争点は,1 引用例 2 記載事項の発明該当性の判断の遺脱の有無,2 同発明該当性の判断の誤り及び3 本願発明の進歩性判断の誤りの有無である 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 24 年 5 月 2 日, 名称を 放射能除染装置及び放射能除染方法 とする発明につき, 特許出願 ( 特願 201

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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

1 特許庁における手続の経緯原告は, 名称を 5 角柱体状の首筋周りストレッチ枕 とする発明につき, 平成 20 年 10 月 31 日に特許出願 ( 本願 特願 号, 特開 号, 請求項の数 1) をし, 平成 25 年 6 月 19 日付けで拒絶

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

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にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

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O-27567

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡 平成 29 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 13 日 判 決 原告株式会社コーエーテクモゲームス 訴訟代理人弁護士 佐 藤 安 紘 高 橋 元 弘 吉 羽 真一郎 末 吉 亙 弁理士 鶴 谷 裕 二

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

平成  年(オ)第  号

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

(イ係)

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

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最高裁○○第000100号

最高裁○○第000100号

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31 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 1 原告の求めた裁判 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録を無効とした審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 10 号該当性 ( 引用商標の周知性の有無 ) である 1 特許庁における手続の経

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

例 2: 組成 Aを有するピアノ線用 Fe 系合金 ピアノ線用 という記載がピアノ線に用いるのに特に適した 高張力を付与するための微細層状組織を有するという意味に解釈される場合がある このような場合は 審査官は 請求項に係る発明を このような組織を有する Fe 系合金 と認定する したがって 組成

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被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

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原告は, 平成 26 年 12 月 9 日, 指定役務を第 35 類 市場調査又は分析, 助産師のあっせん, 助産師のための求人情報の提供, 第 41 類 セミナーの企画 運営又は開催, 電子出版物の提供, 図書及び記録の供覧, 図書の貸与, 書籍の制作, 教育 文化 娯楽 スポーツ用ビデオの制作

第 1 原告の求めた判決 特許庁が無効 号事件について平成 23 年 12 月 28 日に した審決を取り消す 第 2 事案の概要本件は, 被告の請求に基づき原告の本件特許を無効とした審決の取消訴訟であり, 当裁判所が取り上げる争点は, 実施可能要件及びサポート要件の充足性の

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同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

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を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

下 本件特許 という ) の特許権者である 被告は, 平成 23 年 11 月 1 日, 特許庁に対し, 本件特許を無効にすることを求めて審判の請求をした 特許庁は, 上記請求を無効 号事件として審理をした結果, 平成 25 年 9 月 3 日, 特許第 号の

し, 譲渡し, 貸し渡し, 輸入し, 又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない 2 被告は, 被告製品を廃棄せよ 3 被告は, 原告に対し,1 億円及びこれに対する平成 27 年 8 月 25 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 発明の名称を 分散組

( 平成 12 年 )9 月 11 日に国際出願をし, 平成 21 年 3 月 12 日付け手続補正書により補正をした ( 以下 本件補正 という 本件補正後の発明の名称 1,1- ビス (4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの製造方法 ) が, 同年 8 月 18 日付け

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

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政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

平成25年5月  日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成 25 年 12 月 17 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 10 月 17 日 判 決 原告エイトマイハートイン コーポレイテッド 訴訟代理人弁護士 五十嵐 敦 出 田 真樹子 弁理士 稲 葉 良 幸 石 田 昌 彦 右

事件概要 1 対象物 : ノンアルコールのビールテイスト飲料 近年 需要急拡大 1 近年の健康志向の高まり 年の飲酒運転への罰則強化を含む道路交通法改正 2 当事者ビール業界の 1 位と 3 位との特許事件 ( 原告 特許権者 ) サントリーホールディングス株式会社 ( 大阪市北区堂島

年 1 月 9 日に第 40 類 布地 被服又は毛皮の加工処理 ( 乾燥処理を含む ), 裁縫, ししゅう, 木材の加工, 竹 木皮 とう つる その他の植物性基礎材料の加工 ( 食物原材料の加工を除く ), 食料品の加工, 廃棄物の再生, 印刷 を指定役務 ( 以下 本件指定役務 という ) とし

(Microsoft Word \224\255\225\\\201yMSH\201z \224\273\214\210\201i\217\244\225W\201j.doc)

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ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

原判決は, 控訴人ら及び C の請求をいずれも棄却したので, 控訴人らがこれを不服として控訴した 2 本件における前提事実, 関係法令の定め, 争点及びこれに対する当事者の主張は, 後記 3 のとおり, 原判決を補正し, 後記 4 のとおり, 当審における当事者の主張 を付加するほかは, 原判決 事

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

インド特許法の基礎(第35回)~審決・判例(1)~

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指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 22 年 3 月 11 日, 被告が特許権者であり, 発明の名称を 麦芽発酵飲料 とする本件特許第 号 ( 平成 20 年 6 月 11 日出願, 平成 1 6 年 12 月 10 日 ( 優先権主張平成 15 年 12 月 11 日, 平

ことができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している さらに 台湾専利法第 76 条は 特許主務官庁は 無効審判を審理する際 請求によりまたは職権で 期限を指定して次の各号の事項を行うよう特許権者に通知することができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している なお

特許庁が無効 号事件について平成 29 年 2 月 28 日にした審決を取り消す 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は, 平成 27 年 5 月 26 日, 発明の名称を 気体溶解装置及び気体溶解方法 とする特許出願をし, 平成 28 年 1 月 8

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次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

平成 25 年 4 月 24 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 3 月 11 日 判 決 原 告 X 訴訟代理人弁理士 松 下 昌 弘 被 告 特 許 庁 長 官 指定代理人 井 出 英一郎 同 水 莖 弥 同 堀 内 仁 子

平成 24 年 12 月 28 日付け拒絶理由通知平成 25 年 1 月 21 日付け手続補正書 意見書の提出平成 25 年 10 月 30 日付け拒絶理由通知平成 25 年 11 月 19 日付け手続補正書 意見書の提出平成 26 年 4 月 16 日付け拒絶理由通知平成 26 年 5 月 9 日

なって審査の諸側面の検討や評価が行われ 関係者による面接が開始されることも ある ベトナム知的財産法に 特許審査官と出願人またはその特許代理人 ( 弁理士 ) の間で行われる面接を直接定めた条文は存在しない しかしながら 審査官は 対象となる発明の性質を理解し 保護の対象を特定するために面接を設定す

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

号 以下 本願 という ) をしたが, 平成 23 年 10 月 26 日付けで拒絶査定を受けたので, 平成 24 年 1 月 31 日, これに対する不服の審判を請求するとともに, 手続補正書を提出した ( 以下 本件補正 という ) 特許庁は, この審判を, 不服 号事件とし

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

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1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

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平成 26 年 5 月 7 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ケ ) 第 10268 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 26 年 4 月 23 日 判 決 原告 X 訴訟代理人弁理士中村和男 被 告 特 許 庁 長 官 指 定 代 理 人 土 屋 知 久 神 悦 彦 瀬 良 聡 機 堀 内 仁 子 主 文 原告の請求を棄却する 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 原告の求めた判決特許庁が不服 2013-5254 号事件について平成 25 年 8 月 19 日にした審決を取り消す 第 2 事案の概要 本件は, 特許出願拒絶査定不服審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である - 1 -

争点は,1 引用例 2 記載事項の発明該当性の判断の遺脱の有無,2 同発明該当性の判断の誤り及び3 本願発明の進歩性判断の誤りの有無である 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 24 年 5 月 2 日, 名称を 放射能除染装置及び放射能除染方法 とする発明につき, 特許出願 ( 特願 2012-105192 号, 甲 3) をし, 同年 7 月 23 日に発明の名称を 放射能除染装置 とするとともに特許請求の範囲を変更する等の手続補正をしたが ( 甲 4), 同年 12 月 14 日付けで拒絶査定を受けたので, 平成 25 年 3 月 19 日, これに対する不服審判請求をした ( 不服 2013-525 4 号 ) 特許庁は, 同年 8 月 19 日, 本件審判の請求は, 成り立たない との審決をし, その謄本は同年 9 月 4 日, 原告に送達された 2 本願発明の要旨平成 24 年 7 月 23 日付け手続補正書 ( 甲 4) の特許請求の範囲の請求項 1に記載された本願発明の要旨は, 以下のとおりである 請求項 1 水素ガスを供給する水素供給手段と, 原料水に前記水素ガスを溶解させ, 常温常圧下における溶存水素量 1.2~1. 6ppmの水素分子が溶け込んだ水素水を製造する水素水製造手段と, 製造した水素水を水流にして散布する散布手段と, を備えることを特徴とする放射能除染装置 3 審決の理由の要点 (1) 引用発明 1について引用例 1( 特開 2008-26023 号公報, 甲 1) には, 以下の引用発明 1が記載されている - 2 -

自走可能な洗浄液処理車両(11) と, 仮設可能な除染テント (12) とを有し, この洗浄液処理車両に水タンク (13) と洗浄液処理装置 (14) が搭載される一方, 除染テント内に除染装置 (15) が配置され, 洗浄液処理装置と除染装置が洗浄液供給ホース (16) 及び洗浄液回収ホース (17) により連結されて構成されており, この除染装置は, シャワー室 (21) を有しており, このシャワー室内の上部に, 被災者に洗浄液処理装置により製造された洗浄液を噴射するシャワー (22) が設けられ, 洗浄液処理装置は, 洗浄液を製造する洗浄液製造装置 (24) を有しており, 洗浄液製造装置は洗浄液供給ホース及び洗浄液供給ポンプ (16a) により除染装置のシャワーに連結された, 移動式除染装置 (2) 進歩性についてア本願発明と引用発明 1との一致点及び相違点 一致点 洗浄液を製造する洗浄液製造手段と, 製造した洗浄液を水流にして散布する散布手段と, を備える放射能除染装置 相違点 本願発明では, 洗浄液が 常温常圧下における溶存水素量 1.2~1.6ppm の水素分子が溶け込んだ水素水 であって, 洗浄液製造手段が 水素ガスを供給する水素供給手段 で 原料水に前記水素ガスを溶解させ水素水を製造する水素水製造手段 であるのに対して, 引用発明 1は, そのような構成を有さない点 イ相違点に関する審決の判断引用例 2( 臆病者の empathy!, 土壌除染 除去系 吸着系実証データ, [online],2011 年 10 月 26 日,[ 平成 24 年 5 月 15 日検索 ], インターネット - 3 -

<http://ameblo.jp/umaerworld/entry-11059965057.html> : 甲 2) には, 除染用の洗浄液として水素水を用いること ( 以下 引用発明 2 という ) が記載されている 引用発明 1に引用発明 2を適用し, 引用発明 1の洗浄液として水素水を用いることに, 格別の技術的困難性も阻害要因もない また, 原料水に水素ガスを供給して溶解させることにより水素水を製造することは, よく知られた周知技術である 同様に, 水素水として常温常圧下における溶存水素量 1.2~1.6ppmの水素分が溶け込んだものは広く知られた周知のものである そして, 常温常圧下における溶存水素量 1.6ppmの水素分子が溶け込んだものが飽和濃度であることは, 当業者の技術常識であり, 除染機能を高めるためになるべく高濃度の水素水を用いようとすることは, 当業者であれば当然試みるであろうから, 水素水として高濃度のものを用い, 上記相違点に係る構成を採用することは, 当業者が容易になし得る事項である そして, 本願発明の効果は, 実際の水素水を除染に用いることによって得られる効果であるから, 引用発明 1 及び実際の水素水を用いて実施した引用発明 2 並びに周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない 以上のとおり, 本願発明は, 引用発明 1 及び2 並びに周知技術に基づいて, 当業者が容易に発明をすることができたものであるから, 特許法 29 条 2 項の規定により特許を受けることができない 第 3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由 1( 引用例 2 記載事項の発明該当性の判断の遺脱 ) 原告は, 審判合議体による拒絶理由通知書 ( 甲 5) に対し, 意見書 ( 甲 6) において, 引用例 2 記載事項は, 特許法 29 条 1 項 3 号が規定する 電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明 に該当しないので, 引用例 2は引用適格を有さない旨の主張をした ところが, 審決は, 引用例 2 記載事項の発明該当性について - 4 -

認否することなく, 引用例 2 記載事項を 引用 2 発明 と称して, 引用例 2 記載事項が発明であることを前提として進歩性を判断しており, かつ, 引用例 2 記載事項が発明であると判断した理由についても示していない したがって, 審決は, 引用適格性の判断を遺脱し, 審決の理由を記載しなければならないとする特許法 157 条 2 項 4 号の規定に反し, 違法として取消しを免れない 2 取消事由 2( 引用例 2 記載事項の発明該当性の判断の誤り ) (1) 一般に, 発明は, 技術的思想の創作であって, 所定の目的のために, 所定の構成を採用することによって所定の効果を奏するものと解され, 特許法 29 条 1 項 3 号に規定する 発明 においても, 所定の効果を奏するものでなければならない ところが, 引用例 2には, 水素水による除染は従来の水道水による除染よりも除染効果が劣ることが記載されている すなわち, 引用例 2には, 検体土壌に水素水 500mlを注ぎ, 屋外日陰に10 日間安置したのち, 布で検体の水分を抜き, 土壌のみを採取したものと, 比較対照として, 土壌に水道水 500mlを入れた検体を用意し, 水分を自然蒸発させ,10 日後, 布で検体を濾して, 土壌のみを採取したもの ( 基準 ( 標準 ) 土壌 A) について, 放射性セシウムCs-134 及びCs- 137について放射能 ( ベクレル (Bq)) を測定した結果, [ 水素水 ] Cs-134:618Bq,Cs-137:768Bq, 合計 :1386Bq [ 水道水 ] Cs-134:589Bq,Cs-137:750Bq, 合計 :1339Bq であったことが記載されている これは, 水素水は水道水よりも放射能の除染効果が劣ることを意味し, 実際に引用例 2にも 除去など全くされてない! とコメントされている - 5 -

そうすると, 引用例 2に記載されている水素水による除染は, 従来の水道水による除染よりも除染効果が劣るのであるから, 全く効果を奏するものではなく, 引用例 2 記載事項は発明に該当しない なお, 審決は, 引用例 2には, 除染の条件や方法によっては, 更なる効果が期待できることが示唆されており, 当業者であれば, 引用発明 2を改良すべくその実施を試みることは, 当然想定し得ることであるとする しかし, この 放射性セシウムが20% ほど減ること は水道水を水素水にすることによる効果ではなく, 水道水又は水素水によって除染することによる効果であって, 従来の技術であっても奏する効果であるから, 引用例 2に記載されている 水素水による除染は従来の水道水による除染よりも除染効果が劣ること を否定するものではない (2) 本願発明が属する放射能除染の技術分野は, その構成からは効果の予測が困難な技術分野であり, このような技術分野においては, その構成を提示しただけでは特許法 2 条 1 項が規定する技術的思想, すなわち, 発明とはいえず, その構成を採用したことによる所期の効果を併せて提示することによって初めて技術的思想といい得ると解される また, 引用発明は, いわゆる未完成発明であってはならず, 目的とする所期の効果を上げることができない発明は, 未完成発明であり引用適格はないと解すべきである 本願発明が属する放射能除染の技術分野は, その構成からは効果の予測が困難な技術分野であり, 除染に用いる溶液に溶解させる物質には何万 何億と候補となる選択肢があり得る中で, 実際に除染効果がある選択肢を見出すことが発明者に課せられた課題であるから, 単に選択肢を示しただけで, その選択肢が所期の効果を上げることを確認できていない場合は, その提示情報は技術的に何ら価値がないものであり, 未完成発明というべきものであって, 引用適格はない 3 取消事由 3( 相違点についての容易想到性の判断の誤り ) 引用例 2 には, 水素水による除染は, 従来の水道水による除染よりも除染効果が - 6 -

劣ることが記載されており, 引用発明 2を引用発明 1に適用すると, 従来の水道水による除染よりも除染効果が劣ってしまい, 発明の目的に反する方向に変更することになるから, その組合せには阻害要因があり, 当業者が容易に想到することができたものではない 審決は, 引用例 2に 放射性セシウムが20% ほど減ること が記載されているために, 阻害要因はないと認定しているが, 上記 2で述べたとおり, これは水道水を水素水にすることによる効果ではないので, 引用例 2に記載されている 水素水による除染は従来の水道水による除染よりも除染効果が劣ること を否定するものではない 仮に, 阻害要因という表現が適切でないとしても, 発明の目的に貢献しない組合せは, 引用発明の組合せに動機があるとはいえず, いずれにせよ, 本願発明は引用発明 1から容易に想起できたものとはいえない 第 4 被告の反論 1 取消事由 1に対し後記 2のとおり, 引用例 2に記載された事項は技術的思想として明確に理解できるものであり, 審決には, 引用例 2には 除染用の洗浄液として水素水を用いること ( 以下 引用 2 発明 という ) (5 頁 26 行 ~27 行 ) と明記されており, このことは, 引用例 2に 除染用の洗浄液として水素水を用いること という発明が記載されていると認定していることに他ならない したがって, 審決が発明該当性について認否していないという原告の主張は理由がない 2 取消事由 2 に対し 特許法でいう 発明 とは, 自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度の もの ( 特許法 2 条 1 項 ) である - 7 -

したがって, 原告の主張する 発明該当性 及び本件の拒絶理由となった特許法 29 条 2 項の 前項各号に掲げる発明 も, この規定に基づくべきものである そして, 引用例 2には, 除染用の洗浄液として水素水を用いること が記載されており, これは, その構成からみて明らかに 自然法則を利用した技術的思想の創作 であるから, 発明 であることは自明である 3 取消事由 3に対し (1) 原告は, 引用例 2の効果に関する記載を根拠に引用発明 1に引用発明 2を適用することに阻害要因がある旨主張するが, 以下のとおり, 理由のないものである 引用例 2の 汚染水をろ過すると, 放射性セシウムが20% ほど減ることはみてとれます との記載及びグラフから見た標準土壌 Bと3 水素水との対比によれば, 水素水が他の選択肢と同等に一定の放射性セシウムを減少させると客観的に見られる このことを考慮すれば, 引用例 1において水に除染剤を添加して汚染物質を除染する洗浄液が製造されることが記載され, 汚染水のろ過工程が後工程として存在しているのであるから ( 段落 0021, 0022 参照), 当業者であれば, 引用発明 1の放射性物質等の除染装置に用いる洗浄液として, 引用例 2において, 放射性物質の除染系の選択肢として挙がっている水素水を試みてみることに何ら困難性はないといえる 溶存水素量については,1.2~1.6ppm 程度のものも本件出願前に販売されており ( 乙 2), 常温常圧下における飽和濃度が1.6ppmである状況で, 水素水の効果を目的とする以上できるだけ高濃度に設定する方が望ましいことは当然である したがって, 引用発明 1に引用発明 2を適用することに阻害要因があるとする原告の主張には, 理由がない (2) 原告は, 引用例 2には 水素水による除染は従来の水道水による除染より - 8 -

も除染効果が劣ること が記載されていることを前提として阻害要因があると主張するが, 引用例 2には, そのような記載はない 原告が取り上げる 除去など全くされていない との記載は, ドライヤーを使って水分を蒸発させただけの例 ( 汚染水のろ過が行われない例 ) との比較で, 汚染水のろ過がされればいずれも20% 程度低下することを前提として, 除去系 ( 除染系 ) の媒体として創生水,EM 菌, 水素水のいずれを用いても, 水道水の場合と効果の差がないことを述べたものである したがって, 引用例 2には 水素水による除染は従来の水道水による除染よりも除染効果が劣ること が記載されていることを前提とした原告の主張は, 失当である 第 5 当裁判所の判断 1 本願発明について本願明細書 ( 甲 3,4) によれば, 本願発明につき, 以下のことが認められる 本願発明は, 放射能除染装置に関するものである ( 段落 0001 ) 放射性物質による汚染の除去は, 除染と呼ばれ, 一般の汚染除去と区別される 除染の原則は, 放射性物質を土壌, 水, 大気中に拡散させないで, 可能な限り汚染場所から剥ぎ取ることである ( 段落 0002 ) 除染作業をする際には, 放射能による内部被曝, 外部被曝を極力防止しなければならない ( 段落 0003 ) 従来, 放射性物質を除染する場合には, ブラシやウエスなどで拭き取る, いわゆるスクラビング方式や, 高圧水ジェット除染, 又は高圧水の代わりに何らかのブラスト材を吹き付けるブラスト除染などが多く行われている ( 段落 0005 ) また, 放射性汚染物を, 有機酸として, リンゴ酸, クエン酸, ギ酸, シュウ酸, グリセリン酸, 酒石酸及びグリコール酸の一種又は二種以上を総量で0.4~50% を含み, 溶剤が水である, 放射性汚染物の除染液に浸漬し, かつ, 水流洗浄する放射性汚染物の除染方法 ( 段落 0006 ) や, 除染用水をノズルから噴出させて放射能汚染物を除染する際, 水流に超音波波動を付与することによって放射性物質の - 9 -

除去効果を高める超音波流水式放射能除染装置 ( 段落 0007 ) も開示されているが, これらは, いずれにしても, 水により放射能除染を行っている ( 段落 00 09 ) 本願発明の目的は, 放射能除染効率に優れた放射能除染装置を提供することにあり, 水素水は, 高い還元性を有することから, 金属の酸化や食品類の腐敗を抑制する効果があるとされ, また, 飲用へ転用した場合には様々な健康障害の改善を期待できるとして注目されており, 本発明者は, 水素ガスを高濃度に溶存させた水素水を, 放射能除染の洗浄液として用いると, 除染効率が非常に高まることを見出した ( 段落 0010 ) 本願発明は, 前記の本願発明の構成を採ったことにより, 放射能除染効率に優れた放射能除染装置を提供することができ, その結果, 放射能除染作業の効率化を図ることができるという効果を奏するものである ( 段落 0013 ) 2 引用発明 1について引用例 1( 甲 1) によれば, 引用発明 1などにつき, 以下のことが認められる 引用例 1に記載された特許発明 ( 以下 引用特許発明 という ) は, 放射性物質, 生物剤, 化学剤などによるNBC 災害時に, 被災者や各種設備に対して除染処理を実施するための移動式除染装置に関するものである ( 段落 0001 ) 例えば,NBC( 核 -Nuclear, 生物 -Biological, 化学 -Chemical) 災害が発生した場合, 人や各社の設備が汚染されることから, 被災者や各種機器に付着した汚染物質を直ちに除去する必要がある 一般的には, 除染設備にて, 被災者や各種機器に付着している汚染物質を水や溶剤により除染することが考えられるが, この場合, 被災者が除染設備を有する場所へ行って除染処理を実施しなければならず, 対応に時間がかかってしまうという問題がある ( 段落 0002 ) そこで, 除染設備を緊急的に設営することにより効果的な除染を可能としたものや除染設備を簡単に移動可能とした従来例があるが ( 段落 0003 ), 従来の除 - 10 -

染設備にあっては, 被災者や各種機器を除染剤やエアにより除染することができるものの, この除染処理に使用した処理液には, 除去した放射性物質, 生物剤, 化学剤などの汚染物質が含有されており, この処理液を適正に処理することにより二次災害を防止する必要がある ( 段落 0006 ) 引用特許発明は, このような問題を解決するものであって, 汚染物質を適正に処理して安全性の向上を図った移動式除染装置を提供することを目的とする ( 段落 0 007 ) 引用特許発明は, 走行可能な洗浄液処理車両に洗浄液製造手段と洗浄液再処理手段を搭載するとともに, 洗浄液製造手段により製造された洗浄液により除染対象体から汚染物質を除去する除染手段を設け, 洗浄液製造手段として, 水タンクと, この水タンクの水に除染剤を添加して汚染物質を除染する洗浄液を精製する洗浄液精製手段とを設け, 洗浄液再処理手段として, 除染後の使用済洗浄液から粗粒子を除去する第 1ろ過手段と, 使用済洗浄液に含有される化学剤を分解するとともに生物剤を殺菌する分解殺菌手段と, 使用済洗浄液から汚染微粒子を除去する第 2ろ過手段と, 使用済洗浄液から汚染残渣を除去する第 3ろ過手段と, 使用済洗浄液からイオン物質を除去する第 4ろ過手段とを設けた移動式除染装置である ( 段落 002 1 ) 引用特許発明は, 洗浄液製造手段により水に除染剤を添加して汚染物質を除染する洗浄液を精製し, 除染手段により洗浄液を用いて除染対象体から汚染物質を除去し, 洗浄液再処理手段により使用済洗浄液から粗粒子を除去し, 化学剤を分解するとともに生物剤を殺菌し, 汚染微粒子を除去し, 汚染残渣を除去し, イオン物質を除去する その結果, 除染対象体から放射性物質, 生物剤, 化学剤などの汚染物質を確実に除去するとともに, 使用済洗浄液を適正に処理することで, 洗浄液の再利用が可能となり, 安全性を向上して環境汚染を防止することができ, また, 洗浄液処理車両に洗浄液製造手段と洗浄液再処理手段を搭載することで, 装置のコンパクト化を図ることができるとともに, 除染場所に早期に移動することで早期に除染作 - 11 -

業を実施することができるという効果を奏するものである ( 段落 0022 ) 引用発明 1は, 上記引用特許発明の実施例であり, 自走可能な洗浄液処理車両 (1 1) と, 仮設可能な除染テント (12) とを有し, この洗浄液処理車両に水タンク (13) と洗浄液処理装置 (14) が搭載される一方, 除染テント内に除染装置 (1 5) が配置され, 洗浄液処理装置と除染装置が洗浄液供給ホース (16) 及び洗浄液回収ホース (17) により連結されて構成されており, この除染装置は, シャワー室 (21) を有しており, このシャワー室内の上部に, 被災者に洗浄液処理装置により製造された洗浄液を噴射するシャワー (22) が設けられ, 洗浄液処理装置は, 洗浄液を製造する洗浄液製造装置 (24) を有しており, 洗浄液製造装置は, 洗浄液供給ホース及び洗浄液供給ポンプ (16a) により除染装置のシャワーに連結された, 移動式除染装置である 3 取消事由 2( 引用例 2 記載事項の発明該当性の判断の誤り ) について事案に鑑み, 取消事由 2から検討する (1) 引用例 2の記載事項本願出願前に日本国内において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったブログの内容を示す引用例 2( 甲 2) には, 以下の記載がある 土壌除染 除去系 吸着系実証データ 2011 年 10 月 26 日 21 時 19 分 23 秒テーマ : 原発事故関連土壌の除染が少しずつ進められている, と最近もTVでは報道されるようになりました さて, 除染には 吸着 と 除去 の二つの手法があります ネットでも割りと有名になっているものを実際に専門機関に検体を送ったデータがあったので, 張っておきます * 放射性セシウムについてのデータです - 12 -

メモ アイテムと方法 除染系 創生水 EM 菌 水素水 検体土壌に, アイテム500mlを注ぎ, 屋外日陰に10 日安置したのち, 布で検体の水分を抜き, 土壌のみを採取する その下部に, 以下の表 ( 注 : 裁判所において表 1と付した ) が貼られ, さらに 結果 として, 以下の表 ( 注 : 裁判所において表 2と付した ) が貼られている 表 1-13 -

表 2 一回だけでは, 大した量は除染できなかったようです ただ, この結果によって汚染水をろ過すると, 放射性セシウムが20% ほど減ることは見てとれますし吸着系も, 同じ程度は効果が期待できるようです (2) 引用例 2 記載事項の発明該当性について以上のとおり, 引用例 2には, 放射性セシウムによる土壌の除染について記載されており, 具体的には, 創生水, EM 菌, 水素水 500mlをそれぞれの検体土壌に注ぎ, 屋外日陰に10 日間安置した後, 布で検体を濾して残った水分を抜き, 土壌のみを採取して分析したところ, 標準土壌 B( 土壌に水道水 500mlを入れた検体に対して,10 日後, ドライヤーを使って水分を蒸発させ, 土壌を採取したもの ) との比較において, 創生水, EM 菌, 水素水 のいずれを検体土壌 - 14 -

に注いで濾過した場合でも, 放射性セシウムが20% ほど減ることが記載されている 以上の記載によれば, 引用例 2には, 審決が認定したとおり, 除染用の洗浄液として水素水を用いること が記載されていると認められる そして, 除染用の洗浄液として水素水を用いること が, 自然法則を利用した技術的思想の創作 であり, 特許法 2 条 1 項で定義される 発明 に該当するものであることは明らかである したがって, 引用例 2に記載された事項である 除染用の洗浄液として水素水を用いること が, 特許法 29 条 1 項 3 号及び同条 2 項における 発明 に該当するものと認められる (3) 原告の主張について原告は, 特許法 29 条 1 項 3 号に規定する 発明 は, 所定の効果を奏するものでなければならないが, 引用例 2には, 水素水による除染は従来の水道水による除染よりも除染効果が劣ることが記載されており, 全く効果を奏するものではなく, 引用例 2 記載事項は発明に該当しないと主張する しかし, 特許法 29 条 1 項 3 号及び同条 2 項における 発明 は, 同法 2 条 1 項の定義によるものと解されるから, 自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの であれば足り, 課題を解決する方法として, 一定の効果を有するものであれば足り, 従来技術よりも優れた効果を奏するものでなければならないと解する必要はない 上記のとおり, 引用例 2には, 水素水を洗浄液として用いた場合に, 標準土壌 Bとの比較において, 土壌に含まれる放射性セシウムが減少し, 除染の効果を奏することが理解できるのであるから, 水道水による除染よりも効果が劣るとしても, 原告主張のように全く効果を奏しないものではなく, 原告の主張は採用できない また, 原告は, 本願発明が属する放射能除染の技術分野は, その構成からは効果の予測が困難な技術分野であり, このような技術分野においては, 単に選択肢を示しただけで, その選択肢が所期の効果を挙げることを確認できていない場合は, 未 - 15 -

完成発明というべきものであり, 引用適格はないと主張する しかし, 引用例 2には, 除染用の洗浄液として水素水を用いること により, 土壌に含まれる放射性セシウムが減ることが記載されており, 所期の効果を奏するものと認められるから, 未完成発明とはいえない また, 原告の主張する 所期の効果 を 従来技術よりも優れた効果 の意と解した場合であっても, 従来技術よりも優れた効果を奏しないからといって, 未完成発明であるとはいえないことは明らかである (4) 以上によれば, 引用例 2に記載された引用発明 2は, 発明 であり, 引用適格性を欠いていると認めることはできず, 引用発明 2を副引用例として用いた審決の判断に誤りはない なお, 仮に, 引用例 2に記載された事項が発明に該当しないとしても, 引用発明 1が, 特許法 29 条 2 項, 同条 1 項 3 号の 頒布された刊行物に記載された発明 に該当することは明らかであり, この引用例に基づく発明との相違点に係る構成を, 発明以外の事項 ( 例えば, 当事者にとっての周知技術や技術常識 ) から適用することも何ら問題がないのであるから, いずれにせよ, 原告主張の取消事由は理由がない 4 取消事由 1( 引用例 2 記載事項の発明該当性の判断の遺脱 ) について原告は, 審決が, 引用例 2 記載事項の発明該当性についての判断の遺脱があり, かつ, 引用例 2 記載事項が発明であると判断した理由についても示しておらず, 審決の理由を記載しなければならないとする特許法 157 条 2 項 4 号の規定に反し, 違法であると主張する 審決には, 引用例 2には, 除染用の洗浄液として水素水を用いること ( 以下 引用 2 発明 という ) が記載されている (5 頁 ) との記載があり, 引用例 2に記載された事項である 除染用の洗浄液として水素水を用いること が, 引用 2 発明 であることを明示し, 発明 であることを認定しているものと認められる - 16 -

そして, 特許法 29 条 1 項 3 号及び同条 2 項における 発明 は, 同法 2 条 1 項の定義によるものと解されるところ, 除染用の洗浄液として水素水を用いること が, 自然法則を利用した技術的思想の創作 であり, 同項で定義される 発明 に該当するものであって, 同法 29 条 1 項 3 号及び同条 2 項における 発明 に該当するものであることは前記のとおり明らかであり, 審決は, 引用例 2の記載事項から引用発明 2を認定するに当たって, 引用例 2の記載を摘記した上で, そこから抽出できる技術的思想を記載しているものである 審決は, 原告の発明該当性を欠く旨の主張に対し, 明確に反論を説示するものではないため, やや判読しにくい面があるとしても, 当業者が当該記載を見れば, 理解ができる程度に理由を記載したものということができる したがって, 原告の主張には理由がない 5 取消事由 3( 相違点についての容易想到性判断の誤り ) について (1) 引用発明 1は, 前記 2のとおり, 放射性物質を含む汚染物質を除染するための移動式除染装置に関するものであるところ, 除染テント内に配置された除染装置を構成するシャワー室の室内上部に, 被災者に洗浄液を噴射するシャワーが設けられ, 水流により洗浄液を散布する仕組みとなっている 上記洗浄液は, 洗浄液製造装置により製造されるものであるが, 引用例 1には, 洗浄液として,1 所定温度まで加温された加温水だけの洗浄液,2 加温水に対して, 除染剤として中和剤, 分解剤, 殺菌剤, 界面活性剤などを添加した洗浄液,3 電界促進剤を添加して電気分解した酸性電解水からなる洗浄液のいずれかを選択できること ( 段落 0043 ) が記載されている 引用発明 1に係る移動式除染装置では, このような洗浄液を用いることにより, 除染対象としての被災者から放射性物質などの汚染物質を除去するものと解される ( 段落 0040 ) 一方, 引用例 2には, 創生水, EM 菌, 水素水 500mlをそれぞれの検体土壌に注ぎ, 屋外日陰に10 日間安置したのち, 布で検体を濾して残った水分を - 17 -

抜き, 土壌のみを採取して分析したところ, 標準土壌 B( 土壌に水道水 500ml を入れた検体に対して,10 日後, ドライヤーを使って水分を蒸発させ, 土壌を採取したもの ) との比較で, 放射性セシウムが20% ほど減ることが記載されている また, 引用例 2には, 土壌に水道水 500mlを入れた検体に対して, 水分は自然蒸発のみとし,10 日後, 布で検体を濾して ( すなわち, 汚染水をろ過し ) 土壌のみを採取したもの ( 標準土壌 A) についても分析したところ, 上記同様, 標準土壌 Bとの比較で, 放射性セシウムが20% ほど減ることが記載されている 以上によれば, 引用例 2には, 除染用の洗浄液として 創生水, EM 菌, 水素水, 水道水 を用いることにより, 土壌に含まれる放射性セシウムが減ることが記載されているといえる そして, その放射性セシウムの減少量は, いずれの洗浄液を用いた場合でも, 標準土壌 Bとの比較で20% ほどであり, ほぼ同程度と認められる 引用発明 1は, 上記のとおり, 洗浄液として, 加温水だけの洗浄液のほか, 加温水に対して除染剤を添加した洗浄液などを用いることができるものであり, 洗浄液として, 水以外の成分を含むものを用いることも予定されているから, 引用例 2の記載に接した当業者であれば, 引用発明 1において, 洗浄液として, 水に加えて, 水素を用いることも動機付けられるといえる そして, 原告も認めるとおり, 水素水の製造方法として, 原料水に水素ガスを溶解させることは, 周知技術であり, また, 常温常圧下における溶存水素量 1.2~ 1.6ppm の水素分子が溶け込んだ水素水 も, 水素水として通常のものである そうすると, 引用発明 1に係る移動式除染装置において, 洗浄液として 水素水 を用いることとし, 引用発明 1における洗浄液製造装置に, 水素ガスを供給する水素供給手段 を備えさせるとともに, 原料水に前記水素ガスを溶解させ, 常温常圧下における溶存水素量 1.2~1.6ppmの水素分子が溶け込んだ水素水を製造する水素水製造手段 を備えさせることは, 当業者が容易に想到することである (2) 原告は, 引用例 2には, 水素水による除染は, 従来の水道水による除染よ - 18 -

りも除染効果が劣ることが記載されており, 引用発明 2を引用発明 1に適用すると, 従来の水道水による除染よりも除染効果が劣ってしまい, 発明の目的に反する方向に変更することになるから, その組合せには阻害要因があり, 当業者が容易に想到することができたものではないと主張する 確かに, 前記 3(1) の引用例 2 記載の表 1 及び2によれば, 水素水 500mlを検体土壌に注ぎ, 屋外日陰に10 日間安置したのち, 布で検体を濾して残った水分を抜き, 土壌のみを採取して分析した結果 ( 表 2の 3 水素水 ) は, 水道水 500m lを10 日間自然蒸発させた後, 布で検体を濾して土壌のみを採取して分析した結果 ( 表 2の ( 標準土壌 A( 水道水 )) と比較して, 放射性セシウムの減少量が少なくなっている しかし, その差はわずかであって, 当業者は, 通常, この程度の差が, 実験条件及び測定条件のばらつき等により生じ得る程度のものであって, 有意な差とはいい難いものと理解する したがって, 水素水による除染 (3 水素水 ) と, 水道水による除染 ( 標準土壌 A( 水道水 )) との間に若干の程度の差があるからといって, 引用発明 1において引用発明 2を適用することが阻害されているとまではいえないから, 原告の主張は採用できない また, 原告は, 阻害要因という表現が適切でないとしても, 発明の目的に貢献しない組合せは, 引用発明の組合せに動機付けがあるとはいえず, いずれにせよ, 本願発明は引用発明 1から容易に想起できたものとはいえないと主張する しかし, 上記のとおり, 引用例 2には, 創生水, EM 菌, 水素水, 水道水 を用いることにより, 土壌に含まれる放射性セシウムが20% 減少したことが記載されており, 水以外の成分を加えて洗浄液を作成する場合に, 水素を含ませることが容易に想到できることからすれば, 引用発明 1に引用発明 2の水素水を組み合わせることが, 発明の目的に貢献しないとはいえず, その組合せに動機付けは認められるものであるから, 原告の主張は採用できない 第 6 結論 - 19 -

以上によれば, 原告主張の取消事由 1~3 はいずれも理由がない よって, 原告の請求を棄却することとして, 主文のとおり判決する 知的財産高等裁判所第 2 部 裁判長裁判官 清水節 裁判官 中村恭 裁判官 中武由紀 - 20 -