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冷熱特集技術論文 36 大型タ - ボ冷凍機の新たな提案 - 更なる高性能化 高機能化 - New Suggestions of Centrifugal Chiller - Technologies to Realize High Efficiency/High Function - *1 長谷川泰士 *1 仁田雅晴 Yasushi Hasegawa Masaharu Nitta *1 和島一喜 *2 上田憲治 Kazuki Wajima Kenji Ueda ターボ冷凍機は近年, 高効率化 高機能化が進み, 熱源機としてのエネルギー消費量低減という点では製品として成熟してきた. しかし, 熱源機と熱源システム間のシステム運用に関する相互影響範囲において, 省エネルギー面での改良の余地がまだあり, そのためには熱源システムの高効率運転をサポートする技術や運転支援サービスの拡充が重要であると考えている. そこで, 運転サポート技術として計画 COP 高効率運転の負荷帯表示や冷水 / 冷却水流量検出器の標準装備, 運転支援サービスとして熱源総合制御システムや Web 上でのリアルタイム監視システムについて説明を行い, 更なる省エネルギー運転が可能となることを紹介する. 1. はじめに ターボ冷凍機は大容量熱源であり, 冷水のみならず零度以下の低温熱媒, 若しくは温水を精密に温度制御した上でユーザに供給可能な熱源機である. 従来, その特徴から地域熱供給事業者, 工場熱源システムユーザ, 大規模一般空調ユーザに多く採用されていたが, 近年は吸収冷温水機の代替熱源としての使用も多く, 更には温熱源への適用も広がりつつある. ターボ冷凍機は他熱源機と比較して省エネルギー性に優れる点から広く適用されるようになってきたが, 近年は機器の高効率化だけではなく, ユーザが高性能を維持して運転を行うことができるようサポートする技術も開発している. ここでは, ターボ冷凍機としての機器高効率化の手法について述べるとともに, 高効率運転の維持をサポートする技術 機能と, 運転の監視技術について紹介する. 2. ターボ冷凍機の高効率化 近年の地球温度化防止や省エネルギー実現のため, 特に 2000 年の高効率ターボ冷凍機 NA RTシリーズの発売以降, 継続した効率改善を実施してきた. その結果,2004 年にはJIS 条件における定格 COPは 6.4 まで向上し,2010 年にはインバータ技術を適用した冷凍機で部分負荷運転時における最高 COPは 24.2 まで向上している ( 図 1). また, 近年, 省エネ改修の需要が増加している業務用空調用途の小容量域 (150~500USRt) に対しても, 設置性と高性能化を両立させたETIシリーズも開発しており, 性能の底上げとともに幅広い容量での高効率機の導入に寄与している (1). ここでは, ターボ冷凍機の基本性能 ( 定格性能 ) と部分負荷性能に分けて, 高効率化のための技術を示す. *1 冷熱事業本部大型冷凍機部 *2 冷熱事業本部大型冷凍機部課長工博

37 図 1 ターボ冷凍機の性能変遷 2.1 ターボ冷凍機の基本性能向上技術ターボ冷凍機の高効率化要素技術のうち, 代表的な要素を示す. 最適冷凍サイクル(2 段圧縮 2 段膨張サブクールサイクル ) 高精度機械加工羽根車 低損失増速歯車, 低損失軸受 最適チューブ形状 チューブ配置の採用による熱交換器( 蒸発器 / 凝縮器 ) 高効率化これらの高性能化技術により, 大容量から小容量の全域にわたって高性能化を達成しており, ターボ冷凍機の最小容量に近い 200USRtクラスでも, 補機動力を含む消費電力基準で COP6.0 と, 非常に高い定格性能を確保することに成功している. 2.2 ターボ冷凍機の更なる高効率化技術更なる高効率化技術として,2 重冷凍サイクルを適用し,2 台の圧縮機をそれぞれ最適ポイントで運転できるよう制御した. これは, ターボ冷凍機内の蒸発器 / 凝縮器を1パスの双方向流とし, 2つの冷凍サイクルをそれぞれ高圧側 ( 冷水入口側, 冷却水出口側 ) と低圧側 ( 冷水出口側, 冷却水入口側 ) に分離することにより圧縮比を低減し, 圧縮機所要動力を低減したものである. 本サイクルの適用により, 定格 COP7.0 ( 注 ), 部分負荷時の最高 COP は 29.1 を達成した (2). 本手法により, 冷凍機の高効率化のみならず, 冷水側を大温度差仕様とすることにより, 冷水搬送動力の低減も行うことが可能となり, 熱源システム全体の効率向上へ寄与した. 世界最高レベルのCOP となる ETI-40ES の外観を図 2に示す. ( 注 )400USRt, 冷水条件 17/7, 冷却水条件 32/37 図 2 ETI-40ES の外観

2.3 ターボ冷凍機部分負荷性能向上技術ここ数年の高性能化の考え方は, 定格条件における COP ではなく, 年間運転の大半を占める部分負荷条件や低冷却水温度条件における性能を考慮した期間効率へと変化している. 当社でも, 年間のエネルギー消費量を効果的に削減できるインバータによる可変速制御を用いたシリーズを 2003 年からラインアップしており, 現在の AART-I シリーズに至っている. 主として, 以下に示す2つの技術要素により, 部分性能向上を達成している. (1) インバータ化による部分負荷向上インバータで圧縮機を可変速制御することにより, 圧縮機に設けられた損失を伴う入口ベーンによる能力制御を最小化することができる. (2) 2 段ベーン採用による部分負荷向上圧縮機の容量制御機構として,1 段羽根車の入口部に取り付けられた入口ベーンとともに, 2 段羽根車入口手前にも入口ベーンを設置することにより, 絞り性能の向上を図った ( 図 3).2 つのベーンによる能力 ( 風量 ) 制御を行うことにより, 同一のベーン開度においても能力絞り幅を大きくすることができ, 低ベーン開度域で発生するロスを最小化することができた. 38 図 3 1 段 /2 段ベーン構造 3. ターボ冷凍機の高効率運転サポート技術 近年は, 上述のように高効率化されたターボ冷凍機を, ユーザに継続して良い状態で利用していただくための技術開発に注力している. 具体的には, ターボ冷凍機の運転性能と最適運転可能な負荷帯の表示と, 負荷変動や温度変化に対して高い性能を維持しながら追従する機能である. 3.1 リアルタイム計画 COP 表示高い性能で運転するためには, まず現在の運転が適切であるかどうかを判断できることが重要である. 定格条件であれば, 仕様書などと比較することで判断は可能であるが, 実際の運転では負荷や冷却水温度は定格仕様条件から外れ, 期待されるべき性能 (COP) は定格条件のものとは異なる. 机上であればシミュレーション計算手法を用い, 期待されるべき性能 (COP) を実測運転データに基づいた値で精度良く推定することができるが, 汎用的に利用できないことが課題であった. そこで, 理論特性に基づき, 簡便な式を用いた性能推定手法を確立した (3). 性能推定手法は, 可変速制御を適用したインバータ駆動ターボ冷凍機と, 固定速で運転するターボ冷凍機の双方について確立した. これは, 両者の容量制御方法が圧縮機の回転数制御を適用するか否かで異なるためである. 固定速ターボ機では容量制御を行う入口ベーン制御とホッ

39 トガスバイパス制御による損失特性から部分負荷性能を推定した. 一方, インバータ駆動ターボ冷凍機ではターボ圧縮機の空力機械の理論特性に従った指標からすべての冷凍能力や冷水 冷却水温度条件での特性を反映し, かつ入口ベーンとホットガスバイパス弁の損失量の特定が可能となるため, より汎用的な形で性能予想できるように性能推定式を整備した. いずれの制御方法の冷凍機に対しても, 実測値に対して推定値は定格動力換算で誤差 3% 未満となり, 実用的精度で冷凍機の消費電力を把握することができることを確認した ( 図 4). 本性能推定手法は, パソコンのように計算機容量が大きくない冷凍機のマイコン盤にも実装が可能であり, 冷凍機の操作盤の表示画面にリアルタイムで冷凍機が発揮可能な計画 COP を表示し, 実測値 COP と比較することができる. また, これらの比較により, 冷凍機の運用改善や異常の早期発見が可能になると考えている. 図 4 部分負荷 COPの推定値と実測値の比較 3.2 冷水流量 冷却水流量検出器の標準装備 (1) 冷水 冷却水流量の検出熱源システム全体のエネルギー消費を低減させるため, 冷水 ( ブライン ) 冷却水流量の変流量制御を行い冷水 / 冷却水ポンプの消費電力を低減することが広く行われるようになってきた. 変流量制御を行う場合, 電磁流量計を冷水 冷却水配管に設置し, 電磁流量計から取り出した流量信号を指標としてインバータによる冷水 / 冷却水ポンプを駆動するモータの周波数制御を行う. しかし大容量熱源機であるターボ冷凍機の水配管口径は大きく, 電磁流量計が非常に高価なものとなる. そこで, 冷凍機に流量計測機能を代替するセンサを設置することで冷凍機から冷水 冷却水流量信号を出力し, ポンプの流量制御に使用できるようにした. また, ターボ冷凍機を最適に制御するため, 冷水出口温度のPID 制御を行う入口ベーンを除き, 膨張弁, 回転数, ホットガスバイパス弁では, 冷水出入口温度, 冷水流量と各部圧力, そして冷凍能力から算出される冷媒循環量に基づき制御を行っている. 冷水変流量制御の場合, 冷凍能力算定には冷水流量が必要となるため, 当該センサの信号を使用している. このセンサを, 設備側の電磁流量計の代替としても使用することができる. さらに, 変流量制御を行わない設備においても運転状態に影響がある冷水 / 冷却水流量を常時監視し, ズレやふらつきを検知して制御の調整ができるなどのロバスト性を有している. (2) 冷水 冷却水断水検知冷凍機は, 蒸発器伝熱管内の凍結防止 凝縮器圧力の急激な上昇を防止するため, 冷水 冷却水系統の双方に, 断水検知装置を備える必要がある. 従来は, 仕様値流量での熱交換器での冷水 ( ブライン )/ 冷却水差圧を基準とし, 一定割合の流量に相当する差圧値で断水検知

40 を行っていたが, 低流量への対応では微差圧を検知する装置が必要で, 高価なものとなっていた. そこで, 前述の流量計測機能を利用して仕様条件によらない広い範囲に対応した断水検知とし, 熱源システムの制御範囲拡大を可能とした. 流量計測と断水検知を同一センサで検出しているが, 機器保護機能である断水検知に必要となる速い応答性と, 流量計測に要求される精度を, それぞれの信号で独立して演算処理することで両立させた. 4. ターボ冷凍機のトータル運転支援サービス これまで, ターボ冷凍機へのユーザニーズの多くは高効率化と安定運用に対するものであった. しかし, 現在は, ターボ冷凍機が高効率な状態での安定運用に加えて, 以下の多様化 高度化へのニーズが強くなっている. (1) 簡便に高効率な状態で制御する,(2) 運転データの閲覧 評価,(3) フィードバック評価により最適運用を決定する. これらのニーズに対し, 当社では熱源システムを 継続して, 簡単に, 性能よく 運用できる製品の開発 販売に日々努めている. 4.1 高効率運転サポート技術ターボ冷凍機の高効率運転サポートに対しては, 熱源システムを簡単に一括制御することが可能な熱源総合制御システム エネコンダクタ を製品化し,2010 年 4 月に発売した. これは, 熱源機の台数制御 最適負荷配分制御, 冷水 / 冷却水変流量制御, 冷却塔の風量制御を統合して行い, 熱源システム全体のCOP 向上を狙ったものである (4). エネコンダクタを適用したケースの省エネルギー効果試算例として, 表 1に示す熱源システムの機器構成で年間 24 時間 365 日の工場負荷を想定し, エネコンダクタ によるシステム最適制御の有無でのシミュレーション結果を図 5に示す. 冷水 / 冷却水変流量制御, 冷却塔風量制御の適用により, 冷凍機運転効率は約 9% 低下するものの, 補機 ( 冷水ポンプ, 冷却水ポンプ, 冷却塔 ) の消費電力が大幅に低減可能となり, システム効率を約 26% も向上させることが可能となる. 熱源機自体の性能向上, 省エネルギーが頭打ちになっている現状では, システムCOPの向上に対して非常に有効であることが確認できる. 表 1 運転サポートの効果試算条件 ターボ冷凍機 ( インバータ駆動 ) 冷却塔冷水ポンプ冷水ポンプ 冷凍能力 1 000USRt 定格 COP 6.1 ファン消費電力 7.5kW 2 消費電力 37kW 2 ポンプ効率 0.75 消費電力 45kW 2 ポンプ効率 0.75 図 5 運転サポートの効果試算例 4.2 リアルタイム運転データ表示 評価技術運転データ閲覧 評価と最適運用のニーズに対して, ターボ冷凍機の運転データを Web 上でリアルタイムに表示し, 閲覧できる環境を構築している. ユーザは所有する冷凍機の運転状態を Web 上で閲覧でき, 当社が実施している運転データを評価して最適運用などを提案するサービ

スと統合作業中である. 従来からもメンテナンス契約内容によっては遠隔監視を行うことができるメニューを準備しているものの, 初期導入費用が高いため, 一部のユーザに限られていた. これをすべてのユーザにご利用いただけるよう, ターボ冷凍機の保証期間に当たる初年度は, 通信機器や設置に関わる費用と Web システムの利用費用を当社で負担し, ユーザにはインターネット環境とプロバイダー費用を負担いただくことにより, ユーザポータルより所有するターボ冷凍機の運転状態を見ることができる仕組みを整えた. 本サービスの全体イメージを図 6に示す. 仕様書などの図書類やメンテナンス履歴の一括管理から運転状態表示, 選択メニューとして Web を経由して収集 蓄積したデータを用いた定期報告書の作成, 故障 性能劣化予知, 運転状態評価 最適運転提案を提供する予定である. これらにより, より多くのユーザに対し, 最適運転提案など付加価値の高いサービスを提供し, 熱源ユーザと当社で運用情報を共有する双方向のサポートシステムの確立を目指している. 41 図 6 トータル運転支援サービスのイメージ図 5. まとめ ターボ冷凍機を含む熱源システムの高効率化達成のため, 熱源機側で実施すべき技術として, 高性能化と高機能化の2つの面より現状の最新技術について述べた. 従来は前者に重点を置いた開発であったが, 熱源システムの構成要素をいかに最適に運転し, 高性能を維持するために, どのような機能を付加させるべきかという高機能化にシフトしてきている. 高機能化への回答として, 運転サポート技術と運転支援サービスについて紹介を行い, システムの高効率運転に寄与できることを示した. 今後, この傾向が更に加速される中で, ユーザやシステム側より高機能化に適用すべき技術が冷凍機側に要求されるものと思われる. 参考文献 (1) 上田憲治ほか, インバータ標準搭載高効率ターボ冷凍機 eco ターボ ETI シリーズ, 三菱重工技報 Vol.46 No.1 (2009),P.51-54 (2) 横山明正ほか, 独立 2 系統最適制御技術を用いた可変速ターボ冷凍機,The International Symposium on New Refrigerants and Environmental Technology 2010, pp. 132-137 (3) 上田憲治ほか, ターボ冷凍機部分負荷性能推定手法の開発 ( 第 1 報 ) 性能推定手法の概要と実用化, 空気調和 衛生工学大会学術講演論文集,(2010-9),P.93-96 (4) 二階堂智ほか, ターボ冷凍機を用いた熱源システムの最適制御手法,The International Symposium on New Refrigerants and Environmental Technology 2010, pp.96-99