平成  年(あ)第  号

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控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

平成  年(オ)第  号

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

在は法律名が 医薬品, 医療機器等の品質, 有効性及び安全性の確保等に関する法律 と改正されており, 同法において同じ規制がされている )2 条 14 項に規定する薬物に指定された ( 以下 指定薬物 という ) ものである (2) 被告人は, 検察官調書 ( 原審乙 8) において, 任意提出当日

従業員 Aは, 平成 21 年から平成 22 年にかけて, 発注会社の課長の職にあり, 上記事業場内にある発注会社の事務所等で就労していた (2) 上告人は, 自社とその子会社である発注会社及び勤務先会社等とでグループ会社 ( 以下 本件グループ会社 という ) を構成する株式会社であり, 法令等の

最高裁○○第000100号

平成 30 年 ( 受 ) 第 269 号損害賠償請求事件 平成 31 年 3 月 12 日第三小法廷判決 主 文 原判決中, 上告人敗訴部分を破棄する 前項の部分につき, 被上告人らの控訴を棄却する 控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする 理 由 上告代理人成田茂ほかの上告受理申立て理由第

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

1 関税法上の用語の定義 輸入 外国貨物を本邦に引き取ること輸出 内国貨物を外国に向けて送り出すこと 外国貨物 1 輸出の許可を受けた貨物 2 外国から本邦に到着した貨物 ( 外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む ) で輸入が許可される前のもの内国貨物 1 本邦にある貨物で外国貨物でないもの

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成19年(ネ受)第435号上告受理申立理由要旨抜粋

法人税法132条の2(組織再編成に係る行為計算否認規定)の「不当に」の解釈を示した最高裁判決の検討

がなく, 違法の意識の可能性もなかったのに, 被告人の上記各行為がそれぞれ同条 1 項の私電磁的記録不正作出又は同条 3 項の同供用に該当すると認め, 各罪の故意も認定して, 上記全ての行為について被告人を有罪とした原判決には, 判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認及び同条の解釈適用を誤った法

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

Taro-婚姻によらないで懐妊した児

滞納処分によって財産の差押えを受け 被告がその売却代金等の配当を受けたことについて 本件各申告の一部は錯誤に基づく無効なものであり これを前提としてされた滞納処分も無効であるから 被告は法律上の原因なく配当を受けているとして 不当利得返還請求権に基づき 前記第 1の請求記載の各金員の支払を求めている

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

H 刑事施設が受刑者の弁護士との信書について検査したことにつき勧告

長澤運輸事件(東京地判平成28年11月2日)について

Transcription:

平成 25 年 ( あ ) 第 1333 号関税法違反被告事件 平成 26 年 11 月 7 日第二小法廷判決 主 文 原判決を破棄する 本件控訴を棄却する 理 由 検察官の上告趣意のうち, 判例違反をいう点は, 事案を異にする判例を引用するものであって, 本件に適切でなく, その余は単なる法令違反の主張であり, 弁護人山内大将の上告趣意は, 単なる法令違反の主張であって, いずれも刑訴法 405 条の上告理由に当たらない しかしながら, 検察官の所論に鑑み, 職権をもって調査すると, 原判決は, 刑訴法 411 条 1 号により破棄を免れない その理由は, 以下のとおりである 第 1 第 1 審判決が認定した犯罪事実の要旨 1 第 1 審判決は, 以下のとおり無許可輸出の未遂罪の犯罪事実を認定し, 被告人を罰金 88 万円に処した 被告人は,A,B,C,D,E 及び氏名不詳者と共謀の上, 税関長の許可を受けないで, うなぎの稚魚を中華人民共和国に不正に輸出しようと考え, 平成 20 年 3 月 29 日 ( 以下 本件当日 という ), 千葉県成田市所在の成田国際空港第 2 旅客ターミナルビル3 階において, 香港国際空港行き日本航空 ( 以下 日航 という )731 便の搭乗手続を行うに当たり, 税関長に何ら申告しないまま, うなぎの稚魚合計約 59.22kg在中のスーツケース ( 以下 本件スーツケース という )6 個を機内持込手荷物である旨偽って同所に設置されたエックス線装置によ - 1 -

る検査を受けずに国際線チェックインカウンターエリア ( 以下 チェックインカウンターエリア という ) 内に持ち込み, あらかじめ入手した保安検査済シール ( 以下 検査済シール という ) を各スーツケースに貼付するなどした上, 同カウンター係員に本件スーツケース6 個を機内預託手荷物として運送委託することにより, 税関長の許可を受けないでうなぎの稚魚を輸出しようとしたが, 税関職員の検査により本件スーツケース内のうなぎの稚魚を発見されたため, その目的を遂げなかった 2 なお, 上記 1の事実のうち 同カウンター係員に本件スーツケース6 個を機内預託手荷物として運送委託することにより との部分について, 原判決は, 運送委託の事実を認定した点で事実誤認がある 旨判示するが, 本件では, 被告人らが運送委託したことを示す証拠がないことは明白であるから, 第 1 審判決の上記判示部分は, 被告人らが運送委託を企図したということを示したものと理解するのが相当であり, 第 1 審判決に事実誤認はない 第 2 原判決の要旨被告人は, 第 1 審判決に対して量刑不当を理由に控訴したが, 原判決は, 控訴理由に対する判断に先立ち, 無許可輸出罪の実行の着手時期に関し, 職権で以下のとおり判示した上, 本件は無許可輸出の予備罪にとどまるとして第 1 審判決を破棄し, 被告人を罰金 50 万円に処した 実行の着手とは, 犯罪構成要件の実現に至る現実的危険性を含む行為を開始した時点 であって, 本件のような事案においては, 本件スーツケース6 個について運送委託をした時点と解すべきである 航空機の搭乗手続の際に, 機内預託手荷物として運送委託をすれば, 特段の事情のない限り, 自動的に航空機に積載されるか - 2 -

ら, その時点において本件スーツケース6 個が日航 731 便に積載される現実的危険性が生じるからである この点に関し, 検察官は, 積載する行為 又は 積載する行為に密接に関連し, かつ, 積載に不可欠な行為 があれば, この時点で実行の着手を認めるべきとの一般論を前提とし, チェックインカウンターエリア内で本件スーツケース6 個に検査済みシールを貼付すれば, 輸出行為が既遂に至るまでに何ら障害のない状況が作出された と主張するが, 肝心の運送委託をしない限り, そのような状況が作出されたと客観的に断ずることはできない そうすると, 検査済みシールを本件スーツケース6 個に貼付するなどした までの事実をもって, 無許可輸出の未遂罪が成立するとはいえず, 単に無許可輸出の予備罪が成立するにとどまるというべきであり, 第 1 審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りが存する 第 3 当裁判所の判断しかしながら, 原判決の上記判断は是認することができない その理由は, 以下のとおりである 1 1,2 審判決の認定及び記録によると, 本件の事実関係は, 次のとおりである (1) A( 以下 A という ) は, 平成 18 年 2 月頃から, 氏名不詳者より, 日本から香港へのうなぎの稚魚の密輸出を持ちかけられ, 報酬欲しさに, これを引き受け, 繰り返し密輸出を行っていたが, その後, 被告人らを仲間に勧誘した (2) 本件当時の成田国際空港における日航の航空機への機内預託手荷物については, チェックインカウンターエリア入口に設けられたエックス線検査装置による保安検査が行われ, 検査が終わった手荷物には検査済みシールが貼付された ま - 3 -

た, 同エリアは, 当日の搭乗券, 航空券を所持している旅客以外は立入りできないよう, チェックインカウンター及び仕切り柵等により周囲から区画されており, 同エリアに入るには, エックス線検査装置が設けられた入口を通る必要があった そして, チェックインカウンターの職員は, 同エリア内にある検査済みシールが貼付された荷物については, 保安検査を終了して問題がなかった手荷物と判断し, そのまま機内預託手荷物として預かって航空機に積み込む扱いとなっていた 一方, 機内持込手荷物については, 出発エリアの手前にある保安検査場においてエックス線検査を行うため, チェックインカウンターエリア入口での保安検査は行われていなかった (3) Aらによる密輸出の犯行手口は,1 衣類在中のダミーのスーツケースについて, 機内預託手荷物と偽って, 同エリア入口でエックス線検査装置による保安検査を受け, そのスーツケースに検査済みシールを貼付してもらった後, そのまま同エリアを出て, 検査済みシールを剥がし,2 無許可での輸出が禁じられたうなぎの稚魚が隠匿されたスーツケースについて, 機内持込手荷物と偽って, 上記エックス線検査を回避して同エリアに入り, 先に入手した検査済みシールをそのスーツケースに貼付し,3これをチェックインカウンターで機内預託手荷物として預け, 航空機に乗り込むなどというもので, 被告人らは,Aの指示で適宜役割分担をしていた (4) Aは, 氏名不詳者から, 本件当日に15か16ケースのうなぎの稚魚を運んでもらいたい そのため5 人か6 人を用意してほしい などと依頼され, 被告人,D,B 及びEの4 名について, 本件当日発の日航 731 便の搭乗予約をしていたが, 前日になって, 明日は2 名で6ケースになった 旨伝えられ, 被告人ら - 4 -

に対し, 被告人,E 及びDが本件スーツケース6 個を同エリア内に持ち込み,C ( 以下 C という ) とBが香港までの運搬役を担当するよう指示した Aは, C 分の同便の搭乗予約をしていなかったが, 他の予約分をCに切り替えるつもりでいた (5) 本件当日,A 及び被告人を含む総勢 6 名は, ダミーのスーツケースを持参して成田国際空港に赴き, 手分けして同エリア入口での保安検査を受け, 検査済みシール6 枚の貼付を受けてこれを入手した そして, 被告人らは, 同空港で, 氏名不詳者から本件スーツケース6 個を受け取り,1 個ずつ携行して機内持込手荷物と偽って同エリア内に持ち込んだ上, 手に入れていた検査済みシール6 枚を本件スーツケース6 個にそれぞれ貼付した (6) その後,AとCは, 本件スーツケースを1 個ずつ携え, 日航のチェックインカウンターに赴き,Cの航空券購入の手続をしていたところ, 張り込んでいた税関職員から質問検査を受け, 本件犯行が発覚した 2 本件における実行の着手の有無 (1) 上記認定事実によれば, 入口にエックス線検査装置が設けられ, 周囲から区画されたチェックインカウンターエリア内にある検査済みシールを貼付された手荷物は, 航空機積載に向けた一連の手続のうち, 無許可輸出が発覚する可能性が最も高い保安検査で問題のないことが確認されたものとして, チェックインカウンターでの運送委託の際にも再確認されることなく, 通常, そのまま機内預託手荷物として航空機に積載される扱いとなっていたのである そうすると, 本件スーツケース6 個を, 機内預託手荷物として搭乗予約済みの航空機に積載させる意図の下, 機内持込手荷物と偽って保安検査を回避して同エリア内に持ち込み, 不正に入手した - 5 -

検査済みシールを貼付した時点では, 既に航空機に積載するに至る客観的な危険性が明らかに認められるから, 関税法 111 条 3 項,1 項 1 号の無許可輸出罪の実行の着手があったものと解するのが相当である (2) したがって, 本件が無許可輸出の予備罪にとどまるとして第 1 審判決を破棄した原判決には, 法令の解釈適用を誤った違法があり, この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであって, 原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる よって, 刑訴法 411 条 1 号により原判決を破棄し, なお, 訴訟記録に基づいて検討すると, 第 1 審判決は, 被告人に対し罰金 88 万円に処した量刑判断を含め, これを維持するのが相当であり, 被告人の控訴は理由がないこととなるから, 同法 413 条ただし書,414 条,396 条によりこれを棄却し, 当審及び原審における訴訟費用につき同法 181 条 1 項ただし書を適用することとし, 裁判官全員一致の意見で, 主文のとおり判決する なお, 裁判官千葉勝美の補足意見がある 裁判官千葉勝美の補足意見は, 次のとおりである 私は, 本件における手荷物の機内預託手続の実施態様等に鑑み, 無許可輸出罪の実行の着手を認めた法廷意見に関連し, 次のとおり私見を補足しておきたい 1 原判決は, 本件スーツケース6 個が日航 731 便に積載される現実的危険性は運送委託の行為をすることにより生ずるとして, この行為の時点を捉えて無許可輸出罪の実行の着手を認めるべきであるとしている 航空機を利用する密輸出が成功するか否かは, 保安検査において無許可輸出品の隠されていることが発覚せずにパスさせることができるかが最大の鍵を握っているところ, 保安検査で発覚する蓋然性は決して低くなく, 近時行われているように, 機内預託手荷物の保安検査がチ - 6 -

ェックインカウンターでの預託後に行われる場合であれば, 保安検査に向けて運送委託のための行為を開始するか否かが, 実行の着手の有無の判断において, 重要な要素ということになろう しかしながら, 本件における手荷物の機内預託手続の実施態様は, これとは異なるものであり, 原判決のような判断をすることはできない 2 本件における機内預託手荷物の保安検査は, 上記のようなものとは異なり, チェックイン手続の前に, チェックインカウンターエリアの入口において行われており, 密輸出が成功するか否かの鍵を握る場面が運送委託に向けた行為より前の段階で登場する そして, 本件では, 法廷意見が判示したとおり, ダミーのスーツケースを利用して保安検査を済ませて検査済みシールを入手して同エリアに入り, その後, 手荷物を携帯したまま同エリアから出て, 今度はうなぎの稚魚の入った手荷物を機内持込手荷物であると称して同エリア入口での保安検査を免れ, 同エリア内に入って, そこで既に入手し剥がしていた検査済みシールを本件スーツケース6 個に貼り付けるという一連の偽装工作を完了させており, 密輸出の成功の鍵を握る最大の山場を既に乗り越えた状態となっていたのである 残るのは, 被告人ら自らが, そのままこれらをチェックインカウンターへ運び運送委託をすることだけである そして, 法廷意見の判示するとおり, 検査済みシールを貼付した時点では, 通常は, もはや保安検査等で無許可輸出品がスーツケースに入っているか否かの再確認をされるおそれはなくなっており, 密輸出に至る客観的な危険性が明らかに認められる 3 また, 本件スーツケースは, いまだチェックインカウンターエリア内に存置された状態にあり, 被告人らにおいて運送委託に向けた行為を開始してはいなかっ - 7 -

たものの, 保安検査を積極的に利用して機内預託手荷物として正式に検査が済んでいるかのような状態を既に作り出しており, 密輸出の成功の鍵を握る偽装工作が成功裏に完了し, 輸出のための手続の重要な部分が終了しているのである すなわち, これらの一連の偽装工作は, 保安検査前の専ら被告人らだけの領域内で行われたのではなく, 保安検査という, 機内への手荷物の運送委託の前提となる一連の手続過程に入り込み, これを利用して検査済みシールを貼付することにより完成している このような状況は, 密輸出に至る客観的な危険性が明らかに認められると同時に, 構成要件該当行為である機内への無許可輸出品の運送委託に密接な行為が行われたと評価することもできるものである 4 以上によれば, 本件においては, 運送委託行為ないし積載依頼に向けた行為の開始がなくとも, 密輸出の実行の着手を肯定してよいと考える 原判決は, いまだ手荷物を運送委託する行為がなかった点を捉えて, 予備罪の成立にとどめる判断をしている しかし, 本件では, 手荷物を預託する際に保安検査を行うという近時行われている検査体制とは異なる検査状況があり, 運送委託を完成させるための最も重要で最大の障害となる部分を済ませるに至っており, さほどの重要性がなくなった運送委託の直前の状態まできているという事情があるから, 実行の着手を認めることが十分に可能であるというべきである 検察官甲斐行夫公判出席 ( 裁判長裁判官鬼丸かおる裁判官千葉勝美裁判官小貫芳信裁判官山本庸幸 ) - 8 -