宇宙産業を促進するための法政策研究会

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宇宙開発委員会 推進部会 GXロケット評価小委員会(第8回)議事録・配付資料 [資料8-1]

総論 地方拠点強化税制とは? 税制等の支援措置を受けるためには? 3ページ 4ページ 拡充型事業とは? 5 ページ 移転型事業とは? 6 ページ 目次 各論 ステップ 1 ( 整備計画 ) 本社機能とは? どのような支援措置があるの? 支援のメリットについて整備計画の認定はいつまでに受ければいいの?

【課題1】海外の企業・人材が東京でビジネスをしやすい環境づくり~【参考】民間によるビジネス交流拠点の例

また 営業秘密の取扱いについても 社内の規程を整備することが秘密情報の流出時に法的保護を受ける上で重要であることから 今回の職務発明規程の整備に併せて 同期間 IN PITでは 営業秘密管理規程を含む企業の秘密情報管理体制の構築に関する情報提供や周知活動も積極的に行っていきます ( 本発表資料のお問

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

日本版スクーク ( イスラム債 ) に係る税制措置 Q&A 金融庁

「経済政策論(後期)」運営方法と予定表(1997、三井)

学生確保の見通し及び申請者としての取組状況

預金を確保しつつ 資金調達手段も確保する 収益性を示す指標として 営業利益率を採用し 営業利益率の目安となる数値を公表する 株主の皆様への還元については 持続的な成長による配当可能利益の増加により株主還元を増大することを基本とする 具体的な株主還元方針は 持続的な成長と企業価値向上を実現するための投

検査の背景 (1) 事業者免税点制度消費一般に幅広く負担を求めるという消費税の課税の趣旨等の観点からは 消費税の納税義務を免除される事業者 ( 以下 免税事業者 という ) は極力設けないことが望ましいとされている 一方 小規模事業者の事務処理能力等を勘案し 課税期間に係る基準期間 ( 個人事業者で

『学校法人会計の目的と企業会計との違い』

1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

寄附文化の醸成に係る施策の実施状況 ( 平成 26 年度に講じた施策 ) 別紙 1 < 法律 制度改正 > 総務省 ふるさと納税の制度拡充 ( 平成 27 年 4 月 1 日施行 ) 学校法人等への個人寄附に係る税額控除の要件の緩和 ( 平成 27 年 4 月 1 日施行 ) 特例控除の上限の引上げ

RO ( 改修 Rehabilitate- 運営等 Operate) 方式ハ民間事業者が公共施設等の設計及び建 BT( 建設 Build- 移転 Transfer) 方式設又は製造を担う手法民間建設借上方式 2 優先的検討の対象とする事業及び検討開始時期一優先的検討の対象とする事業建築物の整備等に関

により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地

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国立大学法人富山大学 PPP/PFI 手法導入優先的検討要項

個人情報保護法の3年ごと見直しに向けて

Transcription:

宇宙産業を促進する ための法政策研究会 小塚荘一郎 ( 学習院大学教授 慶應義塾大学訪問教授 ) 1

宇宙産業の促進 の類型 古典モデル : 国 / 宇宙機関が商業セクターに業務 / 製品を発注横展開のメリット 支援モデル : 国 / 宇宙機関からの技術移転 独立モデル : 国 / 宇宙機関からの人材移転 並行モデル : 国 / 宇宙機関とは別個に宇宙ビジネスが展開 2

宇宙産業の促進 の類型 古典モデル 宇宙活動計画 他国 他企業 製品 / 業務の提供 並行モデル 宇宙機関の活動 民間宇宙事業 3

宇宙産業の促進 の類型 支援モデル 技術 ビジネス 独立モデル シーズ開発 技術 ビジネス 金融 4

宇宙産業の促進 の類型 打上げ 衛星運用 宇宙利用サービス 世界的に古典モデルサブオービタルに並行モデル出現 派生 ( スピンアウト ) 商品 通信衛星は並行モデルが主流 支援モデルの実例多数 5

産業促進と法制度 産業支援 : 古典モデル 米国の州法 連邦調達制度 NASA の技術商用化 : 支援モデル 知財管理 : 支援モデル 独立モデル ベンチャー振興 : 独立モデル 並行モデル 戦略的な支援 ( ターゲットの絞り込み ) と国 /JAXA の公平義務 6

米国の宇宙産業法制 7

米国宇宙法制の概観 米国法 = 連邦法 + 州法 打上げの安全基準 : 連邦法 (USC, title 51) 宇宙条約に基づく打上げ国責任が発生するので 連邦法の管轄事項 州による打上げ事業者支援策 宇宙当局 (space authority) の設立 宇宙港 (Spaceport) の建設支援等 補助金 優遇税制等 打上げ事業者の免責 責任限定 8

宇宙技術の商業化 オバマ政権のStartup America 政策 NASAの技術の商用化 (commercialization) 1. 技術移転プログラム 例 : 遠隔医療にNASAの技術を提供 Office of Chief Technologist (OCT) が窓口 2. パートナーシップを通じた技術移転 例 : 乗り物酔いを止めるスプレー薬の開発 9

OCT による技術移転プログラ ム 法的形式 1 2 3 4 ライセンスその他の契約 ( ライセンス契約は連邦契約法 その他の契約は抵触法により定まる州法 ) 技術のオークション ( 技術の売り切り ) ソフトウェアの公開 技術成果の公刊 10

パートナーシップを通じた技 術移転 共働的パートナ シップ (collaborative partnerships) 基本的概念 連邦調達規則による技術開発への支出 Space Act Agreements (NASA 法に基づく契約 ) 中小企業支援策 SBI/SBT (Small Business Innovation / Small business Technology Transfer) DARPA (Defense Advanced Research Projects Agency: DoD の部局 ) と NASA の共同 NASA 技術移転ポータル NASA 新技術報告システム 11

連邦調達規則 NASA による技術の調達に関する法制度 連邦調達規則 (FAR) 国防総省調達の特例 (DFARS) NASA 調達の特例 (NFS) 規則の定める条件が技術移転契約の内容に取り入れられる ( 契約交渉の余地が小さい ) 改良技術 関連技術等について どこまで政府に移転するかをめぐる不満が多い 12

英国の宇宙法改革 13

英国の宇宙産業戦略 Space Innovation and Growth Strategy 2014-2030 (2013 年 11 月公表 ): 宇宙産業と英国宇宙庁の共同作業 5 項目の提言 1. 高付加価値の宇宙利用産業市場の創出 2. 宇宙産業への投資を呼び込むような規制改革 3. ESA への貢献の強化による見返りの増大 4. 宇宙成長計画の策定 先端産業の輸出支援等 5. 中小企業への支援策拡充 14

英国宇宙活動法の改正問題 IGT は 規制改革 (2.) の一環として 責任制限の導入 + 免許手続の簡素化を提唱 現行法 : 免許条件として 公衆の健康と安全に害を及ぼさないこと + 免許保有者の財務的健全性 政府が国際責任を負った場合は 事業者に全額求償 第三者賠償責任保険の義務付け : 打上げ時 + 衛星運用の継続する全期間 15

英国宇宙活動法の改正問題 2013 年 12 月 英国宇宙庁が宇宙活動法 (Outer Space Act 1986) 改正方針を公表 事業者の責任制限 (6000 万ユーロ ) の導入 強制保険金額も同額に 政令 (Legislative Reform Order) により 担当大臣に 責任限度額 強制保険金額の設定 変更権限を付与 超小型衛星について 賠償責任 強制保険を免除することの可否について 継続検討 ( 免除する場合は上記の大臣権限で対応 ) 16

宇宙産業振興のための知財 管理 ベンチャー支援 17

知財管理の問題点 知財 ( 特許 ) で儲けることは可能か? 知財はコストセンターではないか? 大学での知財管理の教訓 : 投資意欲がある主体に権利を帰属させる TLOvs 大学 vs 研究者個人 出願と秘密管理の選択 産業政策としての民間開放 ( 使わせる 政策 ) 収益は目的ではない 18

ベンチャーによる起業 起業初期に人事 会計 営業 広報 法務を手伝う人材が必要 会社形態の選択 ( 株式会社 合同会社 有限責任事業組合 ) 資本政策 将来の株主構成 ( 議決権と利益の割り振り ) のプラン ソーシャルグラフ ( 人と人のつながり ) 上場はゴールではない 事業の成功の指標 19

米国の州法による宇宙産業 促進 20

宇宙当局 (space authority) 州内の宇宙産業振興のための組織 (7 州 ) アラスカ Alaska Aerospace Development Corporation カリフォルニア California Spaceport Authority フロリダ Space Florida ハワイ Aerospace Advisory Committee オクラホマ The Space Industry Development Authority ヴァージニア Virginia Commercial Space Flight Authority ウィスコンシン Wisconsin Aerospace Authority 21

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宇宙当局 (Space Authority) カリフォルニアの場合 非営利法人として設立 官民の助成金獲得 産業戦略の立案 法改正の提案 補助金交付先の推挙 射場の指定等 資金難により 2011 年に解散 ( 制度は存続しているものの州の予算が打ち切られたため ) 州内の宇宙産業の競争力向上に寄与する企業のための助成金制度導入 (Space Enterprise Competitive Grant Program) 23

宇宙当局 (Space Authority) フロリダ州の場合 州の独立部局 債券発行による資金調達権限あり ( 独法のようなもの?) スペースシャトル退役後の宇宙産業誘致 資金調達支援 雇用創出のための活動 ヴァージニア州の場合 州政府の一部局 債券発行の権限あり インフラ開発 研究教育支援 Wallops 射場からの打上げ能力の維持 州内の宇宙産業の振興 24

宇宙港 (Spaceports) 7 州で州法上に根拠規定あり カリフォルニア コロラド フロリダ ニューメキシコ オクラホマ テキサス ウィスコンシン 宇宙港の誘致により 製造業の拠点設置を期待 25

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宇宙港 (Spaceports) フロリダ州の場合 宇宙当局 (Space Florida) に宇宙港の運営権限 指定地域内に宇宙港マスタープランを作成 入札により民営宇宙港を建設させる権限あり ニューメキシコ州の場合 宇宙港当局 (Spaceport Authority) を設立 宇宙港地域を指定 特別売上税を賦課して建設費用調達 (Spaceport America の運営主体は民間会社 ) 一般予算から 300 万ドルを支出する法案も成立 27

優遇税制 大小合わせて 16 州で確認 アリゾナ ( 軍需企業向けの減税措置 ) カリフォルニア ( 宇宙飛行関係の資産の免税 ) コロラド ( 雇用促進のための優遇税制 ) コネティカット ( 研究開発向けの優遇税制 ) フロリダ ( 宇宙飛行事業への税還付 雇用促進が目的 それとは別に時限的税還付もあり ) インディアナ ( 研究開発費の優遇税制 ) ミネソタ ( 中小企業向け優遇税制 ) 28

優遇税制 ミシシッピ ( 州内で研究開発を行う生産設備免税 ) ネブラスカ ( 投資家及び中小企業向け優遇税制 ) ニューメキシコ ( 打上げ 射場運営からの収入の控除 宇宙機向けの燃料販売の売上税免除 ) オクラホマ ( 宇宙産業の雇用者向け優遇税制 ) サウスカロライナ ( 生産設備の加速償却 ) テネシー ( 試験用動産の免税 ) ユタ ( 連邦政府との契約者の設備の売上免税 ) 29

優遇税制 ヴァージニア (Zero G Zero Tax Act) 有人打上げ及びそれに関連する訓練からの売上免税 (V-Prize 関連 ) NASA の COTS (Commercial Orbital Transportation Services) に応じた活動で ヴァージニア州から打ち上げられるものからの収入免税 (Orbital Sciences を意識した措置?) ウェストヴァージニア ( 宇宙関連設備に投資した企業向けの優遇税制 ) 30

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打上げ事業者等の免責 カリフォルニア ( 宇宙飛行事業者のみ ) コロラド ( 宇宙飛行事業者 宇宙機製造者 部品供給者 ) フロリダ ( 宇宙飛行事業者のみ ) ニューメキシコ ( 従来は宇宙飛行事業者のみ 2 013 年改正で宇宙機製造者 部品供給者に拡大 ) テキサス ( 宇宙飛行事業者 宇宙機製造者 部品供給者 ) ヴァージニア ( 宇宙飛行事業者 宇宙機製造者 部品供給者 ) 32

英国の宇宙法改革の議論の 経緯 33

英国宇宙活動法の改正論議 改正の目標 : 英国宇宙産業への投資の促進 2010 宇宙革新 成長チーム (Space IGT) の創設 ( 官民合同の検討会 ) 向こう 20 年の戦略を取りまとめて公表 その中で宇宙活動法の改正を提言 第三者責任保険の義務づけ額の引き下げ (1 億ポンド 6000 万ユーロ ) 政府が国際責任を負った場合の求償の制限 34

Space IGT 提言の実現 義務的責任保険の金額引き下げ 法令改正なくして実現 (2011.7) 政府からの求償を制限する法改正は先送り 2012 Space IGT の 戦略再検討 (Space Innovation and Growth Strategy Restack) の中で 再度 問題提起 2013 年 11 月 Space IGT の報告書公表 2013 年 12 月 宇宙活動法改正の方針決定 35

IGS Restack の背景 宇宙産業を成長産業として認識 産業としてのターゲットの選定 政策課題の緊急度のアンケート調査 産学によるブレーンストーミング的 WS ダウンストリーム ( 利用産業 ) の市場の成長性 参入可能性をマッピング 現行の宇宙活動法に対する 産業促進的でない という評価 36