労委平成 10 年 ( 不 ) 第 5 号事件 以下 共和運送事件 という ) 2 初審京都地労委は 青木組事件及び共和運送事件について併合して審査を行い 平成 11 年 5 月 20 日 本件で組合が主張する事実は不当労働行為に該当しないことが明らかであるとして 組合の救済申立てをいずれも却下した

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命令書 申立人京都 滋賀地域合同労働組合 被申立人伏見織物加工株式会社 上記当事者間の京労委平成 17 年 ( 不 ) 第 3 号第 11 伏見織物加工不当労働行為救済申立事件について 当委員会は 平成 18 年 5 月 18 日 第 2032 回公益委員会議において 公益委員佐賀千惠美 同初宿正典

270826答申について

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

結成当時は全国一般労働組合徳島地方本部に加盟し 同地方本部徳島南海タクシー支部と称していたが 平球 10 年 9 月 8 日に同地方本部を脱退し 同日 全国一般全国協及び地域合同労組に加盟して それぞれの徳島南海タクシー支部と称している 組合員は 本件申立時 21 名である 2 被申立人と徳島南海タ

04 件数表280205(東京)

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

厚生局受付番号 : 九州 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 九州 ( 厚 ) 第 号 請求者のA 社 B 支店における厚生年金保険被保険者資格の喪失年月日を昭和 44 年 4 月 21 日から同年 5 月 1 日に訂正し 昭和 44 年 4 月の標準報酬月額を2

厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 社 ( 現在は B 社に合併 ) における厚生年金保険被保険者資格の喪失年月日を昭和 55 年 10 月 21 日から同年 11 月 21 日に訂正し

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

件数表(神奈川)

沖縄厚生年金事案 440 第 1 委員会の結論申立人の申立期間のうち 申立期間 2に係る標準報酬月額は 事業主が社会保険事務所 ( 当時 ) に届け出た標準報酬月額であったと認められることから 当該期間の標準報酬月額を 28 万円に訂正することが必要である また 申立期間 3について 申立人は当該期

厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論 請求者の A 社における厚生年金保険被保険者資格の取得年月日を昭和 63 年 2 月 26 日から同 年 2 月 16 日に訂正することが必要である 生年月日 :

茨城厚生年金事案 2029 第 1 委員会の結論総務大臣から平成 24 年 10 月 10 日付けで行われた申立人の年金記録に係る苦情のあっせんについては 同日後に新たな事実が判明したことから 当該あっせんによらず 申立人のA 社における資格喪失日に係る記録を昭和 41 年 9 月 5 日に訂正し

厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 社における平成 26 年 8 月 25 日及び同年 12 月 25 日の標準賞与額を 150 万円に訂正することが必要である 平成 26 年 8 月 2

Microsoft Word 答申件数表

徳島厚生年金事案 422 第 1 委員会の結論申立人の 申立期間に係る標準報酬月額については 当該期間のうち平成 14 年 4 月から同年 12 月までの期間については30 万円 15 年 4 月から同年 12 月までの期間については20 万円 16 年 4 月から同年 12 月までの期間については

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

厚生局受付番号 : 東北 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 東北 ( 国 ) 第 号 第 1 結論昭和 52 年 4 月から同年 8 月までの請求期間及び昭和 52 年 9 月から昭和 56 年 12 月までの請求期間については 国民年金保険料を納付した期間に訂

301121答申件数表

釧路厚生年金事案 214 第 1 委員会の結論 申立人は 申立期間について 厚生年金保険被保険者として厚生年金保険 料を事業主により給与から控除されていたと認めることはできない 第 2 申立の要旨等 1 申立人の氏名等氏名 : 男基礎年金番号 : 生年月日 : 昭和 15 年生住所 : 2 申立内容

厚生局受付番号 : 四国 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 四国 ( 厚 ) 第 号 請求者の社会福祉法人 A 会 B 保育所における平成 20 年 6 月 21 日の標準賞与額を 127 万 1,000 円に訂正することが必要である 平成 20 年 6 月 2

( 平成 23 年 8 月 31 日報道資料抜粋 ) 年金記録に係る苦情のあっせん等について 年金記録確認釧路地方第三者委員会分 1. 今回のあっせん等の概要 (1) 年金記録の訂正を不要と判断したもの 7 件 厚生年金関係 7 件

事案である 3 仲裁合意本件では 申立人の申立書において仲裁合意の内容の記載があり 被申立人は答弁書においてこれを争わなかったので 本件についての書面による仲裁合意が存在する なお 被申立人は審問期日においても本仲裁に応じる旨の答弁をした 4 当事者の主張 (1) 申立人の主張申立人は 請求を基礎づ

標準例6

答申件数表(1月15日答申分)

(1) 被申立人は 平成 24 年 2 月 20 日付け及び同年 3 月 1 日付けで申立人が申し入れた団体交渉に応じること (2) 被申立人は 団体交渉の拒否及び平成 24 年 2 月 26 日の A に対する非難 恫喝についての謝罪文を掲示すること 第 2 認定した事実及び判断 1 前提となる事

11総法不審第120号

ユニオンぼちぼち学習会 偽装請負 と労災保険 2016 年 6 月 13 日 0. 請負契約とは請負とは 仕事の完成に対して報酬が支払われる契約のことを指す ( 民法 632 条 ) それだけだとわかりにくいので 雇用契約と比べてみる 雇用契約は労働に従事したことに対して報酬が支払われる ( 民法

厚生局受付番号 : 東海北陸 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 東海北陸 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 社 ( 現在は B 社 ) における昭和 39 年 7 月 1 日から同年 10 月 1 日までの期間の標準報酬月額を訂正することが必要である

青森国民年金事案 697 第 1 委員会の結論申立人の昭和 51 年 9 月から 54 年 3 月までの国民年金保険料については 納付していたものと認めることはできない 第 2 申立の要旨等 1 申立人の氏名等氏名 : 男基礎年金番号 : 生年月日 : 昭和 25 年生住所 : 2 申立内容の要旨申

厚生局受付番号 : 中国四国 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 中国四国 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 事業所における平成 27 年 7 月 10 日の標準賞与額を6 万 5,000 円に訂正することが必要である 平成 27 年 7 月 10 日の

厚生局受付番号 : 東北 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 東北 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求期間 1について 当該期間のうち請求者のA 社における平成 21 年 9 月 1 日から平成 22 年 12 月 1 日までの期間の標準報酬月額を訂正することが

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

山梨国民年金事案 201 第 1 委員会の結論申立人の昭和 41 年 4 月から同年 8 月までの期間 42 年 2 月から同年 10 月までの期間 48 年 1 月 49 年 4 月から同年 5 月までの期間 49 年 11 月及び 50 年 3 月の国民年金保険料については 納付していたものと認

厚生局受付番号 : 九州 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 九州 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論 請求期間について 請求者の A 社における厚生年金保険の標準報酬月額の訂正を認めることはできない 第 2 請求の要旨等 1 請求者の氏名等氏名 : 男基礎年金番号

第 2 再審査請求の理由 第 3 原処分庁の意見 第 4 争 点 本件の争点は 請求人に残存する障害が障害等級第 14 級を超える障害等級に該当する障害であると認められるか否かにある 第 5 審査資料 第 6 事実の認定及び判断 1 当審査会の事実の認定 2 当審査会の判断 (1) 請求代理人は 本

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

厚生局受付番号 : 九州 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 九州 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 社における厚生年金保険被保険者資格の喪失年月日を昭和 58 年 4 月 30 日から同年 10 月 16 日に訂正し 昭和 58 年 4 月から同年 9

厚生局受付番号 : 北海道 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 北海道 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 事業所における平成 28 年 9 月 1 日から平成 29 年 9 月 1 日までの期間の標準報酬月額を訂正することが必要である 平成 28 年 9

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

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年金記録に係る苦情のあっせん等について

保険給付に関する決定についての審査請求に係る労働者災害補償保険審査官の決定に対して不服のある者は 再審査請求をした日から 3 か月を経過しても裁決がないときであっても 再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経ずに 処分の取消しの訴えを提起することはできない (H23-4B)

厚生局受付番号 : 東北 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 東北 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 社における厚生年金保険被保険者資格の喪失年月日を昭和 53 年 12 月 31 日から昭和 54 年 1 月 1 日に訂正し 昭和 53 年 12 月の

1 審査会の結論 平成 28 年度市民税 県民税の賦課決定処分 に係る審査請求は棄却する べきであるとの審査庁の判断は妥当である 2 事案概要南区長 ( 以下 処分庁 という ) は 地方税法 ( 昭和 25 年法律第 226 号 以下 法 という ) 第 24 条及び第 294 条並びに横浜市市税

< F2D816992CA926D342E A947A8BF48ED282A982E782CC965C>

山梨国民年金事案 275 第 1 委員会の結論申立人の昭和 47 年 6 月から 48 年 3 月までの期間の国民年金保険料については 還付されていないものと認められることから 還付についての記録を訂正することが必要である 1 申立人の氏名等氏名 : 男基礎年金番号 : 生年月日 : 昭和 25 年

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沖縄国民年金事案 332 第 1 委員会の結論申立人の昭和 47 年 4 月から同年 8 月までの国民年金保険料については 納付していたものと認められることから 納付記録を訂正することが必要である 1 申立人の氏名等氏名 : 女基礎年金番号 : 生年月日 : 大正 8 年生住所 : 2 申立内容の要

結した組合員 5 名の未払賃金及び解雇予告手当の支払い等に関する和解協定 ( 以下 本件和解協定 ) を履行しなかったことが それぞれ 1につき労 働組合法 ( 以下 労組法 ) 第 7 条第 2 号及び第 3 号 2につき同条第 1 号 及び第 3 号 そして 3 につき同条第 3 号に該当する不

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

長崎国民年金事案 686 第 1 委員会の結論申立人の平成 5 年 10 月から 10 年 3 月までの国民年金保険料については 免除されていたものと認めることはできない 第 2 申立の要旨等 1 申立人の氏名等氏名 : 女基礎年金番号 : 生年月日 : 昭和 37 年生住所 : 2 申立内容の要旨

厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 国 ) 第 号 平成 3 年 4 月から平成 7 年 3 月までの請求期間については 国民年金保険料を納付した期間 に訂正することを認めることはできない 生年月日 : 昭和 27 年生住所 :

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

民事訴訟法

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

社会保険等未加入業者との下請契約 (1 次 ) 禁止にかかる事務手続フロー 施工体制台帳により加入状況を確認 工事監督員 添付された加入を証明する書類にて確認します 未加入 加入 適用除外 契約担当に報告するとともに, 受注者に対し, 書面にて当該下請契約を締結した具体的な理由を記載した書面を提出す

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

271028答申件数表

青森国民年金事案 690 第 1 委員会の結論申立人の昭和 36 年 4 月から 47 年 4 月までの国民年金保険料 同年 5 月から同年 9 月までの期間 52 年 8 月から 53 年 3 月までの期間及び 54 年 4 月から 61 年 3 月までの期間の国民年金付加保険料については 納付し

成 18 年に 定年後は定年前と同一の労働条件で満 65 歳まで再雇用するとの文書によるやり取りがあったところ 会社はX2の定年後は X2との間で1 年間ごとに再雇用契約を締結することとした その後会社は 平成 24 年 7 月に再雇用契約を業務請負契約に変更するよう求め X2がこれを拒否すると 1

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異議申立てしていますが, 協会 ( 原文ママ ) として黙認しています 本件に関しても, 諮問庁は国のトップなのだから, もっともっと労働問題に積極的に取り組み, 労基法厳守で, 場合により, 行政処分すべきである 警察なら, スピード違反すれば即行政処分されますが, 労基法では, 基本強い行政処分

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返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

<4D F736F F D20819C906C8E96984A96B1835A837E B C8E3693FA816A8E518D6C8E9197BF E646F63>

厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 社 B 支店における厚生年金保険被保険者資格の取得年月日を昭和 47 年 3 月 21 日 喪失年月日を同年 4 月 21 日とし 昭和 47 年 3

京都厚生年金事案 2913 第 1 委員会の結論申立人は 申立期間について その主張する標準報酬月額 (44 万円 ) に基づく厚生年金保険料を事業主により給与から控除されていたことが認められることから 申立期間の標準報酬月額に係る記録を 44 万円に訂正することが必要である なお 事業主は 上記訂

がある 7 平成 28 年 3 月 28 日 処分庁は 同日付で審査請求人に対し 借入金収入 円の未申告により生じた保護費過払い分について 法第 78 条第 1 項の規定により費用徴収を行う決定を行い 同年 7 月 7 日 費用徴収決定通知書を審査請求人に手交した 8 審査請求人は 平成 28 年

最高裁○○第000100号

労災年金のスライド

11総法不審第120号

平成 27 年労第 73 号 主 文 本件再審査請求を棄却する 理 由 第 1 再審査請求の趣旨及び経過 1 趣旨再審査請求人 ( 以下 請求人 という ) の再審査請求の趣旨は 労働基準監督署長 ( 以下 監督署長 という ) が平成 年 月 日付けで請求人に対してした労働者災害補償保険法 ( 昭

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

の両方を提出する必要がある 問 3 還付額は 領収証に記載されている金額を還付するのか それともレセプト情報から自己負担分を計算するのか 領収証により保険診療に係る一部負担金の額を確認して還付する 問 4 領収証の紛失 または医療機関等の全壊等により 対象の被保険者が負担した一部負担金の額の確認が取

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

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【参考配布】「年金記録の訂正手続のあらまし」パンフレット

注意すべきポイント 1 内定承諾書は 内定者の内定承諾の意思を明らかにさせるものです 2 2 以降の注意すべきポイントについては マイ法務プレミアムで解説しています

最近の主要労働判例・命令(2017年4月号)

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

( 扶養義務者が複数の場合の認定対象者の帰属 ) 第 4 条 認定対象者にかかわる扶養義務者が複数ある場合は 扶養義務者の収入および扶養能力 被保険者の被扶養者としなければならない経緯または理由 生計維持の事実などを総合的に審査して組合がその帰属を判定する なお 夫婦 親子等社会通念上被保険者よりも

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

厚生局受付番号 : 九州 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 九州 ( 国 ) 第 号 昭和 59 年 4 月から同年 9 月までの請求期間については 国民年金保険料を納付した期間に 訂正することが必要である 1 請求者の氏名等氏名 : 女基礎年金番号 : 生年月

査請求人 ) が 平成 5 年分所得税確定申告書 ( 以下 本件請求保有個人情報 1 という ) の開示を求めるものである 処分庁は, 本件開示請求に対し, 本件請求保有個人情報 1は文書保存期間 (7 年 ) が満了し, 既に廃棄しているとして, 平成 27 年 12 月 2 2 日付け特定記号第

平成  年(オ)第  号

平成 27 年度 特定行政書士法定研修 考査問題 解答と解説 本解答と解説は 正式に公表されたものではなく 作成者が独自に作成したものであり 内容の信頼性については保証しない 以下の事項に全て該当 遵守する場合にのみ 利用を許可する 東京都行政書士会葛飾支部会員であること 営利目的でないこと 内容を

ウ 特定個人 a に訂正してほしいとは, 私は書いてない これも日本年金機構の単純ミスなのか? それとも他に理由があるのか? 事実に基づいて, 説明を求める 私の公共職業安定所における氏名は, カタカナの 特定個人 b のスペースなしで管理されている 私の資格画面も氏名欄はカタカナである 国民年金保

厚生局受付番号 : 中国四国 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 中国四国 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 社における標準賞与額を平成 22 年 12 月 29 日は 14 万 6,000 円 平成 23 年 8 月 12 日及び平成 24 年 8 月

が成立するが 本件処分日は平成 29 年 3 月 3 日であるから 平成 24 年 3 月 3 日以降 審査請求人に支給した保護費について返還を求めることは可能であ る 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件処分に係る生活保護

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

年金記録に係る苦情のあっせん等について

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

(5) 認定対象者に収入がある場合は 厚生労働省通知並びに関係法令 本基準に定める範囲内であること (6) 認定対象者を被扶養者として認定する事が実態と著しくかけ離れたものではなく かつ社会通念上妥当性を欠いていないと認められること ( 扶養義務者が複数の場合の認定対象者の帰属 ) 第 4 条認定対

ている 4 本件は社会保険事務所の事務所の事務ミスに起因するものである 第 3 当審査会の判断 1 老齢厚生年金 ( 特老厚年金を含む ) の額は その年金額の計算の基礎となる被保険者期間が240 月以上である者に限り 受給権者がその権利を取得した当時 その者によって生計を維持していたその者の65

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命令書 再審査申立人 京都 - 滋賀地域合同労働組合 再審査被申立人株式会社青木組 再審査被申立人共和運送株式会社 上記当事者間の中労委平成 11 年 ( 不再 ) 第 29 号事件 ( 初審京都地労委平成 10 年 ( 不 ) 第 2 号 第 5 号併合事件 ) について 当委員会は 平成 15 年 12 月 17 日第 1394 回公益委員会議において 会長公益委員山口浩一郎 公益委員諏訪康雄 同今野浩一郎 同横溝正子 同若林之矩 同曽田多賀 同林紀子 同上村直子 同荒井史男 同佐藤英善 同椎谷正 同岡部喜代子 同山川隆一出席し 合議の上 次のとおり命令する 主文本件再審査申立てを棄却する 理由第 1 事案の概要 1 昭和 57 年 2 月 9 日 再審査被申立人青木組 ( 以下 青木組 という ) が施工する京都市内の河川改修工事現場において 再審査被申立人共和運送 ( 以下 共和運送 という ) の従業員として就労していた X1 こと X2( 以下 X1 という ) がトラックの荷台から地上に転落する労災事故 ( 以下 本件事故 という ) が発生した 平成 7 年 5 月 8 日 京都下労働基準監督署長は X1 に対して労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) による障害補償給付の支給に関する処分を行った X1 は これを不服として京都地方裁判所に当該処分の取消しを求める訴訟を提起したが 平成 10 年 2 月 18 日 京都地方裁判所は X1 の請求を棄却する旨の判決をした その後の平成 10 年 4 月 11 日 X1 は再審査申立人京都 - 滋賀地域合同労働組合 ( 以下 組合 という ) に加入した 本件は 青木組が 1 平成 10 年 4 月 30 日 本件事故に関する組合からの団体交渉申入れを拒否したこと 2 同年 5 月 6 日及び 8 日 顧問弁護士の Y1( 以下 Y1 弁護士 という ) を使って組合の運営に支配介入を行ったこと 及び 3 共和運送が 同年 7 月 27 日 本件事故に関する組合からの団体交渉申入れを拒否したことが それぞれ不当労働行為であるとして京都府地方労働委員会 ( 以下 京都地労委 という ) に救済申立てのあった事案である 上記 1 2 について組合は 平成 10 年 5 月 8 日 救済申立てを行った ( 京都地労委平成 10 年 ( 不 ) 第 2 号事件 以下 青木組事件 という ) また上記 3 について 平成 10 年 9 月 9 日に救済申立てを行った ( 京都地 -1 -

労委平成 10 年 ( 不 ) 第 5 号事件 以下 共和運送事件 という ) 2 初審京都地労委は 青木組事件及び共和運送事件について併合して審査を行い 平成 11 年 5 月 20 日 本件で組合が主張する事実は不当労働行為に該当しないことが明らかであるとして 組合の救済申立てをいずれも却下した 組合は 京都地労委の上記決定を不服として 平成 11 年 6 月 3 日 再審査を申し立てた 第 2 当事者の主張要旨 1 組合は 初審の却下決定を不服として 次のとおり主張する (1) 初審決定は 青木組及び共和運送は 本件団体交渉申入れ時点においては 労組法上の使用者に当たらない旨判断している しかし X1 の労災についての補償問題は今も問題として継続しており 同人は労災保険法の正しい適用を求めて その根拠となる労災事故に関する資料等の提出を共和運送と青木組に求めているのである 労働契約関係は その限りでは継続しているのである 青木組及び共和運送は X1 の労災保険の障害等級の正しい適用を妨害しているのであるから でたらめな労災報告書を出したことを謝罪し 同時に 正しい調査報告書の作成に向けて組合との団体交渉 話合いに応ずるべきである (2) 本件事故発生に係る河川改修工事の発注者である京都市は 発注者責任を認めている 組合は京都市の発注者責任を追求しており そのためにも青木組及び共和運送が持つであろう労災事故に関する資料等の提示は 極めて重要である (3) よって 青木組及び共和運送は 組合の訴えに応じて少なくとも 1 度は団体交渉に応じて 本件事故の発生状況を明らかにし その工事概要等の資料について その有無も含めて組合に回答をするべきである 2 これに対して 青木組及び共和運送は 次のとおり主張する (1) 組合は 青木組及び共和運送に対し団体交渉権を有しない すなわち 組合は 本件再審査においても X1 が青木組と労働契約関係にないこと及び青木組の労働者の中には他に組合の組合員が存在しないことを認めている また共和運送についても X1 は昭和 58 年 3 月頃には共和運送を合意退職しており 組合は本件再審査の審問においても X1 以外に共和運送の労働者の中に組合の組合員が存在しないことを認めている したがって 青木組及び共和運送は 少なくとも組合が団体交渉を申し入れた時点で労組法第 7 条第 2 号の使用者に当たらない (2) 上記のとおり団体交渉権を有しない組合に対し 他に更に主 -2 -

張する必要はないと思われるが 補充的に組合の主張に以下のとおり反論する 組合は 本件再審査の審問において 労災の等級是正のために労災の資料を開示してほしい旨陳述しているが 青木組にも共和運送にも 今から 21 年前の昭和 57 年 2 月 9 日の事故についての資料は存在しないし これを知っている社員も存在しない X1 は平成 8 年に京都地方裁判所へ障害補償給付支給処分取消請求訴訟を提起し 平成 10 年 2 月 18 日に請求を棄却する旨の判決を受けている 既に同判決は確定しており 判決が確定しているので再審請求しかできないが 再審理由は見当たらない また 組合は本件事故の場所 態様等その発生状況を明らかにせよと主張しているが X1 の労災の障害等級の認定は医師の後遺障害診断書によって行われるものであり 事故の場所とか態様によって左右されるものではない X1 が受傷した傷害は診断書に記載されたとおりであり 医師の診断に基く判断であるから 事故の場所や態様は重要な判断資料ではない 第 3 当委員会の認定した事実及び判断 1 当事者等 (1) 組合は 主に京都府及び滋賀県に居住又は勤務する労働者を主体として 平成 7 年 3 月 12 日に結成された労働組合である (2) 青木組は 肩書地に事務所を置き 建設業を主たる業務とする株式会社であり 共和運送は 肩書地に本社を置き 道路貨物運送業を主たる業務とする株式会社である 本件事故当時 青木組は共和運送にトラックの傭車を依頼していた 青木組の従業員の中には 組合の組合員はいない 共和運送については X1 以外に組合の組合員はいない 2 X1 の組合加入に至る経緯 (1) 昭和 57 年 2 月 9 日 青木組が施工する京都市内の河川改修工事現場において 共和運送の運転手の X1 が 覆工板をトラックに積み込む作業に従事していた際にトラックの荷台から地上に転落し 腰部及び頭部を強打して意識を失うなどした事故 ( 本件事故 ) が発生した 本件事故当時 X1 は共和運送に雇用されていたが 本件事故以降 同人は青木組の施工する建設工事現場で就労したことはない (2) 本件事故後の X1 の就労状況 社会保険手続等は 以下のとおりである ア本件事故前から X1 は自己所有のトラックで運送業務に従事していたが 当該トラックは本件事故後 1 2 年のうちに同人の実印を用いて廃車された -3 -

イ本件事故後 X1 が共和運送で就労した事実はない ウ昭和 58 年 1 月 26 日 共和運送は X1 に対し電話により同人の健康保険証を同月 31 日に返納するよう依頼した エ同年 1 月 31 日 X1 が共和運送に来社しなかったため 同社は 2 月 24 日及び 3 月 10 日の 2 回 同人に対し健康保険証の返納を求める通知書を書留郵便で送付した しかし 上記通知書はいずれも受取人不在のため共和運送に返送された オ共和運送は同年 3 月 25 日付けで X1 を長期欠勤により退職扱いにしたが健康保険証が回収不能である旨の健康保険証回収不能届を京都西社会保険事務所に提出した 京都西社会保険事務所長は X1 の退職日を同月 24 日 資格喪失日を同月 25 日とする健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格喪失の確認を行った カ同年 3 月 30 日 共和運送は X1 に対し同月 25 日付けで同人を退職扱いとしたこと及びそれに伴い社会保険の喪失手続をしたことを記載した通知書を発送した その後 X1 は 上記資格喪失に伴い健康保険法第 20 条 ( 現行第 37 条 ) の規定に基づき任意継続被保険者の申請を京都西社会保険事務所において行った キ後記 3(5) の本件団体交渉申入れ ( 平成 10 年 7 月 23 日 ) までの間において X1 が共和運送で就労した事実や同社から給与を受領した事実はなく また同人が共和運送に対して従業員としての地位の確認を求めた事実もない なお 本件事故後しばらくの間は 休業前の賃金全額相当額と休業補償の給付額との差額が共和運送から X1 に支給されていた (3) X1 は 労災保険法による休業補償給付を受給しながら療養を続けていたが 平成 7 年 3 月 31 日 症状固定により治癒したと診断された X1 は治癒後障害が残存するとして 京都下労働基準監督署長に対して労災保険法に基づく障害補償給付を請求した (4) 京都下労働基準監督署長は 平成 7 年 5 月 8 日 X1 の残存障害の程度を労災保険法施行規則別表第 1 の障害等級第 8 級に該当するものと認め 同等級に応ずる障害補償給付を支給する旨の処分を行ったが 同人は これを不服として京都地方裁判所に当該処分の取消しを求める訴訟 ( 以下 取消訴訟 という ) を提起した (5) 平成 10 年 2 月 18 日 京都地方裁判所は 取消訴訟について X 1 の請求を棄却する旨の判決を言い渡した なお X1 はこれを不服として控訴したが 同年 7 月 30 日 控訴棄却となり さ -4 -

らに上告したが 同 11 年 2 月 26 日 上告棄却となり判決は確定している (6) 平成 10 年 3 月 16 日 X1 と青木組との間で 本件事故について次の内容の示談 ( 以下 本件示談 という ) が成立した ア青木組は X1 に対し 示談金として金 100 万円を支払う イ X1 は 青木組に対し 取消訴訟に要した諸費用及び取消訴訟の判決に対して控訴するための諸費用として 100 万円を要求し 青木組は X1 が共和運送の運転手であること 本件事故が昭和 57 年の事故であること等から 法律上損害賠償義務がないと判断しているが 諸般の事情を考慮して X1 と本件示談をするに至った ウ X1 は青木組に対し 控訴した結果控訴審で敗訴しても 何らの請求をしないこと及び本件事故に関し その他名義の如何を問わず 今後は一切何らの請求をしないことを確約する エ青木組と X1 は 相互に 本件事故に関し 本示談条項以外に何ら債権債務のないことを確認する (7) 平成 10 年 4 月 11 日 X1 は組合に加入した その 加盟書 には 労働災害裁判をよろしくお願いします と記載されていた (8) 昭和 58 年 3 月頃から後記 3(5) の本件団体交渉申入れ ( 平成 10 年 7 月 23 日 ) までの間において X1 は 共和運送に対し同社の従業員としての地位の確認を求めたことはない 3 本件救済申立てに至る経緯 (1) 組合は 平成 10 年 4 月 30 日 青木組に対して 1X1 の労災問題について 2 事故報告書について 3 示談書について 4 仕事の保証について等を交渉項目として団体交渉を申し入れた これに対し 同日 青木組は本件示談により決着済みであるとして これを拒否した (2) 平成 10 年 5 月 6 日 Y1 弁護士は 上記 (1) の団体交渉申入れについて X1 に電話をし 場合によったら恐喝行為になるので警察を呼ぶ旨告げた 同月 8 日 組合は Y1 弁護士の事務所に上記電話に対する抗議に赴いたところ 同弁護士は事務所からの退出を求めた (3) 組合は 平成 10 年 5 月 8 日 京都地労委に対して 上記 (1) の青木組の行為は労組法第 7 条第 2 号及び第 3 号に該当する不当労働行為であるとして 誠実に団体交渉に応じ 二度と労災事故を起こさないという態度を明白にすること X1 の障害等級是正等に関し誠実を尽くして協力すること並びに謝罪文の手交及び掲示を命ずることを請求する救済内容として 救済申立て -5 -

を行った さらに同年 7 月 22 日 上記 (2) の Y1 弁護士の組合への対応について 青木組が Y1 弁護士を使って組合の運営に支配介入を行ったことは労組法第 7 条第 2 号及び第 3 号に該当する不当労働行為であるとして 支配介入の禁止並びに謝罪文の手交及び掲示を請求する救済内容とする追加申立てを行った ( 青木組事件 ) (4) 組合は 平成 10 年 5 月以降 本件事故に係る河川改修工事の発注者である京都市と本件事故に対する京都市の責任等についてたびたび交渉を行っていたが その中で 共和運送の代表取締役 Y2( 以下 Y2 社長 という ) が本件事故について次のように発言していることを知った ア本件事故当日 X1 は共和運送に帰社して本件事故による痛みを訴えた イ X1 は 労災保険法に基づく保険給付を受給していたが これは 休業に対する補償が健康保険法に基づく保険給付よりも有利であるため 健康保険法に基づく保険給付から共和運送が切り替えたものである (5) 組合は 上記 (4) の Y2 社長の発言は X1 をニセ労災被災者であるかのようにいうものであり 同人の信用と名誉を傷つけ 正当な労災補償を受けることを妨害するものであるなどとして 平成 10 年 7 月 23 日 共和運送に対し 1 本件事故についての Y2 社長の謝罪 2Y2 社長による X1 への ニセ労災被災者扱い についての反省及び謝罪について 3 労災の事実経過を明らかにする努力について 4 労災の届け出についての出鱈目な事故報告の撤回と反省について 5 労災保険の正しい適用への努力について 6 慰謝料等について 7 仕事の保証 生活の保障について等を交渉項目とする団体交渉を申し入れた これに対し 同月 27 日 共和運送は 16 年も前の事故でありすべて終了していることであるとして これを拒否した (6) 組合は 平成 10 年 9 月 9 日 京都地労委に対して 上記 (5) の共和運送の行為は労組法第 7 条第 2 号及び第 3 号に該当する不当労働行為であるとして 誠実に団体交渉に応じ X1 組合員の障害等級是正等に関し誠実を尽くして協力すること 二度と労災事故隠しを行わないという態度を明白にすること並びに謝罪文の手交及び掲示を命ずることを請求する救済内容として 救済申立てを行った ( 共和運送事件 ) 4 当委員会の判断 (1) 青木組及び共和運送の使用者性について組合は X1 が本件事故に関する資料等の提出を共和運送と青木組に求めており その限りで労働契約関係は継続している -6 -

として 青木組及び共和運送は労組法第 7 条第 2 号の使用者として本件各団体交渉申入れに応ずるべきであると主張する 以下 青木組及び共和運送が X1 との関係において労組法第 7 条の使用者に当たるか否かについて検討する ア青木組の使用者性組合は 青木組事件第 2 回調査 ( 平成 10 年 7 月 22 日 ) において X1 と青木組との間には労働契約関係はないことを自認しており また上記認定によれば 本件事故以降 X1 は青木組の施工する建設工事現場で就労した事実もないこと (2(1)) が認められる これらの点については 本件再審査においても争いのないところである そうすると 青木組は X1 の雇用主ではなく また青木組が X1 の労働条件等について関与したとする事実はなく その他に関与を認めるに足る具体的な疎明もない なお 組合は X1 と青木組との間に限定的に労働契約関係は継続している旨主張するが 上記のとおり 当初から X1 と青木組との間には労働契約関係は存在しなかったのであるから 両者の間の労働契約関係の存在を前提とする上記主張は その前提を欠くものであり採用できない 以上によれば 青木組は労組法第 7 条の使用者に当たらないことは明らかであって 青木組が本件事故に関する組合からの団体交渉申入れを拒否したことは 労組法第 7 条第 2 号及び第 3 号の不当労働行為に当たらないことは明らかである なお 青木組が Y1 弁護士を使って組合の運営に支配介入したという追加申立てについても 青木組は使用者に当たらないのであるから これが労組法第 7 条第 3 号の不当労働行為に当たらないことは明らかである イ共和運送の使用者性組合は X1 が本件事故に関する資料等の提出を共和運送に求めており その限りで労働契約関係は継続していると主張する ( ア ) まず 本件事故に関する資料等の提出要求に至る経緯についてみると 以下の事実が認められる すなわち 1X1 は平成 7 年 5 月 8 日に京都下労働基準監督署長から残存障害について障害認定の決定を受け これを不服として当該処分の取消訴訟を提起したこと (2(4)) 2 平成 10 年 4 月 11 日に X1 は組合に加入し 同年 7 月 23 日に組合から共和運送に対して本件事故に関する団体交渉申入れを行っていること (2(7) 3(5)) が認められる これらの事実からすると X1 は京都下労働基準監督 -7 -

署長に対して障害等級認定を不服として争っていることは認められるものの 共和運送に対しては 本件事故後から長期間にわたって何らの要求も行っていない その後 15 年を経過した平成 10 年 7 月に至ってはじめて 組合は本件団体交渉申入れを行い その中で本件事故に関する資料等の提出を求めたものである 他方 X1 と共和運送の間の雇用関係に関しては 以下の事実が認められる すなわち 1 本件事故当時 X 1 は共和運送に雇用されていたこと (2(1)) 2 本件事故後 X1 が共和運送で就労した事実や同社から給与を受領した事実はないこと (2(2) イ キ ) 3 共和運送は 昭和 58 年 2 月 25 日付けで X1 を退職扱いとし社会保険喪失手続をした旨の通知書を発送したこと ( 同カ ) 4 その後 X1 は 上記資格喪失に伴い健康保険法第 20 条の規定に基づき任意継続被保険者の申請を行っていること ( 同カ ) 5 共和運送に対して同社の従業員としての地位の確認を求めたこともないこと ( 同キ ) が認められる 上記の事実によれば 本件事故当時 X1 と共和運送の間に雇用関係のあったことは認められる しかし X 1 は 共和運送が退職扱いとしたことに対して特段異議を述べたことはなく また自らの退職を前提に健康保険の任意継続被保険者申請を行っていることからみて 同人は昭和 58 年 3 月頃には既に共和運送を自己都合により退職していたものといわざるを得ない ( イ ) 上記の点を併せ考えると X1 と共和運送の間の雇用関係は昭和 58 年 3 月頃には既に終了しており 当時 同人は共和運送に対して雇用関係の存否や本件事故に関する資料等の提出問題について争っていたものでもない そうすると X1 と共和運送の間に労働契約関係は存在せず 団体交渉義務の前提となる労使関係はないというべきである なお X1 の残存障害に対する障害認定処分に関する争いについては 当該処分をなした労働基準監督署長と X1 との間の問題であって 共和運送との間の問題であるとみることはできない したがって X1 と共和運送の間に限定的に労働契約関係が継続している旨の組合の主張は採用できない 以上によれば 共和運送は X1 との関係において労組法第 7 条の使用者には当たらないことは明らかであって -8 -

共和運送が本件事故に関する組合からの団体交渉申入れを拒否したことは 労組法第 7 条第 2 号の不当労働行為に当たらないことは明らかである (2) 京都市の発注者責任に関する主張について組合は 京都市の発注者責任を追及するためにも労災事故に関する資料等の提示が重要である旨主張する しかし 発注者責任の問題はあくまでも組合と京都市との間の問題であるから それをもって共和運送が団体交渉に応ずるべきであるとはいえない よって上記の組合の主張は失当である (3) 結論上記判断のとおり 青木組及び共和運送が組合からの本件各団体交渉申入れを拒否したことは不当労働行為に当たらないことは明らかであり そうである以上 これが組合に対する支配介入の不当労働行為に当たらないことも明らかである したがって 本件で組合が主張する事実は不当労働行為に該当しないことが明らかであるとして 本件申立てをいずれも却下した初審決定は相当である 以上のとおりであるので 本件再審査申立てには理由がない よって 労働組合法第 25 条及び第 27 条並びに労働委員会規則第 55 条の規定に基づき 主文のとおり命令する 平成 15 年 12 月 17 日 中央労働委員会会長山口浩一郎印 -9 -