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乳児期からの幼児教育について 大阪総合保育大学 大方美香

1 国の動向 平成 17 年 1 月に中央教育審議会答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について が出されました この答申では 幼稚園 保育所 ( 園 ) の別なく 子どもの健やかな成長のための今後の幼児教育の在り方についての考え方がまとめられています この答申を踏まえ

新しい幼稚園教育要領について

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

第2節 茨木市の現況

基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります 基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります (1) 基礎的 基本的な学力の定着児童 生徒一人ひとりが生きる力の基盤として 基礎的 基本的な知識や技能を習得できるよう それぞ

地域の幼児教育の拠点となる幼児教育センターの設置及び「幼児教育アドバイザー」の育成・配置に関する調査研究 実施報告書(2年次)(4)

目 次 1 実施方針策定の趣旨 P. 1 2 振興計画に基づく取組みと求められる対応 P. 1 (1)Ⅰ 期期間中の取組み (2) 新制度のもと求められる対応 3 当面の実施方針 P. 2 (1) 基本となる考え方 (2) 当面の実施方針 4 新制度のもとでの市立幼稚園 P. 3 (1) 市立幼稚園

ICTを軸にした小中連携

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第 1 章 札幌市幼児教育振興計画の策定 本計画は 主に幼稚園教育を対象とする 本計画は 平成 18 年度から概ね10 年間を計画期間とし 今後はこの方向性に基づいて早期に具体的な施策 ( アクションプログラム ) を打ち出していく 本計画は 社会情勢の変化などに対応し 必要に応じて計画の見直しを行

高松っ子いきいきプラン策定の趣旨 本プランは, 就学前の子どもが幼稚園 保育所 幼保一体化施設など, どこに在籍していても, 等しく質の高い教育 保育を受けられるよう, 各施設が積み上げてきたものを生かしつつ, 今後, 重点的に取り組むための方針や具体的な取り組みを示しています さらに小学校との連携

ハンドブックp10-14:東京都教育委員会

幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

基本方針 これまでも幼稚園は幼稚園教育要領に 保育園は保育所保育指針に基づいた幼児教育 保育を展開してきた また 平成 20 年 3 月の大幅な改定により 3 歳児から5 歳児の教育に関する内容では整合性が図られている しかし 統一されたカリキュラムがないことで 幼稚園と保育園の内容に違いがあるかの

八街市教育振興基本計画(平成26年~平成35年)

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1 幼児期の教育 保育と小学校教育の違い 幼児期の教育 保育と小学校の教育では 発達の段階の違いだけでなく 教育課程等の違いもあります まずは相互を理解することが必要です 幼児期の教育 保育と小学校教育との間には このように教育課程や指導方法の相違点がある一方で 5 歳児から小学校低学年までの発達の

目 次 1. 策定の趣旨 2 2. 基本理念 2 3. 計画の期間及び推進状況の把握 2 4. 計画の対象 2 5. 第 1 次計画 における成果と課題 2 (1) 成果 2 (2) 課題 3 6. 計画の全体構想図 3 7. 推進事業 4 (1) 家庭における読書活動の推進 4 (2) 地域 図書

目 次 第 1 章趣旨 1 第 2 章プログラムの位置付け 2 第 3 章基本的な考え方 2 第 4 章育てたい幼児像 3 第 5 章これまでの取り組み 3 第 6 章基本施策 5 1. 保育所 幼稚園 認定こども園等における充実した幼児教育の提供 2. 発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実

目次 第 1 章策定の趣旨 1 第 2 章現状と課題 2 第 3 章基本理念と基本目標 4 第 4 章基本方針 6 第 5 章担い手とその役割 10 用語の定義 本指針において使用する用語の定義は以下のとおりとします 乳幼児期 生後から小学校に入る前まで 幼児期 概ね3 歳から小学校に入る前 幼児教

幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続の在り方について ( 報告 ) ( 概要 ) 子どもの発達や学びの連続性を踏まえた幼児期の教育 ( 幼稚園 保育所 認定こども園における教育 ) と児童期の教育 ( 小学校における教育 ) の円滑な接続の在り方について検討し 以下のとおり 報告をとりまとめた 1

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3 平成 29 年 3 月に幼稚園教育要領 保育所保育指針 幼保連携型認定こども園教育 保育要領が改訂され 来年度から全面実施されます 新幼稚園教育要領等では 改訂の基本的な方針として 1) 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 の明確化 健康な心と体 自立心 協同性 道徳性 規範意識の芽生え 社会生


第3部 次世代育成支援対策(前期行動計画) 第3章 子どもの心身の健やかな成長に資する教育環境の整備

を生かした環境を構成することも求められます 3 安全で保健的な環境次に 施設などの環境整備を通して 保育所の保健的環境や安全の確保などに努めること としています 子どもの健康と安全を守ることは保育所の基本的かつ重大な責任です 全職員が常に心を配り 確認を怠らず 子どもが安心 安全に過ごせる保育の環境

Microsoft Word - ★資料集1~5.docx

公立保育所 石岡市みなみ保育所 設置者石岡市電話番号 石岡市月岡 1375 番地 2 号計 99 名 (3 歳 :31 名 4 歳 :34 名 5 歳 :34 名 ) 3 号 計 41 名 ( 0 歳 3ヵ月 ~:9 名 1 歳 :14 名 2 歳 :18 名 ) 標準時間

(2) 施設の状況 幼稚園施設は 昭和 50 年前後に建築され 築 30 年以上が経過しています ( 表 2) ( 表 2) 公立幼稚園施設一覧 施設名称 竣工年月 構造 階数 酒匂幼稚園 昭和 48 年 2 月 鉄筋コンクリート造 ( 一部鉄骨造 ) 地上 2 階 東富水幼稚園 昭和 46 年 3

PowerPoint プレゼンテーション

平成29年度 小学校教育課程講習会 総合的な学習の時間

はじめに P1 Ⅰ 豊後大野市幼児教育の現状と課題 P2~3 1 幼児数の変遷... P2 2 幼児教育の現状... P2~3 3 幼児教育の課題... P3 Ⅱ 豊後大野市幼児教育の基本方針 P4~7 1 豊後大野市幼児教育の基本... P4 2 豊後大野市幼児教育のねらい... P5 (1) 育

札幌市教育振興基本計画第3章

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2 教育及び保育の 標 Q17 認定こども園法第 9 条に規定する6つの教育及び保育の目標の達成に努めるとともに これらが満 3 歳未満の園児の保育にも当てはまることを理解している Q18 第 2 教育及び保育の内容に関する全体的な計画の作成 教育及び保育の内容に関する全体的な計画は 教育及び保育を

Microsoft Word 教育課程の編成

地域子育て支援拠点事業について

彦根市立城陽幼稚園 幼稚園の特色 本園は 荒神山を間近に仰ぎ 琵琶湖岸まで広がる田畑や犬上川 宇曽川の両河川に囲まれた 自然に恵まれたところに位置し 旧市街地と新興住宅地が点在する地域にあります 平成 3 年 ( 旧 ) 平田幼稚園の一室を借りて開園し 翌年 3 月 日夏町の現在地に移りました 今年

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説明会の内容 1 事業計画について 1 2 認定こども園について 2 3 認定こども園での教育 保育について 3 4 認定こども園の概要 ( 案 ) について 1 施設の所在等 2 施設の規模 3 開園時期 4 主な配置施設 5 5 認定区分 6 保育日及び保育時間 7 利 定員 6 8 認定区分に

Microsoft Word - (パブコメ用)就学前あり方基本方針案.docx

ポイント 1: 幼児教育と小学校教育の特徴や違いを理解する 保幼小の円滑な接続に向けて まずは 幼児教育と小学校教育の特徴や違いを理解することが重要です 幼児教育 幼児期の教育では 幼児の自発的な活動としての 遊び を通して 様々な体験や学びの芽生えを積み重ねることができるよう 保育者が環境を構成し

目次 第 1 章策定の趣旨 1 第 2 章子どもの育ちをめぐる課題 2 第 3 章基本理念と基本目標 4 第 4 章基本方針 6 第 5 章担い手とその役割 9 用語の定義 本指針において使用する用語の定義は以下のとおりとします 乳幼児期 生後から小学校に入る前まで 幼児期 概ね3 歳から小学校に入

多様な関係機関を巻き込んだ 包括的な質向上システムの構築が必要 長野県幼児教育振興基本方針 ( 仮称 ) の策定 幼児教育の質向上推進の中心的機能を担うセンターの立ち上げを視野に入れる センターの機能 ( 想定 ) 〇幼児教育関係課 団体 大学等をつなぐ 既存の枠組みを超え 幼児教育に関わる教育 行

幼児教育概要版案 xbd

幼稚園と小学校の連携の在り方について 学びの連続性 の視点に立って考察する 3 研究内容と考察 (1) 学びの連続性 に立った幼稚園と小学校の連携とは何か中教審の答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について は 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえ 今後の幼児教育の方向性と

幼稚園 保育所ができること 一緒にやりましょう! 幼稚園 保育所は 子ども同士がふれあう以外に 保護者同士が交流できる場でもあります ここでは 各幼稚園 保育所が保護者と連携するとともに 保護者同士のふれあい つながりづくりに向けた取組みを記載しています 1 ( 幼稚園 保育所 ) 幼稚園 保育所と

考え 主体的な学び 対話的な学び 問題意識を持つ 多面的 多角的思考 自分自身との関わりで考える 協働 対話 自らを振り返る 学級経営の充実 議論する 主体的に自分との関わりで考え 自分の感じ方 考え方を 明確にする 多様な感じ方 考え方と出会い 交流し 自分の感じ方 考え方を より明確にする 教師

泉大津

平成 29 年度児童発達支援センターバンビ事業計画 1. 基本方針 児童発達支援センターバンビは相模原市南区の発達障害児の療育を遂行するため 以下の基本理 念 療育基本指針に則りサービスを提供する 1) 基本理念 1 児童一人ひとりに対する丁寧な 根拠 ある療育相模原療育園の医療スタッフとの連携によ

市中学校の状況及び体力向上策 ( 学校数 : 校 生徒数 :13,836 名 ) を とした時の数値 (T 得点 ) をレーダーチャートで表示 [ ] [ ] ハンドボール ハンドボール投げ投げ H29 市中学校 H29 m 走 m 走 表中の 網掛け 数値は 平均と同等または上回っているもの 付き

2017 年度は 過去 年間の経験を踏まえ 以下の 5 項目を事業計画とした 認定子ども園豊中愛光幼稚園 2017 年度事業計画 (1) 豊中愛光幼稚園の質の向上に努める 1. 教育 保育の質の向上を目指して 幼児クラスの保育のあり方を再確認する 特に 幼児クラスの預かり保育時間 (1:00~18:

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Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

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資料4-4 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について 審議のまとめ(参考資料)

Taro-自立活動とは

 

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

平成 30 年度なごや小学校努力点推進計画 1 研究主題なかまとともに感性輝くなごやっ子 (1 年次 ) 2 研究主題について本校では 昨年度までの努力点研究において 道徳や特別活動の時間を中心に 子ども一人一人の成長と互いの認め合いをめざすことで 子ども自らが なごや小でよかった と感じられるよう


かたがみ79PDF用

整整合合 本計画は 第三次宜野湾市総合計画 ( 案 ) に則するものとして位置づけられます また 第 2 次宜野湾市男女共同参画計画 や他の関連する計画との整合性をもったものとして定めています 一方 本計画には母子の健康確保を盛り込むことが定められていることから 宜野湾市母子保健計画 は本計画に包含

幼児教育とは: 幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改訂を受けて

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学習指導要領改訂の方向性

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(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

第4章 道徳

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人権教育の推進のためのイメージ図

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平成 30 年 4 月 1 日 平成 30 年度 第 70 回 日本連合教育会研究大会 桐生大会 大会主題 分科会研究協議題 等 Ⅰ 大会主題及び大会主題設定の趣旨 Ⅱ 分科会研究協議題 研究協議題設定の理由 研究協議の視点 (1) 第 1 分科会国語 (2) 第 2 分科会 社会 (3) 第 3

1 一日の生活の連続性及びリズムの多様性への配慮 (1) 全体的な計画の作成幼保連携型認定こども園教育保育要領第 1 章総則では 幼保連携型認定こども園の 全体的な計画 の作成について示されています 全体的な計画は 保育所保育指針における保育課程 幼稚園教育要領における教育課程に当たります また 全

履修モデル 1 短期大学士 ( ) 二種免許状 保育士 認定ベビーシッター の区分 資格 単位数保育士 資格必要単位数 保育士 認定ベビーシッター 卒修業科選目択必 個々の学生の得意な分野を伸ばし 魅力のある保育者を育てる 子どもの保健 Ⅰ 1 必修 必修 4 保育原理 1 必修 必修 2 児童家庭

千代田区共育大綱

資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

1 小学校入学前の子どもの学びとは 幼児期の生活のほとんどは 遊びによって占められています 子どもは遊びを中心として 頭も心も体も動かして様々な対象と直接関わりながら 総合的に学んでいます (1) 幼児教育と子どもの学び 幼稚園の遊びの一場面子どもたちがものを転がす遊びに集中しています 子どもたちは

幼稚園教育要領解説

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幼児教育 保育の無償化の実施について 1 子ども 子育て支援新制度の趣旨に沿った無償化の実施を! 子ども 子育て支援新制度 では 一人ひとりの子どもが健やかに成長することができる社会 子どもの最善の利益が実現される社会を目指しています まずこの目指すべき姿に沿った幼児教育 保育の無償化を図るべきです

第1章 計画の目指すもの

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

授業概要と課題 第 1 回 オリエンテェーション 授業内容の説明と予定 指定された幼児さんびか 聖書絵本について事後学習する 第 2 回 宗教教育について 宗教と教育の関係を考える 次回の授業内容を事前学習し 聖書劇で扱う絵本を選択する 第 3 回 キリスト教保育とは 1 キリスト教保育の理念と目的

幼保連携型認定こども園教育・保育要領 中央説明会

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計画の概要 太田市地域福祉計画 太田市地域福祉活動計画とは? 太田市地域福祉計画市民のみなさまからご意見を伺いながら作成した 今後の地域福祉の方向性 将来像を示した太田市の計画です 太田市地域福祉活動計画社会福祉法人太田市社会福祉協議会が策定した 地域の社会福祉を推進するための具体的な活動計画です

基本施策情報活用能力の育成を図ります 幼児教育の推進 にあたっては 幼児期が生涯の人格形成の基礎を培う大切な時期であるとの認識のもと 子どもたちの心身の発達に資する質の高い幼児教育を推進します 2 人との絆や自然との関わりの中で伸びゆく豊かな心の育成 子どもたちが生命を大切にする心や思いやりの心 感

草津市 ( 幼保一体化 ) 集計表 資料 4 幼児教育と保育の一体的提供のための現況調査 ( 施設アンケート ) 速報 平成 25 年 7 月草津市 1

Transcription:

大津市幼児教育 保育共通カリキュラム わくわくのびのびいきいき めざす子どものキーワード 大津市 大津市教育委員会 0

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はじめに ~ カリキュラムの作成にあたって ~ 大津市幼児教育 保育共通カリキュラムは 幼稚園教育要領と保育所保育指針を基本に 就学前の子ども達が過ごす場所が異なっていても 子どもにとっての質の高い教育と保育を保障することを目的に 市立幼稚園 保育園の保育者を中心メンバーとした策定会議により策定されました 今回の学習指導要領等の改訂では 乳幼児期が生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な時期であることを踏まえ 義務教育及びその後の教育の基礎となることを改めて提示され 就学前施設における全体の教育 保育の質を確保することが位置づけられています 大津市では 幼保共通となる基本理念やめざす子ども像を定め 乳児期から小学校への接続期まで発達や学びの連続性を意識し 領域を視点とした カリキュラム を策定しました またカリキュラムの内容がより具体的な実践につながるよう 保育コラム も掲載しました 乳幼児に携わる関係者の皆様に 広く活用いただき 就学前教育 保育のさらなる向上へと結びついていければ幸いです 最後になりましたが 策定にかかわっていただいた保育園 幼稚園の関係者の皆様 そしてご指導いただいた滋賀大学教育学部教授菅眞佐子先生 白石恵理子先生及び准教授田中裕喜先生に心よりお礼申し上げます 1

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目次 1. 幼児教育 保育共通カリキュラム策定の経過 4 (1) 未来ある子どもの瞳が 夢と希望に輝く湖都 大津 (2) 乳幼児期を取り巻く時代の変化 (3) 幼児教育 保育共通カリキュラム の主旨 2. 大津市幼児教育 保育の基本理念 6 3. めざす子ども像 8 4. 幼児教育 保育共通カリキュラム 10 (1) カリキュラムの項目 (2) 保育コラムについて 0 歳児カリキュラム 11 1 歳児カリキュラム 27 2 歳児カリキュラム 39 3 歳児カリキュラム 51 4 歳児カリキュラム 63 5 歳児カリキュラム 77 接続期カリキュラム 91 ( 資料 ) 幼保共通カリキュラム原稿策定上の表記について 掲載している写真については 保護者の同意をいただいています 3

1. 幼児教育 保育共通カリキュラム策定の経過 (1) 未来ある子どもの瞳が 夢と希望に輝く湖都 大津人を結び 時を結び 自然と結ばれる結の湖都大津では 常にそれぞれの時代に合った質の高い幼児教育 保育が営まれてきました 大津市の幼稚園の歴史は古く 日本で初めての幼稚園が誕生したわずか5 年後の 明治 21 年に大津市で最初の幼稚園が誕生しました そして 常に幼児教育の研究 研修を重視し 教員自らが学び続ける中で 遊びを通して学びの芽生えを培う幼児教育を 4 5 歳児に提供しています また 保育園では 0 歳 ~5 歳児の発達を一貫して支え 生活や遊びを通して人間形成をはかる保育を充実させてきました 障害を早期に発見 対応する 大津方式 の理念に基づく障害児保育や 家庭と共に進める保育など 常に子どもにとっての 最善の利益 を保障する視点を大切に保育に取り組んでいます こうして大津市が培ってきた幼児教育 保育の理念は 大津市次世代育成支援後期行動計画 ~ 大津っ子子育て応援プラン~ ~ 未来ある子どもの瞳が 夢と希望に輝く湖都 大津を目指して~ 子どもの幸せを社会全体で支え合い 子どもが健やかに育つ環境づくり の中にも位置づけられてきました (2) 乳幼児期を取り巻く時代の変化今 乳幼児期の子どもを取り巻く社会状況は大きな変革の時を迎えています 核家族化 地域のつながりの希薄化 少子化 女性の社会進出 体験を通して学ぶ機会の少なさ などがすすみ これらの課題を解決する道として平成 24 年に子ども 子育て関連 3 法が成立し 平成 2 7 年 4 月から子ども 子育て支援新制度が施行されました 子ども 子育て支援新制度施行に向かう大きな流れの中で 全国で幼稚園を中心とする幼児期の学校教育と 保育園を中心とする教育と養護を一体的に行う保育の 双方の専門性を生かし合おうとする取り組みが始まりました 本市においても平成 24 年度に 大津市子育て支援スマイルプロジェクト が立ち上げられ 待機児童対策や新制度への対応に向けた取り組みをすすめてきましたが その中で 幼稚園や保育園など子どもが過ごす場所が異なっていても 子どもにとって質の高い教育と保育が保障されるべき という考えのもと 大津市幼児教育 保育共通カリキュラム が策定されることになりました ( 平成 25 年 5 月策定会議設置 ) 4

(3) 幼児教育 保育共通カリキュラムの趣旨大津市の公立幼稚園は 大津市立幼稚園教育課程育ちのフィールドブック 公立保育園では 大津市基準保育課程 に基づき 各園で教育課程を編成して教育 保育を実施していますが 今回策定した共通カリキュラムは 子どもの発達に即し 目指すべき保育のねらいと内容を順序だてて編成したもので 幼稚園 保育園で実施する乳幼児期の教育 保育の基本となるものです つまり 共通カリキュラムは保育の マニュアル ではなく 質の高い保育を実施するための指針となるものです 策定にあたっては 公立の幼稚園 保育園の保育者が集まり 保護者や地域の願いが込められた幼保共通となる 基本理念 と めざす子ども像 にかかわる協議を重ねました そして 実際の保育場面を通しての検討も交え カリキュラムの内容についての協議を進めてきました そして現行の教育課程や保育課程との整合性を図ると共に 将来的には乳児から小学校の接続期までを見通したものとなるように これからも研究と検討を重ねていきます 5

2. 大津市幼児教育 保育の基本理念 子どもがまんなか 未来の市民を育む幼児教育 保育をめざして 大津市幼児教育 保育の基本理念 すべての子どもたちが愛されることを基盤に 心豊かにたくましく生きる力 を育む 乳幼児期にふさわしい生活と遊びを保障します 一人一人のよさと可能性を伸ばします 子どもたちの 夢と志 を育てます 基本理念にこめた願い ~すべての子どもたちが愛されることを基盤に 心豊かにたくましく生きる力 を育む~ 大津市の幼児教育 保育が基本としてきた児童憲章等の 人間尊重 子どもの最善の利益 などの理念や 大津市のすべての乳幼児を対象としていることを示しています 子どもは社会の希望 未来をつくる力 すべての子どもたち を愛すことは 子どもや保護者の幸せにつながるだけでなく 大津市の未来につながります 家庭 教育保育機関 地域など 大津のすべての大人と大人 大人と子どもがつながり 子どもの健やかな育ちを支えることが必要です 心豊かにたくましく生きる力 は 大津市学校園の教育指針 大津市次世代育成支援後期行動計画における共通の理念であり 幼児教育 保育をつなぐ目標です 子どもが今も未来もずっと命を輝かせて生きる そのような力を育むことを示しています 健やかな育ちが保障されることによって 子どもは自ら人や周りの環境にかかわり 遊び 育ち 学びます 愛されることは 生きる力を育む 基盤 です 6

幼稚園 保育園が果たす役割 乳幼児期にふさわしい生活と遊びを保障します 乳幼児期は 生活 と 遊び を通して健やかな育ちや学びを保障することが 重要です 乳幼児期にふさわしい生活と遊び とは 子どもが人とのつながりの中で安心し豊かな気持ちを味わうとともに 子ども同士がかかわりあい育ちあえることが重要です 乳幼児期にふさわしい生活と遊び は 質の高い教育 保育の基本です 一人一人のよさと可能性を伸ばします 大人への安心感や信頼感をもち 友達とのかかわりの中でかけがえのない存在として認められ 自己肯定感をもつことを通して 一人一人の子どもの個性と可能性が発揮されます 一人一人の子どもの生命と人格を大切にし そのよさをさらに高めます 子どもが自分を伸びやかに発揮し 生活や遊びの中でそのよさが輝き 可能性が広がる喜びを重ねること それが将来の育ちや学びの基盤となります 子どもたちの 夢と志 を育てます 夢 とは子どもの願いであり 志 とは願いを実現する意欲であると考えられます 乳幼児期に芽生えた 夢と志 を 小学校 中学校 青年期 大人になるまで育み続けてほしい それが 大津の未来を担う市民 を育む上での根幹となる教育 保育の共通理念です 7

3. めざす子ども像 めざす子ども像 は 保護者や市民 保育者の願いがこめられた健やかな育ちへの願いです 大津のすべての子どもの今と未来が輝く (= 健やかな成長 ) ための基盤となるものです それは 子どもが 今を幸せに 生き 健全な心身の発達 が保障され 学校教育の基礎 を培い 生涯にわたる人格形成 の基盤となる姿です あるきまった型に子どもを当てはめようとするものではなく 成長し続ける姿を表現したものです めざす子ども像 心豊かに人とかかわる子ども わくわくのびのびいきいき 健やかでたくましい子ども 夢中になって遊びよく考える子ども 生きる力 が基本 生きる力 知 徳 体 を基本に 乳幼児期の発達や学びは すべての要素がかかわり合い総合的に育まれるものであることから 三つの要素を重なりあう形で示しています わくわく のびのび いきいき 子どもが命を輝かせて育つ姿 (= めざす子ども像 ) のイメージとして わくわく のびのび いきいき を三つの中心に設定しています めざす子ども像のキャッチフレーズとして 今後保護者や市民と願いを共有していきたいと思います 8

めざす子ども像の三つの要素について 健やかでたくましい子ども 健やかな体 意欲 健やかな体は人の活力の源であり 意欲や気力といった心の充実にも深くかかわっています 乳幼児期は体を使って自分をとりまく環境にかかわり 自分の世界を広げていきます 子ども自身が体を動かすことを楽しいと感じ 自ら体を動かして遊ぶ態度を育てることが 主体的にがんばる気持ち 意欲的に前に踏み出す力の育ち ( 自立 ) につながります 元気で明るく体を動かすことを喜ぶ しなやかでたくましい意欲と行動力をもつ 毎日の生活を安心し 楽しむ 体を通して様々な感覚を味わい 豊かに体験する 安心してすごし 自分の力で生活を進めることを楽しむ 心豊かに人とかかわる子ども 豊かな心 つながり 乳幼児は 安心できる人と 基本的な信頼関係 を築くことが育ちの土台となります 人から愛され 認められ 共に生活する喜びを感じることによって 自我や主体性が芽生えると共に 自分を取り巻く社会への感覚 ( 協働 ) が育まれます 人とのつながりの中で自然や文化に触れ 感動体験を重ねることによって豊かな感性が身につきます 安心できる大好きな人がいて 自分のことを大切にできる ものや人との関わりの中で 伸びやかに自分を表出する 自分から人とかかわり つながり 共に生活する喜びを感じる 生活の中で思いを話したり聞いたり伝え合ったりする 夢中になって遊び よく考える子ども 学びの芽生え 充実 人は生まれながらにして 周りのものごとに自分から働きかけようとする力があります おもしろいと感じ 探索活動ができるような遊びに夢中になることで 知的好奇心や探究心 思考力が養われ その後の育ちや学びの基礎となります やりたいと思ったことを最後までやりきることや 自分で考えて取り組む楽しさを味わうことは 達成感や充実感 自分を発揮する喜び ( 創造 ) を育みます 自らのりだし ためし やってみる 最後までやりきる楽しさを繰り返し味わう 気づき 発見し 感動し 考えるおもしろさに出会う 工夫してつくり出し のびのびと表現することを楽しむ 9

4. 幼児教育 保育共通カリキュラム (1) カリキュラムの項目 期の特徴ねらい経験する内容保育のポイント家庭との連携 その時期に育てたい姿の概要を示しています 子どもの発達過程や経験に応じて その時期に育つことが期待される心情 意欲 態度であり 主に教育的な視点から表しています 養護のねらい 内容は 保育者の援助とかかわりとして 保育のポイント に含めています 養護に関する子どもの育ちは 子どもを主語にした文章に変換し ねらいや内容に含めています ( 主に 健康 人間関係 ) ねらいを達成するため 実際に子どもに経験させたい内容です 健康 人間関係 環境 言葉 表現の 5 領域にわたりますが どの領域も相互にかかわりあって経験するものであるため 枠をはずして表しています なお 4 歳児 Ⅰ~Ⅱ 期については 新入園児と継続児によって経験すべき内容が異なる 場合は 新 継と表記しています 保育者の援助とかかわり 環境構成の基本的な姿勢を記しています 保育は 養護を基盤として教育が成り立つものであり 不可分なものですが 特に養護の観点を重視すべき項目を 教育の観点を重視すべき項目を の行頭文字で表しています 子どもの発達や年間の保育計画 集団生活の中での予想される姿等を踏まえて 家庭との連携をはかる上で参考となる事項です (2) 保育コラムについて カリキュラムの内容の実践例です 乳児期については それぞれの時期にふさわしい生活や遊 びを示す資料も合わせて記載しています 各コラムの上部の枠内には 具体的な保育場面での状況や子どもの姿 5 領域にかかる吹き出しには それぞれの場面の読み取りを吹き出しに表現しています 子どもの理解は多面的に読み取り深めていくことが大切ですので 子どもの実態と保育者の願いに基づいて 保育を振り返るまなざしを豊かにしていくことが必要です このコラムにおける保育のポイント には 保育場面に応じた子どもの姿の読み取りを元に 保育者のかかわりや援助 環境構成を考えていく上での視点をあげています コラムを参考に このような振り返りを生かして保育をつくる営みを 日々積み重ねていくことが大切です 10