1 AbemaTV におけるラウドネスマネージメントへの努力 開発局 QA トランスコードエンジニア 御池崇史
2 ラウドネスマネージメント 音量は品質に直結する
AbemaTV の視聴スタイルいろいろ 20 数チャンネル x マルチレゾリューションを展開 多様な視聴デバイスに対応 3 PC 視聴 モバイル視聴 ( 縦 & 横 ) TV/TV デバイス視聴
-15LUFS 4
民放連技術基準 T-032 との差異開局当初の状態 波形で音量差を見てみよう AbemaTV 基準 5 +9LU -15LUFS With No Peak Limiter -15LUFS 左 右 ピーク振幅 : 0.00 db -0.24 db トゥルーピーク振幅 : 0.27 dbtp 0.17 dbtp ITU-R BS.1770-3 ラウドネス : -15.05 LUFS ±1LU -23LUFS -24LUFS -25LUFS OA 基準 -24LUFS -28LUFS 特記事項として処理 左 右 ピーク振幅 : -8.94 db -8.64 db トゥルーピーク振幅 : -8.30 dbtp -8.23 dbtp ITU-R BS.1770-3 ラウドネス : -24.00 LUFS
ストリーミング展開イメージとラウドネス 6 Server Side Ad InsertionというCM 挿入方式が特徴録画放送 CM 生放送が複雑に絡む編成 Adaptive Bitrate により 回線状況に応じたレゾリューションを配信 (1080p-180p まで可変 ステレオ / モノ混在 ) これらすべてに対しラウドネス管理が必要 AbemaTV 内の一般的なチャンネルの例 ラウドネス実装 OK 高ラウドネスを狙うには課題あり ラウドネス実装 OK 本編 ( 録画放送 ) 本編 ( 録画放送 ) 本編 ( 生放送 ) 本編 ( 生放送 ) 本編 ( 生放送 ) 本編 ( 録画放送 ) 本編 ( 録画放送 ) C M C M C M C M C M C M CM C M C M C M C M C M C M C M
ラウドネス管理デバイス & ソフトウェア 7 録画放送カスタムされたトランスコーダー (FFMPEG ベース ) 開局当初よりラウドネス機能使用 リミッター含め自由な設定の余地がある CM Zencoder audio_loudness_level + 厳密な入稿規定 2017 年 8 月に前倒し実装していただいた ピーク管理にやや改善の余地あり現状は入稿時に代理店に対してラウドネス適合を求めてしまっている Abema News スタジオ設備として Jünger を設置 鉄壁の管理 ダイアログを主体とした単一の番組特性であることから決め打ちでの設定で問題ない 生放送送出時 ( ほぼ最終段階 ) に追加ゲイン 収録状況や機材の充実度に左右される配信ソフトウェアでの追加ゲインは +6dBが限界 など課題が多い
-15LUFS が抱える問題 8 新しい番組 ( ラウドネス運用開始後に制作されたもの ) ほど悪い影響を受ける ライブ番組制作における調整が非常に困難 特記事項処理としての下方修正幅を持っていない 外部制作会社に事前に AbemaTV 仕様に適合を強いても対応不可能な場合が多い CM も -15LUFS に固定 少しでもずれた物はすべて差し戻している ( 運用上の無駄 )
トータルバランスの改善へテレ朝技術陣との協議の結果 下方修正を決議 +9LU -15LUFS With No Peak Limiter 新 AbemaTV 基準 9 +6LU -18LUFS With Peak Limitter -18LUFS +6LU ±1LU -23LUFS -24LUFS -25LUFS -28LUFS 特記事項 左 右 ピーク振幅 : -2.62 db -3.12 db トゥルーピーク振幅 : -2.52 dbtp -2.72 dbtp ITU-R BS.1770-3 ラウドネス : -18.05 LUFS OA 基準 -24LUFS 左 右 ピーク振幅 : -8.94 db -8.64 db トゥルーピーク振幅 : -8.30 dbtp -8.23 dbtp ITU-R BS.1770-3 ラウドネス : -24.00 LUFS
AES のレポートによれば 10 インターネット動画配信事業者として望ましきターゲット ラウドネス値 推奨 :-16LUFS~-20LUFS 引用 :AES Recommendation for Loudness of Audio Streaming & Network File Playback
他社の動向 11 NETFLIX -24LUFS±2LU を基準に徹底的な管理体制を構築 パートナー企業に求める水準がすこぶる高い OA 準拠のサービスとしてはこれを参考にすればまず完璧 YOUTUBE 2015 年よりラウドネス規定を導入 -13LUFS 以下への自動補正 実際の挙動はピークリミット重視のショートターム判断に基づく補正 あまり参考にならない Apple itunes/ios に音量均一化機能を搭載 再生段階での音量感統一 ( オプション ) -16.5LUFS あたりを適正値とみなしている様子 ( 音楽のみを想定か?) 曲ごとアルバムごとの音量感のバラツキをなくすアプローチ ( ただしユーザーの任意 ) その他不明な点もあるが基本的には OA ラウドネス規定を意識していると思われる
CP 様からの入稿素材もいろいろ収録 ノンリニア編集で用いられる汎用的な CODEC に対しては概ね対応可能 古い素材はとくにラウドネスがばらついた状態で入稿される 12 H.264 ( 入稿規定準拠 ) ProRes422HQ ProRes422 非圧縮アニメーション圧縮 CanopusHQ/HQX XDCAM HD 422 ( シャトースタジオ常用 ) AVC-intra100 XAVC DNxHD AAC-LC 圧縮系 リニア PCM 非圧縮音声 リニア PCM 非圧縮音声 mp4 コンテナ MOV コンテナ MXF コンテナ
LRA 入稿素材のラウドネス分布 音楽番組比較 横軸 : ラウドネス値 縦軸 :LRA 13 Integrated Loudness -15LUFS -70-60 -50-40 -30-20 -10 0 20 18 16 14 12 完全に OA 基準準拠のもの 音楽特性依存のものが混在 10 8 6 4 2 0
LRA 入稿素材のラウドネス分布 ( 韓流 華流ドラマ ) 横軸 : ラウドネス値 縦軸 :LRA 14 Integrated Loudness -15LUFS -70-60 -50-40 -30-20 -10 0 20 18 16 14 12 ラウド & ワイドという 音声制作 演出の特徴が出ている 10 8 6 4 2 0
LRA 入稿素材のラウドネス分布 ( 囲碁 将棋 ) 横軸 : ラウドネス値 縦軸 :LRA 15 Integrated Loudness -15LUFS -70-60 -50-40 -30-20 -10 0 20 18 16 14 12 静かなシーンが多い囲碁将棋 ダイアログ ラウドネスで計るべき 10 8 6 4 2 0
LRA 入稿素材のラウドネス分布 ( 釣り ) 横軸 : ラウドネス値 縦軸 :LRA 16 Integrated Loudness -15LUFS -70-60 -50-40 -30-20 -10 0 20 18 16 14 12 やや低いラウドネス値だが許容範囲に展開 LRA 特性も程よい 10 8 6 4 2 0
LRA 入稿素材のラウドネス分布 ( ドキュメンタリー : ラウドネス無視系 ) 横軸 : ラウドネス値 縦軸 :LRA 17 Integrated Loudness -15LUFS -70-60 -50-40 -30-20 -10 0 20 18 16 14 12 自由な番組ももちろんある 10 8 6 4 2 0
LRA 入稿素材のラウドネス分布 ( ドキュメンタリー : 海外の大人気番組 ) 横軸 : ラウドネス値 縦軸 :LRA 18 Integrated Loudness -15LUFS -70-60 -50-40 -30-20 -10 0 20 18 16 14 12 ラウドネス運用がこなれている海外ドキュメンタリー 10 8 6 4 2 0
LRA 入稿素材のラウドネス分布 ( アニメ網羅 ) 横軸 : ラウドネス値 500 ファイルほど計測 縦軸 :LRA 19 Integrated Loudness -15LUFS -70-60 -50-40 -30-20 -10 0 20 18 16 14 12 多様な種別 年代を計測したためばらけて見えるが 基本的にリテラシーは高い 10 8 6 4 2 0
LRA 入稿素材のラウドネス分布 ( アニメ ) 某アニメ限定でシーズンごとに比較 横軸 : ラウドネス値縦軸 :LRA 20 Integrated Loudness -15LUFS -70-60 -50-40 -30-20 -10 0 20 18 16 14 12 第 1 シーズンのみ Abema 仕様に合わせようとしたか? 10 8 6 4 2 0
高ラウドネスを狙うということ 21 現状はモバイル視聴に特化したラウドネス設定 AbemaTVでのチャンネルザッピングは高速かつ直感的 場合によっては いきなり大音量 が生じやすい低レゾリューション帯におけるモノラルミックスダウンによる変化も考慮しなければならない生放送の場合 アーカイブ用途は-24LUFSで収録 配信用にゲインアップしている 生放送における高ラウドネス適合は負担が大きい ( 録画放送との音量差が顕著 ) ラウドネス管理デバイス ノウハウの現場への普及が急がれる 古き良きピーク基準のノーマライズではかえって素材ごとに音量がばらつく CP さんの中には AbemaTV 基準を事前処理で目指してくれるところもあるが かえって悪い結果に ラウドネス運用の魅力に気づいていないエンジニアが散見される ( ラウドネスなんて いるの? 系 ) OA 基準に盲目的に従っておけば葛藤は生じなかった? Yes,but No. いずれにせよ素材の多様性への対応のためにハード ソフトによる管理は必要開局当初から部分的にせよラウドネス管理が出来ていたのは大きいあるいは-24LUFS@TV 視聴 -18LUFS@ モバイル視聴のダブルスタンダードを用いるという方法もある
ファイル変換システム内でのラウドネス計測 & 調整ポイント 22 HDD/SSD FTP/FASP 編集その他 販社に画像使用の許諾を取っております 1 Quales QC ツール 計測のみ可能 Vantage トランスコーダー Dynamic Drive Pool 高速 大容量ストレージ Win/Mac 両方からアクセス 2 MP4 多様性への対応 品質強化 計測と調整が可能 OA 基準しか対応できない 管理ツール MP4 最適化 3 計測と調整が可能狙ったラウドネス値を実現できる 配信用トランスコーダー HLS MPEG-DASH ( 厳密には HLS の後段で処理 ) 1080p/720p/480p/360p/ 240p/180p DRM 処理 入稿データ QCと中間ファイルの生成管理情報付与配信ファイルの生成著作権保護
安全なラウドネス運用への意識付け 画像使用の許諾を取っております 23 インターレース判定 シンタックスエラー判定 音声 ch 判定など 映像品質自動評価ソフト インターレース解除 / 非解除 任意のリサイズ 音声 ch 判定 コンテナ判定 コーデックごとのバリエーション etc ワークフローデザイナートランスコーダー ウォッチフォルダー運用 投入 各種データ 編集依頼 CP カンパケ OA 基準を正として入稿していただく OPERATOR OPERATOR オペレーターレベルではいかなる音量処理も行わせない EDITOR 編集マンによる調整は内製番組のみ許可する
CM の場合ルール ツール コマンドのコンボで 24 入稿規定により -15LUFS±1LU -3dBFS 以下のピークを規定 結果としてダイナミックレンジ圧縮が強くかかった素材が入稿されやすい 入稿規定の下方修正も準備中 代理店さんの負担を少しでも減らしたい 独自のチェックツールによる運用強化 映像および音声に関する項目をトランスコード前にチェックしている 差し戻しの頻度も高い CP/ 代理店の負担 ( 改善予定 ) Zencoder audio_loudness_level で -18LUFS に下げる処理 72 時間本音 TV では CM の音量に関するクレームは皆無だった brightcove 様 前倒しでの機能実装ありがとうございました
独自のフォーマットチェッカー 25 CM 運用者には水際でのラウドネスチェックをお願いしている結果的にラウドネス運用としてピーク管理も含めて成り立たせていく 規定の範囲 -2LU(dB) -18LUFS -2LU(dB) -4.4dBFS
結果的にかなり安全な運用に 26-3dBFS -6dBFS -6dBFS -3dBFS Sample Peak が -6dBFS 以下になるようにもって行けば 誤差の大きな周波数帯 (1kHz あたり ) でも安心できる ただし入稿段階ですでに強めのダイナミックレンジ圧縮が発生している場合が多く 聴感上のインパクトは強いものが多い
LRA 処理後のラウドネス分布 (CM_zencoder を通した後のファイル ) 横軸 : ラウドネス値 縦軸 :LRA 27 Integrated Loudness 入稿規定ライン -70-60 -50-40 -30-20 -10 0 20 18 16 14 12 CM に関しては 9 月ごろからー 18LUFS への方修正を実施 事前確認を徹底 10 8 6 4 2 0
72 時間本音テレビラウドネス問題における一つの成果 28 配信された動画の音量バランスはきっちり平準化されていた ( クレームもなし ) 生放送におけるラウドネス コントローラーの活用 CM 音声の事前確認の徹底とラウドネス下方修正が奏功すべてのLIVE 放送でこの水準を達成したい 本編 ( 生放送 ) CM 本編 ( 生放送 ) CM CM 本編 ( 生放送 ) -18LUFS
運用レベル 段階的に高精度化 29 当面はSample Peak 運用で安全マージンを確保 いずれTrue Peak 運用へ 最終的にはLRA( ラウドネスレンジ ) による分岐処理やベリファイも行う もっと便利な運用ツールの開発 品質指標の多様化と可視化 当初はラウドネス差分のみを基準とした単純なゲインアップ ピークやダイナミックレンジへの配慮は存在しなかった リニア振幅だったことがせめてもの救い ハードリミッター 規定の下方修正とハードリミッター実装で安全マージンを確保する Sample Peak 管理で結果的に True Peak:-1dBTP 以下を目指す ハードリミッター より多くの具体的指標をとるべき開発エンジニアと指標の可視化を推進中
サラウンド素材が来た場合 AbemaTVでは5.1chダウンミックスなどはいっさい行わない 2chミックスダウン済みのトラックの抽出は行う場合もある 30
まとめ 31 単純に完パケを正とする運用はかえって危うい 出来る限りリニア振幅のみで処理したい 劇場版では特にダイナミックレンジへの配慮を 高ラウドネスではピークリミットをより慎重に OAにおける許容幅と特記事項は取り入れるべき 圧縮音声では24bit192kHz/LPCMにおけるような高精度の管理は求めようが無い よってAAC 圧縮による突発変性を考慮した余裕が必要 すべては安全マージンの確保に尽きる LRAをいかに使いこなすかが今後の鍵になる