94 章治療学 表.5 副腎皮質ホルモン外用の主な副作用 1. ステロイド ( 副腎皮質ホルモン ) corticosteroid ステロイド外用の主要な目的は抗炎症作用であるが, 血管収 縮作用, 膜透過性抑制作用, 炎症性ケミカルメディエーターの遊離抑制作用, ホスホリパーゼ A 抑制によるアラ

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A. 外用療法 / b. 外用薬の主剤 93 ゾナ ソリューション, フロジン 外用液, 各種抗真菌外用液 など. 5. 硬膏 plaster 布地や紙, プラスチックフィルムに薬剤をのばしたものを病巣に貼布して用いる. サリチル酸を 50% 含有したスピール膏 べんちけいがんがこれに属し, 胼胝や鶏眼などに用いる ( 図.4). そのほか, ステロイド含有接着テープやリドカイン含有接着テープもある. 皮膚科領域以外では, ニトログリセリンやフェンタニルなどを含有したテープ製剤が, 経皮吸収を利用した全身投与の手段として用いられている. b. 外用薬の主剤 main topical agents 図.4 スピール膏 薬剤として皮膚に作用する成分が主剤である. 以下にあげるような薬剤がよく使用される. 表.4 主なステロイド含有外用薬とランク Strongest 0.05 0.05 Very strong 0.1 0.05 0.05 0.1 DP 0.04 0.05 0.1 0.1 Strong 0.3 0.1 V 0.12 0.025 0.025 0.12 0.1 Medium/Mild 0.3 0.1 0.1 0.05 A 0.1 0.1 Weak 0.5 H 0.25

94 章治療学 表.5 副腎皮質ホルモン外用の主な副作用 1. ステロイド ( 副腎皮質ホルモン ) corticosteroid ステロイド外用の主要な目的は抗炎症作用であるが, 血管収 縮作用, 膜透過性抑制作用, 炎症性ケミカルメディエーターの遊離抑制作用, ホスホリパーゼ A 抑制によるアラキドン酸低下作用, 免疫抑制作用, 細胞分裂抑制作用などが総合して炎症を抑える. ステロイド外用薬には作用が穏やかなものから強力なものまで多数あり, 作用の強さに従って, ストロンゲスト, ベリーストロング, ストロング, ミディアム ( マイルド ), ウィークの 5 段階に分類されている ( 表.4). 外用の局所的副作用には常に注意を払い, 軟膏の吸収度が高い顔面に使用する際には, とくに気をつけねばならない. 適切な使用量, 使用法であれば, 全身的な副作用が生じる可能性はきわめて低いが, 強力なステロイド外用を長期間にわたって広範囲に続けたり, 密封包帯法 (p.97) を行うと, ステロイド全身投与と同じような副作用を起こすことがあるため, 注意が必要である. また, 乳幼児では全身的な影響が出やすく, 作用ランクを落とすなどの注意を要する. 代表的な局所的副作用には, 皮膚萎縮, 毛細血管拡張, 紫斑, ざそうしゅさ多毛, ステロイド痤瘡, 酒皶様皮膚炎, 感染症の誘発増悪 ( とはくせんくに異型白癬, カンジダ症 ) などがある ( 表.5). 外用薬の混合の是非 2. 免疫抑制薬 immunosuppressant T 細胞を選択的に抑制するカルシニューリン抑制薬の外用が, とくにアトピー性皮膚炎に対してきわめて有効であり, 頻用されている. 日本ではタクロリムス ( プロトピック 軟膏 ) たいせんが使用可能である. 慢性光線性皮膚炎や扁平苔癬にも有効である. アトピー様症状を呈する Netherton ネザートン症候群 (15 章 p.275 参 ぎょりんせん 照 ) などの魚鱗癬症候群では, 血中濃度の異常上昇をきたすた め使用禁忌である. 3. 抗真菌薬 antifungal agent イミダゾール系, ベンジルアミン系, モルホリン系など, さまざまな系統の抗真菌外用薬が用いられる. 真菌の細胞膜に対して結合, ないし生合成を阻害することで抗菌活性を示す. 外用薬 ( クリーム, 液, 軟膏 ) が主に浅在性真菌症に用いられる つめ が, 爪白癬や深在性真菌症では内服が必要になることも多い (p.98).

A. 外用療法 / b. 外用薬の主剤 95 4. 抗菌薬 antibiotics 抗菌薬を主剤とする外用薬が表在性感染症などに対して用いられる. 使用する際は対象とする細菌に十分な抗菌力があってなおかつ経皮感作能のできるだけ小さいものが望ましい. たとえば, 尋常性痤瘡などの毛包炎に対して, マクロライド系やニューキノロン系の抗菌薬含有外用薬が用いられている. 近年は耐性菌が増加しており, 抗菌薬含有軟膏のみでは治療効果が得られない表在性感染症も多い. また, 嫌気性菌に作用するメトロニダゾールの外用薬は, がん性皮膚潰瘍の悪臭に有効であるほか, 酒皶 (19 章 p.3) などにも用いられる. 表. 全身的副作用の懸念から使用量に制限のある外用薬 ( 成人に対しての使用上限量 ) D3 0.1 1 11 10g 1 90g 1 10g 90g 1 10g 1 1 21 5g 0.03 1 5g 5. 活性型ビタミン D3 1,25-dihydroxy vitamin D3 活性型ビタミン D3 には表皮の分化誘導や増殖抑制作用があ しょうせき るため, 乾癬, 魚鱗癬, 掌蹠角化症など, 過角化, 表皮増殖を きたす疾患に対して用いられる. ステロイドとの配合外用薬も開発されており, とくに乾癬では第一選択薬となっている. しかし, 大量かつ長期の外用により高カルシウム血症を生じうるため, 用量などに注意を払う必要がある ( 表.).. レチノイド retinoid ビタミン A には角質の構造をつくる硫酸コレステロールを減少させる作用があり, 外用により角層の減少をもたらす. 日本ではビタミン A 誘導体のアダパレンが尋常性痤瘡に対して保険適用となっている. レチノイン酸レセプターに選択的に結 めんぽう 合し, 毛包上皮細胞の角化を制御し, 面皰形成を抑制すること により非炎症性, 炎症性皮疹に至る症状を防ぐ. 7. イミキモド imiquimod ゆうぜい免疫賦活薬であるイミキモド外用薬がウイルス性疣贅や皮膚悪性腫瘍などに用いられている.TLR7 に作用して炎症性サイトカインを惹起し, 免疫反応を増強させることで抗ウイルス作用 抗腫瘍作用を有するとされる. 日本ではベセルナ クリーせんけいムが, 尖圭コンジローマや日光角化症に対して保険適用となっている. モーズペースト (Mohs paste) タール剤 8. 尿素 urea 保湿剤として用いられ, 角質融解作用や角層に水分を含ませ

9 章治療学 る作用がある. 老人性乾皮症, 魚鱗癬, 掌蹠角化症, 進行性指掌角皮症, アトピー性皮膚炎などが適応である. 亀裂面や湿潤面に用いると刺激感を生じることがある. 図.5 亜鉛華軟膏シート ( ボチシート 20%) 9. 亜鉛華 ( 酸化亜鉛 ) zinc oxide 基剤で用いられることもあるが, それ自体に乾燥, 収斂, 止痒, 冷却作用, 物理的遮光作用があるため, 軟膏の主剤として使用されることが多い. リント布に塗ったシート状の製品 ( ボチシート ) も市販されており, 他の外用薬の上に貼布して密封包帯法 (p.97) とすることがある ( 図.5) 表.7 サンスクリーン剤の機序 紫外線熱エネルギー 10. サリチル酸 salicylic acid 角質融解作用があり, 足底の角化症などに用いる.50% 含有の硬膏 ( スピール膏 ) は胼胝や鶏眼の軟化 除去に用いる. 広範囲の外用により, サリチル酸中毒 ( 耳鳴り, 過換気, 意識障害など ) を生じうることに注意する. 1 日の外用薬使用量についての患者への指導 11. サンスクリーン剤 sunscreen 光線過敏症や色素性乾皮症などにおいては, 紫外線から皮膚を防御することがきわめて重要となる. また, 皮膚の老化, 皮膚悪性腫瘍の発症リスクを減らす意味でも日焼け防止は重要である. 多種のサンスクリーン剤が市販されているが, 主成分としては紫外線吸収剤 パラアミノ安息香酸 (paraaminobenzoic acid;paba) など と紫外線散乱剤 ( 酸化チタンなど ) に大別される. 前者は遮光能が高いが刺激性を有しやすく, 後者のみで製造されたノンケミカル製品も存在する ( 表.7). UVB に対する防御指数として SPF(sun protection factor), UVA に対する防御指数として PA(protection grade of UVA) が用いられる. 12. その他の主剤 other agents 上記以外の外用薬として, 抗ウイルス薬, イオウ, フェノール, 抗ヒスタミン薬, 抗悪性腫瘍薬, ソラレン, ビタミン薬, NSAIDs などがある. c. 外用方法 application 外用薬は以下にあげるような方法で用いられる. 使用量や使

B. 全身療法 97 用回数が厳密に制限されているものもあり, 十分な注意が必要である. 使用量がとくに決められていないものについても,1 日の使用量については常に把握しておく必要がある. 外用薬の使用量 (FTU) 実際の外用方法 methods of topical application 単純塗布 : 病変部に直接塗布する方法で, 最も一般的な使用方法である. ただ単に外用を指示しただけでは, 外用が不十分であったり逆に過多外用になる場合もあるため, 必要に応じて実際に使用しながら指導するなどの配慮も考慮すべきである. FTU(finger tip unit) の概念を考慮すると指導しやすい. かひ貼布 : 軟膏を薄くのばした布を病巣部に貼りつける. 痂皮の除去, びらんや潰瘍面の保護に用いられる. ボチシート はリント布に亜鉛華軟膏を塗布したものであり, 頻用されている. 密封包帯法 :ODT(occlusive dressing therapy) ともいう. 外用薬を直接塗布し, この部位をポリエチレン薄膜 ( ラップフィルム ) などで密封する方法である. より簡便な方法として, ステロイド含有テープ剤が市販されている. 浸潤や肥厚, 苔癬化局面, 過角化などに用いられる. ただし, 通常の外用に比べて吸収が亢進するため, 全身症状などの副作用に注意が必要である. 薬浴 : 全身的な入浴あるいは局所的に薬物を溶かした湯を浴びる方法である. 熱傷の消毒などで用いられることもあるほか, アトピー性皮膚炎に対して次亜塩素酸ナトリウム浴 ( ブリーチバス療法 ) を行うことがある. 温泉などでは, 温熱療法としての側面ももつ. また紫外線療法 (p.107) では, 照射前にオクソラレン で薬浴してから照射する方法がある (bath-puva 療法 ). B. 全身療法 systemic treatment 1. 抗ヒスタミン薬 ( 抗アレルギー薬 ) antihistamine ヒスタミンレセプターに結合して, その機能を阻害する抗ヒスタミン薬には, レセプターの型により数種類が知られている. 皮膚科領域で使用されるのは通常 H1 レセプター阻害薬である. H1 レセプターは炎症やアレルギー反応に深くかかわり, 一般に抗ヒスタミン薬といわれているのは抗 H1 レセプター薬である. 肥満細胞からのケミカルメディエーター遊離抑制作用をあわせもつ第 2, 第 3 世代の抗ヒスタミン薬を, 日本では抗アレルギー薬 (antiallergic drugs) と呼ぶことがあるが, 国際的に