化による 3R の積極的推進資源循環型社会の構築 低炭素社会の実現を目指すために必要な 3R 即ち Reduce( リデュース ; 廃棄物の発生抑制 ) Reuse( リユース ; 再使用 ) Recycle( リサイクル ; 再資源化 ) の対象として これら蓄電池による延命化が 3R 推進目的に合致したものである 国が率先して 3R を推進し 検証結果の報告を行っていくことで 本再生技術が一般的に広く認知され 多くの企業において再生蓄電池の活用が促進されることを期待する (3) より積極的な活用に向けての各種条件整備国としては 東北地方整備局で 2004 年から ダム管理事務所の水門等で 鉛蓄電池 (MSE) の再 図 -17 蓄電池の地球環境への配慮度 今後も 事務所が一丸となって環境負荷の低減に努め 持続可能な社会の実現に貢献したいと考える 文末になりましたが 本論文作成にあたり御協力頂きました関係各位に感謝を申し上げます 参考文献 1) 最新 実用二次電池 : 日本電池編 日刊工業新聞社 2) 蓄電池設備整備資格者講習テキスト : 社 ) 電池工業会編 3) 電池メーカー 総合カタログ アビーズ及び BRS 事業 PR 資料