( 高齢層では単身世帯が増加 ) 高齢化が進む中で高齢者の単身世帯が急増している 65 歳以上の単身世帯は 2000 年の 407 万世帯から 2016 年には 821 万世帯へと倍増している そして単身無職世帯では消費支出が可処分所得を月 4 万円程度上回り 貯蓄の取り崩しにより 生計を立てている

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( 資料 3) 比較検討した住宅 (%) 注文住宅取得世帯分譲戸建住宅取得世帯分譲マンション取得世帯 中古戸建住宅取得世帯 中古マンション取得世帯 ( 資料 4) 住宅の選択理由 (%) 注文住宅取得世帯分譲戸建住宅取得世帯分譲マンション取得世帯 中古戸建住宅取得世帯 中古マンション取得世帯 ( 資

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タイトル

20 金融資産目標残高 今後の金融商品の保有希望 元本割れを起こす可能性があるが 収益性の高いと見込まれる金融商品の保有 日常的な支払い ( 買い物代金等 ) の主な資金決済手段 日常的な支払い ( 買い物代金等 ) の主な資金決済手段 ( 続き )

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建設の施工企画 特集 5 長寿命化 維持管理 リニューアル 住宅の長寿命化への取組 国土交通省住宅局住宅生産課 今後の住宅政策においては これまでの つくっては壊す フロー消費型社会から いいものをつくっ て きちんと手入れして 長く大切に使う という ストック重視型への転換を図ってい

1. 住宅地価格査定マニュアル 改訂の概要 (1) 大都市圏版 と 標準版 の区分を廃止し 一本化 1 改訂前は 査定地 ( 事例地 ) が所在する地理的要因に基づき大都市圏版または標準版のいずれかを査定者が選択し かつ 大都市圏版と標準版では各査定項目の評点について異なる設定としていますが 改訂で

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マンション棟数密度 ( 東京 23 区比較 ) 千代田区中央区港区新宿区文京区台東区墨田区江東区品川区目黒区大田区世田谷区渋谷区中野区杉並区豊島区北区荒川区板橋区練馬区足立区葛飾区江戸川区

1 / 5 発表日 :2019 年 6 月 18 日 ( 火 ) テーマ : 貯蓄額から見たシニアの平均生活可能年数 ~ 平均値や中央値で見れば 今のシニアは人生 100 年時代に十分な貯蓄を保有 ~ 第一生命経済研究所調査研究本部経済調査部首席エコノミスト永濱利廣 ( : )

目次 1. 調査の概要 調査の目的 調査対象 対象地域 調査方法 回収状況 結果の概要 住み替え 建て替え リフォームに関する事項 住み替えに関する意思決定 リフォーム

【補論】戸建注文住宅と消費税の影響度に関する考察

新設 拡充又は延長を必要とする理由(1) 政策目的 消費者のニーズに応じた住宅を選択できる環境を整備する観点や低炭素化 循環型の持続可能な社会の実現の観点から 中古住宅取得や増改築等工事の適用要件の合理化や増改築等工事の対象を拡充することにより 中古住宅の流通促進 住宅ストックの循環利用に資する (

質問 1 11 月 30 日は厚生労働省が制定した 年金の日 だとご存じですか? あなたは 毎年届く ねんきん定期便 を確認していますか? ( 回答者数 :10,442 名 ) 知っている と回答した方は 8.3% 約 9 割は 知らない と回答 毎年の ねんきん定期便 を確認している方は約 7 割

1. 国土交通省土地 建設産業局関係の施策 不動産流通に関する予算要求が拡大 ここ数年 国の住宅 不動産政策において 不動産流通に関する施策が大幅に拡大している 8 月に公表された国土交通省の 2019 年度予算概算要求概要によると 土地 建設産業局における施策は大きく 4 項目あるが 全体の予算額

要望理由 (1) 政策目的 既存住宅の流通の円滑化を通じ 既存住宅流通 リフォーム市場の拡大 活性化を図る また 消費者のニーズに応じた住宅を選択できる環境を整備するとともに 既存住宅の耐震化を促進し 住宅ストックの品質 性能を高め 国民の住生活の向上を目指す (2) 施策の必要性 国民がライフステ

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Microsoft PowerPoint (確定)【住宅事業者様向け】平成29年度市場動向調査

積立 NISA の創設 1. 改正のポイント (1) 趣旨 背景 1 家計の安定的な資産形成を支援する観点から 少額の積立 分散投資を促進するための 積立 NISA が創設される (2) 内容 1 積立 NISA は 20 歳以上の居住者等が金融機関に開設した非課税口座内に 積立 NISA 専用の累

目 次 1-1. 勤労者財産形成貯蓄制度の概要 財形持家融資制度の概要 勤労者の貯蓄をめぐる状況について 財形貯蓄制度をめぐる状況について 勤労者の貯蓄と財形貯蓄制度をめぐる状況について 勤労者の持家をめぐる状況について 10 3

第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

四国中央市住宅マスタープラン 概要版 平成 30 年 3 月四国中央市 Since

平成 31 年度住宅関連税制改正の概要 ( 一社 ) 住宅生産団体連合会 平成 31 年 3 月 (1) 住宅ローン減税の拡充 ( 所得税 個人住民税 ) 消費税率 10% が適用される住宅取得等をして 2019 年 10 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの間にその者の居住の用に

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

設 拡充又は延長を必要とする理由 関係条文 租税特別措置法第 70 条の 2 第 70 条の 3 同法施行令第 40 条の 4 の 2 第 40 条の 5 同法施行規則第 23 条の 5 の 2 第 23 条の 6 平年度の減収見込額 百万円 ( 制度自体の減収額 ) ( - 百万円 ) 東日本大震

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図表 II-39 都市別 世帯主年齢階級別 固定資産税等額 所得税 社会保険料等額 消 費支出額 居住コスト 年間貯蓄額 ( 住宅ローン無し世帯 ) 単位 :% 東京都特別区 (n=68) 30 代以下 (n=100) 40 代

表紙

住宅総研オリジナル消費者調査 解説編

BL住宅金融公庫適合証明手数料案

Microsoft Word - ①NEWS RELEASE リバースモーゲージ

平成 29 年度税制改正 ( 租税特別措置 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 ) 制度名既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充 税目所得税 ( 国土交通省 ) 既存住宅流通 リフォーム市場の活性化に向けて 耐震性 省エネ性 耐久性に優れた良質な住宅ストックの形成を促進するため 既存住宅の耐震 省

要望理由 (1) 政策目的我が国の住宅ストックのうち 高齢者が安心し自立して暮らせるバリアフリー化された住宅は極めて限られている状況を踏まえ サービス付き高齢者向け住宅の供給を促進することにより 高齢者に適した住まいの確保を図る (2) 施策の必要性本特例措置により 1 高度のバリアフリー化 2 安

不動産経済 表紙OL

スライド 1

Microsoft PowerPoint - N_借換調査2017

平成 28 年 12 月 国土交通省住宅局

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~親世代の資産に関する意識調査~:東京スター銀行

マンション建替え時における コンテキスト効果について

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

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(3) 可処分所得の計算 可処分所得とは 家計で自由に使える手取収入のことである 給与所得者 の可処分所得は 次の計算式から求められる 給与所得者の可処分所得は 年収 ( 勤務先の給料 賞与 ) から 社会保険料と所得税 住民税を差し引いた額である なお 生命保険や火災保険などの民間保険の保険料およ

約 6 倍になると予測されており これら高経年マンションが増えていく中 経年による建物 設備の劣化等に対応するための大規模修繕や改修等の資金不足の問題が深刻化している 今後 良質なマンションを維持していくためにも 特にマンション共用部のリフォームについての支援が急務である (4) 賃貸住宅のリフォー

目次 要旨 1 Ⅰ. 通信 放送業界 3 1. 放送業界の歩み (1) 年表 3 (2) これまでの主なケーブルテレビの制度に関する改正状況 4 2. 通信 放送業界における環境変化とケーブルテレビの位置づけ (1) コンテンツ視聴環境の多様化 5 (2) 通信 放送業界の業績動向 6 (3) 国民

公 的 年金を補完して ゆとりあるセカンドライフを実 現するために は 計 画 的 な 資金準備 が必要です 老後の生活費って どれくらい 必要なんですか 60歳以上の夫婦で月額24万円 くらいかな? 収入は 公的年金を中心に 平均収入は月額22万円くらいだ 月額2万の マイナスか いやいやいや 税

Microsoft Word - 【資料3】表紙

別紙2

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第 7 章 間にその者の居住の用に供したときに 一定の要件の下で そのバリアフリー改修工事等にあてるために借り入れた住宅借入金等の年末残高 (1,000 万円を限度 ) の一定割合を5 年間所得税の額から控除できます なお 52ページの増改築に係る住宅ローン控除制度との選択適用になります 1 控除期

PowerPoint プレゼンテーション

第 7 章財政運営と世代の視点 unit 26 Check 1 保有する資金が預貯金と財布中身だけだとしよう 今月のフロー ( 収支 ) は今月末のストック ( 資金残高 ) から先月末のストックを差し引いて得られる (305 頁参照 ) したがって, m 月のフロー = 今月末のストック+ 今月末

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ここからは 更に 新宿区と渋谷区を取り上げて詳細検証を進めて見ましょう 1 人口動態 ( 年齢別 ) 人口割合 (40 代以下 ) 人口 平成 10 年 10 月現在 平成 23 年 10 月現在 新宿区 増加 61% 61% 30~40 代 /60 代以上増加が顕著 ( 別表 ) 渋谷区 増加 6

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13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

中古マンション概況 首都圏における 213 年 1~3 月の中古マンション成約は 9,663 件 ( 前年同期比 12.2% 増 ) で 6 期連続で前年同期を上回り 増加率は 2 ケタに拡大しています すべての都県 地域で前年同期を上回っています の 1 m2当たり単価は首都圏平均で

財団法人 神奈川県建築安全協会

2009年9月●日

スライド 1

Microsoft PowerPoint - 調査結果(23年度第2回住宅ローン利用予定者編)

H28秋_24地方税財源

参加者の属性 共通条件 グルー ピング 参加者抽出条件 図表 1 グループインタビュー参加者抽出条件 居住地域 1 都 3 県居住者 ( グループ ) 平均的な金融資産保有者 年代 性別 住宅の種別 同居家族の状況 居住年数 建物の築年数 住宅取得方法 将来の居住意向 保有金融資産 5

スライド 1

年 4 月期関西圏 中京圏賃貸住宅指標 大阪府京都府兵庫県愛知県静岡県 空室率 TVI( ポイント ) 募集期間 ( ヶ月 ) 更新確率 (%)

成長可能性に関する説明資料

スライド 1

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

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PowerPoint プレゼンテーション

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短期均衡(2) IS-LMモデル

平成29年 住宅リフォーム税制の手引き 本編_概要

3 世帯属性ごとのサンプルの分布 ( 両調査の比較 参考 3) 全国消費実態調査は 相対的に 40 歳未満の世帯や単身世帯が多いなどの特徴がある 国民生活基礎調査は 高齢者世帯や郡部 町村居住者が多いなどの特徴がある 4 相対的貧困世帯の特徴 ( 全世帯との比較 参考 4) 相対的貧困世帯の特徴とし

Microsoft Word - 80_2

の各種税制優遇を受けやすくする見直しが行われ 入居までに耐震基準に適合するという証明があれば 1 住宅ローン減税 2 住宅取得資金に関する贈与税の非課税措置 3 中古住宅に関する不動産取得税の特例措置の適用が可能となる 耐震基準に適合しない中古住宅を取得し 耐震改修工事を実施した後に入居するような場

目 次 調査結果について 1 1. 調査実施の概要 3 2. 回答者の属性 3 (1) 主な事業地域 3 (2) 主な事業内容 3 3. 回答内容 4 (1) 地価動向の集計 4 1 岐阜県全域の集計 4 2 地域毎の集計 5 (2) 不動産取引 ( 取引件数 ) の動向 8 1 岐阜県全域の集計

不動産経済 表紙OL

平成 31 年度税制改正概要 ( 住宅局 ) 結果特例措置税目 - 消費税率引上げを踏まえた住宅取得対策 住宅ローン減税の控除期間を 3 年間延長 ( 建物購入価格の消費税 2% 分の範囲で減税 ) 所得税個人住民税 延長 拡充 空き家の発生を抑制するための特例措置 ( 延長 ) 相続した空き家につ

2. 省エネ改修工事 耐震改修工事をした場合の所得税額の特別控除に係る工事範囲の拡充 (1) 改正の趣旨 背景 新築の長期優良住宅の認定基準制度に加え 平成 28 年 2 月 増改築による長期優良住宅の認定基準が制定された 長期優良住宅であると認定されることで 税制上様々な優遇措置を受けることができ

おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

住宅建築・購入者アンケート実施報告

平成26年度税制改正及び土地住宅政策に関する提言書(案)


中古マンション概況 首都圏における 214 年 1~3 月の中古マンション成約は 9,993 件 ( 前年同期比 3.4% 増 ) で 1 期連続で前年同期を上回っています 都県 地域別に見ると埼玉県および横浜川崎地域を除く各都県 地域で前年同期を上回っています の 1 m2当たり単価は首都圏平均で

図 3 世界の GDP 成長率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas Piketty ホームページ 図 4 世界の資本所得比率の実績と見通し ( 出所 ) Capital in the 21st century by Thomas P

Microsoft PowerPoint - 【WOODONEロゴ削除】長期優良住宅_施主向け説明資料_ ppt [互換モード]

生活福祉研レポートの雛形

共働きは 収入源の分散化や世帯所得の増加をもたらすことから 基本的には消費に対する自由度を高めるものと予想される つまり 配偶者収入も含めて 収入が消費に結びつきやすくなる可能性があるということだ しかし 実際には 共働き世帯が増加しているにも拘わらず 家計は消費に対して慎重になっているようだ 世帯


住まい まちづくりの基本目標と基本的施策の展開方向 1. 住まい まちづくりの理念と基本目標 だれもが安心して住み続けたいと感じる魅力ある とだ の住まい まちづくり を政策の基本理念とし これを実現するために次の 3 つを基本目標として総合的な施策を図るものとします 基本目標 -Ⅰ 多様なニーズに

Transcription:

2121 リサーチ メモ 平成 29 年度経済財政白書における住宅問題等の分析 ( 紹介 ) 2017 年 8 月 1 日 (1) 住宅需要に影響を与える高齢者の所得 資産及び人口 世帯数等の動向 ( 家計の老後の生活に対する意識は強い ) 白書は高齢化が進展する中で 65 歳時点での国民の平均余命が男性約 19 年 女性約 24 年となっており この 20 年で 3 年以上伸長していることを述べた後 老後に必要と考える生活資金は 2 人以上の世帯 ( 世帯主の年齢 60 歳未満 ) で月 25 万円から 27 万円となっている中で 平成 29 年度の年金改訂額ベースで 国民年金は一人当たり月 6.5 万円程度 厚生年金は夫婦 2 人分の老齢基礎年金を含めて標準的な年金額では月 22 万程度と必要額に足りていないことを紹介している こうした中で 家計が必要と考える金融資産額は近年増加傾向にあり 2016 年では平均 2100 万円程度になっている これは 近年 生活費はあまり変化がない中で 平均余命が伸長した分 老後に必要となる資金額が増加すると考えられているためとみられる しかし 実際の家計の金融資産保有額を見ると 年齢とともに増加していくものの 40 歳台で平均約 590 万円 ( 中央値は 200 万円 ) 50 歳台でも平均 1100 万円 ( 同 500 万円 ) と必要額に対し 極めて低い水準にとどまっており 家計は必要な老後資金を確保するため 今後節約志向を高めていく可能性があると指摘されている 一般財団法人土地総合研究所 1

( 高齢層では単身世帯が増加 ) 高齢化が進む中で高齢者の単身世帯が急増している 65 歳以上の単身世帯は 2000 年の 407 万世帯から 2016 年には 821 万世帯へと倍増している そして単身無職世帯では消費支出が可処分所得を月 4 万円程度上回り 貯蓄の取り崩しにより 生計を立てている様子が指摘されている 他方で 65 歳以上の 2 人以上の世帯の資産分布を見ると 3000 万円以上の資産を持つ余裕のある層が最も多く 最近その割合が増加傾向にある一方で 1000 万円未満の層も増加傾向にあり 資産保有の格差の拡大が指摘されている 現在の貯蓄残高 ( 所得五分位 ) 別に高齢者世帯の可処分所得と消費との状況を見ると 貯蓄が多いほど消費が多いという状況が見られ 年齢別には労働所得がある世帯が多い 60 歳台より 無職世帯が多くなる 70 歳以上の世帯の消費支出がかなり少なくなることが指摘されている 一般財団法人土地総合研究所 2

(2) 高齢層の節約志向と住宅 ( 高齢者世帯の節約志向 ) 高齢者世帯では住宅の保有率が高く 金融資産も多いなど 他の世代に比較して資産形成が進んでいるものの 総務省の家計調査データでみると 家事サービスや保険 医療といった生活関連サービス 住居の設備修繕 維持に対する支出割合がほかの世代に対して高いことが明確になっており 労働所得が少なく将来的なキャッシュフローに不安が大きいことから 毎月の食費や光熱費 医療費 住居費などに負担を感じ 節約志向が強まっている可能性がある 特に生活の基盤となる住居については 子どもが巣立ってしまい 夫婦 2 人や単身で暮らすには広すぎる 駅やバス停から遠く自家用車がないと買い物や通院に不便である バリアーフリー化がされていないといった要因から 実際に団塊世代に対する意識調査によれば 転居したい理由として ( 住居費支出の節減に寄与する ) 交通アクセスの改善やバリアーフリー化等が挙げられている ( 住宅ストック活用による消費需要喚起 ) 高齢者世帯では 手持ち資金が少なかったり 将来的なキャッシュフローを担保にした借り入れが難しかったりするため これらを解消するため リフォームや住み替えに関して 住宅金融支援機構の住宅融資保険制度を活用したリバース モーゲージ商品が開発され 2015 年までに 763 件の実績があること 金融機関が住居を担保に融資を受けることができる使途をリフォームや住み替えに限定しないフリータイプのリバース モーゲージ商品の開発を強化する姿勢を見せており 今後の拡大が望まれると紹介されている ( 既存住宅市場が未成熟な中で 改善が遅れる既存住宅の資産価値とリフォーム投資の好循環 ) 既存住宅及びその流通市場ついては これまでもそれらの改善が大きな住宅政策上の課題として取り上げられており ここで改善の方向性を示せば概要は以下のようなことである ( 参考表 ) 既存住宅に求められているパラダイム転換のイメージ ( 土地総合研究所作成 ) 課題従来の既存住宅 対策例 今後の既存住宅新築時点不十分な基本性能 建築確認の厳格化等 ( 耐震 十分な基本性能の確保省エネ バリアーフリー 耐久性 設備更新容易性 ) 維持 管理不十分なメンテナンス リノ 維持修繕 リノベーションへ適切なメンテナンス リノベーションベーションの税制 補助の強化 住宅スト速い減価 滅失ック流通市場提供される取引情報が不十分 不正確 ( レモン市場 ) 取引量 流良質な物件が登場せず 取引通速度量が新築市場に比して小さく 流通速度も低い取引価額築年減価が大きく土地価格中心の価格形成処分 利用終生居住 敷地売却形態 履歴情報制度の整備遅い減価 長寿化 インスペクション制度の整備 住宅性能評価制度の充実正確で十分な取引情報の提供 長期優良住宅認定の促進 既存住宅瑕疵保険制度の充実良質な物件が市場に登場し 取引量が拡大 成約価格情報の開示促進し 流通速度が高まる 売買当事者 仲介業者 金融機関等が納得できる適正な築年減価が抑えられ 維持 修繕 リノベ不動産評価制度の整備ーションに応じた利用価値を体現した価格形成ライフスタイルに合わせた住替え 貸付 一般財団法人土地総合研究所 3

白書が指摘するリバース モーゲージの活用のためには 日本では担保となる住宅が戸建ての場合 住宅部分が資産価値が認められにくい課題があることが指摘されている これについて 白書は以下のような分析を行っている ( 住宅部分が資産価値を認められないのは ) 我が国の住宅市場においては 既存ストックの活用が不十分であることが背景にある 我が国では住宅の利活用期間が短く 欧米諸国に比較すると日本の住宅投資に占めるリフォーム支出の割合は低水準となっている また リフォーム市場は近年拡大傾向にあるが 高度成長期に人口増加に伴って整備が進んだ住宅が老朽化していることを踏まえると十分とは言えない この背景として リフォーム投資が住宅価値に十分反映されない 取引量が少ないなど既存住宅市場が未成熟であることがある 政府では良質な既存住宅の市場流通を促進するため 断熱化等の質を高めるリフォームや既存住宅購入に対する支援に加え既存住宅購入に際しての物件の調査 検査への補助を行っている 質の高い住宅ストックの形成 蓄積が長らく進まなかったことが 欧米では既存住宅中心の住宅市場が機能しているのに 日本では未だ新興国型の新築市場中心の住宅市場を脱することができないでいる基本的な理由である 住宅の担保価値を高め リバース モーゲージの普及による資産の現金化を図るためにも また インターネットを通じて最近広がりを見せている民泊サービスを通じたキャッシュフローを生み出すためにも その源泉として良質な住宅ストックの形成 蓄積が必要である 質の高い住宅ストックの形成 蓄積がリバースモーゲージ融資 貸付を通じて 高齢者層の短期的な消費の拡大のみならず長期的な豊かな老後生活の実現のために寄与できる条件を整備することが今後一層重要となろう 一般財団法人土地総合研究所 4

( 良質なサービス付き高齢者向け住宅の供給が必要 ) 健康に不安があることの多い高齢者にとっては 安否確認や生活相談サービスなどが受けられるサービス付き高齢者向け住宅 ( サ高住 ) への住み替えも有用な選択肢となる サ高住として登録されている住居は 2016 年度末で 21 万戸を超えているが 郊外や公共交通機関 医療機関へのアクセスが悪い地域に立地される場合もあり また 居室面積が 25 m2未満のものもある 高齢者が豊かな生活を送れるような適切な住宅供給がなされることが必要であると指摘されている (3) 住宅着工の動向 ( 相続税対策のため 貸家の増加が顕著 ) 2016 年度の新設住宅着工を利用関係別に見ると 持家 貸家及び分譲のすべてが増加しているが 特に貸家の着工が大幅に増加した 個人の貸家業に対する貸出残高を見ると 2017 年 3 月時点で 28 兆円を超え 前年から 1 兆円程度増加しており 金利低下の他 2015 年の相続税に係る税制改正の影響もあって貸家建設のインセンティブが高まったことが指摘されている こうした中 わが国では 1 世帯当たり人数の減少により 人口減少下でも世帯数が増加しているが 2020 年以降は世帯数も減少するため 住宅市場の需給バランスの観点から人口動態に沿った住宅ストックの調整が必要となると指摘されている ( 荒井俊行 ) 一般財団法人土地総合研究所 5