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事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

 

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

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☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

審決取消判決の拘束力

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

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主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

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認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特

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平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

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年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

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平成  年(オ)第  号

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平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

(イ係)

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平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

最高裁○○第000100号

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡 平成 29 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 13 日 判 決 原告株式会社コーエーテクモゲームス 訴訟代理人弁護士 佐 藤 安 紘 高 橋 元 弘 吉 羽 真一郎 末 吉 亙 弁理士 鶴 谷 裕 二

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を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

最高裁○○第000100号

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特許庁が無効 号事件について平成 29 年 2 月 28 日にした審決を取り消す 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は, 平成 27 年 5 月 26 日, 発明の名称を 気体溶解装置及び気体溶解方法 とする特許出願をし, 平成 28 年 1 月 8

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

第 1 原告の求めた判決 特許庁が無効 号事件について平成 23 年 12 月 28 日に した審決を取り消す 第 2 事案の概要本件は, 被告の請求に基づき原告の本件特許を無効とした審決の取消訴訟であり, 当裁判所が取り上げる争点は, 実施可能要件及びサポート要件の充足性の

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目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

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1 特許庁における手続の経緯原告は, 名称を 5 角柱体状の首筋周りストレッチ枕 とする発明につき, 平成 20 年 10 月 31 日に特許出願 ( 本願 特願 号, 特開 号, 請求項の数 1) をし, 平成 25 年 6 月 19 日付けで拒絶

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

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平成  年(あ)第  号

11総法不審第120号

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

Microsoft Word - CAFC Update(107)

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第28回 クレームの補正 ☆インド特許法の基礎☆

指定 ( 又は選択 ) 官庁 PCT 出願人の手引 - 国内段階 - 国内編 - ベトナム国家知的所有権庁 (NOIP) 国内段階に入るための要件の概要 3 頁概要 国内段階に入るための期間 PCT 第 22 条 (3) に基づく期間 : 優先日から 31 箇月 PCT 第 39 条 (1)(b)

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

例 2: 組成 Aを有するピアノ線用 Fe 系合金 ピアノ線用 という記載がピアノ線に用いるのに特に適した 高張力を付与するための微細層状組織を有するという意味に解釈される場合がある このような場合は 審査官は 請求項に係る発明を このような組織を有する Fe 系合金 と認定する したがって 組成

インド特許法の基礎(第35回)~審決・判例(1)~

平成25年5月  日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

第26回 知的財産権審判部☆インド特許法の基礎☆

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

訂正情報書籍 170 頁 173 頁中の 特許電子図書館 が, 刊行後の 2015 年 3 月 20 日にサービスを終了し, 特許情報プラットフォーム ( BTmTopPage) へと模様替えされた よって,

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

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freee・マネーフォワード特許訴訟の解説

PCT 出願人の手引 - 国内段階 - 国内編 -SA S A 1 頁 サウジ特許庁 (SPO) ( 指定官庁又は選択官庁 ) 目 次 国内段階 - 概要 国内段階の手続 附属書手数料 附属書 SA.Ⅰ 略語のリスト国内官庁 : サウジ特許庁 (SPO) Law: 特許, 集積回路配置デザイン, 植

平成  年(行ツ)第  号

第1回 基本的な手続きの流れと期限について ☆インド特許法の基礎☆

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( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

2.2.2 外国語特許出願の場合 2.4(2) を参照 2.3 第 184 条の 5 第 1 項に規定された書面 (1) 日本語特許出願 外国語特許出願を問わず 国際特許出願の出願人は 国内書面提出期間 ( 注 ) 内に 出願人 発明者 国際出願番号等の事項を記載した書面 ( 以下この部において 国

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

1 アルゼンチン産業財産権庁 (INPI) への特許審査ハイウェイ試行プログラム (PPH) 申請に 係る要件及び手続 Ⅰ. 背景 上記組織の代表者は

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ことができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している さらに 台湾専利法第 76 条は 特許主務官庁は 無効審判を審理する際 請求によりまたは職権で 期限を指定して次の各号の事項を行うよう特許権者に通知することができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している なお

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

特定個人情報の取扱いの対応について

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

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平成 17 年 ( 行ケ ) 第 10321 号審決取消請求事件平成 17 年 7 月 19 日判決言渡, 平成 17 年 7 月 5 日口頭弁論終結 判決原告株式会社伊予エンジニアリング訴訟代理人弁護士吉武賢次, 宮嶋学, 弁理士安形雄三, 五十嵐貞喜被告超次元空間情報技術株式会社訴訟代理人弁護士上谷清, 宇井正一, 萩尾保繁, 笹本摂, 山口健司, 弁理士角田芳末 主文特許庁が無効 2003-35474 号事件について平成 16 年 7 月 21 日にした審決を取り消す 訴訟費用は被告の負担とする 事実及び理由第 1 原告の求めた裁判主文と同旨の判決 第 2 事案の概要本件は, 特許を無効とする審決の取消しを求める事件であり, 原告は無効とされた特許の特許権者, 被告は無効審判の請求人である 1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は, 発明の名称を 既存データベース機能向上支援ツール とする特許第 3053741 号 ( 平成 7 年 1 月 13 日出願, 平成 12 年 4 月 7 日設定登録 以下 本件特許 といい, その発明を 本件発明 という ) の特許権者である (2) 被告 ( 平成 16 年 6 月 24 日組織変更前の商号 超次元空間情報技術有限会社 ) は, 平成 15 年 11 月 18 日, 本件特許について無効審判の請求をした ( 無効 2003-35474 号事件として係属 ) これに対し, 原告は, 平成 16 年 4 月 30 日, 訂正 ( 以下 本件訂正 という ) を請求し, さらに, 同年 6 月 17 日付け手続補正書により本件訂正請求の内容を補正した (3) 特許庁は, 平成 16 年 7 月 21 日, 特許第 3053741 号の請求項 1 乃至 4 に係る発明についての特許を無効とする との審決をし, 同年 8 月 2 日, その謄本を原告に送達した 2 本件発明の要旨 請求項 1 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形の画像情報を処理対象として, 予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステムにおける既存データベース機能向上支援ツールにおいて, 利用者の文字情報を付加する対象物の領域を前記表示された図形の画像上にて指定する対象物指定手段と, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録する利用者情報登録手段と, 入力された文字情報を検索キーとして前記登録された文字情報群を検索し, 検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での当該対象物の位置を求める画像位置検索手段と, 前記画像位置検索手段により求めた当該対象物の位置が所定位置に配置されるように表示領域を調整して当該対象物を含む図形の画像を表示すると共に, 前記検索された文字情報を前記当該対象物と関連付けて合成して表示する利用者情報表示制御手段とを備えたことを特徴とする既存データベース機能向上支援ツール 請求項 2 前記利用者情報登録手段は, 文字情報を登録する際に, 前記指定された一つの対象物に対して複数の異なる文字情報を対応付けて登録できる共に, 前記指定された複数の対象物に対して同一の文字情報を対応付けて登録できるようになっている請求項 1 に記載の既存データベース機能向上支援ツール 請求項 3 前記文字情報と共に利用者のイメ - ジ情報を当該対象物の関連情報として付加できるようになっている請求項 1 又は 2 に記載の既存データベース機能向上支援ツール

請求項 4 前記コンピュータシステムが, 受信した移動体の位置情報に基づき当該移動体の位置を地図の画像上に表示するシステムである請求項 1 乃至 3 のいずれかに記載の既存データベース機能向上支援ツール 3 審決の理由の要旨審決の理由は, 以下のとおりであるが, 要するに, 本件訂正は認められないとした上, 本件発明は, 明細書及び図面の記載が不備であり, 特許法 36 条 5 項 1 号, 2 号に規定する要件を満たしていない発明であるから, 本件特許は, 特許法 36 条 5 項 1 号,2 号の規定に違反してなされたものであり, 同法 123 条 1 項 4 号に該当し, 無効とすべきである, というものである (1) 訂正の適否についての判断 (1-1) 訂正請求に対する補正の適否について本件訂正請求に対する平成 16 年 6 月 17 日付けの手続補正書による補正は, 訂正請求書の要旨を変更するものでなく, 特許法 134 条 5 項において準用する同法 131 条 2 項の規定に適合する (1-2) 訂正の内容 カ訂正事項 6( 補正前の訂正事項 7) 明瞭でない記載の釈明を目的として, 明細書の段落 0027 8 行 ( 特許第 3 053741 号公報 5 頁左欄 7 行乃至 8 行 ) における テキストファイル TX1 に出力する を テキストファイル TX1 に出力する 文字情報登録手段 32 では, テキストファイル TX1 を入力し, 前述のステップ S15 で説明したように該当の図形情報と文字情報との対応付けを行ない, 同図 (C) に示すように, 文字情報を文字情報記憶部 42 に登録する なお, 利用者により登録指示がされ, 図形情報との対応付けが行われた文字情報 ( 図 10(C) の例では KEYA ~ KE YE ) は, 図 8 に示したように, 該当の図形情報に対応する管理コードと共に文字情報記憶部 42 に登録される と訂正する (1-3) 訂正の目的の適否, 新規事項の有無及び拡張 変更の存否訂正事項 6( 補正前の訂正事項 7) について被請求人は, (4-6) 訂正事項 6 は, 請求項 1 に記載の 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録する利用者情報登録手段 について, 詳細な説明の何処に記載されているのかを明瞭にするため, テキストファイル TX1 に出力する 文字情報登録手段 32 では, テキストファイル TX1 を入力し, 前述のステップ S15 で説明したように該当の図形情報と文字情報との対応付けを行ない, 同図 (C) に示すように, 文字情報を文字情報記憶部 42 に登録する なお, 利用者により登録指示がされ, 図形情報との対応付けが行われた文字情報 ( 図 10(C) の例では KEYA ~ KEYE ) は, 図 8 に示したように, 該当の図形情報に対応する管理コードと共に文字情報記憶部 42 に登録される と訂正するものである と述べているが, この記載からすると, 請求項の発明を特定する事項が, もともと発明の詳細な説明に記載されていなかったことを, 被請求人自身が認めているようなものである もともと, 発明の詳細な説明に記載されていることならば, 詳細な説明の何処に記載されているのかを明示するだけで足りるのであるから, わざわざ訂正を行う必要のないことであり, 明瞭にするために訂正をする必要がないはずである さらに, この記載内容を検討する ステップ S15 には, テキストファイル TX1 を入力して登録することは記載されていない ステップ 15 において, 図 8 の文字情報記憶部 42 に登録されるのは, 次の段落 0019 ~ 0021 の記載から明らかなように, 利用者が登録指示をしたとき, 文字情報記憶部 42 には, 図形情報に対応する管理コードと共に文字情報が登録されているのである 一方, 図 10(C) に示される, 文字情報記憶部 42 に展開されるものは,KE YA,KEYB, KEYE 等の検索キー情報である これは, 利用者が ファイル指定 の検索コマンドを指示し, テキストファイル TX1 のファイル名を入力して検索指示を行なうと, 画像位置検索手段 33 が, テキストファイル TX1 か

ら文字情報群を読み込み, 区分情報で区分された各データを各検索キーと見なし, 同図 (C) に示すように, 検索キーとして文字情報記憶部 42に展開するのである このように, ステップ15では文字情報記憶部 42には, 図形情報に対応する管理コードと共に文字情報が登録され, ファイル指定 による検索において,10 図 (C) には文字情報記憶部 42には検索キーが展開されるのである このように, ステップ15で文字情報記憶部 42に登録された文字情報と, ファイル指定 による検索において10 図 (C) に文字情報記憶部 42に展開される文字情報とは, 異なることは明らかである これを, 文字情報登録手段 32では, テキストファイルTX1を入力し, 前述のステップS15で説明したように該当の図形情報と文字情報との対応付けを行ない, 同図 (C) に示すように, 文字情報を文字情報記憶部 42に登録する と訂正することは, 明らかに誤りであり, 明細書の記載を不明確にするものである したがって, 当該訂正は, 明瞭でない記載の釈明ではないので, 当該訂正は特許法 126 条 1 項で規定する目的に適合していない 以上のとおりであるから, 上記訂正事項 6の訂正は, 特許法 126 条 1 項の規定に適合しないので, 当該訂正は認められない (2) 記載要件の無効理由についての審決の判断 (2-1) 既存データベース機能向上支援ツール とはどのようなものか不明である についてア段落 0007 には, 本発明は上述した事情から成されたものであり, 本発明の目的は, 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形 画像の任意の位置に対して, 既存の各種データベースの情報を関連づけて付加することができる既存データベース機能向上支援ツールを提供することにある さらに, 本発明の他の目的は, 付加した文字情報を検索キーとして図形 画像の当該位置を検索して所望の画像を表示できる既存データベース機能向上支援ツールを提供することにある と記載されているように, 本発明の目的が記載されているだけで, 既存データベース機能向上支援ツール の構成は記載されていない イ 既存データベース機能向上支援 の用語については, 被請求人の述べる, 上記既存データベースの情報を活用して各種の情報処理機能( 情報の対応付け, 検索, 表示等に係る機能 ) の向上を支援すること とは明細書には記載されていない 既存データベース機能向上支援 を文字どおりに理解すると, 既存データベースの機能の向上を支援するの意味にとるのが普通であり, 既存データベースの情報を活用して各種の情報処理機能の向上を支援するとの意味に解することはできない 各種の情報処理機能を向上させる手段 とは, 本件明細書にでてこない言葉である 請求項 1に記載されている, 既存データベース機能向上支援ツール は, 対象物指定手段 と, 利用者情報登録手段 と, 画像位置検索手段 と, 利用者情報表示制御手段 とを備えたことを特徴すると記載されている その内, 利用者情報登録手段 と, 画像位置検索手段 と, 利用者情報表示制御手段 とが, 各種の情報処理機能を向上させる手段 であることは, 明細書のどこにも記載されていない ウ 図 1 に示される 文字情報と画像の合成装置 の破線枠内の部分( 中央処理部 3 内の符号 31~34で示される部分と, 情報記憶部内 4の符号 41~43で示される部分 ) が 既存データベース機能向上支援ツール に相当することは, 明細書には記載されていない 文字情報と画像の合成装置 と, コンピュータシステム との関係が不明であり, 文字情報と画像の合成装置 の一部である破線枠内の部分が 既存データベース機能向上支援ツール に相当するとは認められない エむすび ( ア ) 被請求人は, 意見書の5-3-2の コンピュータシステム の説明において, コンピュータシステム とは, 本件特許発明である既存データベース機能向上支援ツールの適用対象となるコンピュータシステム のことである, 実施例では, 上記のようなコンピュータシステムの主要部のハードウエア構成例が, 図 1 中に 入力装置 1, 表示装置 2, 中央処理部 3, 情報記憶部 4, 画像ファイル5 として例示されている

と述べている ( イ ) ツール の意味について, ツール の意味は, 通常では, 工具, 道具であるが, 本件発明の属する技術分野においては, ソフトウェア, またはソフトウェアの一部のことを指している ( ウ ) 本件発明での 既存データベース機能向上支援ツール の意味について被請求人の コンピュータシステム の説明などを参照すると, 既存データベース機能向上支援ツール は, コンピュータシステムのプログラムの意味に使用しているものと認められるが, 定かではなく, 本件発明では, 既存データベース機能向上支援ツール の意味は明確ではない ( エ ) したがって, 請求項 1 には, 既存データベース機能向上支援ツール を道具の意味として装置の概念と, また, 既存データベース機能向上支援ツール をコンピュータシステムのソフトウェアとした概念との, 異なる概念が一つの請求項に存在することとなるため, 請求項 1 に係る発明を明確に把握することができない ( オ ) 付け加えると, 既存データベース機能向上支援ツール を道具の意味として装置として考えた場合ソフト関連発明では, コンピュータシステムは装置であるから, 入力装置 1, 表示装置 2, 中央処理部 3, 情報記憶部 4, 画像ファイル 5 とから構成されるコンピュータシステムは, 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形 画像の任意の位置に対して, 利用者の各種データベースの情報を関連づけて付加することができるという機能を実現する装置である また, 対象物指定手段と, 利用者情報登録手段と, 画像位置検索手段と, 利用者情報表示制御手段とを備えた 既存データベース機能向上支援ツール も, 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形 画像の任意の位置に対して, 既存の各種データベースの情報を関連づけて付加することができるという機能を実現する装置である すると, コンピュータシステムにおける既存データベース機能向上支援ツール の, コンピュータシステム と 既存データベース機能向上支援ツール は等しいこととなり不明確である ( カ ) さらに, 既存データベース機能向上支援ツール をコンピュータシステムのソフトウェアとしての概念とした場合尚, 本件発明の出願時には, コンピュータ ソフトウエア関連発明において, 請求項の末尾が プログラム の発明は認められていなかったので, たとえ可能であったとしてもの話であるが, 請求項 1 の 既存データベース機能向上支援ツール は, 対象物指定手段と, 利用者情報登録手段と, 画像位置検索手段と, 利用者情報表示制御手段とを備えた既存データベース機能向上支援ツールである しかし, プログラム は, コンピュータを手段として機能させるものではあるが, プログラム そのものが 手段 として機能するものではない したがって, プログラム そのものが機能実現手段を備えていることはあり得ず請求項 1 に係る発明を明確に把握することはできない このように, 請求項 1 の 既存データベース機能向上支援ツール の記載は, 被請求人の説明を見ても依然として不明瞭である したがって, 特許請求の範囲の記載に, 特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されているものとは認められない (2-2) 対象物指定手段 は, 実施例ではどれにあたるのか不明である について被請求人は, 対象物指定手段 とは, キーボードやマウス, ライトペン等の操作手段を有する入力装置 1, あるいは, ドローツール であると述べている 対象物指定手段 については, 出願当初の明細書には記載されておらず, 補正により加えられたものであり, 明細書に説明されていない文言である 請求項 1 に記載されている, 対象物指定手段 は, 利用者の文字情報を付加する対象物の領域を前記表示された図形の画像上にて指定する対象物指定手段 と記載されている 入力装置 1 は, 画像上の所望の位置をその領域を囲む図形を作画して指定する と記載されているので, 対象物指定手段 に相当する

しかし, ドローツール については, ドローツールとは, キャンパス上に図形を配置して画像を作成していくツールであり, 配置した図形は, 移動, 更新, 削除などの操作を行うことができる と記載されており, 利用者の文字情報を付加する対象物の領域を前記表示された図形の画像上にて指定する とは記載されていない したがって, 対象物指定手段 が, ドローツール であるとの, 被請求人の主張は誤りである (2-3) 利用者情報登録手段 は, 実施例ではどれにあたるのか不明である について被請求人は, 利用者情報登録手段 は, 図形情報登録手段 31 と文字情報登録手段 32 が該当し と述べている この点について検討する ア請求項 1 には, 利用者情報登録手段 については, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録する利用者情報登録手段 と記載されている イ発明の詳細な説明からみると, 図形情報登録手段 31 と, 文字情報登録手段 32 とは次のようなものである 図形情報登録手段 31 とは, 利用者が入力装置 1 を用いて, 画像上の所望の位置をその領域を囲む図形を作画して指定し, 作画された図形の作画情報と共に, 画像上の座標値を図形情報として, 情報記憶部 4 内の図形情報記憶部 41 に登録するものである 文字情報登録手段 32 とは, 作画して指定した場所に対し, その場所を管理するための任意の文字情報を, 入力装置 1 から入力し, 文字情報の入力は, 入力装置 1 を介してユーザデータベース DB 等から入力したり, キーボード等から直接入力するものであり, 入力された文字情報を, 情報記憶部 4 内の文字情報記憶部 42 に登録するのものである この利用者が登録した文字情報を検索キーとして, 画像上の対応する位置を検索することができる ウ請求項 1 の記載と, 発明の詳細な説明とを比較してみると, 請求項 1 の 利用者情報登録手段 は, その記載は不明瞭であるが, あえて比較するならば, 文字情報登録手段 32 に相当するかもしれないが, 被請求人が述べているような, 文字情報登録手段 32 と図形情報登録手段 31 との両方には相当しない エ請求項 1 には, 図形の作画情報及び位置情報を図形情報として記憶装置に登録する図形情報登録手段に相当するものが記載されていない オ参考までだが, 出願当初の特許請求の範囲には, 図形情報登録手段が発明の構成要件となっている カしたがって, 請求項 1 には, 特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていると認められない (2-4) 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し とされているが, これはどのようなことなのか不明である について被請求人は, 意見書で, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し とは, 既存データベースから抽出した文字情報群 ( 複数の文字情報 ) を構成要素とするファイルで, 且つ, ファイルの形式がテキスト形式のファイルを入力する という意味である ( 中略 ) 以上のように, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し の事項については, 段落 0013, 段落 001 9, 及び 図 10 に明瞭に記載されている なお, 上記 図 10 ( 本発明における文字情報の登録方法の第 2 の例を説明するための図 ) の説明は, 段落 0027 にも詳述されている と述べている ア図 10 について段落 0027 には, 次に, ファイル指定 による検索手順, すなわち, 複数の文字情報 ( 検索キー情報 ) を指定して当該位置を順次検索する手順を具体例を示して説明する 例えば, 図 10(A) に示すような, データ ( 文字情報群 ) が格納されたユーザデータベース D1 があり, 同図において, それぞれ KEYA ~ KEYE が, 画像位置の関連情報となる文字情報であると仮定する この場合は, 先ず利用者は, データベースで管理しているデータの中から検索キーの部分

KEYA,KEYB,,KEYE だけを抽出し, 例えば同図 (B) に示すように, 改行データを区分情報としてテキストファイル TX1 に出力する と記載されている ここでは, ファイル指定 による検索について記載されているが, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し て登録することについては記載されていない 図 10(C) には, テキストファイル TX1 のファイル名を入力して検索指示を行うとき, テキストファイル TX1 からの文字情報情報が, 各検索キーと見なして, 文字情報記憶部 42 に展開されたものが示されており, 図 8 の文字情報記憶部 42 に示されているような, 管理コードが付与されて登録処理が成されている文字情報群が示されているものではない すなわち, 発明の詳細な説明には, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力して, 管理コードが付与されて登録処理が成されている文字情報群 ( 図 8 の文字情報記憶部 42 に示されているような,) に, どのようにして登録するのかは明示されていない また, 当業者が通常に考えられることとも認められない イ段落 0013 について段落 0013 には, 利用者は, 作画して指定した場所に対し, その場所を管理するための任意の文字情報を入力装置 1 から入力する 入力装置 1 を介してユーザデータベース DB 等から入力された文字情報は, 文字情報登録手段 32 によって情報記憶部 4 内の文字情報記憶部 42 に登録される と記載されている この記載からでは, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて, 図 8 に示されるように当該対象物の登録済みキー情報として登録することが, どのようになされるのか不明であり, ただ, 文字情報が入力装置 1 を介してユーザデータベース DB 等から入力されることが記載されているにすぎない ウ段落 0019 について段落 0015 ~ 0022 には, 本発明に係る文字情報と画像の合成方法をフローチャートを参照として説明しており, 一例として, 関連情報をキーボード等から直接入力する場合が示されている 段落 0019 には, 関連情報が入力され, 利用者により登録指示がされると, 文字情報登録手段 32 では, 該当の図形情報と文字情報との対応付けを行ない, 文字情報を文字情報記憶部 42 に登録する と記載されている しかし, これらの段落には, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し て登録することについては記載されていない エこのように, 発明の詳細な説明には, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し て登録することについては記載されていないと認められる したがって, この記載は, 発明の詳細な説明に記載されたものではない (2-5) 請求項 3 について (1) 前記文字情報と共に利用者のイメ - ジ情報を当該対象物の関連情報として付加できる と記載されているが, 段落 003 3 には 上述した実施例においては, 文字情報を関連情報として付加する場合を例として挙げたが, 任意のマーク等のイメージ情報, 或いは色情報などを関連情報として指定することも可能である また, 背景画像となる図形は任意であって, 地図に限るものでな と記載されているのみである この 共に と記載する根拠は詳細な説明の何処に記載されているのか不明である について被請求人も, 出願時の技術常識を参酌して総合的に解釈すると, 請求項 3 における 前記文字情報と共に利用者のイメージ情報を当該対象物の関連情報として付加できるようになっている の記載は, 発明の詳細な説明の段落 0033 に記載されているのと同然と理解する事項である と自認するように, 前記文字情報と共に利用者のイメージ情報を当該対象物の関連情報として付加できるようになっている の記載は, 発明の詳細な説明には記載されていない ( 出願時の技術常識とはどのようなものかもについては, 被請求人は明示していない ) 被請求人は, 利用者のイメージ情報 とは, 具体的には, 段落 0033 に記載されているように, 任意のマーク等のイメージ情報である と述べている 段落 0025 には, 表示制御手段 34 は, 図形 G1 の領域内を反転表示して該当の場所を明示する ここで, 該当の場所は, 図形 G1 を合成して表示, 或いは領域内を背景画像と異なる色で表示することで明示するようにしても良い ま

た, 文字情報を別ウィンドウでなく, 同一ウィンドウ内に当該の場所と対応付けて表示 ( 引出し線, 矢印, 符号等での対応付けにより表示 ) するようにしても良い と記載されており, 文字情報と共に利用者のイメージ情報を当該対象物に関連情報として付加できる とは何処にも記載されていない また, 段落 0033 には, 文字情報を関連情報として付加する場合を例として挙げたが, 任意のマーク等のイメージ情報, 或いは色情報などを関連情報として指定することも可能である また, 背景画像となる図形は任意であって, 地図に限るものでない と記載されているだけであり, 被請求人が述べるようなことは, すなわち, 段落 0033 中の記載は, 当該対象物に付加できる関連情報としては, 文字情報の他に, イメージ情報, 色情報などがあり, これらの情報を自由に組み合わせたものが, 関連情報として付加できる, という意味である ようなことは, 記載されていない したがって, 請求項 3 の 文字情報と共に利用者のイメージ情報を当該対象物に関連情報として付加できる との記載は, 発明の詳細な説明に記載されたものではない (2-6) 請求項 4 について, 本件発明の詳細な説明には, 受信した移動体の位置情報に基づき当該移動体の位置を地図の画像上に表示するシステムについては, 従来の技術には記載されているが, 実施例として記載されていない これを発明とする根拠はどこにあるのか不明である について被請求人は 実施例 に明示的な記載がなくとも, 本件請求項 4 に記載の事項は, 上記段落 0006, 0007 の記載から自明な事項, すなわち, 当初明細書等に接した当業者であれば, 出願時の技術常識に照らして, その意味であることが明らかであって, その事項が 実施例 に記載されているのと同然と理解する事項である と述べている これについて検討すると, 請求項 4 には 前記コンピュータシステムが, 受信した移動体の位置情報に基づき当該移動体の位置を地図の画像上に表示するシステムである請求項 1 乃至 3 のいずれかに記載の既存データベース機能向上支援ツール と記載されている 発明の詳細な説明では, 従来例において, ナビゲーション システムが記載されているが, 実施例の, コンピュータシステムが, ナビゲーション システムであることは記載されておらず, 実施例には受信した移動体の位置情報に基づき当該移動体の位置を地図の画像上に表示するシステムについては記載されていない ナビゲーション システムが従来例に記載されていたからといって, 実施例 に記載されているのと同然と理解して, 請求項 4 に係る発明とすることはできない (2-7) むすび以上のとおり, 本件発明は, 明細書及び図面の記載が不備であり, 請求項 1 に係る発明は, 特許法 ( 平成 6 年法律第 116 号による改正前のもの, 以下同じ )3 6 条 5 項 1 号,2 号に規定する要件を満たしていない また, 請求項 2 乃至 4 は請求項 1 を引用しているので, 請求項 1 と同様に特許法 36 条 5 項 1 号,2 号に規定する要件を満たしていない (3) 結び以上のとおりであるから, 本件発明は, 特許法 36 条 5 項 1 号,2 号に規定する要件を満たしていない発明であるから, 本件特許は, 特許法 36 条 5 項 1 号,2 号に規定に違反してなされたものであり, 同法 123 条 1 項 4 号に該当し, 無効とすべきものである 第 3 当事者の主張の要点 1 原告主張の審決取消事由審決は, 本件訂正の適否の判断を誤り ( 取消事由 1), 本件発明 1 ないし 4 についての記載不備の判断を誤った ( 取消事由 2 ないし 4) ものであるから, 取り消されるべきである (1) 取消事由 1( 訂正の適否についての判断の誤り ) 審決は, 本件訂正における訂正事項 6( 補正前の訂正事項 7) について, 明らかに誤りであり, 明細書の記載を不明確にするものである したがって, 当該訂正は, 明瞭でない記載の釈明ではないので, 当該訂正は特許法 126 条 1 項で規定する目的に適合していない と認定判断した ア訂正事項 6 は, 請求項 1 の 既存のデータベースから抽出した文字情報群か

ら成るテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録する利用者情報登録手段 が, 詳細な説明のどこに記載されているのかを明瞭にするためのものである そして, 請求項 1 の 利用者情報登録手段 は, 本件明細書 ( 甲 2 の 1) の段落 0012 に説明された図形情報登録手段 31, 段落 0017 ないし 00 22 及び 0027 に説明された図形情報登録手段 31 及び文字情報登録手段 32 を示しており, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し は, 図 10 に関連した段落 0027 及び 002 8 に説明されており, また, 対象物の領域 は, 段落 0016 及び 00 17 に説明されている イしたがって, 訂正事項 6 は, 明細書及び図面に開示されているのであって, 本件発明の分野における当業者であれば容易に理解することができる そして, 本件訂正が認められれば, 本件発明の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載内容は, より一層明確になり, 審決が 本件発明は, 特許法 36 条 5 項 1 号,2 号に規定する要件を満たしていない とする理由は, 全く根拠のないものとなる (2) 取消事由 2( 請求項 1 についての判断の誤り ) ア 既存データベース機能向上支援ツール について審決は, 請求項 1 の 既存データベース機能向上支援ツール の記載は, 被請求人の説明を見ても依然として不明瞭である したがって, 特許請求の範囲の記載に, 特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されているものとは認められない と認定判断した ( ア ) 本件明細書の発明の詳細な説明には, 既存データベース機能向上支援ツール という用語は使用されていないが, 既存データベース機能向上支援ツール とは, 文字どおり, 既存データベースの機能向上を支援するツールを意味し, 本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき, 当業者が抽出することができる すなわち, 本件明細書の段落 0006, 0010 及び 0034 の記載によれば, 本件発明は, コンピュータシステムを利用し, 図形情報又は画像情報と結び付けて利用者が有している各種データ ( 既存データベース ) の機能を向上させるものであることが理解される そして, 請求項 1 の構成要件として, 対象物指定手段, 利用者情報登録手段, 画像位置検索手段及び利用者情報表示制御手段が記載されているところ, 対象物指定手段, 利用者情報登録手段, 画像位置検索手段及び利用者情報表示制御手段はいずれも装置 ( 物 ) の概念であるから, 既存データベース機能向上支援ツール も装置 ( 物 ) である ( なお, 本件発明の出願当時, ツール という用語は, コンピュータ関連発明の分野において一般的に使用されていた ) ( イ ) なお, 審決は, コンピュータシステムにおける既存データベース機能向上支援ツール の, コンピュータシステム と 既存データベース機能向上支援ツール は等しいこととなり不明確である と説示するが, コンピュータシステムにおける既存データベース機能向上支援ツール とは, 審決が説示するように, コンピュータシステムと既存データベース機能向上支援ツールとが等しいことを表現するものではなく, コンピュータシステムの中に既存データベース機能向上支援ツールが存在すること, 又は, コンピュータシステムの下位概念として既存データベース機能向上支援ツールが含まれていることを表現するものである ( ウ ) したがって, 既存データベース機能向上支援ツール の記載は明確であって, 審決の認定判断は誤りである イ 対象物指定手段 について審決は, ドローツール については, 利用者の文字情報を付加する対象物の領域を前記表示された図形の画像上にて指定する とは記載されていない したがって, 対象物指定手段 が, ドローツール であるとの, 被請求人の主張は誤りである と判断した ( ア ) 請求項 1 の 対象物指定手段 は, 本件図面の図 1 に示され, 本件明細書の発明の詳細な説明に記載された入力装置 1 に対応する 請求項 1 の記載によれば, 対象物指定手段 は 利用者の文字情報を付加する対象物の領域を前記表示された図形の画像上にて指定する ものであり, 対象物の領域を図形の画像上にて指定 すること, 領域を囲む図形を作画して指定 することは, 図形を作画するソ

フトウェアとしての ドローツール が作用している ( イ ) したがって, 対象物指定手段 はドローツールではなく, ドローツールの機能を含んだ入力装置 1 に相当するものであり, この点において, 審決の判断は誤りである ウ 利用者情報登録手段 について審決は, 請求項 1 の記載と, 発明の詳細な説明とを比較してみると, 請求項 1 の 利用者情報登録手段 は, その記載は不明瞭であるが, あえて比較するならば, 文字情報登録手段 32 に相当するかもしれないが, 被請求人が述べているような, 文字情報登録手段 32 と図形情報登録手段 31 との両方には相当しない などとした上, 請求項 1 には, 特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていると認められない と認定判断した ( ア ) 請求項 1 には, 利用者情報登録手段 について, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録するもの と記載され, この記載によれば, 利用者情報登録手段 は, 文字情報を登録するだけなく, 各対象物の領域, すなわち, 図形と文字情報とを対応付けることが要件になっている そして, 本件明細書の発明の詳細な説明には, 利用者情報登録手段 という用語は使用されていないが, 文字情報登録手段 32 及び図形情報登録手段 31 は, いずれも利用者が登録時に使用し, 文字情報群と対象物の領域との対応をとりながら登録する手段であるから, 利用者情報登録手段 は, 文字情報登録手段 3 2 及び図形情報登録手段 31 を指しているということができる ( イ ) したがって, 請求項 1 には, 文字情報登録手段 32 及び図形情報登録手段 3 1 の機能を有する手段としての利用者情報登録手段が記載されているから, 審決の認定判断は誤りである エ 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し について審決は, 発明の詳細な説明には, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し て登録することについては記載されていないと認められる したがって, この記載は, 発明の詳細な説明に記載されたものではない と認定判断した ( ア ) 本件明細書の図面の簡単な説明には, 図 10 本発明における文字情報の登録方法の第 2 の例を説明するための図である と記載されているから, 図 1 0 は, 本来, 文字情報の登録方法の説明に使用されるべきものである ところが, 図 10 を引用する段落 0027 には, ファイル指定による検索についての記載があるのみで, ファイル指定による文字情報登録についての記載が省略されており, その説明が不明瞭なものになっている ( イ ) しかし, 段落 0027 は, ファイル指定 による検索についての記載がされており, 図 10(A) には, 文字情報群が格納されたユーザデータベース D 1 の例が示され, 図 10(B) には, 改行データを区分情報としたテキストファイル TX1 が示され, 図 10(C) には, テキストファイル TX1 のファイル名を入力して検索指示を行うときに, テキストファイル TX1 から読み込んだ文字情報を, 各検索キーと見なして文字情報記憶部 42 に展開したものが示されている また, 段落 0028 には, テキストファイルから文字情報記憶部 42 に作成した, 検索する画像上の位置を表わす文字情報群を 検索キー情報 と呼び, 作画した図形に対して付加した文字情報群, すなわち, 図 8 に示したように, 管理コードが付与されて登録処理が成されている文字情報群を 登録済みキー情報 と呼ぶ と記載されているところ, テキストファイルから文字情報記憶部 42 に作成した は, 検索する画像上の位置を表わす文字情報群 と 作画した図形に対して付加した文字情報群 とにかかる そうすると, 本件明細書の発明の詳細な説明には, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し て登録することについて記載されていると解することができる ( ウ ) したがって, 本件明細書の発明の詳細な説明には, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し て登録することについて記載されているから, 審決の認定判断は誤りである

(3) 取消事由 3( 請求項 3 についての判断の誤り ) 審決は, 請求項 3 の 文字情報と共に利用者のイメージ情報を当該対象物に関連情報として付加できる との記載は, 発明の詳細な説明に記載されたものではない と判断した ア請求項 3 の 文字情報と共に利用者のイメージ情報を当該対象物に関連情報として付加できる とは, その技術内容からして, 文字情報と一緒に利用者のイメージ情報を当該対象物に関連情報として付加できる, 又は, 文字情報及び利用者のイメージ情報を当該対象物に関連情報として付加できる との意味であり, 文字情報と利用者のイメージ情報の両方を当該対象物に関連情報として付加できるということである イ本件明細書の段落 0033 には, 上述した実施例においては, 文字情報を関連情報として付加する場合を例として挙げたが, 任意のマーク等のイメージ情報, 或いは色情報などを関連情報として指定することも可能である と記載されている この記載を, 文字情報と共に任意のマーク等のイメージ情報, 或いは色情報などを関連情報とし指定することも可能である と解釈するならば, 請求項 3 の内容は, 段落 0033 に記載されていることになる また, この記載を, 文字情報に代えて, 任意のマーク等のイメージ情報, 或いは色情報などを関連情報として指定することも可能である と解釈するとしても, 段落 0021 には 一つの図形情報に対して複数の文字情報 ( 検索キー ) を指定しても良く, 図形情報と文字情報との対応は任意に指定して登録することができる と記載されているから, 発明の詳細な説明には, 関連情報として指定した 文字情報 + 文字情報 など複数の文字情報に代えて, イメージ情報を指定すること, すなわち, 文字情報 + イメージ情報 など,1 以上の文字情報と 1 以上のイメージ情報とを組合せたものを対象物の関連情報として指定することができることが明確に記載されているということができる ウしたがって, 請求項 3 の 文字情報と共に利用者のイメージ情報を当該対象物に関連情報として付加できる との記載は, 発明の詳細な説明に記載されているから, 審決の判断は誤りである (4) 取消事由 4( 請求項 4 についての判断の誤り ) 審決は, ナビゲーション システムが従来例に記載されていたからといって, 実施例 に記載されているのと同然と理解して, 請求項 4 に係る発明とすることはできない と判断した ア本件明細書の発明の詳細な説明には, 従来の技術 の項に, 地図情報システムである GIS,FM, ナビゲーション システムの問題点がそれぞれ挙げられ, 発明が解決しようとする課題 の項に, その解決を図るのが本件発明であることが記載されている そして, 従来技術の課題を解決するための発明の具体的な構成が 実施例 に記載されている イしたがって, 請求項 4 に記載の発明は, 発明の詳細な説明に記載されているから, 審決の判断は誤りである 2 被告の反論 (1) 取消事由 1( 訂正の適否についての判断の誤り ) に対して原告は, 本件訂正における訂正事項 6( 補正前の訂正事項 7) についての審決の認定判断に対し, 何ら具体的に答えていないのであって, 審決の認定判断に誤りはない (2) 取消事由 2( 請求項 1 についての判断の誤り ) に対してア 既存データベース機能向上支援ツール について ( ア ) 本件明細書の段落 0006 は本件発明の課題を記載した部分であり, 段落 0007 は本件発明の目的を記載した部分であり, 段落 0010 は本件発明の作用を記載した部分であり, 段落 0034 は本件発明の効果を記載した部分であるが, これらの各段落の記載をみても, 本件発明が, コンピュータシステムを利用して, 図形情報又は画像情報と結び付けて利用者が有している各種データ ( 既存データベース ) の機能を向上させるものであると理解することは困難である また, 対象物指定手段, 利用者情報登録手段, 画像位置検索手段及び利用者情報表示制御手段は, 請求項 1 に記載された手段でしかなく, これらの手段が発明の

詳細な説明の実施例及び図面に記載されたどの具体的手段に対応しているのか極めて不明瞭である ( イ ) 原告は, 平成 11 年 11 月 9 日付けの手続補正書において, 既存データベース機能向上支援ツール という言葉を付加したが, 実施例の記載を含む発明の詳細な説明の記載については, 特段の変更をしていないから, 既存データベース機能向上支援ツール が実施例のどの構成部分を具体的に表わすかについて, 当業者といえども明確に把握することができない イ 対象物指定手段 について請求項 1 の 対象物指定手段 が発明の詳細な説明に記載された実施例の入力装置 1 に対応することは争うものではない しかし, 本件明細書の段落 0011 には, ドローツールとは, キャンパス上に図形を配置して画像を作成していくツールであり, 配置した図形は, 移動, 更新, 削除などの操作を行なうことができる ドローツールで操作ができる原因として, 一つ一つの図形がその種類と配置位置を情報として持っていることが挙げられる と記載されているが, 請求項 1 において, 対象物指定手段 を修飾ないしは限定する記載である 利用者の文字情報を付加する対象物の領域を前記表示された図形の画像上にて指定する という記載とは対応していないから, 対象物指定手段 がドローツールの機能を含むかどうかについては, 本件明細書の記載では明確でない ウ 利用者情報登録手段 について請求項 1 の記載から明らかなように, 利用者情報登録手段 は, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録する 手段である これに対し, 本件発明の実施例 ( 図 1) の 図形情報登録手段 31 は, 段落 0017 の記載から明らかなように, 作画された図形 G1 の作画情報と共に, 画像上の座標値を図形情報として図形情報記憶部 41 に記憶する 手段であり, それ以外のものではない 利用者情報登録手段 は, 上記のとおり, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録する 手段であるから, 文字情報登録手段 32 に相当するかもしれないが, これが 図形情報登録手段 31 に相当するとは考えられない エ 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し について請求項 1 は, ファイル入力により登録することが記載されているが, 発明の詳細な説明には, 直接入力により登録することについての記載はあるものの, ファイル入力により登録することについての記載はない 図面の簡単な説明には, 図 10 本発明における文字情報の登録方法の第 2 の例を説明するための図である と, あたかもファイル入力による登録の方法を記載しているかのようであるが, 図 10 は, ファイル指定による検索について記載するのみで, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し て登録することについて記載していない また, 本件明細書の段落 0013 及び 0019 のいずれも, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し て登録することについて記載していない なお, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し て登録することは, 当初の明細書 ( 甲 2 の 3) には記載がなく, 後の補正により付加された部分である したがって, この箇所の補正は新規事項の追加にも相当し, 審決では直接の争点になっていないが, その意味において, 無効理由を含んでいる (3) 取消事由 3( 請求項 3 についての判断の誤り ) に対して 文字情報と共に の 共に の意味は, いっしょに あるいは 同時に と解すべきところ, 段落 0033 の記載からは, 文字情報を付加する代わりに, 任意のイメージ情報, 或いは色情報を関連情報として指定することもできる と読むことはできるが, 文字情報といっしょに あるいは 文字情報と同時に イメージ情報を付加するものであると読むことは到底できない

(4) 取消事由 4( 請求項 4 についての判断の誤り ) に対して従来例と実施例はその記載の趣旨, 目的が全く異なり, 一方の記載をもって他方の記載に代えることはできないから, 従来例 ( 発明の解決課題 0006, 0 007 ) に記載されている事項をもって, 実施例に記載されているのと同然であると理解することはできない 段落 0010 の作用の欄には, 文字情報と画像の合成装置及び文字情報が合成された画像の位置を検索する方法 について記載するのみであり, ナビゲーション システムに関連した技術はどこにも開示されていない また, 実施例の記載にも, ナビゲーション システムについての課題を解決するための具体的な構成の記載はない 第 4 当裁判所の判断 1 取消事由 1( 訂正の適否についての判断の誤り ) について (1) 平成 16 年 6 月 17 日付け手続補正書 ( 甲 6 の 8) には, 請求の原因として, 訂正事項 6 について, 請求項 1 に記載の 既存のデータベースから抽出した文字情報群からなるテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録する利用者情報登録手段 について, 詳細な説明の何処に記載されているのかを明瞭にするため, 訂正するものである と記載されている (2) 訂正事項 6 の内容は, 上記第 2 の 3(1-2) カのとおり, 段落 0027 の末尾に文言を付加するものであるが, 段落 0027 には 次に, ファイル指定 による検索手順, すなわち, 複数の文字情報 ( 検索キー情報 ) を指定して当該位置を順次検索する手順を具体例を示して説明する 例えば, 図 10(A) に示すような, データ ( 文字情報群 ) が格納されたユーザデータベース D1 があり, 同図において, それぞれ "KEYA"~"KEYE" が, 画像位置の関連情報となる文字情報であると仮定する この場合は, 先ず利用者は, データベースで管理しているデータの中から検索キーの部分 KEYA,KEYB,,KEYE だけを抽出し, 例えば同図 (B) に示すように, 改行データを区分情報としてテキストファイル T X1 に出力する と記載され, また, 段落 0028 には, 利用者は, ファイル指定 の検索コマンドを指示し, テキストファイル TX1 のファイル名を入力 ( 或いは既に登録されているファイル名を一覧表の中から選択 ) して検索指示を行なう ファイル名が入力されると, 画像位置検索手段 33 では, テキストファイル TX1 から文字情報群を読み込み, 区分情報で区分された各データを各検索キーと見なし, 同図 (C) に示すように, 文字情報記憶部 42 に展開する ここで, 上記のようにテキストファイルから文字情報記憶部 42 に作成した, 検索する画像上の位置を表わす文字情報群を 検索キー情報 と呼び, 作画した図形に対して付加した文字情報群, すなわち, 図 8 に示したように, 管理コードが付与されて登録処理が成されている文字情報群を 登録済みキー情報 と呼ぶ と記載されている ところで, 請求項 1 の テキスト形式のファイルを入力し との事項は, 文字情報の登録についての記載であるところ, これについての説明を加えようとする段落 0027 及びこれに続く段落 0028 は, 検索についての説明箇所であるから, 一見すると, 訂正事項 6 は矛盾するといえなくもない (3) しかし, 段落 0028 には, 利用者は, ファイル指定 の検索コマンドを指示し, テキストファイル TX1 のファイル名を入力 ( 或いは既に登録されているファイル名を一覧表の中から選択 ) して検索指示を行なう と記載されており, ファイル指定の検索は, 検索コマンドの指示に続くファイル名の入力 ( あるいは選択 ) により開始されるから, 段落 0027 の 例えば, 図 10(A) に示すような, データ ( 文字情報群 ) が格納されたユーザデータベース D1 があり, 同図において, それぞれ "KEYA"~"KEYE" が, 画像位置の関連情報となる文字情報であると仮定する この場合は, 先ず利用者は, データベースで管理しているデータの中から検索キーの部分 KEYA,KEYB,,KEYE だけを抽出し, 例えば同図 (B) に示すように, 改行データを区分情報としてテキストファイル TX1 に出力する ことは, 段落 0028 の検索コマンドの指示よりも前に行われるものであり, かつ, 必ずしも, 検索コマンドの指示と一連の操作である

必要はないと解される そして, 本件明細書の図面の簡単な説明には, 図 10 本発明における文字情報の登録方法の第 2 の例を説明するための図である と記載されており, 図 1 0 に示される方法が文字情報の登録に用いられることが明記されている そうすると, 段落 0027 に記載される, ユーザデータベース D1 から検索キーとなる文字情報を抽出してテキストファイル TX1 に出力することを, 検索のみに用いられるものではないと解したとしても, 矛盾はない (4) そうであれば, 上記 (1) のように, 請求項 1 に記載の 既存のデータベースから抽出した文字情報群からなるテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録する利用者情報登録手段 について, 詳細な説明の何処に記載されているのかを明瞭にするため 訂正する との訂正事項 6 の趣旨は理解できるものである (5) したがって, 訂正事項 6 は, 明瞭でない記載の釈明であるということができるから, 審決の判断は誤りであるから, 取消事由 1 は, 理由がある 他に本件訂正が不適法なものであることについての主張立証はないので, 以下には, 本件訂正が適法なものであることを前提にして, 審判において通知し, 審決が支持した下記の無効理由の当否について判断する 記 1. 請求項 1 について (1) 既存データベース機能向上支援ツール とはどのような物なのか不明である (2) コンピュータシステム とはどのようなシステムなのか不明である また, コンピュータシステム と 既存データベース機能向上支援ツール との関係はどのようになっているのか (3) 対象物指定手段 は, 実施例ではどれにあたるのか不明である (4) 利用者情報登録手段 について (a) 利用者情報登録手段 は, 実施例ではどれにあたるのか不明である (b) 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し とされているが, これはどのようなことなのか不明である また, 利用者情報登録手段において, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力 することは詳細な説明の何処に記載されているのか不明である (c) 対象物の領域 とは何をさしているのか不明である (5) 画像位置検索手段 について (a) 画像位置検索手段 は, 実施例ではどれにあたるのか不明である (b) 前記対象物の領域情報 とはどのような情報なのか不明である (6) 利用者情報表示制御手段 について (a) 利用者情報表示制御手段 は, 実施例ではどれにあたるのか不明である (b) 前記検索された文字情報を前記当該対象物と関連付けて合成して表示する とはどのようなことなのか不明である 段落 0025 には, 図形 G1 を合成して表示することは記載されているが, 文字情報については, 同一ウィンドウ内に当該の場所と対応付けて表示 ( 引出し線, 矢印, 符号等での対応付けにより表示 ) するようにしても良いと記載されているだけである 2. 請求項 3 について (1) 前記文字情報と共に利用者のイメ - ジ情報を当該対象物の関連情報として付加できる と記載されているが, 段落 0033 には 上述した実施例においては, 文字情報を関連情報として付加する場合を例として挙げたが, 任意のマーク等のイメージ情報, 或いは色情報などを関連情報として指定することも可能である また, 背景画像となる図形は任意であって, 地図に限るものでな と記載されているのみである この 共に と記載する根拠は詳細な説明の何処に記載されているのか不明である (2) 利用者のイメージ情報 とはどのような情報なのか不明である 3. 請求項 4 について

本件発明の詳細な説明には, 受信した移動体の位置情報に基づき当該移動体の位置を地図の画像上に表示するシステムについては, 従来の技術には記載されているが, 実施例として記載されていない これを発明とする根拠はどこにあるのか不明である 2 取消事由 2( 請求項 1 についての判断の誤り ) について (1) 既存データベース機能向上支援ツール についてア本件明細書の発明の詳細な説明には, 本発明は上述した事情から成されたものであり, 本発明の目的は, 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形 画像の任意の位置に対して, 既存の各種データベースの情報を関連づけて付加することができる既存データベース機能向上支援ツールを提供することにある さらに, 本発明の他の目的は, 付加した文字情報を検索キーとして図形 画像の当該位置を検索して所望の画像を表示できる既存データベース機能向上支援ツールを提供することにある 課題を解決するための手段 本発明は, 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形の画像情報を処理対象として, 予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステムにおける既存データベース機能向上支援ツールに関するものであり, 本発明の上記目的は, 利用者の文字情報を付加する対象物の領域を前記表示された図形の画像上にて指定する対象物指定手段と, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録する利用者情報登録手段と, 入力された文字情報を検索キーとして前記登録された文字情報群を検索し, 検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での当該対象物の位置を求める画像位置検索手段と, 前記画像位置検索手段により求めた当該対象物の位置が所定位置に配置されるように表示領域を調整して当該対象物を含む図形の画像を表示すると共に, 前記検索された文字情報を前記当該対象物と関連付けて合成して表示する利用者情報表示制御手段とを備えることによって達成される ( 段落 0007, 0008 ) と記載されている イ以上の記載によれば, 本件発明の 既存データベース機能向上支援ツール とは, 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形, 画像の任意の位置に対して, 既存の各種データベースの情報を関連づけて付加するものであり, 対象物指定手段 と 利用者情報登録手段 と 画像位置検索手段 と 利用者情報表示制御手段 とを備えることにより構成されるものであると認められる そして, この構成は, 請求項 1 の記載からみても明らかである ウ審決は, 既存データベース機能向上支援ツール の構成は記載されていない, 既存データベース機能向上支援ツール の意味は明確でない と判断するが, 上記イに判示したところに照らせば, 審決の判断は, 根拠がないものといわざるを得ない なお, 審決は, 請求項 1 には, 既存データベース機能向上支援ツール を道具の意味として装置の概念と, また, 既存データベース機能向上支援ツール をコンピュータシステムのソフトウェアとした概念との, 異なる概念が一つの請求項に存在することとなるから明確に把握することができないとしたが, 本件発明が上記のとおり把握できる以上, その判断も根拠がない (2) コンピュータシステム についてア本件明細書の発明の詳細な説明には, 本発明は, 地図及び図面などの画像情報を提供するコンピュータシステムにおいて, 既存の各種データベースの情報を関連づけて付加することができる既存データベース機能向上支援ツールに関し, 特に, 既存データベース機能向上支援ツールに関する ( 段落 000 1 ), 従来の地図情報システム,FM, ナビゲーション システムなどの情報検索システムにおいては, 図形 画像に関連する属性情報や検索キーは予め設定されており, 利用者が持っている情報を利用することができなかった ( 000 6 ), 本発明は, 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形の画像情報を処理対象として, 予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステムにおける既存データベース機能向上支援ツールに関するものであり, ( 0008 ) と記載されている

イ以上の記載によれば, 本件発明の コンピュータシステム とは, 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形の画像情報を処理対象として, 予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示するものであると認められるところ, このことは, 請求項 1 の記載からみても明らかである そして, 本件発明の 既存データベース機能向上支援ツール は, 上記 (1) イのとおり, コンピュータシステム が表示する図形, 画像の位置に対して, 既存の各種データベースの情報を関連づけて付加するものであるということができる (3) 対象物指定手段 について審決は, 入力装置 1 が 対象物指定手段 に相当すると自ら認定しているから, 実施例における 対象物指定手段 は, 明確である (4) 利用者情報登録手段 についてア実施例における 利用者情報登録手段 について ( ア ) 請求項 1 の 利用者情報登録手段 は, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し, 各文字情報を各対象物の領域と対応付けて当該対象物の検索キーとして登録するもの と記載されており, 文字情報を登録するだけではなく, 各対象物の領域と文字情報とを対応付けることが要件になっている 本件明細書の発明の詳細な説明には, 利用者情報登録手段 という用語そのものは記載されていないが, 文字情報登録手段 32 及び図形情報登録手段 31 は, いずれも利用者が登録時に使用するものであり, 文字情報群と対象物の領域との対応をとりながら登録する手段であるから, 実施例における 利用者情報登録手段 が文字情報登録手段 32 及び図形情報登録手段 31 を指していることは明らかである ( イ ) 審決は, 図形情報登録手段について, 図形情報登録手段 31 とは, 利用者が入力装置 1 を用いて, 画像上の所望の位置をその領域を囲む図形を作画して指定し, 作画された図形の作画情報と共に, 画像上の座標値を図形情報として, 情報記憶部 4 内の図形情報記憶部 41 に登録するものである と認定した そのうち, 利用者が入力装置 1 を用いて, 画像上の所望の位置を指定 することは 対象物指定手段 の機能であり, また, 画像上の座標値を図形情報として 登録することは 各対象物の領域と対応付けて 登録する 利用者情報登録手段 の機能として表わされている そして, その領域を囲む図形を作画して 作画された図形の作画情報 を登録することや 情報記憶部 4 内の図形情報記憶部 41 に登録することは必ずしも要しないというべきである ( ウ ) そうであれば, 請求項 1 には, 文字情報登録手段 32 及び図形情報登録手段 31( の一部 ) の機能を有する手段としての利用者情報登録手段が記載されているから, 特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていない, とする審決の認定は誤りである イ 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し について ( ア ) 文字情報の登録について, 本件明細書の発明の詳細な説明には, 本発明は上述した事情から成されたものであり, 本発明の目的は, 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形 画像の任意の位置に対して, 既存の各種データベースの情報を関連づけて付加することができる既存データベース機能向上支援ツールを提供することにある さらに, 本発明の他の目的は, 付加した文字情報を検索キーとして図形 画像の当該位置を検索して所望の画像を表示できる既存データベース機能向上支援ツールを提供することにある ( 段落 0007 ), 利用者は, 作画して指定した場所に対し, その場所を管理するための任意の文字情報を入力装置 1 から入力する 入力装置 1 を介してユーザーデータベース DB 等から入力された文字情報は, 文字情報登録手段 32 によって情報記憶部 4 内の文字情報記憶部 42 に登録される ( 段落 0013 ), 続いて, 利用者は, 該当の場所 P1 に関連する文字情報の登録指示を行なう 図 7 は, 関連情報をキーボード等から直接入力する場合の登録画面の一例を示しており, 登録したい関連情報 (= 検索キー情報 : 本発明では, 当該文字情報が該当の場所 P1 の検索キーとなる ) を, 表示部 2a 内のテキストボックス Wa の中に入力する ( 段落 001 8 ) と記載されており, また, 図面の簡単な説明には, 図 7 本発明における文字情報の登録方法の第 1 の例を説明するための図である, 図 10 本

発明における文字情報の登録方法の第 2 の例を説明するための図である と記載され, 本件図面の 図 10 (A) には, データベース D1 が, 図 10 (B) には, テキストファイル TX1 が, 図 10 (C) には, 文字情報記憶部 42 と管理テーブル 43 との関連が示されている 以上の記載によれば, 本件発明の目的が, 既存の各種データベースの情報を関連付けて付加することにあり, その具体例の第 1 の例として, 図 7 に示される キーボード等から直接入力する例 があり, 第 2 の例として, 図 10 に示されるテキストファイル化して入力する例があると認められる ( イ ) ところで, 第 1 の例については, 段落 0018, 0019 に詳細に説明されているが, 第 2 の例については, 説明がない しかし, 段落 0027 に図 10 の説明があるところ, 上記 1(3) のとおり, 段落 0027 に記載される, ユーザデータベース D1 から検索キーとなる文字情報を抽出してテキストファイル TX1 に出力することを, 検索のみに用いられるものではないと解することができるのである ( ウ ) そうであれば, 本件明細書に, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し て登録することが記載されていないとはいえないのであって, 審決の判断には誤りがある ( エ ) なお, 被告は, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力 することは, 当初の明細書に記載がなく, 新規事項の追加であるから, 無効理由を含んでいると主張する しかし, 出願当初の明細書 ( の図面の簡単な説明 ) 及び図面 ( 甲 2 の 3) の記載によれば, 文字情報の登録に際して, 既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力 することが当初明細書及び図面に記載されていたと認めることができるから, 被告の上記主張は, その前提を欠くものである ウ 対象物の領域 について請求項 1 には, 利用者の文字情報を付加する対象物の領域を前記表示された図形の画像上にて指定する対象物指定手段 と記載されており, また, 本件明細書の発明の詳細な説明には, この図形 画像は, 表示装置 2 に表示され, 利用者は, キーボードやマウス, ライトペン等の操作手段を有する入力装置 1 を用いて, 画像上の所望の位置をその領域を囲む図形を作画して指定する ( 0012 ), 表示された画像上の該当の場所 P1 を, その領域を囲む図形 G1 を作画して指定する ( 0016 ) と記載されている 以上の記載によれば, 本件発明の 対象物の領域 とは,(3) のとおり, 対象物指定手段に相当する入力装置 1 により指定して, 利用者の文字情報を付加するするものであり, 具体的には, 本件図面の図 4 の P1 を指すものであると認められる (5) 画像位置検索手段 についてア実施例における 画像位置検索手段 について請求項 1 には, 入力された文字情報を検索キーとして前記登録された文字情報群を検索し, 検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記図形の画像上での当該対象物の位置を求める画像位置検索手段 と記載され, また, 本件明細書の発明の詳細な説明には, 利用者が登録した文字情報を検索キーとして, 画像上の対応する位置を検索することができるようになっており, 検索指示がされると, 中央処理部 3 内の画像位置検索手段 33 によって当該文字情報に対応して登録されている図形情報が検索され, 図形情報に基づき画像上での当該位置が算出される ( 0014 ), 検索ボタンが指示されると, 画像位置検索手段 33 では, 文字情報記憶部 42 に登録されている検索キーを検索し, 登録されていれば, 管理テーブル 43 を参照して対応する図形情報を図形情報記憶部 41 から読み込む ( 0024 ) と記載されている 以上の記載によれば, 実施例における 画像位置検索手段 33 が上記請求項 1 記載の構成に係る画像位置検索手段に当たることは, 明らかである イ 前記対象物の領域情報 についてアによれば, 前記対象物の領域情報 は, 利用者が登録した文字情報に対応して登録されている図形情報であると認められる (6) 利用者情報表示制御手段 について請求項 1 には, 前記画像位置検索手段により求めた当該対象物の位置が所定位置に配置されるように表示領域を調整して当該対象物を含む図形の画像を表示する

と共に, 前記検索された文字情報を前記当該対象物と関連付けて合成して表示する利用者情報表示制御手段 と記載され, また, 本件明細書の発明の詳細な説明には, 中央処理部 3 内の表示制御手段 34 によって, 当該位置を含む画像が表示装置に表示される ( 0014 ), 表示制御手段 34 では, 図 9(B) に示すように, 当該位置 P1 が表示画面上の所定の位置 ( 例えば表示部 2a 内の表示ウインドウの中央部 ) に配置されるように, 表示領域を調整して地図の画像を表示する また, 文字情報を別ウィンドウでなく, 同一ウィンドウ内に当該の場所と対応付けて表示 ( 引出し線, 矢印, 符号等での対応付けにより表示 ) するようにしても良い ( 0025 ) と記載されている 以上の記載によれば, 実施例における 利用者情報表示制御手段 34 が, 上記請求項 1 記載の構成に係る利用者情報表示制御手段に当たることは, 明らかである (7) したがって, 請求項 1 において, 無効理由があることは認められないから, 取消事由 2 は, 理由がある 3 取消事由 3( 請求項 3 についての判断の誤り ) について (1) 文字情報と共に利用者のイメージ情報を当該対象物に関連情報として付加できる について請求項 3 の 文字情報と共に利用者のイメージ情報を当該対象物に関連情報として付加できる との記載は, 当該対象物に対して, 文字情報とイメージ情報とを共に登録できることを意味するものである ところで, 本件明細書の発明の詳細な説明の なお, 上述した実施例においては, 文字情報を関連情報として付加する場合を例として挙げたが, 任意のマーク等のイメージ情報, 或いは色情報などを関連情報として指定することも可能である また, 背景画像となる図形は任意であって, 地図に限るものでない ( 段落 0033 ) との記載は, 上記のように, 文字情報とイメージ情報を共に登録できることを前提にした記載であるというべきであり, 少なくとも, 文字情報に合わせてイメージ情報を付加できることを排除するものではないから, そこの記載からは, イメージ情報が付加されるときに文字情報が排除されるとまで読むことはできない (2) 利用者のイメージ情報 について本件明細書の発明の詳細な説明には, なお, 上述した実施例においては, 文字情報を関連情報として付加する場合を例として挙げたが, 任意のマーク等のイメージ情報, 或いは色情報などを関連情報として指定することも可能である また, 背景画像となる図形は任意であって, 地図に限るものでない ( 段落 003 3 ) と記載されており, この記載によれば, 請求項 3 の 利用者のイメージ情報 は, 任意のマーク等を指すと認められる (3) したがって, 請求項 3 には, 審決が判断した無効理由はなく, 取消事由 3 は, 理由がある 4 取消事由 4( 請求項 4 についての判断の誤り ) について (1) 本件明細書には, 本件発明が解決しようとする課題 従来の地図情報システム,FM, ナビゲーション システムなどの情報検索システムにおいては, 図形 画像に関連する属性情報や検索キーは予め設定されており, 利用者が持っている情報を利用することができなかった ( 段落 0006 ), 本発明の目的は, 地図, 設計図, 各種構造物の構造図などの図形 画像の任意の位置に対して, 既存の各種データベースの情報を関連付けて付加することができる既存データベース機能向上支援ツールを提供することにある ( 段落 0007 ) と記載されている これらに記載によれば, 請求項 1 の 地図, 設計図, 各種構造物などの図形の画像情報を処理対象として, 予め記憶された前記画像情報のデータベースに基づいて前記図形の任意の部分の画像を表示する機能を有するコンピュータシステム には, ナビゲーション システムも含まれると解されるところ, 請求項 4 は, コンピュータシステムについて, 受信した移動体の位置情報に基づき当該移動体の位置を地図の画像上に表示するシステム, すなわち, ナビゲーション システムに限定したものであるから, 請求項 4 に係る発明は, 発明の詳細な説明に記載されたも

のであるということができる (2) 被告は, 段落 0010 の作用の欄に, ナビゲーション システムに関連した技術は開示されていないし, 実施例の記載にも, ナビゲーション システムについての課題を解決するための具体的な構成の記載はないと主張する しかし, 上記 (1) のとおり, 請求項 4 に係る発明は, 発明の詳細な説明に記載されたものであって, 本件発明の 既存データベース機能向上支援ツール をナビゲーション システムに適用するについて, 何ら阻害要因はなく, また, ナビゲーション システムにおける課題は, 本件発明と何ら関係しない (3) したがって, 審決の判断は誤りであるから, 取消事由 4 は, 理由がある 第 5 結論以上のとおりであって, 原告主張の審決取消事由はいずれも理由があるから, 審決は取り消されるべきである 知的財産高等裁判所第 4 部 裁判長裁判官 塩月秀平 裁判官 田中昌利 裁判官 髙野輝久